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消防職員に団結権付与

これは、その筋の玄人には大変大きなニュースなんですが、新聞ではベタ記事でした。

しかも、ネット上に記事を載せているのは産経だけ。朝日も読売も関心があんまりないようです。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091029/stt0910291908008-n1.htm

>原口一博総務相が労働三権(団結権、団体交渉権、スト権)が認められていない消防職員に対し、団結権を付与する方針を固めたことが29日、分かった。原口氏が28日、自治労の徳永秀昭委員長ら労組幹部と行った会談で明らかにした。

 会談では、自治労側が「消防職員の団結権問題を解決してほしい」と要請。これに対し、原口氏は「団結権のあり方は国民の理解の下、前へ進めていく」と述べ、付与の方向で検討を指示したことを明かした。

 総務省では今後、省内に検討会を設置して、消防職員の団結権のあり方を検討する。消防職員は、警察官や刑務所職員と同様に労働基本権が制限されているが、民主党は衆院選のマニフェスト(政権公約)で公務員の労働基本権の回復を掲げている。

労働基本権問題はいろいろな問題が交錯して難しいのですが、実は消防職員問題は理屈自体は全然難しくありません。

ILO条約では、団結権を禁止できるのは軍隊と警察だけだと明記されていて、それ以外の公務員については、団結権以外は制限できるけれども、団結権、つまり自分たちの労働組合を結成する(だけの)権利は制限できないということになっています。

交渉もできないのに組合作ってどうするんだという話はまさにいまの非現業公務員がそうなわけですが、交渉はできないけれどもお願いはできるということで、実質的にはお願いという名の交渉に近いものになっていたりすることもあって、そこが現在の公務員制度改革の一つの論点のもとなわけですが、それはともかく、

ILO条約では軍隊と警察だけに禁止できるはずの団結権を、日本の公務員法では、消防職員についても禁止しているのは何なんだ、というところから、過去数十年にわたって、ILOから繰り返し指摘され続けたという故事来歴があるのです。

日本政府がずっと言い続けている言い訳は、日本の消防組織は警察と同じだから、警察と同じように団結権を禁止して居るんだというものですが、いうまでもなく、消防庁は旧自治省、現総務省の外局であって、警察庁の外局ではありませんし、警察の指揮命令下にあるわけでもありません。

実のところ、消防職員に団結権を認めてこなかった最大の理由は、消防団との関係で、消防団の大親分の故笹川良一氏が、俺たち消防団がボランティアで一生懸命やっているのに、給料もらっている消防職員が労働組合作るとは何事だ!と怒ったから、という説を聞いたことがありますが、真偽のほどは定かではありません。

まあ、そういうわけで、国際的には到底通用しないようなへりくつで、消防職員の団結権を禁止したままいまに至ったわけですが、なぜか一般の公務員労働法制にはかなり抜本的な提案(労働協約締結権の付与)をした公務員制度改革でも、それより遥かにわかりやすく明快なはずの消防職員の団結権問題についてはふにゃふにゃとわけのわからないことしかいわなかったことは、本ブログでも紹介したとおりです。

その問題に、あっさりと結論の方向を示してしまったのですから、こういう面における政治主導は確かに歓迎すべきかも知れません。

(参照条文)

地方公務員法

第52条 

  警察職員及び消防職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、地方公共団体の当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならない。

ILO結社の自由と団結権条約

Article 9

1. The extent to which the guarantees provided for in this Convention shall apply to the armed forces and the police shall be determined by national laws or regulations.

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コメント

大昔(戦前~戦中)は消防と警察はどちらも内務省だったから という理由ではないでしょうか?

投稿: フロア・ガリ | 2009年11月 2日 (月) 23時09分

故新井裕元警察庁長官の回顧録によれば、

(1) GHQ労働課の「公務員に労働組合を作らせて団体交渉権を与えるべき」との意向を受けて労働省から内務省に相談があった。
(2) 内務省はGHQ公安課に対し、ニューヨーク市警が第1次大戦後にストライキで機能不全に陥った例を引きつつ、警察職員に団結権を認めることの問題点を説明した。
(3) GHQ公安課は同労働課に対し、警察職員を除外するよう申し入れた。
(4) なぜか、警察職員だけでなく消防職員も除外する案となった。

とのことです。消防職員も併せて理由は明らかではありません。

なお、消防は古くから内務省警保局の隷下にありました。昭和23年の消防組織法(及び旧警察法)施行時に国家公安委員会の下に国家消防庁として半独立し、昭和35年の自治省設置時に同省外局の消防庁に改組されて警察からの完全独立を果たしています。

投稿: 中の人 | 2009年11月 3日 (火) 17時26分

アルゼンチンで警察官がストライキして大変みたいですね。
ブラジルも去年警察官のストライキがあったようで、あのあたりはそういう国が多いのでしょうか。

投稿: 銀 | 2013年12月10日 (火) 21時56分

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