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2009年9月 4日 (金)

総選挙を支える日雇い派遣

Img_gotoh NHKの解説委員というのは、そんじょそこらの評論家よりも遥かにものが見えているという実例。この後藤千恵さんは、何回かお会いしてお話ししていますが、とても素晴らしい方です。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/25655.html

>Q1:日雇い派遣は、禁止される方向で検討が進められていたと思うんですが?

A1:はい、そうです。日雇い派遣は、アルバイトとは違って、派遣会社に登録している人たちが、一日単位で雇用契約を結んで、仕事につくものです。低賃金で不安定な雇用の象徴とされ、今回の選挙戦でも、各党が日雇い派遣の禁止や原則禁止を公約に掲げています。その選挙の投開票作業に、大勢の日雇い派遣の人たちが携わるんです。たとえば、横浜市では1200人、神戸市では700人。投票所での受け付けや、開票の際に票をそろえたり、仕分けしたりする作業をすることになっています。

Q2:アルバイトで働く場合と、何か条件が違ってくるんでしょうか?

A2:たとえば、賃金です。アルバイトの場合、自治体が直接、採用しますので、賃金も、基準に従って支払われます。休日加算もあって、おおむね、時給1000円ほどです。一方、日雇い派遣の委託費は入札で決められます。実は今、民間の派遣の仕事が減っていることもあって、多いところで10社を超える派遣会社が殺到し、熾烈な価格競争が起きました。首都圏のある自治体では、1時間あたり1575円の予定価格に対して、ある派遣会社が911円と、6割を切る低価格で落札しました。その結果、働く人に支払われる賃金は、時給で780円と、その地域の最低賃金すれすれになってしまったんです。

Q3:そうした日雇い派遣が広がっているのはどうしてなんでしょう

A3:自治体の話を聞きますと、限られた準備期間のなかで、自らアルバイトを募集して、1人ひとりと面接し、契約を結ぶとなると、職員の負担が重くなる。けれど派遣なら、派遣会社に委託すれば、あとは全てやってもらえるので、負担の軽減につながるということでした。

Q4:それだけのニーズがあるということなんですね

A4:そうですね。与野党ともに、日雇い派遣の禁止を公約に掲げている選挙で、その日雇い派遣が大量に使われるというのは皮肉なことです。一方で今回、自治体によっては、派遣に頼らず、短い準備期間に1000人を超えるアルバイトを直接、採用したところもあるんです。また、選挙への関心を高めてもらおうと、高校生にボランティアで投開票の作業に参加してもらうところもあります。今後も選挙の際には、臨時に、大量の人手が必要になります。どうやって人手を確保していくのか、次の選挙に備えて考えておかなければならないと思います。

以上に尽きているのですが、念のため一言。

直用日雇アルバイトなら時給1000円なのに日雇い派遣だと時給780円になるというのは、そもそも派遣労働者に自治体の賃金基準を適用しないことが原因であって、派遣という形態自体が低賃金を義務づけているわけではありません。

派遣形態を利用するのは、上の自治体の場合募集・採用にかかる「職員の負担」の軽減のためであって、そのことは何ら悪いことではありません。しかし、それに伴ってチープレーバー化してしまうとすれば、それはどこかがおかしいのです。おかしいのは「派遣」形態自体なのか、それとも派遣だからといってチープレーバー化することに対する歯止めがないことなのか。

短絡的に日雇い派遣を禁止すれば、後藤さんが指摘するように、次の総選挙では自治体職員が泣くことになるでしょう。

まっとうな労働者保護をどうするかということをホッタラケにして、事業規制ばかりに熱中するという点において、今までの与党の政策も、これからの与党の政策も大して変わりません。日雇い派遣禁止が50歩なら、製造業派遣禁止が100歩というところでしょう。

そういう思考停止状態から脱却して、本当の労働者保護政策に一歩を踏み出せるかどうかが、新政権の試金石になるのです。

(というようなことが近々どこかの新聞に載ると思います)

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コメント

>短絡的に日雇い派遣を禁止すれば、後藤さんが指摘するように、次の総選挙では自治体職員が泣くことになるでしょう。

さらに言うと、ちょっと実入りが欲しくなって空いた時間を有効活用したい労働者的にも困ります。(苦笑)
その昔、葬儀屋さんに派遣される形で駐車場での誘導と見回りしてましたが、実入りの少ない当時としてはかなり収入面で助かった記憶があります。
また、私が住んでいる所だけかもしれませんが、神輿担ぎなどのお祭りの補助での日雇いも体力勝負の辛さがあるとはいえ、かなり助かった記憶があります。
Q2に書いてある問題については、私自身も身近に接していた現実ですし、悪質なケースでは労務に必要な備品は派遣希望者が負担しろと当日なり事前説明の段階で明かされるなんてケースもザラでした。
よく断れば問題無いのでは?と言われるのですが、それをやると2度と仕事を斡旋してもらえない、横の繋がりが無いので派遣紹介元と渡り合えない、さらに当時は今ほどでないにせよ就業難で選り好みが出来ないといった具合で泣く泣くやるしかないというケースに陥りがちでした。
あまりに理不尽な条件を拒絶出来なかった私のようなヘタレ労働者も問題だったと思いますが、だからと言って多様な労働条件を過度に抑制すべきなんて議論は、時間の有効活用で諸事情から収入を得たい労働者にとっても死活問題になりかねないので、強く反対します。
とどのつまり、制度が問題だという的外れな議論に陥らないためには、現場の実情なりを声を上げて伝えるしかないのでしょうかね・・・

 皆さん、今晩は。

>>自治体の話を聞きますと、限られた準備期間のなかで、自らアルバイトを募集して、1人ひとりと面接し、契約を結ぶとなると、職員の負担が重くなる。

>短絡的に日雇い派遣を禁止すれば、後藤さんが指摘するように、次の総選挙では自治体職員が泣くことになるでしょう。

 直接雇用が自治体職員の負担増加につながるのは、三位一体の改革と称して地方交付金税を減らし、自治体の財政を圧迫して職員削減につながったことと無関係ではないかと思います。

>おかしいのは「派遣」形態自体なのか、それとも派遣だからといってチープレーバー化することに対する歯止めがないことなのか。
>本当の労働者保護政策に一歩を踏み出せるかどうか

 濱口さんのおっしゃる通りだと思います。
 ただ、どのような形で規制を行うかが問題だと思います。おそらくは、最低賃金規制の強化や派遣会社の利益率の規制などでしょう。

 問題は、このような規制をやったら派遣会社が労働者を派遣しなくなるから労働者保護のための規制にも反対すべきであるとか、、労働者保護は登録者獲得のための競争で行われるべきだという声が出てくることです。

 派遣労働者の保護のための規制ができないようなら、日雇派遣を禁止しろ、臨時雇用は直接雇用に限られるべきだという意見が台頭しても施行手停止とまでは言えないように思えます。

 皆さんはいかがお考えでしょうか。

まさに「チープレイバー」だったからこそ、派遣社員に需要があったのではないでしょうか。生計を立てるべき労働者がアルバイト並みの収入で働かなければならないというのは、いわば労働市場の歪みです。投資家は市場の歪みを利用しますが、派遣社員という労働市場の歪みを利用した結果がワーキングプア問題だったのではないでしょうか。つまり、派遣労働者を保護すると、企業は別の方法でチープレイバーを確保するようにならないか心配です。

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