連合総研イニシアチブ2009ディスカッションペーパー
去る4月22日に開催された連合総研のシンポジウムのディスカッションペーパーが、ようやく連合総研のホームページにアップされました。
http://rengo-soken.or.jp/report_db/pub/detail.php?uid=200
「イニシアチヴ2009―新しい労働ルールの策定に向けて」研究委員会(*主査)
*水町勇一郎(東京大学社会科学研究所准教授)
大石 玄(北海道大学外国語教育センター非常勤講師)
飯田 高(成蹊大学法学部准教授)
太田 聰一(慶應義塾大学経済学部教授)
神林 龍(一橋大学経済研究所准教授)
桑村裕美子(東北大学大学院法学研究科准教授)
櫻庭 涼子(神戸大学大学院法学研究科准教授)
濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構統括研究員)
両角 道代(明治学院大学法学部教授)
<アドバイザー>
荻野 勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
杉山 豊治(情報労連政策局長)
概要とサマリーと本文がPDFファイルで読めますので、是非どうぞ。
何と言っても、真っ先に読むべきは、労務屋さんこと荻野勝彦氏の論考でしょう。賛否はともあれ、議論をかき立てる効果は随一です。
さわりの所をちょっとだけ。
>このところ「長期雇用、職能給といった日本の雇用慣行に根本的な問題がある。職種別労働市場、職務給に改革すべきである」といった言説を多く目にするように感じる。
なるほど、長期雇用や職能給(などの長期雇用に付随するさまざまな人事管理)をすべてやめてしまえば、私がこれまで指摘してきたことはすべて解消するように思えよう。
現状を変革しようとの意図は共通なので当然といえば当然なのかもしれないが、それにしても面白いことに解雇規制撤廃を主張する自由主義の論者からも格差是正・雇用差別禁止を主張する社民主義の論者からも同様な主張が聞こえてくる。
ただ、これはわが国における従来の労働観、仕事に対する価値観を大きく変えようとしていることには注意が必要だろう。職務給の背景にある価値観は、それが外部労働市場の需給で決まると考えるにせよ国家レベルの中央団体交渉で決まると考えるにせよ、「労働者は所定の職務を実行する装置であって、勤務する企業の業績とは無関係である」というものであろう。極論すれば、仕事に関しては労働者は入れ替え可能な部品みたいなものだ、企業が儲かろうが儲かるまいがそれは経営者と経営幹部の責任であって労働者には関係ない、ということだろう。
それに対し、わが国では従業員、とりわけ正規雇用については、決して入れ替え可能な部品ではなく「労働者は仕事を通じて成長するものであり、生産性向上や人材育成などを通じて企業業績についてコミットするものだ」という価値観が定着している。長期雇用をやめて職種別労働市場にするということは、こうした価値観を放棄し、職務給の価値観に変更するということでもある。
私たち人事労務管理に携わる実務家の多くは、長きにわたって現行の価値観を大切にしながら仕事に取り組んできたと思う。だからそれが良いとか正しいとかいう短絡的な議論をするつもりはない。しかし、それをそれこそ根本的に覆すことは、まことに困難極まりないことではあろう。少なくとも表立ってはその理念に異論の少なかった男女雇用機会均等にしても、今日の定着(いまだ不十分としても)を見るまでにはあれだけの長い年月と多くの労力、忍耐を必要としてきたのだ。
もちろん、実務家の限界を超えたところに進歩がある可能性は否定しないし、その意味で根本にかかわる議論は必要かつ重要だとも思う。ただ、現実を理念に合わせようとすることには慎重であってほしいと願うばかりだ。私たち実務家は、玄田氏が続けて述べているように、働く人々とともに「本当の関係者は、一歩ずつ解決策の積み重ねを、地道に模索している」存在であり続けるしかないのだから。
この話が、今月末発売予定の『POSSE』第4号の「一目でわかる格差論壇MAP」に対するわたしのコメントともつながってくるわけですが。
http://www.npoposse.jp/magazine/no4.html
(なお『POSSE』第4号については、発行されたときに改めて取り上げます。まだ自分の分以外は見てないので。)
ちなみに、労使関係法制については、水町先生の案が労働組合よりも労働者代表に傾いた意見になっているのに対して、アドバイザーの意見が労使とも「やっぱり労働組合」になっているところが興味深いところです。
この点、わたしも「やっぱり労働組合」派なんですね。
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この労務屋という人は、今後トヨタでは期間工を一切使わないと宣言しているつもりなんでしょうか。下請け企業にも製造業派遣を使わせるつもりはないと?
投稿: tiger | 2009年6月24日 (水) 20時13分