竹中平蔵氏の「日本版オランダ革命」
いや、もちろん、竹中平蔵氏のような立派な方が、オランダの雇用法制も知らずにこんなことをおっしゃっているはずがありません。
http://policywatch.jp/agendas/5(日本が成長を続けるための雇用体系とは?)
>終身雇用、年功序列という雇用形態への偏重から訣別し、同一労働同一賃金の原則の確立("日本版オランダ革命")に取り組むべき
世の中には、スウェーデンの雇用法制も知らないまま、「スウェーデンのように解雇自由にすべし」などと叫んで恥をかいた方もおられますが(下記参照)、いうまでもなく5年にわたって日本の経済財政政策の中枢にあり、経済財政白書の主務大臣として海外情勢についても詳細に知りうる立場にあった竹中平蔵氏が、そういう愚かな真似をするはずがありません。
まさしく、オランダの雇用法制、雇用政策を知り尽くした上で、このように発言されているのであろうと思います。
その意味では、今さら言うまでもないことですが、本ブログの読者のために、念のため、オランダの解雇法制について、私の2年前の文章の一部を引っ張ってきておきます。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/roubenflexicurity.html(解雇規制とフレクシキュリティ)
>(12) オランダ
解雇には職業所得センターの許可又は裁判所の決定が必要である。労働者を解雇しようとする使用者は職業所得センターの地域事務所に解雇の理由と状況を記載した書面で申請しなければならない。労使双方で構成される解雇委員会が正当な理由があるかどうかを審査する。労働者の能力不足又は非行、経済的理由又は労働関係の長期的障害があれば通常認められる。許可を得て初めて使用者は解雇予告を行える。予告期間は勤続に応じて1ヶ月~4ヶ月である。許可なき解雇は無効である。ただし、公務員、教師、家事使用人及び会社役員は除く。また、試用期間中の者、即時解雇、有期契約の場合も許可は不要である。
整理解雇に関する職業所得センターの許可基準は、最後に就職した者から最初に解雇される、労働市場で弱い立場の者より強い立場の者が先に解雇される、社内年齢構成を維持する、といったものである。
職業所得センターの許可の代わりに裁判所に重大な理由による雇用契約の解除を請求することもできる。この場合予告期間はないので、裁判所はいつ雇用が終了するかを決定する。解雇手当の額は、勤続期間、賃金月額及び帰責事由に基づき判例基準で定められている。
解雇が無効の場合、労働者は復職を求めることができるが、使用者は補償額を上積みすることによりこれを拒むことができる。
(参考)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-6bab.html(池田信夫氏の熱烈ファンによる3法則の実証 スウェーデンの解雇法制編)
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「解雇」(dismissal)とは、使用者の発意により労働者の意に反して雇用関係を一方的に終了させることをいい、合意解約、自主退職は含まれませんし、正当な期間満了による終了も含まれません。個別事案がそのどれに該当するかでもめることはよくありますが、それらの概念区分は明確です。これは日本であろうとオランダであろうと、アメリカであろうと同じです。
イギリスではいじめ等で退職に追い込むことを「準解雇」と呼ぶことがありますが、これはまさに概念的には「解雇」でないからそう呼ぶのです。
「解雇」の概念自体は世界共通です。
それがわからないまま、山のようなコメントを書き込んでもすべて無駄になりますのでご注意ください。「日本で解雇とされる事例が、オランダでは解雇とはされないこともあるのかもしれないですし」というのは、個別事案の振り分け判断としてはあり得ても、概念的にはナンセンスです。
もしなお疑問があるのであれば、オランダの労働法制について調べてきた上で、オランダの「解雇」概念は日本の「解雇」概念とこのように違うと書いてあるが・・・という風に書いていただかないと、何とも対応のしようがありません(対応する必要もないのかも知れませんが、もしかして疑問に思う読者の方もいるかも知れないので念のため)
また、アメリカは労働協約によって解雇を制限する条項を含んでいるケースがかなりありますが、日本以上に組織率が低いことを念頭に置く必要があります。そういう特約のない「素の労働法制」においては解雇自由です。思いつきでいろいろ書かれるのは自由ですが、できればアメリカ労働法に関する論文の一つか二つは読んだ上で、ここにこういう風に書いてあるが・・・という風に疑問を呈されると、読者にもそれなりに説得力が増すのではないでしょうか。
投稿: hamachan | 2009年8月 5日 (水) 23時49分
要点を明確に絞りきれてないのに漠然と質問するのは質問する姿勢としてどうかな?と思います。
自覚されているか否かは判断しかねますが、まず『自分で理解可能な簡単な解説本』を読んで頭の整理をされてから質問されてはどうでしょうか?
漠然と質問するのは「質問のための質問」、さらに言うとそうゆう不毛な悪循環に陥っているのは問題をきちんと把握して無いからでしょう。
わかってないのがわからないままと、わかってないことをわかっているのとでは、かなり大きな差がありますよ。
その辺は誰かに聞くのではなく、自分にまず確認されてはどうですか?
投稿: ふみたけ | 2009年8月 6日 (木) 09時12分
ふみたけさんの言葉に尽きていますが、少なくとも、労働法にかかわる問題を「論」じているつもりがかけらでもあるのなら、国語辞典ではなく法律用語辞典を引くのが人間として最低限の礼儀でしょうし、初心者用の労働法のテキストぐらいざっとでも目を通した上でコメントするのが最低限のマナーではないかと私は思いますが、まあ、だからといって削除したりはしませんので、勝手にやってください。
投稿: hamachan | 2009年8月 6日 (木) 12時44分