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2009年11月29日 (日)

河合塾非常勤講師の労働者性

産経新聞に興味深い記事が載っています。標題は「「雇い止めは解雇権乱用」元講師が河合塾提訴」というもので、なんだかごく普通の有期労働契約の雇い止め問題みたいですが、そういう生やさしい話ではありません。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091129/trl0911290200000-n1.htm

>大手予備校の河合塾で数学の非常勤講師をしていた男性(53)が、契約を更新されず、“雇い止め”にあったのは解雇権の乱用にあたるとして、地位確認を求める訴訟を大阪地裁に起こしていたことが28日、分かった。非常勤が大半を占める予備校講師は、直接雇用でなく業務委託や請負とされる例が目立っており、行政が是正を指導したケースもある。原告側代理人は「判決次第では契約形態の見直しが業界に広がる可能性がある」と指摘している。

 訴状によると、男性は非常勤講師として約20年にわたり大阪校などで数学を担当。通常授業や講習、模試の作成に携わっていたが、同僚との交際を巡るトラブルから昨年5月に出勤停止処分を受け、翌6月に契約解除を通告された。

 男性側は、「河合塾は労働法の適用を免れるため建前上、請負などと称して雇用しており、偽装請負に当たる」と違法性を主張。毎年契約を更新してきたことから、常勤の専任講師と変わらない事実上の労働契約があったとしている。

これに対し河合塾は、答弁書などで「生徒数や受験傾向が変動する予備校事業は特殊であり、弾力的な契約が必要」と反論。各講師は指揮命令を受けず創意工夫で授業を行うため、請負契約は正当とし、「仮に雇い止めとしても、裁量が広く認められるべきで違法ではない」と主張している。

 男性は訴訟に先立ち労働審判を申し立て、大阪地裁は5月、河合塾に解決金100万円を支払うよう命じたが、復職が認められなかったため男性が不服を申し立て、訴訟に移行した。

 河合塾をめぐっては、福岡高裁が5月、福岡校の元非常勤講師による地位確認訴訟で、雇い止めは認めなかったものの、「強硬に契約解除を迫った態度は理不尽」として慰謝料350万円の支払いを命じた。これを受ける形で福岡中央労働基準監督署は11月、河合塾に雇用形態の是正を指導した。

 河合塾法務部によると、来年度に是正指導に沿った制度改正を行う予定だが、今回の訴訟については「講師として好ましくない行動を男性がとったことが争点で、契約の性質が論じられるべきではないと考えている」としている。

有期労働契約としての雇い止めの正当性の問題はとりあえずここでは置いておきます。「生徒数や受験傾向が変動する予備校事業は特殊であり、弾力的な契約が必要」というのは、それなりに理解できる言い分ですし、この事件における雇い止めの正当性を判断するだけの情報は必ずしもこの記事にはあるわけではありませんので。

それにしても、「各講師は指揮命令を受けず創意工夫で授業を行うため、請負契約は正当」という理屈はいかにもむちゃくちゃで、それなら常勤講師も雇用契約じゃなく請負契約なんでしょうか。それとも非常勤講師は指揮命令を受けずに創意工夫をするけれども、常勤講師は何の創意工夫もなく一挙手一投足すべて指揮命令を受けるというのですかね。

そもそもこんな理屈が通用するのなら、全国の教師はことごとく請負契約のはずですね。

牛丼屋のアルバイトを請負契約だと強弁する某牛丼チェーン店もありましたが、こういうのが横行する原因を考えると、最近本ブログ上で繰り返していることですが、「労働法は契約形式ではなく就労実態で判断する」という大原則が忘れられる傾向にあり、契約至上主義的傾向が妙に高まっていることがあるように思います。

先日の日本労働法学会において、わたくしが質問という形で発言した趣旨も、上記文脈とはやや違う文脈ではありますが、最近の労働法学の世界においていささか契約至上主義的傾向が強まっていることに対する疑義を呈したつもりです。

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