大内伸哉先生の簡評
大内伸哉先生の「アモーレと労働法」で、拙著が経済産業研究所の『労働市場制度改革』と山田久さんの『雇用再生』と並んで簡評されています。
http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-bf00.html(読書ノート(労働編))
これは、大内先生の労働法ゼミにおける夏休みの課題図書だったようです。学生さんたちがどういう感想を述べたのか、大変興味がありますが、とりあえず大内先生の簡評は以下の通りです。
>濱口さんの御著書は,何か新たな発見があったというわけではありませんが,新書でもあり,わかりやすい啓蒙書としての価値は大きいと思いました。
山田久さんへの短評は辛口で、
>山田さんの御著書は,読み物としては面白いのですが,個々の論点のツッコミがいま一つかという印象を受けました(辛口でゴメンなさい)。私が,どうしても気になるのは,同一労働同一賃金の原則です。山田さんは,これを普及すべきと主張されているのですが,結局,これは,日本を欧米のような職務給型の賃金体系にしろという主張と同じになっているように思えます。どうして,日本の賃金システムを変えなければならないのでしょうか。そこまでして,均衡を実現する必要があるのでしょうか。このあたりが,私にとって引っかかるところです。
ある意味ではその通りなのですが、ここは、以前大内先生を某所でお呼びしてお話を伺ったときに申し上げたことですが、だから均衡なんて無意味なものを実現する必要なんかないんだ、といってしまうとこれまたまずいんですよ。それは、この問題が狭い意味での労働の世界のロジックだけでは話が完結せずに、生活保障とか社会政策という話と全部つながってくるからで、労働法の世界の中だけできれいな議論を作ってすむ話でもないからだと思うのです。「法的根拠がはっきりしないし,日本への導入可能性にリアリティがない」というのは労働法的には確かにその通りなのですが、ここはいろんな領域に目配りしながら進めないといけない。狭い労働法の世界だけで論理を完結させて、それをはみ出す生活保障はえいやっとベーシックインカムみたいなものに投げ出してしまうと、それが跳ね返ってきて労働法の世界の根拠を揺るがすのです。
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