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2009年8月 1日 (土)

日経経済教室の「解雇規制を考える」

7月30日、31日と、日経新聞の「経済教室」で「解雇規制を考える」という2回シリーズがありました。日経で「解雇規制」というと、どこぞのインチキさんみたいな「クビ斬り自由で世の中全部はっぴい」という「お花畑」な論説かと思うかも知れませんが、とんでもない、太田聰一、神林龍という優れた労働経済学者による問題の本質を的確に示す論説です。

太田さん、神林さんのお二人とも、この2年間私も参加していた連合総研の「イニシアチブ2009」のメンバーです。

http://rengo-soken.or.jp/report_db/pub/detail.php?uid=200

木曜日の太田さんの論説は、まず

>確かに、解雇に一定の規制を設けることは、労働者が理不尽な扱いを受けないようにするために必要である。上司と仲違いしただけで解雇されるような世界は、誰も求めていない。ただし、企業の業績が悪化したときの解雇にどの程度の規制を行うべきかについては、議論が分かれうる。

と、「お花畑」な議論を排した上で、

>日本の司法は、不況期には正社員を守るために非正社員を犠牲にすることを認めてしまっている。これでは雇い止めなどをする企業を責めることはできないだろう。

と述べ、非正社員の中身が大きく変わったことを指摘して、

>日本の解雇規制は、「新卒の男性のほとんどが正社員として採用され、彼らが一家の大黒柱として家計を支えており、主婦パートがそれを補助する」という旧来型の労働市場にマッチした制度だった。

が、

>現代のように、新卒で正社員につけなかったために非正社員の仕事を転々とし、しかも不況がくると真っ先に「雇い止め」の憂き目にあうような人々の存在を織り込んではいない。

とその問題点を指摘し、

>今後の基本的な方針としては、解雇リスクの負担について、正社員と非正社員のバランスをただす必要があろう。たとえば、国が4要件に関しガイドラインを作成する中で、バランスを是正することなどが考えられる。

と提案しています。

後述するように、私はここでバランスを是正するのは国のガイドラインのように「上から」なのか、それとも職場からの集団的意思決定メカニズムによる「下から」なのかという問題があると思っています。

一方、金曜日の神林さんは、整理解雇法理自体の判例分析(これは本になっています)をふまえて、

>整理解雇法理が「事実上整理解雇ができない」ほど禁止的に高い解雇費用を使用者に課しているとは言えないかもしれない

と述べ、さらに、

若年へのしわ寄せも一定の合理性を持つ可能性がある

とも述べています。ただし、

>かつてはそれでも良かったかも知れないがいまや若年や中高年とて一枚岩ではない。いま必要なのは複雑な利害調整のメカニズムであり、労働市場や職場での規範形成原理、つまり当事者の範囲と合意原則を再び考える必要もあるだろう

と、やや曖昧な言い方ですが、集団的意思決定の重要性に論及しています。

先週刊行された拙著『新しい労働社会-雇用システムの再構築へ』(岩波新書)をお読みいただいたみなさんには、これこそがまさに拙著の第4章で論じている問題であることがご理解いただけるでしょう。

一般的な解雇規制が労使間の権力バランスの是正という問題であるのに対し、厳密な意味での整理解雇規制は、労働者間での不利益分配の民主的決定問題という観点が重要です。

拙著を読まれた方は、労働問題の本なのに最後のところで妙に政治的意思決定の議論に傾いているんじゃないかと疑問に感じられた方もいるかも知れませんが、わたしはそういうミクロな利益分配、不利益分配の問題こそが政治という現象そのものだと考えているのです。

なお、お二人の議論も、拙著の議論も、話を解雇権濫用法理や整理解雇法理がそれなりに通用している大企業を中心とした世界を前提にしていて、世の中には「そんなんどこの国の話やねん」という結構野放図な世界が広範に広がっているという事実もまた、認識しておく必要もあります。こちらは現在研究に取りかかったところであり、年度末にはある程度の成果をとりまとめることができるのではないかと思っています。

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コメント

>年度末にはある程度の成果をとりまとめることができるのではないかと思っています。

書籍などの成果物を期待しております。
小生が、日頃アレコレ思いを馳せていても、結局それは大企業を中心とした限られた世界のことでありまして、「そんなんどこの国の話やねん」という世界を知らずにいることに、一種の引け目のようなものを感じておりまして。

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