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2009年10月 8日 (木)

『世界』11月号

797 本日発売の岩波の雑誌『世界』に、先日予告したように宇野裕さんの「残された途は「福祉立国」しかない――成熟社会の成長戦略―― 」が掲載されています。

http://www.iwanami.co.jp/sekai/2009/11/directory.html

特集は「「対等な日米関係」とは何か――核密約と日米関係」で、いろいろと面白そうな記事も載っていますが、本ブログとしては「新政権への提言」として載っている宇野論文に注目してほしいところです。

>民主党はマニフェストに「内需主導型経済への転換」を掲げた。今後は環境関連など成長産業を育てていくことが欠かせない。「生産誘発・雇用創出効果は公共事業よりも高い」といわれる福祉はとりわけその有力な分野である。しかし、わが国では介護・医療を成長産業としてとらえる発想は乏しかった。「モノづくりに比べて生産性が低い」「医療・介護は付加価値を生まない」といったこれまで見られた誤解を解きほぐしながら、「福祉立国」への転換の必要性を説く。

宇野さんは、

うの・ひろし 1953年生まれ。東京大学法学部卒業。厚生省 (現・厚生労働省) 入省。現在は、日本社会事業大学専務理事。著書に『職業としての福祉』(中央法規出版)、『介護の経済学』(共著、東洋経済新報社) など。

わたしは旧厚生系の人と旧労働系の人が勉強し合う集まりで彼の議論を何回も聞かされてきたのですが、こうして一般向けの雑誌に載ることで、より広い人々にその議論が伝わっていくことが期待されます。

最後のところで、こう述べています。

>「福祉立国」は、日本経済のバランスある発展を保障する。第一に、国民は国内に住んでいるから、国民を中心に据える限り、内需主導の経済を構築することができる。第二に、福祉が提供する各種サービスは、利用者が居住している地域でしか提供できない。従って、雇用、所得、付加価値が、それぞれの地域で生まれ、地域経済の均等ある発展に貢献する。医療・介護は人間の知恵と実践に基づく知的産業であり、環境負荷が小さい成長産業としても最有力である。

>「福祉立国」とは、国の存在理由の原点に立ち返り、国民を中心に据える経済社会を建設しようとするものである。どんな時代にあっても、国民は、よりよく生きようとすることを止めることはないであろう。したがって、国民の願いを見極め、国民の望むものを提供する産業を持った社会こそが確実に成長できる社会なのである。

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