日本と韓国では、労働市場制度と職場慣行は、母親の就業を制限し、低出生率の一因となっている
昨日紹介した『国際比較:仕事と家族生活の両立 OECDベイビー&ボス総合報告書』ですが、もちろん全部読むべきところばかりなんですが、あえて1カ所だけ読みどころをピックアップするとすれば、やはりBOX(コラム)7.1の「日本と韓国では、労働市場制度と職場慣行は、母親の就業を制限し、低出生率の一因となっている」でしょうか。
>・・・日本と韓国では、男性パン稼ぎ人の考え方が、交渉による雇用条件の対象となっている正規従業員についての長期雇用関係(企業の交渉システムの中で今なお生きている(Araki,2002))の二分された労働市場システムに移植された。非正規従業員は団体交渉の対象となっておらず、その雇用条件は一般被用者のものほどよくない。・・・
>・・・非正規従業員は、特定の仕事・職務を行うために、1日単位から1年単位の更新可能な契約で雇われ、相対的に低い賃金であることが多い。正規従業員は会社(仕事ではない)に雇われ、こうした労働者には、使用者との間に長期の雇用関係がある。正規従業員は、会社内部で訓練されて、配偶者、子ども、ないしは住宅に関する手当を受け取る。これらの手当は、男性従業員の家族の幸せのために寄せる使用者の伝統的な関心を反映している。・・・
>代わりに、長期雇用のために、正規従業員は労働条件の「フレキシブル」な調整を受け入れる。サービス残業を含み長時間労働を行うことや、与えられた権利より少ない休暇を取ることによって、使用者と職業障害への忠誠のシグナルを送る。・・・子育てに時間の一部を捧げたいと願っている母親(さらにいえば、父親)にとって、こうした仕事のあり方は魅力的なものではない。
>男女間の就業機会の違いは全生涯に渡って続く。それは、社会政策が職業生涯を維持したいと考えている女性に焦点を当てているという事実にもかかわらず、日本と韓国の多くの使用者は、女性は、学歴にかかわらず、結婚ないし出産によって労働力から引退する(少なくとも一時に)ことを当然のことと思っている。このため、使用者は女性労働者とその職業生涯の将来展望に投資しようとはしない。・・・
>その上、「再就職の母親」、つまり子育てのために労働市場を離れた後仕事に戻る女性たちは、(パートタイムの)非正規従業員になるという結末を迎える(これは日本の社会保険システムによって「奨励され」ている。・・・)いったん非正規労働者になった場合には、正規従業員になる(復職する)ことは難しい。入職に対する年齢障壁が時には生ずるからである。例えば、いくつかの自治体において正規の公立保育労働者として応募する場合は28歳より若くなければならない。そうでなければ、非正規としての雇用契約のみ締結できる。大きな賃金格差がある。平均的には、女性の非正規従業員は同じ女性の正規従業員の33%以下しか稼げない。これらの条件のもとでは、職業生涯を追求したいと願う女性が子供を作らないと決めることが多いのは驚くことではない。・・・・・・
ほぼ1ページ半のコラムの中に、現在の日本の雇用システムの問題点が的確に盛り込まれています。こういうのを読むと、さすがOECDは優秀だなあ、と。
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