『休暇』から『休活』へ
日本生産性本部が、「『休暇』から『休活』へ ~有給休暇の活用による内需拡大・雇用創出」という提言を出しています。
http://activity.jpc-net.jp/detail/01.data/activity000937.html
>有給休暇の完全取得で16兆円の経済波及効果、188万人の雇用創出へ
>日本の労働者が未取得の年次有給休暇・約4億3,000万日を完全取得することによって、下記の経済波及効果が得られる。
1.余暇消費支出額の増加、雇用増による消費支出額増加、投資による効果を合算すると、約15兆6,300億円の経済波及効果が得られる(日本のGDPの約3%に相当)。
(他の経済波及効果 参考例)高速道路土日料金1,000円制:1.7兆円(2年間)、東京五輪開催:2兆8,000億円
2.経済活動活性化による新規雇用創出と、休暇の増加による代替雇用の創出を合算すると、約187.5万人の雇用が創出される(完全失業者の約52%を解消)。
(他の雇用創出効果 参考例)グリーン家電エコポイント制:12万人、エコカー減税:12万人
で、そのためには、
>(1)休暇法制の見直し
2労働週の連続休暇を労働者に保証することを法律で定める(国際労働機関(ILO)132号条約第8条2項に準じる内容を、労働基準法の改正あるいは休暇に関する事項を規定する法律を新たに制定して定める)。
が必要であると。
試算の中身には立ち入らないでおきます。ここでは法政策について。
PDFファイルの方では、
http://activity.jpc-net.jp/detail/01.data/activity000937/attached.pdf
>最も効果が期待できるのは、休暇に関する法制の見直しである。日本では主として労働基準法が有給休暇について定めている。しかし、労働基準法はILO132 号条約第8 条2 項が定める2 労働週の連続休暇に言及していないことが最大の問題である。これが、グローバルスタンダードから懸け離れた細切れの休暇を容認する原因となり、休暇取得拡大を阻害している。
連続休暇の付与は、労働者による時季指定権の一定程度の制限と表裏一体である3。全従業員が連続休暇を取得するためには、当然、取得時期の調整が必要となる。労働者が時期を自由に指定するのではなく、欧米の多くの国々のように、労働者の希望を聞いた上で、使用者側が取得時期を決定する方が合理的である。その際、全従業員が同一の時期に2 労働週の連続休暇を取得することは現実的ではないので、必然的に連続休暇の取得時期は分散化されることになる。
と述べていますが、これが単なる連続休暇規定だけの問題ではなく、現行労基法の法構造の問題点そのものから発生する問題であることは、本ブログの読者にはおわかりのところでしょう。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/01/post_3ccd.html(年次有給休暇の法構造)
>1954年に廃止されるまでの労働基準法施行規則第25条は、「使用者は、法第39条の規定による年次有給休暇について、継続1年間の期間満了後直ちに労働者が請求すべき時季を聴かなければならない・・・」と規定していました。すなわち、年休付与義務を負った使用者は、労働者の意向を聞いて、年休付与計画をまとめ上げ、これにより計画的に年休を付与していくというのが、労基法施行当初に描かれていた姿であったというわけです。
>ところが、この施行規則第25条は、1954年に削除されてしまいます。
>「この規定の削除は、単なる規則改正にとどまるものではなく、日本の年休制度のその後の発展の息の根を止め、結果として、日本の労働者の多くがゆとりのない、時には『過労死』にすら脅えざるを得ないような生活を余儀なくされるようになったという意味で、かえすがえすも悔やまれるところである」と評されています。
昨日ご紹介した渡辺章先生の大著でも、
>しかし、旧労基則25条は「労基法の精神を忠実に表現したもの」であり、・・・今日、年休制度の改善の鍵は、日本の法制自体に存在したこの方式を法律規定として復活させること、このことがもっとも肝心である。
と断言されています。
« 屈託庵さんの書評 | トップページ | 伊東光晴氏の拙著書評@毎日新聞 »
コメント