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2009年6月28日 (日)

グラーツ工科大学年齢差別事件判決

欧州司法裁判所の年齢差別に関する大変興味深い判決です。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&radtypeord=on&typeord=ALL&docnodecision=docnodecision&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=PSOC&mots=&resmax=100

原告は1986年生まれのヒュッターさん。いま23歳ですね。彼は、2001年9月3日から2005年3月2日まで、つまりおよそ15歳から19歳までの4年近く、オーストリアはグラーツ工科大学の徒弟として働き、その後契約公務員として採用されました。いわゆる「技手」ですね。

同じ時期に22ヶ月年上の女性も徒弟として働き、同じく採用されています。

ところが、オーストリアの契約公務員法では、賃金決定基準としての勤続年数に18歳未満の時期をカウントしてはいけないとされています。

そのため、ヒュッターさんと同僚の年上女性は、同じ期間徒弟として働き、採用されたのに、18歳以後の勤続期間が年上女性の方が長いからという理由で、月額23ユーロの格差が生じてしまいました。

これに怒ったヒュッターさんが年齢差別だと訴えたのがこの事件です。

オーストリア政府によると、この18歳未満の勤続年数を切り捨てるという措置は、そうしないと18歳まで中等教育を受ける人が損をしてしまうからだというのです。18歳より前に働き始めた人が有利になってしまうとまずいので、切り捨てるのだと。

しかし、欧州司法裁判所はその主張を退け、原告の年齢差別だという主張を認めました。

>As regards the aim of not treating a general secondary education less favourably than a vocational education, it should be noted that the criterion of the age at which previous experience was acquired applies irrespective of the type of education pursued. It excludes accreditation both of experience acquired before the age of 18 by a person who has pursued a general education and of that acquired by a person with a vocational education. That criterion may therefore lead to a difference in treatment between two persons with a vocational education or between two persons with a general education based solely on the criterion of the age at which they acquired their professional experience. In those circumstances, the criterion of the age at which the vocational experience was acquired does not appear appropriate for achieving the aim of not treating general education less favourably than vocational education. In that regard, it is clear that a criterion based directly on the type of studies pursued without reference to the age of the persons concerned would, so far Directive 2000/78 is concerned, be better suited to achieving the aim of not treating general education less favourably.

一般教育を受けた人同士でも、職業訓練を受けた人同士でも、やっぱりその年齢で差が生じるんだから、一般教育を受けた人を不利に扱わないためという理屈は成り立たないよ、と。

法律論とすると、そういう次元になるわけですが、社会学的に考えると、そもそも一般教育を受ける人を不利に取り扱わないようにという配慮というのはどういう意味なんだろうか、という感想もわいてきます。

いろんな意味で話のネタになる判決です。

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