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2009年9月26日 (土)

企業別労働組合の現在と未来

日本労働研究雑誌の10月号が「企業別労働組合の現在と未来」という特集をしています。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2009/10/

>特集:企業別労働組合の現在と未来

提言 戦後労働運動の第3の高揚期を生み出す新たな条件が生まれている
五十嵐 仁(法政大学大原社会問題研究所所長)

解題 企業別労働組合の現在と未来
編集委員会

論文 企業別組合に何ができるか―歴史から学ぶ
仁田 道夫(東京大学社会科学研究所教授)

労働組合の経済効果―研究成果と課題
外舘光則(千葉商科大学経済研究所客員研究員)

論文(投稿) 交渉内容別に見た労使協議制度の運用とその効果―「問題探索型」労使協議制の分析
梅崎 修(法政大学キャリアデザイン学部准教授)

南雲 智映(連合総合生活開発研究所研究員)

論文 企業別組合における非正規従業員の組織化事例の示すこと
橋元 秀一(國學院大學経済学部教授)

紹介 請負・派遣労働者に対する労働組合の対応―電機連合の取り組みと課題
新谷 信幸(電機連合書記次長)

論文 事業再生過程における労働組合の役割
藤本 真(JILPT研究員)

こうやって目次を眺めてみると、労働法の論文がないのが寂しいですね。「編集室から」によりますと、

>実は本特集では「企業再編時における集団法制について」というテーマでの法学の論考も予定していたのですが、ご執筆予定の先生が突然のお怪我で執筆が不可能になり、大変残念ですが今回は見送りとなりました。

とのことです。

さて今回の特集、読んで面白かったのは仁田道夫先生の「企業別組合に何ができるか-歴史から学ぶ」です。

>企業別組合の組織的特徴の一つは、その構成員の従業員性に求められてきた。特定企業の「本雇いの従業員」だけを構成員として組織され、一部の管理職を除いて職種を問わず、すべての従業員を組織する。このような組織のあり方は、工職混合組合と呼ばれ、それが企業別組合の行動様式を強く規定していると考えられてきた。

本稿では、企業別組合運動の歴史のなかに、このような一般的規定からすると異例と考えられような活動が見られることを指摘する。具体的には、1950年代後半から60年代前半にかけての製造業における臨時工・社外工に関する企業別組合の運動、および戦後直後から1960年代にかけての生保営業職員の労働運動を事例として取り上げる。前者においては、本工を主体とする企業別組合が臨時工の本工化闘争や社外工の組織化支援運動を展開した。後者では、営業職員による内勤外勤分離型の企業別組合が独自の運動路線を追求して成果を上げた。

これらの事例からもわかる通り、企業別組合は通説で考えられているよりも多様で豊かな運動展開の経験をもっており、それらを踏まえたより豊かで、奥行きのある企業別組合像構築が望まれる。それが企業別組合に何ができるのかを考え直す一つのきっかけとなりうる。

非正規労働者がまだ臨時工といわれていて、家計補助的パートが一般化する以前の「本工化闘争」についてはよく言及されるわりにきちんとした研究は少ないのですが、仁田先生は最近「趣味と実益をかねて、かなりな数の組合史を読んで」おられるとのことで、そこから興味深いエピソードを引き出しておられます。もう一つのそもそも労働者性が問題になる「生保のおばちゃん」の組合運動のお話もとても興味深いものです。

橋元秀一さんの「企業別組合における非正規従業員の組織化事例の示すこと」は、

>企業別労働組合が非正規従業員を組織化した10事例を分析し、組織化の実態やねらい、組合にとっての成果と今後の課題を明らかにした。

非正規従業員が増大し、その一部あるいは多数が基幹的労働力となったが、仕事への意欲や定着、職場のコミュニケーションなどに問題を抱え、企業業績に影響していた。組合は、こうした状況に危機感を強め、基幹的労働力となった非正規従業員層を組織化し、会社側はユニオン・ショップ協定締結を受け入れた。この過程で、非正規従業員の待遇改善が進み始め、組合活動も活性化した。格差是正のあり方など今後の課題は少なくないが、以前よりも、組合の存在感は増し、大きな役割を担うようになった。

例の中村圭介名著『壁を壊す』と同じく、例の連合総研の調査がもとになっています。

これは連合総研のHPに載っていますので、未見の方がもしいれば是非熟読されることをお勧めします。

http://rengo-soken.or.jp/report_db/pub/detail.php?uid=196(「非正規労働者の組織化」調査報告書-21世紀の日本の労働組合活動に関する調査研究Ⅰ-)

>ヒアリング事例
第1章 職場をよくする イオンリテール労働組合
第2章 「カギは日常活動にあり」-組織化で支部活動が活性化 日本ハムユニオン
第3章 契約社員による、契約社員の組織化 ケンウッドグループユニオン(ケンウッド・ジオビット支部)
第4章 組合活動はストレス解消 市川市保育関係職員労働組合
第5章 「正規職員主義」からの転換と人的資源を活用した組織運営 八王子市職員組合
第6章 執行部が納得することから始まった サンデーサン労働組合
第7章 一人ひとりと対話した 小田急百貨店労働組合
第8章 格差是正に団結で挑む クノールブレムゼジャパン労働組合
第9章 先行事例の経験を活用 全矢崎労働組合
第10章 ユニオン・ショップ協定を前提とした契約社員制度の導入 私鉄中国地方労働組合 広島電鉄支部

それから電機連合の新谷書記次長の「請負・派遣労働者に対する労働組合の対応―電機連合の取り組みと課題」。

要約はないのですが、最後の「まとめにかえて」から引用すると、

>これまで、派遣・請負労働者を中心とする電機連合の非正規労働者への取組についてご紹介してきた。筆者としては、派遣・請負労働者が抱える課題は、労働組合を結成し、産別組織の支援のもとで。個別労使関係において解決を図ることがベストと考えている。

>電機連合は「審議と友愛」という言葉を暗黙知的な行動規範として活動をしてきた伝統がある。非正規労働者を「ともに働くパートナー」として、労働組合という大きなネットワークの仲間として迎え入れられるか、今、連帯の意味が問われていると思う。

全くその通りだと思います。

そのほかの論文も興味深い知見を示していますので、是非ご一読を。

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