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2009年10月22日 (木)

真正リバタリアン氏の拙著書評つづき

昨日は連合北海道主催の講演会(「非正規労働と産業民主主義」という題で)のため札幌に飛び、一泊して今日は羽田から大手町に直行して日本経団連に向かい、労働法制委員会企画部会の皆様の前でEUの有期労働法制と日本の話をしてきました。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20090925日記

>ほほぉ。これはなんとか都合をつけて行かねばなりますまい。

というわけで、居並ぶ有名企業の人事担当者の中にひときわ巨大な労務屋さんの姿が・・・。

質疑の時間になって、座長から労務屋さんに水を向けられ、おもむろに労務屋さんが述べられた中身については、そのうち「吐息の日々」で語られるかも知れません。

閑話休題。その間に、真正リバタリアン氏が拙著を読み終えて、新たなエントリを書かれていました。

http://libertarian.seesaa.net/article/130869374.html(Contract,Membership,Private property)

まずやや些細なことですが、真正リバタリアン氏の勘違いについて。

拙著の序章をお読みいただければ判るように、日本の民法(明治時代に作られた)は西欧風の考え方でできていますから、雇用契約をメンバーシップなどとは全く捉えていません。

法制上は今でも、日本の労働者はたとえ正社員と世間的に呼ばれていても、会社のメンバーではありません。会社のメンバー(社員)は会社への出資者のみであり、株式会社であれば株主のみです。

ところがその法制上はメンバーでない「正社員」という名の労働者が社会慣習法上は会社のメンバーになっているというのが話の出発点で、拙著ではそういうしちめんどくさい話は省略していますが、岩波から出る『自由への問い』での拙論ではそのあたりについても論じています。

ですから、

>このような日本の雇用契約は、法律的に民法623条で定義されていて、単なる慣行ではない。

というのは単純に勘違いだと思います。日本の民法の規定ぶりは西欧諸国とほぼ同じで、(個々の具体的な)労務提供と(それに対応する)報酬支払いの交換契約という以上の意味は含まれていません。

より実質的なのはプロパティ・ライトに関する議論でしょう。ここは本当はもっときっちりと議論した方がいいのですが、とりあえずごく簡単に言うと、私はジョブ型契約もメンバーシップ型契約も、どちらもプロパティ・ライトのあり得る類型の一つと捉えることができると思っています。

ジョブ型の場合、特定の職種の特定の技能が社会的に承認された資格という形でプロパティ・ライトとなり、それがたまたまある会社との雇用契約によって現実化されて一定の報酬に帰結するわけですが、労働者が保有しているプロパティ・ライトはあくまでも彼の職種技能であるわけです。

それに対してメンバーシップ型の場合、ある会社の「社員権」としてプロパティ・ライトが存在し、それがたまたまある職務に従事することで現実化されて一定の報酬に帰結するわけです。

どちらも社会的に構成された観念的財産権としてのプロパティ・ライトであるという意味では同じレベルのものであると思います。この辺をより社会学風に社会的構築理論とかなんとかと論じることもできるはずですが、昨日からの疲れがまだ残っていることもあり、ここら辺で。

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