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2009年9月 5日 (土)

「契約社員」って誰のこと?

JILPTのコラム、前回の前浦穂高さんに続いて、今回も今年JILPTに入った新人の高橋康二さんです。(新人といっても、研究者としてはすでに一人前ですが)

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum0130.htm(「契約社員」をどう定義するか)

>研究活動の基本は、研究対象を定義することである。しかし、これが意外とむずかしい。筆者が現在かかわっている「契約社員」の研究においても、このことはあてはまる。

>これまでの調査で比較的多く用いられているのは、「専門的職種に従事する有期契約の労働者」という趣旨の定義である。

>しかし、ヒアリング調査を進めていくと、今日の企業において「契約社員」と呼ばれているのは、必ずしも専門的職種に従事する労働者ばかりではないことを実感する。仕事内容が正社員とほとんど変わらない労働者、もっぱら正社員のサポートを担う労働者が「契約社員」と呼ばれていることが、しばしばある。それらに共通するのは、フルタイムで働く有期契約の労働者という点である。

まあ、そもそも、労働法学的に言うと、「契約社員」という言葉は出発点からナンセンスなんですが(契約じゃない労働者がいるはずがない)、社会意味論的に言うと、この「契約」というのは「メンバーじゃない」という意味なのでしょう。

「会社のメンバー」じゃないけど、「社員」という地位にある、つまり「社員」じゃない「パート」や「アルバイト」(彼らは「正社員家族」の「メンバー」)とは違うというインプリケーションのある言葉だったのでしょう。地位が高いのにメンバーじゃないことが可能なのは、一定の専門的技能を有するから(ある種の請負的性格)だったのでしょう。

それが、一方ではパートやアルバイトの基幹化(「社員」的地位への接近)と、「社員」的地位自体の低下とが相まって、「契約社員」が要は「会社メンバーじゃない」というだけのコノテーションを示す言葉になってきたということでしょうか。

>定義を変えることでみえてくるものもある。たとえば、「専門的職種に従事する有期契約の労働者」という趣旨の定義を用いる2007年の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」によれば、「契約社員」が現在の就業形態を選んだ理由の第1位は、「専門的な資格・技能を活かせるから」となる。これに対し、「フルタイムで働く有期契約の労働者」という趣旨の定義を用いる2007年の「契約社員に関する実態調査」によれば、第1位は「正社員として働ける適当な企業がなかったから」となる。

>「契約社員」と呼ばれている若年者のなかには、即戦力として活躍することとは別の理由から現在の就業形態を選んだ人が少なくないと考えられる。そこで思い浮かぶのは、正社員として働ける条件を持っていながら、正社員の雇用機会に恵まれず、やむを得ず現在の就業形態で働いている若年者の姿である。

なぜ専門性という高い地位を担保しうるような資産を持たない彼らが「契約社員」と呼ばれるようになったのか、一つは、「パート」や「アルバイト」という言葉がインプライする就労場所以外に正社員家族というちゃんとしたメンバーシップを有しているという特性を欠いているからでしょうか。

「パート」「アルバイト」という用語に駆逐されて高度成長期以後死語になってしまった「臨時工」の輪廻転生という面もあるのかも知れません。

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コメント

濱口さんのコメントに賛成です。

そろそろ就調など就業形態に関する呼称による調査はやめた方がいいでしょう。

就業形態では、雇用期間の定めの有無、雇用契約期間(できれば契約更新の可能性)、所定労働時間(できれば週の労働日と週の労働時間)を調べればいいのです。あとは派遣や請負が実態として分かる質問です(雇用主に指示されて仕事をしているかなど)。これらの情報から就業形態を類型化をすればいいでしょう。

就業形態の呼称では、契約社員だけでなく、実は正規の社員・職員も不適切だと思います。企業内でいわゆる正社員などの用語は通常使われていません。正規社員従業規則など普通はないです。多くは職員あるいは社員従業規則などでしょう。

ところで以前、疑似パートが問題になったことがあります。理由は、呼称がパートなのに労働時間がフルタイムなのは問題だということにありました。ただ、求人側も求職側も「パート」を「短時間」と理解している者ばかりではないのです。アルバイト募集とするのは、学生や比較的年齢の若い人を求人したいときで、他方パート募集とするのは、主婦などを想定して求人する場合が多いだけなのです。この意味では、疑似パートの言葉上の矛盾を批判してもしょうがないことになります。もちろんフルタイム有期の問題を議論することを否定するわけではないですが。

求人に際しても呼称での求人でなく、上記の情報を明記して求人をすればいいわけです。ちなみに求人媒体によって媒体に使われる呼称の内容が微妙に異なります。こうした問題も解消されることになると思います。

契約社員に関する調査に戻れば、フルタイム有期の活用や就業者を調査対象として、もし契約社員にこだわるのであれば、その中でなぜ契約社員の呼称を使うかを調査した方がいいでしょう。ただし活用内容が同じでも契約社員の呼称を使わない企業も多数あることに留意すべきでしょう。各社でそれぞれ固有の呼称が多数使われていますので。

仰るとおりなのですが、問題は何らかの労働政策の対象としてそういう「呼称」を用いる場合です。

その問題点が露呈したのが、法律の名称上は「短時間労働者なんたらかんたら法」といいながら、通称を「パート法」といってるケースで、短時間勤務でない「パート」と呼ばれている非正規労働者は、「短時間労働者」ではないから、そもそも「短時間労働者なんたら法」の適用対象ではあり得ないのですが、「なんで『パート』と呼ばれている労働者がパート法の対象にならないんだ?」と問われると苦しくなって、指針で言及したりするということになるわけですね。

これは、筋のすっきりした議論してしまうと、「パート」という言葉に社会が与えているコノテーションを無視することになってしまって、なんだ法律屋は形式論ばかりやりやがって、と言うことになるので、なかなか難しいわけです。

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