フォト
2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

« 現代社会民主主義研究会公開講座 | トップページ | いよぎん事件最高裁判決今井功反対意見 »

2009年9月24日 (木)

全国ユニオンがILO提訴/登録型派遣原則禁止の勧告求める

連合通信の記事によりますと、全国ユニオンが登録型派遣禁止を求めてILOに提訴したそうです。

http://www.rengo-news.co.jp/news/kiji/090915.htm

>登録型の派遣労働者の場合、派遣契約が終了すれば、雇用契約も終了して当然という最高裁決定は条約違反であるとして、全国ユニオン(鴨桃代会長)が、ILO(国際労働機関)に申し立てた。九月十四日に発表したもので、登録型派遣の原則禁止や、通常の労働者との同等の権利確保などを日本政府に勧告するよう求めている。
 問題となった裁判は、伊予銀行で十三年間働いた派遣労働者の女性が、派遣先の上司に嫌がらせをやめるよう求めたところ、雇い止めにされた事案。高松高裁は女性を「登録型」の派遣労働者と認定したうえで、雇用継続の期待権は「保護すべきものとはいえない」とし、訴えを棄却した。最高裁は三月、裁判長裁判官の「上告受理申し立てを受理すべき」との少数意見を付け、不受理を決定した。
 申立書は、この司法判断が認められれば、日本の労働者派遣制度は、ILO一八一号条約(民間職業仲介事業所に関する条約)に違反すると主張。同条約第一条は、派遣事業について「第三者の利用に供することを目的に労働者を雇用することから成るサービス」と定義しており、派遣事業主は労働者を「雇用」していることが前提となっている。今回の事件はこの条文の要件を満たしていないという。
 提訴を全面的に支援するNPO派遣労働ネットワーク理事長の中野麻美弁護士は、「登録型派遣(の雇用)は『雇用』の名に値しない。労働法の保護が保障されなければ『雇用』ではない」「派遣契約の終了によって、雇用も終わる状態は、ILO条約が想定したものではない」と、条約違反を指摘した。
 申し立てが受理されれば、半年~一年審査され、ILO理事会に報告されることになる。中野理事長は「日本の法制度のあり方に警鐘を乱打したい」と期待を込める。
 
  ●国際基準にほど遠い

 「登録型派遣がいかに無権利なものかが示された判決」。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長はこう指摘する。どんなに長く働いていても、商取引である派遣契約が終了すれば、雇用継続の期待権さえ認められないとする司法判断は、現行の労働者派遣制度の問題点を浮き彫りにした。
 ILO一八一号条約は派遣労働者の権利確保を目的として一九九七年に採択。通常の労働者との差別的取り扱いを禁じ、労働条件などについての保護を確保するよう規定している。
 日本の登録型派遣制度が、国際労働基準というグローバルスタンダードを満たしているといえるのかどうかが焦点。結果次第では、登録型の原則禁止を求める流れを後押しするものになりうる。

どうもいくつもの話が混線してごちゃごちゃになっているようです。

「国際基準」という観点からすれば、ヨーロッパでも派遣の主流は登録型であって、登録型の原則禁止が国際基準だなんて話を持ってこられたら、何を言っているのか理解されがたいでしょうし、ましてや専門職限定のはずだなどと意味不明なことを口走ったりしたら、それ以上相手をしてもらえない恐れが大きいと思います。そういう特殊日本的ルールの問題は日本の中だけでやってね、ということになるだけでしょう。

ILO181号条約はまさに派遣労働者の権利確保のために作られた条約であって、派遣労働を禁止するための条約ではありません。

日本の派遣法では派遣労働者の権利がきちんと保護されていないではないか!といって訴えるというのはまさに条約の趣旨に合致していますし、そのネタとしていよぎん事件を持ち出すこともおかしな話ではありませんが、それを「登録型派遣の原則禁止を求める流れを後押しするものになりうる」などというのはかなりの程度筋違いというべきでしょう。

「登録型派遣(の雇用)は『雇用』の名に値しない。労働法の保護が保障されなければ『雇用』ではない」というロジックは、少なくとも法律のロジックとしてはいささか八艘跳びの感があります。

いよぎん事件については、去る3月27日に最高裁が上告棄却の決定をしており、これに対してはわたしも間違った判決であると強く感じています。これに付された今井功裁判官の反対意見こそ正しい判断であって、この判決がいまだに『労働判例』等の判例雑誌に掲載されていないのは残念至極なんですが、まあそれはともかく、最高裁の不当判決に対するアピールをしたいという気持ちは分かりますが、もうちょっと議論を整理して、昨年派遣指令ができたばかりのヨーロッパの人々にも通じる話にして持っていかないと、せっかくのネタが使い物にならなくなってしまう恐れがありと思いますよ。

(参考)

いよぎん事件高裁判決に対するわたしの評釈(『ジュリスト』)はこれです。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/iyogin.html

« 現代社会民主主義研究会公開講座 | トップページ | いよぎん事件最高裁判決今井功反対意見 »

コメント

ILOの提訴が「登録型派遣禁止」の方向に向くのは、
非常にもったいないですね。
「派遣禁止」をとりあえず訴えることで、その先に勧める「駒」を考えているにしても、
提訴先がILOでは・・・・。

その国の労働者を全員雇用できる世の中を実現しようと考えると、
正直派遣なくして現在の労働のパイの分配はありえないと思いますし(実際やってみてないので予測でもの言ってますが)、
これだけ産業の展開スピードが速いと、終身雇用どころか正社員雇用も無理と思いますので。

なので、「登録型派遣禁止」をうたうよりも、EUとともに、「ベーシックインカム」を要求する方向のほうがよいのではないかと
最近よく思います。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 全国ユニオンがILO提訴/登録型派遣原則禁止の勧告求める:

« 現代社会民主主義研究会公開講座 | トップページ | いよぎん事件最高裁判決今井功反対意見 »