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2009年8月20日 (木)

「きょうも歩く」黒川滋さんの拙著紹介&非常勤職員の時間外手当

本ブログでも何回も紹介している黒川滋さんの「きょうも歩く」で、拙著がちょびっと紹介されています。

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2009/08/post-2.html(非常勤職員だからと残業代を払わないことに是正勧告)

エントリのテーマは江戸川区立図書館の非常勤職員に時間外手当を払わなかったと江戸川労基署が是正勧告したというニュースですが、その話のついでに拙著が出てきます。

>濱口桂一郎さん「新しい労働社会」を読む。何度か読む。全編にわたって自治体の臨時・非常勤職員の課題について考える補助線になる本だと感じた。詳細はまたどこかで書きたいと思う。

はい、よろしくお願いします。

で、このエントリの主たる問題なんですが、一般労働問題としては、非正規労働者に時間給で賃金払っておいて残業代ゼロはないだろ、それは端的に賃金不払いだろ、という話ですね。拙著との関連では、むしろ月給制の正社員に残業代払うのはなぜ?という問題。これはやり出すと止まらない話題なので、ここでストップ。

これに公務員労働法制という得体の知れないものがからみつくとますます訳がわからなくなります。よく問題になる非常勤職員の雇い止めというのは地方公務員にも(なぜか)労働契約法制が適用されない(ことになっている)ことから発する問題ですが(ほんとにそうかは後述の通り大問題ですが)、時間外手当の規定は地方公務員にもちゃんと適用されるので、特別職だろうが一般職だろうが、労働基準法上の労働者である限り、労働基準法がそのまま適用さます。

しかも、このケースの場合、特別職だから労働基準監督署の臨検監督が入ったと思われます。一般職の地方公務員の場合、前に県立奈良病院の事件で取り上げたように、官公署及び教育・研究・調査の事業であれば人事委員会が監督署の職権を行使し、それ以外の事業では労基署が職権を行使するわけですが、区立図書館というのは多分教育・研究・調査だと思われるので、監督するはずの区の人事委員会がそれでええんやと言ってしまう恐れはあったわけですが、幸い(?)特別職なので、原則に戻ってすべて労基署の監督対象になるわけですね。

これは総務省がどんな通知を出そうが出すまいが、そんなこととは何の関係もなく、もともと労働基準法のコンメンタールに昔からそう書いてありますし、それ以外の解釈の余地はありません。それにしても、

>都道府県や政令指定都市などで、非常勤職員のうち特別職と分類される職員に、特別職かつ非常勤職員ということを理由に、時間外手当の支給をしていないケースが少なくない。

という記述からすると、特別職の非常勤は労働者ではないと考えていたということでしょうかね。

わたし個人的には、非常勤職員問題の解決は、今から50年以上前に公務員制度調査会が示した

>現行法上国家公務員とされているもののうち、臨時の業務に従事する者は、国家公務員に属しないものとすること。これらの者は、私法上の雇傭関係に立ち、一年以内の期間を限って雇傭される「臨時職員」とし、国家労務職員とおおむね同一の規制をなすものとすること

というのが一番すっきりすると思っています。現在集団的労使関係法制については労働協約締結権をどうするかという検討が進められていますが、個別雇用関係については訳のわからない公法私法二元論の亡霊がいまだにとりついていて、なかなかどうしようもありませんので、とりあえず非常勤のところだけ私法上の雇用契約に持ってきてしまうのが一番わかりやすいでしょう。

本当を言えば、地方公務員にも現に適用されている労働基準法第2章ってのは一体なんなんだ、任用であって雇用じゃないとか訳のわからんこと言ってるけど、「労働契約」だと法律上書いてあるぞ、といいたいところですけど。

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コメント

今回の記事と関係ないコメントで恐縮ですが、
就業規則に必要最低限記載する義務がある項目
が非常に少ないと思います。
私の勤務する某IT企業ではフレックスタイム
やSPIRIT勤務という裁量労働制などが採
用されていますが、ちょっと運用におかしな所
がある制度です。多分色々な企業では就業規則
の記載に明記されないおかしな勤務制度があり
そこで泣き寝入りしている労働者も少なくない
と思います。お願いします、就業規則に関して
記事を上げてください!

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