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« 松本孝行氏の拙著書評 | トップページ | 日本労働弁護団の有期労働立法提言 »

2009年11月 4日 (水)

「クビ代1万円」すら「ムダ」ですか?

本ブログの各エントリに付けられたブックマーク数で、昨日の湯浅誠さんのやつが一気に200件を突破してしまいましたが、それまでの1位は「クビ代1万円也」の96件でした。

http://b.hatena.ne.jp/entrylist?sort=count&url=http%3A%2F%2Feulabourlaw.cocolog-nifty.com%2Fblog%2F

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-fb88.html(クビ代1万円也)

ここでは、解雇自由化論を批判する観点から、現在都道府県労働局の窓口で行われている個別労働紛争解決制度の実態をいくつか引用して、日本の解雇の実情を説明しましたが、なかなかその辺の感覚が世間に伝わらず、依然として「日本では解雇も労働条件の不利益変更もほぼ不可能」などと大まじめな顔をして説く人々の群れが絶えないようです。

一つにはそういう世間の無理解を正すという意味もあり、現在わたくしは個別紛争処理事案の分析というのをやっています。この件については、7月に経営法曹会議で講演したときにちらりと触れているので、そのときの発言を引用しておきますと、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/zadankai.html正社員及び非正規労働者の労働契約の終了にまつわる法的問題の現状と展望

>世の中では、解雇とか雇止めというのは、あちこちで山のように行われているわけです。そういったところでは、金銭で解決どころか、びた一文も払わない形でそのまま雇用が終了するというのは幾らでもある。
 私は、今、労働政策研究・研修機構におりまして、今年度のプロジェクト研究として、各地方の労働局でやっている個別紛争の斡旋事案の中身を分析し始めています。まだ事案を見始めたところですが、実にさまざまであるというのは当然ですが、解決の仕方も実にさまざまで、もっと言うと、基準は何もない。斡旋というのは本来そういうものだといえば、会社側が嫌だと言えばそれまでの話なので、当然と言えば当然ですが、これはどう考えても会社がひどいなと思うものでも、本当に5万円、6万円のはした金で解決しているものもあれば、こんなひどい労働者に金を出すのかというようなものに40万円、50万円払ったりしている。

そういう問題意識で現在分析をしているところなのですが、一昨日の日経の記事は、どうも民主党政権はそういう問題意識などムダの極みであると考えているのではないか、という疑いを抱かせるのに十分なものでした。

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S0200P%2002112009&g=MH&d=20091102(行刷会議の事業仕分け、3省63事業ムダ洗い出し 雇用機構など )

>2010年度予算編成に向けて政府の行政刷新会議が無駄を洗い出す対象事業のうち、厚生労働、経済産業、外務各省の所管分が2日、明らかになった。

例によって、官僚のやっていることはデフォルトとしてムダであるに違いない、という強固な信念に立脚しておられるのではないかとおぼしき「事業仕分け」だの「ムダ洗い出し」だのといった表現が飛び交っていますが、このリンク先には具体的な「ムダ」扱いされようとしている事業名は、(新聞政治部が脊髄反射的に「悪」とラベルを貼り、職業訓練とか雇用促進住宅とかに関する社会部記者の感覚は一切反映されない)雇用・能力開発機構しか載っていません。

そこで、一昨日の日経夕刊をじっくり見てみると、なかなか素敵な「ムダ」の数々が並んでいます。その中に、

>個別労働紛争対策の推進

というのもちゃんと挙げられています。

個別労働紛争の解決のために国民の税金を使うなどというのは許し難いムダであるようです。

なるほど、「民主党革命」というのは、いきなりクビだと言われたり、パワハラを受けた労働者が思いあまって駆け込んでくる労働相談窓口はムダであると、いわんや経営者にあれこれ助言指導したりするのはムダであると、ましてや両者の間であっせんを試みて、少ない額でもなにがしかの金銭解決につなげていくことなど、言語道断のムダ遣いであると、こういうことを言わんとしているのでありましょうか。

確か、民主党のマニフェスト(正確には「政策集INDEX」では、「個別の労使紛争に対する適正、簡便、迅速な紛争解決システムの整備促進を図ります」(32ページ)というのもあったはずで、一体どういう考え方に立ってものごとを進めようとしているのか、理解に苦しむところでもあります。

「行政刷新」というのは、誰にとってのどういう「ムダ」を排除しようとしているものなのか、仙谷大臣と、とりわけ連合総研から行政刷新会議に参加されている草野理事長には原点に立ち返った議論をお願いしたいと切に念じております。なにしろ、

>担当するワーキンググループ(WG)が2日午後から各省からの聞き取り調査に着手し、今月半ばに第1次報告をまとめたい考えだ。

だそうなので、へたをすると、わたくしの研究がのろのろと亀の歩みをしている間に、肝心の個別紛争解決制度自体が、「ムダ」だと烙印を押されて、研究対象が自動的に消滅してしまいました、という顛末にならないとも限りませんので。

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コメント

いつも拝読させていただいております。
私の知識&経験では、大したコメントができないと思い、いつもコメントするのは控えていましたが、今日は恐れながらコメントをさせていただきます。

個別労働紛争対策はとっても大事なことで必要だと思っています。なのでその必要性は感じているのですが・・

そこにもっていく前に解決できる事案って案外多いような気もしています。

いろいろなところで行われている労働相談で、もっと心ある対応ができればもっと労働紛争は減らせる気がするので、各機関がもっと相談員の教育をしてプロに育てあげれば、その時はじめて個別労働紛争対策は不要になるのかもしれません。
でも、現実はやっぱりそこまでできる人が少ないので、(そういう意識が相談員に低いと思われるので)今はまだ個別労働紛争対策が局にあることは意味があるような気がしています。
・・・あ、なんか書いているうちにトンチンカンになっちゃいまいした?(汗)

Openofficeというフリーソフトがあるが、
これは、経済産業省で、すすめているものである。

高校の教科「情報」において、表計算とかあるが、有料のマイクロソフトのEXCELを使っているようだ。

「厚労、外務、経産」
尾立源幸(おだち・もとゆき)
が、Openofficeを使わないことは、

不作為の作為と推測される。
金儲け、竹中平蔵グループなら、あり得ることである。

早速5日出張法廷が雇用・能力開発機構に乗り込んできます。
事態は深刻ですぞ。

 濱口先生 恐らく現政権も個別労働紛争対策の必要性自体は異論ないと思われますが、一つ論点を指摘するとすれば、個別労働紛争解決窓口の多様化があるように思われます。

 行政機関における個別労働紛争対策としては、周知のとおり、労働局はもちろん地方労働委員会、そして地方自治体(商工部など 自治体によっては対応せず)などが取り組んでいます。
 その他、行政以外では社労士会等が民間ADRに取り組む動きが見られます。
 何よりも裁判所における労働審判と本訴迅速化など、司法の労働分野における変革はめまぐるしいものがあります。

 このような個別労使紛争解決制度の多様化を見て、一方では「乱立」であり、厚労省が同対策を講じることが「ムダ」と見える向きがあるように思われます。そのような立場を取る論者の中には、「労働局不要論」→「地方自治体への同機能移管」を見据えておられる方もいらっしゃるのやもしれません(邪推(笑))。

 私自身は、これら個別労働紛争対策の多様化は、それぞれの長所を発揮できるのであれば、紛争解決の受け皿が広がることとなり、大変、有益と考えております。

 本当の問題はhirorinさんもご指摘のとおり、各労働相談窓口、斡旋対応の現場がそれぞれ十分に役割を果たしていないのではないかという懸念です。そもそも、同相談機関における「目的」「職務内容」「対応指針」等が担当者に明確化されていないようにも思われ、現場レベルでの悩みはそれぞれ根が深いと感じています。現政権が個別労働紛争解決制度の改革に着手されるのであれば、ぜひとも現場の各機関における状況把握から初めていただきたいと思うところでございます。

いつも勉強させていただいております。
私は個紛相談員を担当させていただいて2年になります。まだまだ労働問題については駆け出しもいいところですが、現場担当者の気持ちということで、コメントさせていただくことをお許しください。

相談員の意識の低さ、「目的」「職務内容」「対応指針」等が担当者に明確化されていない、というhirorinさんや北岡先生のご指摘は、耳が痛いものがあります。
たしかにそのとおりなのですが、現場担当者としては、だからこそ、個紛対策はムダだから削れ、ではなく、じゅうぶんな教育をしていただきたいと思うのです。
相談員はみな非常勤で、研修もほとんどなく窓口に配置され、実務にあたります。地方ではほとんど各コーナー一人体制ですので、先輩や上司の指導が随時受けられるでもなく、監督官の相談対応を参考にしながらの対応です。
基準行政の範囲でもなく、かといって訴訟は費用も時間もかかりすぎる、といった事案を、このような相談員の相談だけで解決することは困難です。
(そのようにして現場に立っている相談員の心情としては、自分たちの相談の後には局の助言やあっせんという仕組みが控えてくれているということは、相談対応にあたって非常に心強いものがあります。)

別の観点から見てみると、国がやるのは労働基準行政のみ、労働紛争は扱わない、というスタンスは、現場の感覚からするとなかなか難しいのではないかと思います。(昔はそうだったんだよと聞いたことがありますが。)
労働者や会社にとってみれば、労働基準とその他の労働条件や労働紛争はスッパリ切り分けできるものではなく、地続きのような気がします。
労働基準行政のまわりにくっついている労働紛争を、(ひっくるめてではなく)引き続き扱う仕組みがあってもいいんではないかしらと思っています。
(ただ、それがゆえの限界もあると思うので、悩ましいところではありますが。)

最後に。。。。現場の相談員としていつも感じることですが。。。。相談に見えるのは、3万円、5万円の賃金が生活を左右する方々がほとんどです。そういう方に有料の労働紛争解決機関をご紹介するのは、なかなか心情的に忍びないものがあると思うのです。。。。

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