『講座現代の社会政策3 労働市場・労使関係・労働法』
明石書店から刊行された『講座現在の社会政策』というシリーズの第3巻『労働市場・労使関係・労働法』を、執筆者のお一人である上西充子先生より贈呈いただきました。ありがとうございます。
ここでは、まず講座全体のタイトルを示しておきましょう。
第1巻 戦後社会政策論
第2巻 所得保障と社会サービス
第3巻 労働市場・労使関係・労働法
第4巻 ジェンダー
第5巻 市民社会・労働・公共空間
第6巻 グローバリゼーションと福祉国家
という構成です。その第3巻が本書で、石田光男・願興寺ひろしのお二人の編著で、各章のタイトルと執筆者は以下の通りです。
序章 サステナブルな労働社会
第1部 労働市場
第1章 地域産業振興策の多様な道筋と雇用の創出・・・北島守
第2章 フリーターの職業能力開発とマッチング・・・上西充子
第2部 労使関係と制度
第3章 日本企業の人事改革と仕事管理・・・石田光男
第4章 長期安定雇用における高年齢者・・・久本憲夫
第5章 パートタイム労働をどう考えるか・・・首藤若菜
第6章 サプライヤー企業の働き方と労使関係・・・願興寺ひろし
第7章 連合政策の展開の分析・・・鈴木玲
第3部 労働法
第8章 最低賃金制の現状と課題・・・吉村臨兵
第9章 労使関係の個別化と法・・寺井基博
それぞれに、興味深い論点がたくさんありますが、まずは送っていただいた上西先生のフリーター論。
「まとめ」の言葉を用いると、この論文は「フリーターの問題から学校教育のあり方や雇用・労働市場・社会政策のあり方などを問い直すという方法」をとっています。それは、「フリーター問題をフリーター問題としてのみ取り上げることが多くの論点を見逃すことにつながること、また、フリーター問題をフリーター問題としてのみ対処しようとすることが限定的な効果しか持ち得ないこと」からとられています。
最後のパラグラフは味わい深いので、そのまま引用しておきます。
>フリーターとは、第1節で見たように、従来の枠組みでは捉えられない存在であったがゆえに、「フリーター」という命名がされ、分析の対象となった。当初は、彼らの職業意識に着目するなど、彼ら個人の問題として捉えようとする傾向が社会的にあった。しかし、雇用情勢の悪化の中で大量のフリーターを生み出さざるを得ない高校の現状が明らかとなり、フリーターからの離脱が困難な年長フリーターの滞留が見られるようになり、また様々な対策が試みられる中で対策の難しさが明らかになるにつれて、フリーターの問題は従来の新規学卒就職という学校から職業への移行のあり方を問い直す問題につながり、また、正社員と非正社員が税制・社会保険制度や労働市場、職業能力開発の面で分断された状況にある現状を問い直す問題につながることが明らかになってきているのが今日の状況だといえよう。
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