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2009年8月11日 (火)

残業代ゼロでも問題はない・・・けれども

経済産業研究所のディスカッションペーパーとして、黒田祥子さんと山本勲さんの「ホワイトカラー・エクゼンプションと労働者の働き方:労働時間規制が労働時間や賃金に与える影響」 が、先週金曜日付でアップされています。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/09080002.html

>近年、一定の要件を満たすホワイトカラーの労働時間規制を緩和する「ホワイトカラー・エクゼンプション制度」の是非が議論されており、労働時間規制の適用除外によって労働者の働き方がどのように変わるかが論点となっている。そこで、本稿では、管理職や年俸制適用の労働者など、すでに労働時間規制の適用除外となっている労働者(ホワイトカラー・エグゼンプションが適用されている労働者)をトリートメント・グループ、それ以外の労働者をコントロール・グループとし、両グループで労働者の働き方が大きく異なるかどうかを検証した。検証の結果、ホワイトカラー・エグゼンプションが労働時間に与える影響は、どの労働者に対しても等しいものではなく、属性によって異なることがわかった。具体的には、ホワイトカラー・エグゼンプションが適用されている場合、(1)年収の低い労働者や卸小売・飲食・宿泊業で働く労働者、大卒以外の学歴の労働者などでは、ホワイトカラー・エグゼンプションによって労働時間が長くなる傾向がある一方で、(2)年収の高い労働者や大卒労働者については、逆に労働時間が短くなる傾向がある。このうち、(1)の労働者については、fixed-jobモデルが成立しており、平均的にみれば、ホワイトカラー・エグゼンプションの適用で労働時間が長時間化した分は、基本給の上昇によって補償されている可能性が示唆された。また、(2)の労働者については、労働時間が長くなることによって昇進確率が有意に高まるトーナメント・モデルが当てはまり、昇進に至るまでの出世競争が労働時間を長時間化させている可能性が示された。

詳しい実証は、PDFファイルの方をご覧ください。その的確性については私はコメントする能力がありません。

ここでは政策的インプリケーションについて。本文ではそんなことは言っていませんが、あえて徹底して卑俗に翻訳すると:

低賃金やサービス業などの、まあとても「ホワイトカラーエグゼンプション」などと恥ずかしくて言えないような人々のサービス残業は、実は長時間労働する分賃金が高くなっている。残業代をピンハネしている訳じゃない。

いかにも「ホワイトカラーエグゼンプション」にふさわしそうな高学歴の人々の場合、要するに出世するために若い頃に長時間労働していて、その分はめでたく出世したあとに高給として返ってくる。いわば若い頃の残業代を会社に預けて出世してから払い戻してもらっているわけだ。

というわけで、ホワイトカラーエグゼンプションけしからん、サービス残業けしからん、残業代ゼロだ、ピンハネだ、と口を極めて非難していたけれど、それほど非難されるような悪いことじゃない、というインプリケーションになりそうです。

残業代だけが問題ならば。

しかし、前者の人は(仮にその分賃金が高くなっているとしても)長時間労働で失っているものはあるでしょう。

後者は、まさに本ブログをご覧の多くのホワイトカラーの皆さんにはひしひしと切実な思いをかき立てるところだと思いますが、(将来ほんとに返ってくるかどうかも判らないばくちのために)若い頃の貴重な時間を賭け金として差し出しているわけで、それで出世できなかったら「オレの青春を返せ」というところでしょう。

まあ、そういうコンテクストでこの問題を議論するようになかなかならなかったところに、実は最大の問題があるわけですが。

拙著をお読みの皆様にはおわかりのように、これは拙著第1章のメインテーマです。

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