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2009年9月 9日 (水)

駐日デンマーク大使館員が語るデンマーク雇用法制

前に資料がアップされたときに紹介した厚労省の有期労働契約研究会第5回の議事録がアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/txt/s0731-1.txt

ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、韓国についても詳しく語られていますが、いままでセコハン情報の形でしか語られてこなかったデンマークの雇用法制について、労働行政の人ではないとはいえ、一応デンマーク政府(外務省)の人による紹介が初めてされていますので、その語るところを紹介しておきます。語るのは、デンマーク大使館参事官領事 ベンツ・リンドブラッド氏です。

>○リンドブラッド氏 資料があまりないのです。申し訳ありません。ここにある資料は大体デンマークの2003年の法律の訳なのですが、実際にデンマークの労働市場は、その法律が出来てから、あまり変わっていないと思うのです。先ほどのイギリスの例と同じように、デンマークではworkerとemployeeというような区別もありまして、結局、有期契約に関する労働者はemployeeのほうが多いと思います。工場とか建設場、造船工場で働いている方々は、やはり自分の組合の契約によって仕事をしているのです。フランスとイギリスと同じように、どのような人が含まれているか、どのような人が含まれていないのかは、大体同じです。どれぐらいこの法律が使われているかは、例えば裁判になったかどうか、ホームページで調べたのですが、1つの例しか出てこなかったのです。どこかの音楽大学の先生が2年間仕事をして、それから、その契約が終わったあとに仕事を失ったわけですが、その裁判によって彼は負けたのです。結局、自分の同じ契約を2年間延ばして、彼が教えた分野はもう必要なくなってしまったのでと裁判は決めました。そのほかには例を聞いていないのです。ただ、私の働いているデンマークの外務省の中にはいくつかの例を覚えているのです。

 デンマークの外務省が短い間に職員を雇っていることがある。例えば、デンマークがEUの議長国になっているときには、外務省あるいは関係している官庁の仕事が非常に増えるのです。そういうときには、割合に若い大学を卒業したすぐあとの人たちを雇っているのが普通です。場合によっては、その外務省のスタッフの中でも2、3%ぐらいになるときもあります。その半年が終わったあとにはもうこれが終わりですが、場合によっては外務省は間違っているのです。デンマークの外務省が間違っている例を1つ覚えているのです。

 結局、デンマークが議長国だったときには、あるいは別のイベントをやったときは何人かを雇ったのです。その雇った人たちの中には、結局、普通の仕事に回した場合もあったのです。結局、いつもやっている仕事と同じような仕事に回した若い人もいたのです。それで結局、その議長国に関する契約、あるいはそのイベントに関する契約が終わったときには、その人たちの契約も終わったと思ったのですが、こう言ったのです。「自分たちは本当の契約どおりの仕事をしていないのです」。でも、外務省が言うには、「ただ、あなたたちが雇われているときには、大蔵省からこの予算しかもらっていないので」。でも、結局、その有期契約の期間はお金とは関係ないのです。大蔵省がいくらこの金額しか外務省に渡していなくても、結局、外務省の別のスタッフと同じような仕事、いつもと同じような仕事を続けるのであれば契約違反になったわけです。結局、外務省は決まった金額を払ったか、それとも、その人たちをそのまま外務省のスタッフにしたかどうかわからない。ただ、その問題があった覚えがあるのです。そのほかには、あまり覚えがないのです。

 デンマークは、先ほどヨーロッパの国々の労働者に対する法律は、かなり弾力性を持っている法律を持っているわけです。ですから、デンマークでは、労働者をクビにするのは簡単です。デンマーク人の労働者の3分の1が、1年間で仕事を替わるのです。ですから1年間でデンマークの労働人口の80万人が別の仕事に移るのです。これは、ヨーロッパでは非常に多いのです。例えば大体同じような人口を持っているベルギーに比べれば、大体倍ぐらいです。しかし、経済的に見ると、デンマークの労働者の給料、デンマークの経済などは、ほかのヨーロッパの国々に比べれば非常に高いのです。いま、デンマークの失業率はヨーロッパでいちばん低いのです。これは、たぶんこの弾力性によるのです。1つの言葉があります。これはいまの有期契約と直接関係ないのですが、1つのデンマークの単語、フレキシキュリティという言葉があります。たぶんご存じかどうかわからないのですが、フレキシキュリティは2つの単語を合わせて。フレキシは弾力性、キュリティはecurity、安全性を持っている制度。

これには、労働者側と経営者側のほかにもう1つ必要です。これは国です。結局、労働者が仕事を失った場合には誰が補償するか。それは国です。労働者に仕事がなくなってしまったときには必ず仕事を探す、必ず仕事を見つける、あるいは教育に入れる。それだけではなくて、必ずお金を渡す。だから、デンマーク人の労働者が仕事を失っても経済的に大きな問題がないのです。それによって弾力性が高いわけです。いいところがあれば悪いところもあるので、たくさんの人がずっと仕事を替わったりするときには、その仕事場の中の教育はどうなるかとか、いつでも新しい工場に、あるいは仕事場に入ったときには、労働者の質を失うかどうかわからないけど。でも、結局、仕事のないときは、いちばん大切なのは教育です。教育に入れるわけです。だから、たぶんデンマークの労働者の質は高いと思います。有期契約法が出来た大きな原因の1つはEUの指令があったので。でなければ、そのままデンマークの労働法が続いたと思います。でも、それがあったから、ほかのヨーロッパの国々と同じような法律を作りました。先ほど言ったように、例外はいくつかあって、教育のために仕事をする人たちの契約、法律とは関係ない。それから、軍隊の場合も、場合によっては関係ないときもあります。違反をした場合には、経営者側が、例えば同じ仕事場の中で同じ仕事をした有期契約の労働者と無期契約の労働者の給料は同じでなければ、経営者は、当然にその差額を払わなければならないと、まずないと思います。

 このような法律の中にはいくつかの穴があると思います。これは、例えば建設。建設あるいは造船は、もともと季節によって仕事をするときもあるのです。デンマークの冬は、結構寒い、暗い、長いのです。仕事ができる期間は、例えば日本に比べれば、かなり限られています。ですから、このように時間的に失業になっているのは、デンマーク人はもう慣れていますので、案外、組合と経営者との間の問題なのです。いまデンマークでかなり大きな問題になっているものの1つは、安い労働力がデンマークに入ってきているのです。特に建設です。そこにいままで、今はちょっと変わってきているのですが、90年代と今世紀に入ってから建設ブームがあったのです。結局、ヨーロッパ全体、特にデンマークには、失業問題とは逆に、労働者が非常に足りなかった時期がつい最近まであったのです。したがって、東ヨーロッパ、いちばん近い東ドイツとか、あるいはもっと有力なポーランドから、たくさんの建設関係の労働者がデンマークに入ってきているのです。これは、デンマークの労働市場の中ではかなり大きな問題になっているのです。このポーランドから来る労働者たちの給料は、デンマークで同じ建設の仕事をしている労働者に比べれば低い、割合に低い。これ、どうしてできるか。組合がずっと反対しているのです。組合は、ずっとその仕事場の前でデモ、プラカードを持って反対運動をしているのです。

 ただ、そのポーランドから来ている労働者は派遣労働者です。経営者はポーランドにいるのです。ポーランドにその派遣会社がありますので、結局、派遣労働者としてなっているわけです。この有期の法律には含まれていないので、大きな問題になっています。デンマークの組合にも入っていないので、ほかのデンマークの労働者は大変反対運動をしています。いまのところでは、結局、建設ブームはちょっとダウンになったところになりましたので、現在どのようになっているかわからないのですが。でも、これは、直接この有期契約とは関係ないのです。この法律が出来ても、穴がいっぱい出てくるだろうと思うのです。デンマークの資料があまりないのですが、あとでデンマークの労働市場についての何か質問があれば、できる範囲には返事をしたいと思います。

出てくる実話が外務省で臨時に雇った非常勤職員の話なんですね。

また、問題になっているのがポーランドから派遣されてくる建設労働者というのは、まさにスウェーデンのラヴァル事件と同じ構図で、しかもこれは「派遣」と言ってますが、法律上の「派遣」じゃないですから(デンマークの建設工事をポーランドの建設会社が請け負ってポーランドの労働者をポーランドの賃金で雇って工事しているのであって、デンマークの建設会社にポーランド人が派遣されているわけではない)、ここでの議論にはあんまり関係がないのですね。

○山川委員 デンマークはやや特殊で、リニューアルはしてはいけないという原則はあるけれども、別に締結事由とか期間の定めの制度もないという。

○リンドブラッド氏 ないと思います。いまこれを見ると、ずっと「契約」という言葉を使っていますが、ただデンマークの法律は契約という言葉は「契約しよう」と考える。法律の中で有期雇用条件。デンマークの労働者の中で、契約しようと思っているのは、たぶん有期契約で働いている人だけだと思います。例えば、12月にコペンハーゲンでは気候問題の会議があります、この3カ月の間には。こういうようなことが書いてあるけれども、ほかの人は書いていない。

それから、フランスとドイツに比べれば、デンマークの保険のシステムが随分違います。保険は会社ではないです。保険は国。第三者になっています。だから、1つの会社からクビになった場合には、健康保険とか労働保険に関する問題は起こらないです。雇用関係のない所からお金が出てきます。

 もう1つは公務員。デンマークの公務員の大部分は、ある意味では契約です。自分の組合の規制によって給料をもらっています。デンマークの外務省の中にも、4つぐらいの組合が入っています。本当の公務員、国の年金をもらう権利を持っているのは、課長より上だけです。少ないです。消防署、警察はまた別ですが、例えば官庁あるいは地方政府で働いている公務員のほとんどは、正社員ではないです。自分の組合が決めた金額をもらうわけです。例えばエンジニアであれば、コペンハーゲン市の水道局に働いている技術者の人たちの給料は、組合から決まった給料をもらう。そこから交渉ができますが、基本的にはそういうふうになっています。

これも、研究会の問題意識とはなかなかつながりませんが、それ自体としてとても興味深い話です。「本当の公務員は課長より上だけ」というのは、それ以下は民事上の雇用契約で、すべて労働組合との労働協約で決めているという話なのでしょう。

こういう労働者はみんな組合員で何でも協約で決めているというのがデンマークモデルであって、言葉のもっとも正確な意味における「ギルド」的な社会ということができるでしょう。

だからこそ、労働組合という「ギルド」に属さない外国人(ポーランドの建設労働者)がEU統合のおかげてどやどやとやってくると、大きな摩擦を生ずるわけです。

日本の企業別組合というのが、いかにこういう真の「ギルド」からかけ離れた存在であるかもよく分かります。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_a4ee.html(半分だけ正しい知識でものを言うと・・・)

池田信夫氏がわたくしに対する悪罵を連発するようになるきっかけを作った記念すべき(?)エントリです。

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