スウェーデンにおけるパターナリズムと市民的公共性
『大原社会問題研究所雑誌』の最新号が、「パターナリズムの国際比較」という特集を組んでいます。
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/611-612/index.html
>【特集】パターナリズムの国際比較
「スウェーデンにおけるパターナリズムと市民的公共性」 クリステル・エリクソン&ジョン・ボリビィ/石原俊時訳
「フランス・パターナリズムの史的考察:19~20世紀」 アラン・シャトリオ/廣田明訳
「近代日本の経営パターナリズム」 榎 一江
このうち、とりわけ一見パターナリズムとは正反対の国のように見えるスウェーデンにおいて、パターナリズムこそが市民的公共性の形成に重要な役割を果たしたことを説明するエリクソンさんとボリビィさんの論考が大変興味深いものです。お二人はエーレブロー大学の歴史学教授で、東大経済学部で講演されたものだそうです。
まだPDFファイルの形でアップされていないので、是非図書館かどこかで探して読んでいただきたいところですが、内容の要約を訳者解題でされているのでそれを引用しますと、
>本稿は、およそ一世紀半にわたるスウェーデン近現代史をパターナリズムという概念で捉え直すことを試みた意欲的な論考である。たとえば、従来、19世紀前半に形成されたスウェーデンにおける市民的公共性については、身分制的秩序からの解放や自由という側面が強調されてきたのであるが、著者は、市民的公共性と私的親密圏双方を貫く同時期の家父長制的な社会構造を明らかにしている。
>また、本稿は、19世紀末葉から企業におけるパターナリズムが台頭する社会民主主義労働運動を次第に受容していったのだが、その後、単に受容するだけでなく、社会民主主義政権のもとでの福祉国家建設あるいはその繁栄のために不可欠な役割を果たすようになっていったことに注目している。スウェーデン福祉国家は社会民主主義のみでは語れないのであり、そのよって立つ社会構造や歴史的展開を理解する上で、パターナリズムや保守主義といった要素を無視できないと主張している。
パターナリズム+社会民主主義=福祉国家、と。
続くフランス編、日本編も興味深いです。
あと、
■講演 「私の労働研究-テーマと問題意識」 熊沢 誠
■書評と紹介 下夷 美幸著『養育費政策にみる国家と家族-母子世帯の社会学-』 阿部 彩
が目を通しておく価値があります。
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