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2009年8月25日 (火)

寺田盛紀『日本の職業教育』

32283577 寺田盛紀さんの『日本の職業教育 比較と移行の視点に基づく職業教育学』は、淡々として記述の中に、この問題を考える上で必要な情報は漏れなく盛り込まれていて、とても有益な本だと思います。

私は、労働法政策の観点から、もっぱら制度の動向や労使などいろんな関係者の見解を中心に調べてきたので、とりわけ第2章の職業教育の理念・思想をめぐる流れは新鮮でした。教育界の方々にとっては逆なんでしょうけど。

日本学術会議の接続分科会で田中萬年さんがちらと喋っていた宮原誠一の生産主義教育論というのは、

>「日本は新しい憲法の下にアジアにおける平和な産業国、とりわけ製造工業国として独立しなくてはならない」そのための「基礎的な力を青少年に養わせることが教育の任務である。そうした教育が、消費生活ではなく生産生活を中心に、そして労働から遊離した階層ではなく労働する国民大衆の必要を中心に、計画されなければならない」

というようなことを言っていたんですね。

ところが、高度成長期の勝田守一の議論というのは、これは今日に至るまで教育学界に大きな影響を与えているのだそうですが、

>職業は人を孤立させる。・・・・・・徒弟的な訓練は、機械の一部としての単純労働の技能に過ぎなくなる恐れがある。

と、「端的にいえば職業(教育)否定の「人間的価値論」」を示し、「ルネッサンス的(人文主義的)教養理念」を称揚するものだったのですね。しかし、寺田さんが的確に批判しているように、

>およそ特殊化されない労働は少なくとも企業社会には存在しない。組織社会のほとんどの人間は、仕事の範囲がさまざまであっても、分割された職業労働を担い、その中で人間形成を遂げているのである。

こういう職業教育否定論が、拙著139ページでちらりと触れた日教組(正確にはその附属機関の国民教育研究所)の教育多様化批判論の根っこにあったのでしょう。

そして、ここで拙著の文脈にむりやりに引きつけてしまうと、こういう「特殊化されない労働」を称揚する職業教育否定論と、ジョブなきメンバーシップ型の日本型企業社会のあり方とが、見事に共鳴して、「官能」中心の採用システムの源泉ともなっていったというあたりが、世の中の皮肉なところと言えそうです。

本書の内容は以下の通り。

職業教育の概念と対象—職業教育研究は何を問題にするのか
職業教育の比較史—ドイツ・欧州と日本
職業教育の理念・思想—人間形成目的と経済目的の関連
職業教育の分析・評価と国際比較—2つの歴史軸と3つの構造次元
高校職業教育の目標と教育課程—就業生活との緩やかなレリバンス
高等学校における産業現場実習と職業教育—戦後高校教育の変動要因との関連で
高校職業教育と職業・就業の関連構造—就職関係における密接な関係
高等教育における職業教育—日本・アメリカ・ドイツ
企業における人間形成と教育—OJTの職業教育学的検討
職業・技術教育職の教員・指導員論—職務と養成システム
職業教育改革論—デュアルシステムとキャリア教育との関連

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