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2009年9月18日 (金)

季刊労働法226号

Tm_i0eysjiyno2g 『季刊労働法』226号(2009年秋号)が出ました。

http://www.roudou-kk.co.jp/quarterly/archives/004246.html

●「派遣村」報道に接しますと、今回の不況は従来の労働法、社会保障法では十分に対応できない面があることを浮き彫りにしたといえます。
今号では、労働法、社会保障法、社会福祉、社会政策という分野の異なる研究者による座談会を掲載します。社会福祉、社会政策の視点から社会法に対して問題提起をしていただきます。
座談会に加え、今般の不況について、使用者側弁護士、労働団体に何が今後の課題と考えているのか検討していただきます。

●職業訓練の機会に恵まれなかった外部労働市場にいる労働者への対策が求められています。職業訓練については、ジョブカード制度が創設されるなど、対策が講じられてきましたが、その利用は伸び悩んでいるとのこと。
第2特集では、改めて「職業訓練・能力開発」をテーマに今後の能力開発政策、OJTのあり方などを検討します。

ということで、いつもの労働法定食コースとはちょっと違った感じの今号です。まず第1特集は、

特集
現下の不況と雇用問題

座談会 貧困・格差をめぐる諸問題と社会法
 早稲田大学教授 菊池馨実 九州大学教授 野田 進
 慶應義塾大学教授 駒村康平 日本女子大学教授 岩田正美

雇用の変化が実務に与えた影響とその実態
 弁護士 丸尾拓養

雇用問題に対する連合の取り組みと今後の課題
 連合 雇用法制対策局部長 村上陽子

貧困・労働問題についての日本弁護士連合会の取り組み
 日本弁護士連合会・貧困と人権に関する委員会委員
 中村和雄 小久保哲郎 小川英郎

心に残る言葉をいくつか。

丸尾弁護士の最後の一節から、

>雇用に関する法実務はまじめに「働く」人に報いるべきものであろう。病理現象でもある裁判辞令よりも、声も上げずに「働く」人の実像に迫ることの方が、健全な労使関係のあり方を検討するために必要であると考えられる。

連合雇用法制対策局の村上陽子さん曰く、

>第四に、おそらく労働組合にとってはもっとも切実で重要な視点として、すべての労働者の参加と連帯に触れておきたい。今回の景気後退過程においては、例えば有期労働契約の期間途中の解除(解雇)など企業が労働関係のルールを無視する事例も多々見られ、罰則の強化や行政による監督の強化を求める声が各方面から強く発せられた。しかし、職場において公正なワークルールを確立するために、行政に過大な役割を期待することが適切なのだろうか。個別労働紛争の処理システムをさらに充実させることももちろん重要だが、一方で、職場における集団的労使関係をしっかりとしたものにし、それを通じて職場における公正を実現していくことこそが求められているのではないか。

拙著第4章のテーマそのものでもあります。

第2特集は諏訪康雄先生のもとで勉強している社会人大学院生たちによる論考です。

第2特集 これからのキャリア・職業能力開発

これからのキャリア・職業能力開発
 法政大学大学院政策創造研究科 諏訪康雄研究室

自発的学習を促進する公助

外部とのネットワーク化を前提とした内部労働市場における職業能力開発

キャリア形成の視点から見た労働者派遣の今後

能力開発とキャリア形成の場としての社会人大学院
 その現状と発展に向けた課題

そのほかにも今号は盛りだくさんです。

■集中連載■比較法研究・中小企業に対する労働法規制の適用除外
中小企業における労働法規制の適用除外―イタリア―
 神戸大学大学院法学研究科教授 大内伸哉
 姫路獨協大学専任講師 大木正俊
 同志社大学大学院博士後期課程 山本陽大

中小企業に対する労働法規制の適用除外―オランダ―
 神戸大学大学院 本庄淳志

中小企業に対する労働法規制の適用除外―台湾―
 台北大学法学部博士教師 李 玉春

■特別寄稿■
人間らしい労働を求めて
 フランスの産業保健制度との比較から
 北海道大学名誉教授 保原喜志夫

■研究論文■
団結権侵害を理由とする損害賠償法理(1)
 北海道大学教授 道幸哲也

就業規則法理の再構成
 関西大学大学院法務研究科教授・弁護士 川口美貴 弁護士 古川景一

■イギリス労働法研究会■
当事者の自律的規制を促すしくみ
 ─イギリスの「平等賃金に関する行為準則」を素材に
 労働政策研究・研修機構研究員 内藤 忍

■神戸労働法研究会■
フランスの最低所得保障・活動的連帯所得(RSA)─
 神戸大学准教授 関根由紀

■同志社大学労働法研究会■
個別合意による労働条件変更
 ─個別合意の成立・有効要件を中心に・
 豊田通商株式会社 同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了 北山宗之

■筑波大学労働判例研究会■
労災事故における被害者の既疾患が寄与した場合と民法722条2項の類推適用
 東日本電信電話事件 最一小判 平成20年3月27日 労判958号5頁
 筑波大学労働判例研究会 中澤文彦

■連載■
労働法の立法学(連載第20回)――最低賃金制の法政策
 労働政策研究・研修機構統括研究員 濱口桂一郎

個別労働関係紛争「あっせんファイル」(連載第8回)
韓国における不当解雇等の労働委員会による救済
 九州大学教授 野田 進

ここではJILPTの内藤忍さんのイギリスの行為準則の論文について、そのもとになったディスカッションペーパーを紹介しておきます。

http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2009/09-05.htm(イギリスの行為準則(Code of Practice)に関する一考察―当事者の自律的取組みを促す機能に注目して)

>本論文は、イギリスの行為準則という法的文書について、その概要を明らかにした上で、特に、労働紛争を防止し、労使にとってよりよい労働環境を形成するために、労使が自律的にその組織の状況に適合したルールを形成し、これを遵守していくというしくみの形成を促進する機能について検討したものです。

行為準則は、雇用審判所等での手続において証拠として認められ、考慮されると制定法で規定されており、実際にその規定の遵守状況が判決の結論に直接結びつくなど、重要な役割を担っていることから、労使当事者等にとって大きな規範的意義を有するものと考えられます。

また、当事者がその組織の状況に応じて自主的、自律的に改善計画を策定し取り組むよう誘導するという行為準則の機能の側面からは、(1) 労使双方が主体的に取り組める具体的なしくみを政策的に提案することが重要であること、(2) 労働者側に集団的な基盤が存在することが最も重要であること、(3) 自律的取組みを行う当事者に対し必要に応じて財政面等の支援を行うことが必要であること、(4) 自律的な取組みを行う当事者に対し法的インセンティブを与える場合には、インセンティブの内容と導入後に起こりうる様々な影響についての事前の検討が十分に必要であることなどを指摘しました。

イギリス労働法の狭い専門分野の論文のように見えるかも知れませんが、いわゆるソフトローの議論について、大変興味深い事例を提供していて、とくに日本の努力義務規定とか指針といった何をどこまで拘束するのかしないのか必ずしも明らかではないのに大変多用されている法政策手法について考える上で参考になると思います。

あと、「特別寄稿」というのは今年亡くなられた保原喜志夫先生の絶筆です。最後の一節から、今号で一番心に残る言葉を。

>日本では、未だに多くの企業で月100時間を超える時間外労働が行われている。

こんな状態が長く続くようでは、事業場の片隅で、産業医や産業看護職など専門職がどんなに地団駄を踏んでも、世の中は少しも良くならない。トラックの運転手が長時間寝ないで運転すれば、その道路の先にあるのは交通事故だけである。

・・・そこで本稿では、このような状態を少しでも打ち破ることができるように、産業医等の身分保障をより強固にする方策を考えてみた。

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