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2009年10月 6日 (火)

公務員の労働協約の法的性質

さて、仙谷大臣の所管は「行政刷新」のほかにも、規制改革や公務員制度改革などがありますが、その公務員制度改革の動きがどうなっているかを見ると、内閣におかれた国家公務員制度改革推進本部労使関係制度検討委員会の資料と議事録が

http://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/kentou/kaisai.html

ワーキンググループの資料と議事録が

http://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/kentou/working/index.html

に載っています。

ここでは、総選挙後の9月7日の委員会に提出されたワーキンググループの検討状況報告を見てみます。

http://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/kentou/dai12/siryou5.pdf(制度骨格に係る論点について)

いろいろな論点が上がっていますが、わたしが気になったのは、

5 協約の内容を勤務条件に反映させる仕組み

③ 協約の効果についての選択肢の整理

のところです。

>協約の効果としては、理論的には、次の三つの選択肢が考えられる。
A案:紳士協定
B案:債務的効力(実行義務)
C案:規範的効力(直接的効力)

>○ A案については、現行とあまり差異がないことから適当でない。

○ ①職員の勤務条件を非組合員も含めて統一的に定めることが適当との考え方に立つならば、協約の効果は非組合員には及ばないことから、協約の内容が適用される組合員と協約に反する規程が適用される非組合員とで勤務条件が統一的に定まらず問題があること、また、②公務員の任用は行政行為であるとの現行法に関する伝統的な考え方を採り、あるいはそれを維持すべきという立場に立つならば、民間労働法制のように労働協約が労働契約を通じて勤務条件を決定する構成とはならないことなどから、B案が適当であると考えられる。ただし、公務員の勤務関係について契約的要素を含むという立場あるいは契約的要素を導入することが可能であるとの立場に立つならば、C案の規範的効力の付与という選択肢もありうる。この場合、公務員の勤務条件の統一性という観点から、拡張適用などの仕組みを構想する必要がある(協約の拡張適用については12ページ参照。)。

○ いずれにしても、公務員における協約は、民間労働法制における労働協約とは法的性格が異なるところがあるものとして位置付けるべきであり、また、協約の内容を履行する義務の具体的内容と、義務に違反した場合の措置については、今後検討する必要がある。

この最後の「公務員における協約は、民間労働法制における労働協約とは法的性格が異なる」というのは、本当なのでしょうか。現に今でも国有林野事業では公務員が労働協約法制の下にありますし、かつては郵政職員はみな労働協約法制の下にある公務員であったわけですが(昔の「5現業」)、その「労働協約」は、公労法の規定による制限(国会の予算審議権との調整)を受ける点を別にすれば、そもそも「法的性格が異なる」ものとは位置づけられていなかったはずだと思います。

この点に疑問を呈さないまま議論が進んでしまうと、戦後日本の実定労働法体系に反する公務員改革になってしまいかけないように思われますが、誰も指摘しないのでしょうか。

このような仕組みを考えている理由としては、複数組合の場合に問題があるからだというのですが、

>A:「規程」は制定しない(協約そのものが直接適用され、勤務条件を決定する。)。
B:協約の内容を規程で定めることで、規程の適用によって勤務条件を決定する。

※ この場合の「規程」は、民間労働法制における就業規則に対応するものであって、使用者として定めるものを意味する。なお、規程の制定根拠や規定事項等については、法律に根拠を置く必要がある。

しかしながら、A案については、協約を締結した職員団体の構成員に限っては協約の規範的効力が及ぶとしても、次のとおり全体決定、統一性確保の観点から問題があり、協約の内容を「規程」で定めることで勤務条件を決定するB案によって、職員全体の勤務条件の統一性を確保することが適当と考えられる。

・ A案の場合、協約の拡張適用の仕組みを導入すれば、協約を締結していない職員団体の組合員(以下「他組合員」という。)や非組合員を含むすべての職員の勤務条件が協約の内容に基づき統一される可能性はあるが、協約の拡張適用が行われるための要件を必ずしも満たすとは限らない(民間労働法制においても、他組合員に対する拡張適用には否定的見解がある。)。
このことから、A案では全体決定、統一性確保という検討の前提条件を満たさない可能性が残る。

・ さらに、労使交渉の結果、協約の締結に至らない場合もあり得るため、いずれにしても、職員の勤務条件を協約以外の方法によって決定する仕組みを導入することが不可避である。

しかし、それは民間労使関係でもまさに同じことであって、規範的効力を有する協約とは別に就業規則に対応する「規程」を設ける必要があるということと、協約に規範的効力を否定することとは次元が違うと思われます。

おそらく、複数組合への対応云々という表面の理由の背後には、そもそも公務員は任用であって雇用契約ではないのだから、民間の労働協約と同じになるはずがないという根拠のない公法私法二分論が潜んでいるようにも感じられます。

戦後日本の実定労働法体系は、そのような発想で作られなかったし、現になおそうなっていないということを、改めて認識していただく必要がますます高まったいるのではないかと思います。

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コメント

いよいよ、この問題が現実味を帯びてきたような気がするのですが、どうなるのでしょうか。

現状、国家公務員労組の2つの大きな上部組織が、給与削減に対して、それぞれ異なるトーンで交渉に臨んでいるようです。

もちろん、今の交渉は、協約締結権が与えられないまま、アリバイ作りのような変則的な交渉ではありますが、近い将来、協約締結権の復活があれば、同様の事態になるのは目に見えています。

このままだと、少数派労組との協約が多数派労組や非組合員に適用されるどころか、各省庁において、職員が誰一人加入していない労組との協約が適用されるようなおかしな事態になりかねません。

現状、省庁単位で加盟している上部組織が異なるので、例えば、省庁a~cの労組の加盟する上部組織A、省庁d~fの労組の加盟する上部組織Bがあったとき、上部組織Aとの交渉が決裂し、上部組織Bとの交渉で協約締結に至った時、全省庁に当該協約が適用されるなら、省庁a~cの個別に見ると、組合員が一人もいない労組との協約が適用されることになります。

もっと極端にすれば、省庁a~eが上部組織Aに加盟し、省庁fのみが上部組織Bに加盟しているような場合、全体としてみても少数派労組の上部組織Bとの協約が全省庁に適用されることも有り得るのではないでしょうか。

各省庁を個別の企業に対応させた場合、他企業の労組によって協約が締結されるような事態であり、非常に違和感があるのですが。各省庁によって、状況や各種条件も異なる訳ですし。

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