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労働法は契約ではなく実態で判断するのが原則

小さなNPO法人をやっている「lessorの日記」さんのところに、気になる記事があったので、

http://d.hatena.ne.jp/lessor/20091027/1256665695([障害者支援]これって何かおかしくない? )

>>■生産ライン請け負いで成果

 一方で、福祉ベンチャーパートナーズ代表取締役の大塚由紀子さんは「売り上げを伸ばしても工賃の上げ幅は小幅にとどまるが、工賃を一気に増やす方法がある」という。

 作業所では物作りを行い、できた品々を外で販売するケースが主流だが、そうではなく、作業所の外に出ることだという。高収益を出している企業はあり、生産ラインを丸ごと請け負えば時給を数百円アップできるという。

 三重県伊賀市の作業所「びいはいぶ」では、地元の美容室向けにヘアケア用品を作るメーカーの製造ラインの一部を請け負っている。作業はシール張りや検品などだ。

 施設長の奥西利江さんによると、交通費込みで時給500円。毎日6時間働き、月給は6万円に上る。収入が増えたことでグループホームに入り、自立できた利用者もいるという。

 奥西さんは「企業が負担する人件費も低くなり、障害者の給与も増え、双方にメリットがあった。こうしたやり方が全国に広がれば障害者の自立につながるはずだ」と話している。

>この場合、最低賃金とかって、どうなるのか。どなたか教えてほしい(自分がこのあたりの事情を正確に理解していない可能性は十分にある)。作業所との請負契約で個々人と雇用契約を結んでいるわけでないから、その作業所から「利用者」にどう払われるのかは別に関係なし、ってこと? そうすると、これからあちこちの企業があちこちの通所施設に「請負でぜひ」ってもちかけて、最低賃金以下でも働かせられるからラッキーって話になるの?(むろん既にほとんどの作業所で下請け等の仕事をして最低賃金なんて払えてないという例ばっかりなんだから同じことじゃないかっていう意見はあるだろうけれども、この場合は「生産ライン」って言っているのだから、最低賃金を守られた「健常者」と同じ工場内での就労だったりするんだろう?)

 労働の問題については素人に近い者の印象としては、安い人件費を求めて発展途上国に工場移転していくのと、全く同じ構図なんじゃないのだろうか。その様々な功罪を含めて。いや生産性の違いはあるから、同じではないか。なんだかイヤな感じ。あああ。

いや、最低賃金がどうこうという以前の問題として、工場の生産ラインを丸ごと請け負っていながら、「雇用」じゃない「請負」だなんて馬鹿げたいいわけができると思っている人々の存在が空恐ろしい。

これはマスコミもそうなんだけど、世間で言う「偽装請負」とは働いている人はれっきとした労働者であって、単に事業者間の契約が「派遣」か「請負」かというだけの話(それゆえ働いている人に労働法が適用されることは当然)なのですが、それとは全く別次元の、働いている人の契約自体を「雇用」じゃなく「請負」と偽装するのは、労働法の適用を丸ごと排除してしまうので大きな問題なのです。

こういう「偽装請負」が、マスコミの糾弾を受けることもなく横行しているとしたら、その方が百万倍大問題なんですがね。

とにかく、労働法は契約形式ではなく、就労の実態で判断するというのが大前提であり、「請負だもん!」といえば、労働法はひとりでにあっちに逃げてくれるというものではないということを、障害者福祉に携わる人々も含めて、世間の人々がもう少しよく認識していただきたいところです。

最低賃金について言えば、最低賃金法に障害者についての特例措置が規定されているので、対応の手段はあるのですよ。

(追記)

あまりにもふざけたはてぶがあったので、一言鉄槌を下しておきます。

apj_yamagata , この場合は、そもそも「事業者」と「働いている人」が別物なんであって。事業主として働いている場合と、話をごっちゃにするなよ 2009/10/28

だから、この工場の生産ラインで働いている障害者たちが、労働者として扱われているのかどうかが問題なんだろうが、この馬鹿者が。それとも、ラインに並んでいる障害者たちがみんな一人一人事業主かね?

人にいちゃもんつけるのを唯一の趣味にして生きることまで文句を言うつもりはないが、愚劣なだけのはてぶは、じぶんの愚かさを世間に公言しているだけだから、もう少し物事を考えてから書いた方がいいよ。

(再追記)

障害者雇用就労問題の悩ましさがこれっぽちでも判っている人なら絶対にやらかさないような愚かな台詞をえんえんとはてぶで繰り広げているようですが、

apj_yamagata 1:障害者のAさんは、「業務を請け負っている事業者Bさん」に雇われて働いています。事業主Bさんは「請負がなんちゃらかんちゃら」と何だか意味不明なことを言っていますwww。 (続く) 2009/10/28

本件で障害者たちは雇われていない(ということに法形式上なっている)から問題なんだということが判らないんだねえ。

障害者の小規模作業所というのは、雇用関係ではないという形で個々の障害者との労務供給関係を説明している。それは、小さな共同体内部の事実上の共同作業であるがゆえに、障害者の就労場所の拡大という政策的意図もあって認めてきているわけだが、同じ工場の中のこっちのラインが雇用労働者であって、あっちのラインが障害者であるがゆえに全く同じ作業を同じようにしていながら雇用関係ではない(ゆえに労働法が一切適用されない)という事態になることが認められるかという問題なのだよ。上の引用した文章を良く読み給え。問題をまったく理解しないまま自分の貧弱な認識だけであれこれコメントしたがる神経が一番いけない。

いちゃもんをつけたがるのは判るし、付けるのは好きにすればいいが、問題の本質を100%まったく理解していないくせに、わかったような捨て台詞を付け続けるのは、まっとうな読者諸氏にとっても不愉快極まるから、せめて池田信夫関連のエントリに立場の違いからなるほどと言ってくれる人もいるようなぶくまをつけるようにした方が身のためだよ。

といっても、言うことを聞く御仁ではないだろうがね、「ふま」さんよ。稲葉先生が遥か以前に一喝した気持ちが分からないでもないな。

(再々追記)

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shinichiroinaba ふまうぜえ 2009/10/28

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shinichiroinaba ふまでしょこいつ 2009/10/28

御意。

このわたくしへの粘着ぶりは、池田信夫いのちの「由紀」氏と双璧ですな。

どうもそのむかし、稲葉先生が「ふま」に毅然とした態度を取られたときに、わたくしが曖昧な姿勢に終始したことが、今日のこの醜悪きわまる事態を招いているようであります。ぶった切るべき時には有無を言わさずぶった切るという姿勢が必要であることを今更ながらに学んでおりますよ。

(さらに追記)

ついにhamachan先生が言及してしまったか。頭が可哀相な子に。しかしまあ、私も最近目に余るからignoreリストに入れた子だからのう…。まあ有名なブログ主って大変だなあと

御意。

いや、ホント大変です。

(まっとうな追記)

引用元のlessorさんに本エントリについて追記され、またいつも本ブログで言及することの多い黒川滋さんに本エントリが取り上げられました。

http://d.hatena.ne.jp/lessor/20091027/1256665695

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2009/10/1028-e679.html

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コメント

いや、すごいですね。
マスコミがその点をつっこまないのは
マスコミ自体の請負がそのような勘違いスタイルを
知っているのに「知らない」ふりして
やってるからではないでしょうか・・・・。

以前大手テレビ局の法務部の方から相談うけましたが
法すり抜けようという悪意に満ちた請負と派遣の組み合わさったシステム構築してましたし。

番組制作のTOPは派遣。なのにその下に就く部下は請負。
これって・・・どうなんでしょう。

投稿: ゆげゆげ | 2009年10月28日 (水) 21時50分

障害者の労働者性の問題については別の観点から、ぼくは問題を感じています。

それは、授産施設であれ、作業所であれ、そこで労働が行われているのは間違いないということです。
生産性が高いか低いかは、問題ではないはずです。彼や彼女は間違いなく労働しています。(余暇活動の場合もあるでしょうが、多くはそうではないはず)

であるにもかかわらず、そこでの労働が労働として認められず、労災補償も労働者の団結権も認められていない現状こそ改められるべきだと思うのです。

以下のURL
http://tu-ta.at.webry.info/200810/article_11.html
で、その労働者性の問題に少し触れています。

引用ばかりで、わかりにくいと思いますが、ぼくが考えているのは単純な話です。結語部分だけ引用させてもらいます。

==以下、引用=
「神戸市内の知的障害者作業所が、最低賃金法と労働基準法に違反しているとして、神戸東労働基準監督署は18日、運営する社会福祉法人「神戸育成会」(本部・神戸市長田区)に改善指導した」、という件にも関連し、作業所やいわゆる授産施設(現在は継続就労B型)で「利用者」として働く障害者には労働者性がないということを明確にするために出された厚生労働省からの通達だ。

まず、話が逆転しているのだとぼくは思う。

作業所であれ、B型であれ、働いているのに、労働者として認められず、労働者としての権利が保障されないことが大きな問題なのだ。

そこでは失業保険も労働災害補償も基本的にはない。労働者の団結権も団体交渉権もない。

彼女や彼を労働者として認てしまえば、このように逆転した話は起こらない。

そう、彼らの労働で作業所が生活するに足る賃金を払えないとすれば、その不足分を公的に保障すればいい。そこで、生活できる賃金が支給されるのであれば、年金制度のほうを見直すことも可能なのではないか。

そのことで解消できる問題は少なくない思う

働いているのだから、労働者として認めること!
そこから始めるべきだという主張はぼくにはあたりまえのことだと思われる。
===


投稿: tu-ta | 2009年11月 3日 (火) 15時26分

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