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2009年9月 2日 (水)

立岩真也『税を直す』

2009b2 立岩真也さんの『税を直す』(青土社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.arsvi.com/ts2000/2009b2.htm#r

さて、しかし、正直言って、書籍小包が届いたとき、「青土社」という出版社名を見て「あれ?」と思いました。青土社といえば『現代思想』に『ユリイカ』。ばりばり人文系で、わたくしと接点があるような感じがしなかったのです。

封筒を開けてみると中から出てきたのは立岩真也さんの本。これまた大変意外でした。正直言ってわたくしは、これまで立岩さんの良い読者であったとは必ずしも言えないからです。社会学といっても、非常に哲学に近いところの方という印象を持っていました。ところが、題名が『税を直す』。そして帯の文句に曰く、

>多くあるところから、少なくあるところへ

>医療崩壊、介護問題、失業、格差、貧困…。迫りくるさまざまな難題を解決するためには根本的に財源が足りないと言われる。だがじつは税制のある部分を見直すことによって、消費税増税なしでも財源を確保することは十分可能だ—。丹念な思索によってさまざまな反論を吟味し導き出された、財源問題への画期的提言

かなり離れたところでそれぞれに考えていたことが、今日の社会状況の中で、意外なまでに近いところに来ていたのかな、という感じです。

立岩さんの言いたいメッセージは、上にリンクしたご自身のHPに書かれた文章を引用すると、

>言いたいことは簡単なことだ。それは幾度もその本で繰り返しているし、さきにも述べた。多くあるところから少ないところへ渡す、また普通に暮らすために多くを必要とするところに多くを渡す、それが政府の、唯一のとは言わないまでも主要な仕事であり、税金の機能である。その本義を確認し、そして実現するべきである。まずそれだけである。

>ただこんな当たり前な――と私には思われる――ことを、今言うのには、この御時世であるから、という思いはあった。

その「御時世」というのは、いわゆる「小泉・竹中ネオリベ路線けしからーん」と唱和していればいいだけの話ではありません。むしろ、それを批判すると称する側の

>そして、「官僚支配」が批判され、そして「地方分権」が称揚される。これらもわかりやすいが、すこしでも考えるとやはりよくわからない。・・・・・・財源を含めた分権がもたらしうる事態、実際にもたらしてきた事態、すなわち、各々の域の間の流出流入の「自由」のもとで、しかも税収と支出とがある域において各々によって設定される場合に、税による(再)分配機能が弱まる傾向があることにどう対するのか。

>すくなくとも争いをしようというのであれば、何を争っているのかわかる争いをした方がよいし、争うに足る争いをした方がよい。

税金をとって再分配するということに対する敵意、わたくし流にいえば、ネオリベとリベサヨの両方に共通するこの再分配国家に対する敵意が、いかにこの30年間(話は小泉改革から始まったわけでもなければ、「改革」に狂いだした90年代から始まったわけでもない、ということを、立岩さんは丁寧な知識社会学的手法によって暴き出していきます)この国を浸し続けていたのかということが、改めて目の前に突きつけられる感じです。

この本には出てきませんが、ある年齢以上の方々には、野末チンペイなるコメディアンの「税金党」なる滑稽なミニ政党が、妙にマスコミや「市民」の支持を得ていたことを思い出す方もおられるかも知れません。

ただひたすら国家の再分配機能を敵視する「リベラル」な「市民」の感覚にここまで浸された日本社会で、その論理的帰結としての「格差」や「貧困」を糾弾する「リベラル」な「市民」たち、というこの逆説は、4年前の小泉選挙から今回の選挙まで、本質的には何も変わっていないのではないか、と、「リベラル」な「市民」の皆さんは反省してみてもいいのではないでしょうか。

(なお、105ページの註08によると、今年にもワークフェア批判、ベーシックインカム称揚の共著を出されるとのことです。その際には、正面からぶつかるような「書評」を書かせていただくつもりです。)

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