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« 「ナマケモノになりたくて」さんの短評(予告) | トップページ | OECD『日本の大学改革』明石書店 »

2009年10月24日 (土)

湯浅誠風味のお金のつかない緊急雇用対策

昨日とりまとめられた「緊急雇用対策」が官邸HPにアップされています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinkyukoyou/koyou/honbun.pdf

一言で言うと、国家戦略会議に入った湯浅誠さんの意見が相当に入れられたとおぼしき記述がかなり見える一方、「調子にのりやがって。お金なんかつけてやらないぞ」という財務省方面の強固な意志が筋金に入っているという意味で、鳩山政権の性格をよく示している対策になっているようであります。

湯浅誠風味は次のような記述によく現れています。

>(2)「貧困・困窮者、新卒者への支援」を最優先する
-最優先課題として、最も困っている人を全力で支援する

・ 経済雇用情勢の悪化の影響は、経済的・社会的に弱い立場にある人々にしわ寄せされる形で最も大きく現れる。具体的には、貧困・困窮状態にある求職中の離職者や非正規労働者、女性であり、さらには来春以降厳しい求人情勢が見込まれる新卒予定の学生・生徒である。こうした求職中の貧困・困窮者や新卒者への支援は緊急を要しており、雇用維持努力への支援や中小企業支援とあわせて、最優先課題として全力で取り組む。

>(1)緊急支援アクションプラン
<貧困・困窮者支援>
(目標) 今年の年末年始に、求職中の貧困・困窮者が、再び「派遣村」を必要とすることなく、安心して生活が送れるようにする。

派遣村を再現させないことが目標だというのはまさに湯浅さんの言葉がそのまま政府文書に入ったという感じです。

で、その具体策なんですが、

(アクションプランの内容)
①平成21年後半(6月~12月)に雇用保険受給期間が切れる受 給者数(推計を含む)の把握

②利用者の視点に立った情報提供・広報の展開
・「緊急人材育成支援事業」、「住宅手当」等各種支援策の分かりやすい広報

③実効ある「ワンストップ・サービス」など支援態勢の強化
※ワンストップ・サービス ; 国、地方自治体等の関係機関の協力の下、利用者が、一つの窓口で必要な各種支援サービス (雇用・住居・生活支援)の相談・手続ができるようにする。

(ア)「ワンストップ・サービス・デイ」の開催
・11月下旬に東京、大阪、愛知等において試行実施した後、定期開催・年末年始の開催を検討

(イ)ハローワークの雇用支援機能の強化

(ウ)「求職者総合支援センター」とハローワークの連携

(エ)年末年始の生活総合相談

・年末年始の生活や居住場所の確保等の支援
・ハローワーク職員による出張相談等の検討

(オ)ハローワークにおける公的賃貸住宅情報の提供
・地方自治体等の協力を得て、離職者が利用可能な公的賃貸住宅情報を提供

④「きめ細かな支援策」の展開

(ア)「緊急人材育成支援事業」の訓練メニュー・実施者の新規開拓
・教育訓練機関に加え、地域の企業、社会福祉法人、NPO等の参加により、情報処理技術、介護・福祉・医療等の分野を中心に年内に約5万人分の確保
・地域のニーズに応じた訓練コースの設定

(イ) 「住まい対策」など派遣契約の中途解除等に伴い住居を失った貧困・困窮者支援施策の強化
・「住宅手当」「つなぎ特別融資」「総合支援貸付」の適正な運用の徹底
・住宅の確保
・「就職安定資金融資」「住宅手当」の円滑な実施のための宅地建物取引業者による民間賃貸住宅のあっせん、地域住宅交付金を活用した民間賃貸住宅への家賃助成等の取組の推進

(ウ)関連施策の展開
・住宅ローンの借入者に対する金融の円滑化を通じた生活の安定化を図るための施策の策定・推進(臨時国会に法案提出)
・社宅や寮に入居している派遣労働者について、離職後も引き続き一定期間の入居が可能となるよう、企業に対して要請
・日本司法支援センターにおける民事法律扶助事業の利用の促進
・ハローワークの協力を得て開設する相談窓口における地域自殺対策緊急強化基金等を活用した求職者等に対する心の健康相談、生活支援相談等の実施

(エ)生活保護制度の運用改善

⑤その他、求職者の貧困・困窮者が安心して生活が送れるようするために必要な施策を引き続き検討

既存の予算の範囲内で動け、という財務省の強烈な意志がよく伝わってくるような、なかなかしぶちんな緊急雇用対策です。いやもちろん、ここに挙げられたような施策は重要ですが。

年末年始に向けて、ハローワーク関係者のみなさんは地方自治体としっかり連携しておく必要がありますよ。本省の指示を待ってるんじゃなく、今から積極的に働きかけておかないと、いざとなって慌てることになりますからね。ワンストップサービスですからね。

お金がどれだけ付いてくるかは、最後の「その他、求職者の貧困・困窮者が安心して生活が送れるようするために必要な施策を引き続き検討」という一節をめぐってこれから綱引きになるわけですが、まあ政治主導の手腕が問われるところでしょう。

もひとつの柱が新卒者支援で、こっちもキャッチフレーズは「第二の「ロスト・ジェネレーション」をつくらない」。

<新卒者支援>
(目標) 来春以降の新卒者の就職を支援し、第二の「ロスト・ジェネレーション」をつくらないようにする。

(アクションプランの内容)
①新卒者の就職支援態勢の強化
(ア)「高卒・大卒就職ジョブサポーター」の緊急配備
・支援態勢強化のため、就職支援の専門職をハローワークに緊急配備

(イ)大学等の就職支援の充実
・就職相談窓口の充実(キャリアカウンセラーの配置など)、女子学生等を対象にした「ライフプランニング支援」の推進、大学における職業指導(キャリアガイダンス)の制度化

②求人開拓と「雇用ミスマッチ」の解消
-「就活支援キャンペーン(仮称)」の展開-
(ア)求人・求職、内定関連情報の収集・提供
(イ)学生を対象とした合同就職説明会等の実施
(ウ)企業に対する求人拡大への要請
(エ)採用意欲のある中小企業等の掘り起こし
・「雇用創出企業」をとりまとめ、公表(年明け予定)

③「4月就職以外の道」の選択の支援
(ア)企業に対する中途採用・通年採用の拡大への要請
(イ)学生・生徒の学校での学び直しや地域活動参加への支援
新卒無業者への第2セーフティネットの活用

(アクションプランの進め方)
①国の取組
・国に設置した「緊急支援アクションチーム(後述)」が、アクションプランの具体的展開、地域における取組の円滑な実施に向けた関係機関等の調整を行う。

②地域における取組
・関係地方自治体・関係団体の協力を得て、地域の学校・ハローワーク・産業界が一体となって具体的な取組を推進する。

第2のロストジェネレーションを作るか作らないかは究極的には労働需要側の問題なんですが、まあとりあえず既存の諸施策を総動員してやるほかはないわけです。

このあと連合が強硬に主張して盛り込まれた雇用調整助成金の要件緩和とか、いろいろ書かれていますが、本緊急雇用対策の性格をよく表しているもう一つの軸が「緊急雇用創造プログラム」というものです。

.「緊急雇用創造プログラム」の推進

(1)3つの重点分野におけるプログラムの推進
―成長分野における雇用促進のため、「働きながら職業能力を高める」雇用プログラムの推進等に取り組む

<介護雇用創造>
①「働きながら資格をとる」介護雇用プログラム
・求人ニーズが高い介護分野で、働きながら資格取得(介護福祉士、ホームヘルパー2級)ができるよう支援するプログラムを創設
・資格取得のための研修費用の手当及び1年又は2年の実践的な雇用経験の付与等を可能にするため、「緊急雇用創出事業」の要件を緩和
・実習免除等の働きながら資格を取ることを容易にするための措置の導入等
・地方自治体に対して、①重点事業としての事業採択と事業の前倒し執行、②介護サービス施設、事業者への積極的な周知を要請

②介護人材確保施策の推進
・全国地域包括ケア推進会議の設置、介護職員処遇改善交付金の周知を通じた介護職員の処遇改善
・「福祉人材コーナー」をはじめとして全国のハローワークで介護分野の求人開拓を重点実施、助成金や職業訓練を活用した介護分野の人材確保・定着

③介護サービス整備の加速化等
・「介護基盤の緊急整備特別対策事業」による介護基盤整備の推進
・大都市部の自治体の意向を踏まえた認知症対応型グループホームのユニット数の拡大による整備の促進(2ユニットから3ユニットへ)

<グリーン(農林、環境・エネルギー、観光)雇用創造>
①「働きながら職業能力を高める」グリーン雇用プログラム
(農林水産分野)
・農林水産分野での雇用創出・就業促進の積極的展開、農山漁村の6次産業化―直売所の設置や地域ブランドの立上げ等の取組、農商工連携の担い手たる人材育成のための研修強化(「緊急雇用創出事業」、「ふるさと雇用再生特別基金事業」、「緊急人材育成支援事業」等の活用)
(環境・エネルギー分野)
・住宅用太陽光発電システム施工の無料講習会の拡充による施工人材の育成及び施工ガイドラインの策定
・企業等における省エネ・CO2排出削減を担う人材の育成
・グリーンワーカー事業の対象拡大(生態系保全や外来種対策を事業対象に追加する等)
(観光分野)
・観光産業の人材ニーズの情報提供
・観光人材の育成(「緊急人材育成支援事業」の活用による教育訓練の実施)
・外客誘致促進等の観光立国の実現に向けた施策展開の加速化

②森林・林業再生の推進
(ア)緊急的な取組みー「森林整備加速化・林業再生事業」の運用改善等
・「森林整備加速化・林業再生事業」の運用改善(人材養成の重視、施業の集約化の推進等)
・集約化施業・路網整備の推進に向けた森林情報の整備・人材育成等や公共建築物等における木材利用の拡大の推進、地域材の地産地消等による地域における雇用創出(「緊急雇用創出事業」、「ふるさと雇用再生特別基金事業」、「緊急人材育成支援事業」の活用) 等

(イ)「森林・林業再生プラン(仮称)」の作成―森林・林業再生に向けた政策の構築
森林・林業の再生に向けた中長期的な政策の方向を明示し、森林・林業を基軸とした雇用の拡大を図るため、「森林・林業再生プラン(仮称)」を、年内を目途に作成し、関連施策を推進する。
関連施策の推進
・建設企業の成長分野展開支援
・住宅リフォーム市場の活性化、木造住宅の振興
・地域のICT利活用促進

<地域社会雇用創造>
○雇用支援分野での「社会的企業」の活用
・新たな雇用の場として、NPOや社会起業家などが参加する「社会的企業」主導の「地域社会雇用創造」を推進する。特に、若者など困難に直面する人々を雇用に結びつける雇用支援分野での活用を目指す(「緊急人材育成支援事業」、「ふるさと雇用再生特別基金事業」及び「緊急雇用創出事業」の活用)。
※社会的企業 ; 社会的課題の解決を目的とした収益事業に取り組むもの。雇用支援分野ではイタリアの社会的協同組合B型やイギリスのグラウンドワークなどがある。
・NPO法人等の社会的企業が保育所との連携の下に行う家庭的保育事業の試行的実施(離職者等を雇用して家庭的保育者研修を実施した上で利用者との契約により自宅で乳幼児を保育、安心こども基金を活用して実施)

いっぱい美しい文字が並んでいる割に、そこで働く人々にどれだけお金が行くのかよく分からないという進歩派と財務省の連立政権という性格をよく示す政策文書ですね。

この点については自治労の黒川滋さんの批評が的確。

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2009/10/1021-7642.html(結局政治家の考える雇用対策なんて)

最後の「対策の推進体制」のところが、またもや連合の強い主張による政労使三者構成原則を繰り返し強調しています。

(1)対策の推進体制
○緊急雇用対策の推進にあたっては、労働界・産業界をはじめとする国民各層との対話を積極的に進めるとともに、地域において関係者が一体となって取り組めるよう十分配慮する。

①「雇用戦略対話(仮称)」の設置
○「緊急雇用対策」を推進する観点から、雇用戦略に関する重要事項について、内閣総理大臣の主導の下で、労働界・産業界をはじめ各界のリーダーや有識者が参加し、意見交換と合意形成を図ることを目的として設置する。

②「地域雇用戦略会議(仮称)」の設置
○地域における緊急雇用対策の推進母体として、関係自治体、関係機関、労働界、産業界、教育界、NPOなどが参加して設置する(当面、意欲のある地域で先行して設置)。

ここのところは、まさにわたくしも繰り返し強調してきたところですから、大いに賛同したいのですが、問題は経営側の意識です。

今や政府全体で「役人の隠れ蓑」の審議会がほぼことごとく心肺停止状態に陥っている中で、三者構成の労働政策審議会のみが政策決定機構として脈々と動いているわけですが、そこのところの意義、重要性を、経営側諸氏におかれてはしかと認識され、的確なる対応に努めていただきたいと切望するところです。

要するに、あんたらが政策決定機構から排除されていないのは連合がかけずりまわって三者構成原則の重要性を説いてくれたからなんだぞ、ってことですが。

漏れ聞くところによると、この期に及んで、労組の組織率が2割にもならないのに労働者の代表といえるのか云々と審議会の席上のたもうた方がおられるそうですが、ご自分のお立場がどこまでおわかりになっておられるのか、いささか懸念されるところです。

こういうことを言っちゃうから「連合のイデオローグ(謎)」とか言われるんだなあ。

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コメント

知識時代の本物の雇用対策が必要です。
北欧諸国の失業率が低く、日本の失業率が高い原因は、教育の質にあります。
失業、貧困の原因は、これまでのデタラメな教育政策です。
受験競争で時代遅れの知識を詰め込ませ、世界最低となった大学に進学させ、外国語もIT能力も金融や法知識もない若者を育てれば、貧窮し自殺者が出るのは当然です。
各地の母親グループやPTAが「『おバカ教育』の構造」(阿吽正望 日新報道)を読む活動を始めたのは、教育の危険に気付いたからです。
すべての子供が、不登校、引きこもり、ニートとなり、犯罪や暴力に巻き込まれる危険があります。すべての親にとって、子供が低所得者となり、結婚できず、ホームレス、ネットカフェ難民になることが、現実の問題となり始めています。
そのため、子供を守り、家庭を守り、生活を守るために、教育システムを根本改革しなければならないと気付いたのです。
教育の改革を求める親や若者の行動は、全国に拡大していきます。
なぜなら、質の高い教育を受けることが、生存に必要不可欠な時代となったからです。必要が、発明も革命も生み出します。

>失業、貧困の原因は、これまでのデタラメな教育政策です。
申し訳ありません。学校含めた教育サイド”だけ”の問題で人が愚かになるのでしょうか?
私は接客してた手前親子連れと思しき人達も多数見ましたが、その感想を正直に言わせてもらうと「子供に関心を持たない親」もかなりいるように感じられます。
また、この子供にしてこの親といった方も結構見かけました。その辺は価値観の相違と言えばそれまでですし、あえてここで触れる話題ではありませんの割愛しますが、いわゆる「モンスターペアレント」なる方はかなりいるように思います。
要は子供の教育を決定付ける要素は、多岐に渡り一部を取り上げそれが元凶のように思い込むと、飛んだミスリードになりますよって事です。
最近漠然と官は民にも劣る愚かな存在で、民間こそが正義と言い放つ方やら、家庭間の犯罪を産んだのは経営サイドが悪いだのの漠然とした発言が横行しがちですが、精神的・物質的双方の貧困を味わった人間としては、他者の不幸をネタに正義というキレ芸を披露したがる風潮を大いに軽蔑します。
本気で問題を捉えそれを解決するなら、やはり何かしらの”真摯さ”や“礼儀”はあるべきです。もちろん貧困なり雇用難などに興味を持ってくれるのは大いにウェルカムなのですが、気が付けば当事者不在のネタ披露のような放言のようなモノになるのはやはり正直気分が良くない事は正直に告白する次第です。

本エントリに付けられていた「読者」と称する人とわたくしとのやりとりは、本エントリの主題とは全く関係のないものであるため、下記エントリのコメント欄に移しました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/3_a7ad.html?cid=59790361#comments

教えてくれる人があってやってまいりました。神林先生のリクエストにもさっそくこたえられているようですね。
さて一言だけ申し上げます。経営サイドも三者構成の重要性は十分に認識しておりますし、それに沿った行動を取っているかと存じます。使側から「労組の組織率が2割にもならないのに労働者の代表といえるのか云々」との発言が平場であったとのご指摘ですが、おそらくは派遣労働の本音と建前をめぐるそれなりの背景・文脈のもとでの発言かと思料します(依然として表現として適切でないことはたしかですが)。経営サイドはむしろ、三者構成における労組の代表性については労組を擁護する姿勢をとっており、これはたとえば規制改革会議の労働タスクフォース第3回の議事概要http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/wg/2007/0508/summary0508.pdfの紀陸孝経団連専務理事(当時)の発言などを参照いただければよろしいかと存じます(これはhamachan先生も以前ここで取り上げておられたと記憶します)。
なお、「賃金事情」11月5日号に、使側からみた三者構成の重要性に関する解説記事を書きました。概ね、使側のコンセンサスに沿った内容になっているかと思います。まだ発売されていませんし、ブログでの紹介はさらに先になると思いますが、いずれご笑覧いただければ幸甚です。

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