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2009年8月26日 (水)

最低賃金、市が決定 千葉・野田市、業務委託契約条例案

昨日の朝日の記事ですが、

http://www.asahi.com/politics/update/0822/TKY200908220127.html

>千葉県野田市は、市発注の公共事業や業務委託に携わる民間労働者の賃金水準を確保するため、市長が定める最低賃金以上の給与を支払わなければならないとした公契約条例案を9月の市議会定例会に提出する。条例案が可決されれば、来年度の発注から実施する予定という。

 条例案は、予定価格が1億円以上の公共工事や1千万円以上の業務委託契約が対象。業務委託については施設の清掃や設備の運転管理、機器の保守点検に限定する。市が定める最低賃金は、毎年、農林水産省と国土交通省が公共事業の積算に用いる労務単価や、市職員の給与条例を勘案して決める。

 最低賃金が守られない場合は契約を解除でき、解除で生じた損害額の賠償を求めることができるとし、事業者名を公表する。また、下請け業者が最低賃金を下回った場合は、受注者が連帯して労働者に支払う義務を負う。

 一般競争入札の採用が拡大し、低価格での落札が増えていることから、市は「低入札はいずれ労働者の質の低下を招き、市民にマイナスとなって跳ね返ってくる」として対策を検討し始めた。05年に県市長会に公共事業での最低賃金の確保などを盛り込んだ公契約法の制定を提案。その後、全国市長会から国に要望として上げられたが、一向に進展しないため、今回、市単独で条例化に踏み切った。

 労働者の賃金を守る法としては最低賃金法があるが、同法で定める最低賃金は労働の実態からはかけ離れていることも賃金水準を確保できない要因の一つになっている。

これについて、さっそく監督官出身の社労士として八面六臂の活躍中の北岡大介さんがご自分のブログでコメントされています。

http://kitasharo.blogspot.com/2009/08/blog-post_26.html

>以前から、公共部門から民間への業務委託の拡大と、一般競争入札の広がりに伴い、受託業者に雇用される労働者の労働条件の低さが顕在化し、指摘され続けていました。何らかの対応が要請されていることはそのとおりと思いますが、その際も以下の点への考慮は必要ではないかと考えます。

・同一価値労働同一賃金の観点から見た公務員(これに準ずる職員)と業務受託業者等の労働者との労働条件格差(特に賃金)の問題

・上記問題に際して、民間市場における業務受託料金の水準をどのように考えるのか、あるいは同水準を考慮することなく、公務員給与水準に合わせる方向で対応するのか

・公務員給与水準をどのように考えるか

・市条例等で最低賃金額を設定する際の決定プロセス・関与者、その内容の合理性
(※国の最低賃金決定に準じ、公労使3者構成で協議・決定するのか、あるいは市独自で判断?)

・国の最低賃金制度との関係をどのように考えるか

いずれにしても注目すべき動きであるといえ、今後の動向を追っていきたいと思います

この問題については、ご承知の方もおいででしょうが、ILOの94号条約という国際基準があります。

最近『世界の労働』誌に書いた「ILO条約が日本の労働・雇用法制に与えた影響」の最後のところで、これにちょびっと触れています。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/ilojapan.html

>1949年の公契約における労働条項条約(第94号)は、公的機関が発注する契約について、法律上の最低基準ではなく、一定水準の適正な賃金・労働条件を義務づけるもので、近年のリビング・ウェイジ運動との関連でも注目されつつある。日本にはまったく対応する法制は存在しないが、かつて1950年には労働省内で、公契約に労働大臣が定める一般職種別賃金を下回らない旨の条項を含むべしとする法案が作成されたことがある。

実は、全建総連がこの条例制定運動をここ数年来繰り広げてきていまして、

http://www.zenkensoren.org/news/02jorei/jorei01.html

>長引く不況を背景として、下請業者や現場労働者への工事代金や労働条件の切り下げなどが横行する無法状態とも言える劣悪な状況が続く中で、改めて見直されてきている『建設現場に適正なルールを確立させる』ための運動は、全建総連が中心となって進めてきている公契約条例(法)の制定に向けた取り組みを主軸に、公契約労働に携わる他産業の人達をも巻き込んで、広範囲な展開を見せ始めています。

全建総連の内部では、全建総連本部の数年前の再提起に応える形で各県連・組合において活発に取り組みが展開されており、すでにさまざまな成果も挙げられています。

『条例(法)』の制定を目差すという運動は、達成までに想定されるハードルが極めて高く、しかも長期的な展望・視点も必要となるスケールの大きな取り組みではありますが、以下に紹介するように、建設業に携わるさまざまな立場の皆さん、そして、『公契約』にかかわる他産業の皆さんからも大きな共感・反響を得ながら、着実に取り組みが前進してきています。

事情はよく分かりませんが、今回の野田市の条例案もこの流れにあるのではないかと思います。

それから、上でちらと触れている1950年労働省の動きについては、来月『季刊労働法』に載せる「最低賃金制の法政策」の中で簡単に解説しています。興味のある方は是非ご購入くださいませ。一般書店で販売される雑誌の論文は最新号が店頭にある間はHPに掲載しませんので。

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