教会は魔女による利用を認めなければならないか
昨年7月に提案されたEUの雇用労働分野以外における一般均等指令案に対して、カトリック教会が批判的な意見を明らかにしています。
これはEUobserver紙の記事で知ったのですが、
http://euobserver.com/22/28522(Catholics alarmed by EU equal rights law)
>Atheists could attack galleries for showing religious art and witches could claim the right to use church halls under a draft EU equal rights law, the Roman Catholic church has warned.
The EU bill aims to curtail discrimination on grounds of religion, disability, age or sexual preference in social situations not covered by existing labour law, such as renting properties.
無神論者は宗教画を展示する美術館を攻撃し、魔女たちは教会を利用する権利を主張できるかも知れない、EUの均等法案のもとで・・・。
ご承知の通り、EUは雇用労働分野については男女差別、人種・民族差別、宗教・信条・年齢、障害、性的指向による差別についてすでに差別を禁止する指令が成立施行されていますし、雇用労働以外の分野についても、男女差別、人種・民族差別についてはすでに指令が成立施行されています。
残っているのは宗教・信条・年齢・障害・性的指向にもとづく雇用労働以外の差別で、これを対象とする指令案が昨年7月に提案されていることは本ブログでも紹介しています。
しかし、残った分野というのはやはり残るだけの理由があって残っているわけで、なかなか難しい問題があるわけです。
とりわけ、日本人にはなかなか理解しにくいというか、理解はしてもひしひしとは感じられないテーマが宗教に基づく差別という問題でしょう。正直言って、わたしもこの記事を読むまでそんな論点があり得るということ自体、思いもつきいませんでした。
宗教と性的指向の交錯する分野では、
>Homosexual groups ...may declare themselves offended by the presentation of the Catholic Church's moral teaching on homosexual acts; Catholics may declare themselves offended by a 'Gay Pride' march; an atheist may be offended by religious pictures in an art gallery."
ホモセクシュアルのグループは、カトリック教会によるホモセクシュアル行為に対する道徳的説教によって権利を侵害されたと主張するかも知れない、カトリック教徒は「ゲイのプライド」の行進によって権利を侵害されたと主張するかも知れない。無神論者は美術館における宗教画によって権利を侵害されたと主張するかも知れない。
本エントリのタイトルにもなっている魔法使いの権利の話は:
>It is not clear whether [the bill] would apply to the activities of a Catholic priest, if, as recently occurred, he were to refuse to take a booking for a Church Hall from a group of witches,"
最近起こったように、カトリックの司祭が魔女のグループからの教会のホールを利用したいという要請を拒絶した場合に、彼の行動に対してまでこの指令案が適用されるかどうかも明かではないのだ。
そこまで考えるか、というのは日本人的感覚であって、やはり宗教というのはなかなか難しいというのがヨーロッパのデフォルトですか。
ちなみに、このカトリック司教団の手紙は以下にあります。
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