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2009年6月10日 (水)

奈良病院「当直」という名の時間外労働裁判の判決

4月23日のエントリで紹介した奈良県立奈良病院の事件の判決文がアップされています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-0100.html(医師の当直勤務は「時間外労働」)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090610094728.pdf

判決文のうち、重要な部分は以下の通りです。

>労働基準法は労働条件(勤務条件)の最低基準を定めることを目的とするものであり(同法1条2項),同法が適用される限りにおいて,地方公務員の勤務条件はこれを条例で定める場合においても労働基準法で定められた基準以上のものでなければならない。原告らは,一般職の地方公務員であり(地方公務員法3条),一部の規定を除き労働基準法が適用され(同法58条),同法37条,41条の適用をも受ける。したがって,原告らが地方公務員であって勤務条件条例主義の適用を受けるとしても,それは同法37条,41条で定める基準以上のものでなければならないと解される。

時間外又は休日労働の割増賃金支払義務に関する労働基準法37条の規定は,監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が労働基準監督署長の許可を受けた者については,適用しないこととされているが(同法41条3号),同法41条3号にいわゆる「断続的労働」に該当する宿日直勤務とは,正規の勤務時間外又は休日における勤務の一態様であり,本来業務を処理するためのものではなく,構内巡視,文書・電話の収受又は非常事態に備えて待機するもの等であって,常態としてほとんど労働する必要がない勤務をいうものと解される(平成14年3月19日厚生労働省労働基準局長通達基発第0319007号,甲13)。そして,同法41条3号にいう行政官庁たる労働基準監督署長は,①常態としてほとんど労働する必要がない勤務のみであること(原則として通常の労働の継続は認められないが,救急医療等を行うことがまれにあっても一般的にみて睡眠が十分とりうるものであること),②相当の睡眠設備が設置され,睡眠時間が確保されていること,③宿直勤務は週1回,日直勤務は月1回を限度とすること,④宿日直勤務手当は,その勤務につく労働者の賃金の一人一日平均額の3分の1を下らないこと,という許可基準をみたす場合に,医師等の宿日直勤務を許可するものとされている(前記通達(甲13)の別紙「労働基準法第41条に定める宿日直勤務について」)。

ところで,勤務時間条例9条1項は,職員に断続的な勤務を命じることができるとし,勤務時間規則7条1項3号 は,県立病院の入院患者の病状の急変等に対処するための医師又は歯科医師の当直勤務が断続的な勤務に当たると規定する。しかし,前記認定のとおり,原告らは,産婦人科という特質上,宿日直時間に分娩への対応という本来業務も行っているが,分娩の性質上,宿日直時間内にこれが行われることは当然に予想され,現に,その回数は少なくないこと,分娩の中には帝王切開術の実施を含む異常分娩も含まれ,分娩・新生児・異常分娩治療も行っているほか,救急医療を行うこともまれとはいえず,また,これらの業務はすべて1名の宿日直医師が行わなければならないこと,その結果,宿日直勤務時間中の約4分の1の時間は外来救急患者への処置全般及び入院患者にかかる手術室を利用しての緊急手術等の通常業務に従事していたと推認されること,これらの実態からすれば,原告らのした宿日直勤務が常態としてほとんど労働する必要がない勤務であったということはできない。

以上のような実情に鑑みると,本件においては,原告らの宿日直勤務について,これを断続的な勤務とした勤務時間規則7条1項3号 に該当するものとすることは,労働基準法41条3号の予定する労働時間等に関する規定の適用除外の範囲を超えるものというべきである

>被告は,原告らの宿日直勤務における救急外来受診患者数及び異常分娩件数は多くなく,正常分娩において医師が実際に診療を行う時間も多くないから,労働基準法41条3号の断続的勤務にあたると主張する。しかし,前記で認定した,奈良病院産婦人科における宿日直勤務の実情に照らすと,宿日直勤務において行わなければならない本来業務(通常業務)の発生率が低く,一般的に見て睡眠が十分とりえ,労働基準法37条に定める割増賃金(過重な労働に対する補償)を支払う必要がない勤務であるとは到底いえな
い。

また,被告は,奈良県人事委員会が医師の当直勤務を断続的な勤務ととらえることを許可しているのだから,労働基準法41条3号に反しないと主張する。しかし,労働条件の最低基準を定めるという同法の目的に照らせば,行政官庁の許可も同法37条,41条の趣旨を没却するようなものであってはならず,そのために上記通達等(甲13)が発せられ医師等の宿日直勤務の許可基準が定められているのである。そうすると,奈良県人事委員会の許可も上記許可基準と区別する理由はなく,上記許可基準を満たすものに対して行われなければならないと解されるから,被告の主張は採用できない。

実体的な中身については今まで本ブログでも繰り返し書いてきたことなので、今更繰り返しませんが、法学的見地からみて興味深いのはこれが公務員事案であって、奈良県立病院の医師の「当直」を同じ奈良県人事委員会が許可するという「お手盛り」の仕組みであったという点ですね。

これは、そもそも民間と同じ労働基準法が適用されていながら、その監督システムが違うことの正当性という議論にもつながる論点です。

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コメント

人事委員会事務局は全員県からの出向ですし、そもそも労働基準監督署的な権限を持つとの認識は全くないですね。給与の勧告しか考えていないと思います。また財政難だから仕方がないと当局はおもっとるようです。

県知事・被告側は主張をとりさげず控訴検討中とのことでしたが、どうなったんでしょうかね…

>一般職の地方公務員であり
 
 この辺の認識が違う、>>法律・条令を変えてやろうという勢いでしょうか

地公法58条の話ですよね? 労基法別表第1第13号の事業では人事委員会の監督で済ませられないはずですが…?
原告側が(その形では)スルーした、ということでしょうか…。

そのとおりです。

私自身の文章でもそう明記しておりましたのに、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/komurodo.html">http://homepage3.nifty.com/hamachan/komurodo.html

>労働基準法の適用関係については、フーバーの怒りにまかせて全面適用除外としてしまった国家公務員法に比べて、地方公務員法では少し冷静になって規定の仕分けがされています。まずそもそも第58条で、労働基準法は地方公務員にも原則として適用されることと明記されました。上述のように、これは日本政府の当初からの発想でした。ただし、地方公務員の種類によって適用される範囲が異なります。地方公営企業職員と単純労務者は全面適用です。教育・研究・調査以外の現業職員については、労使対等決定の原則(第2条)及び就業規則の規定(第89~93条)を除きすべて適用されます。公立病院などは、労使関係法制上は地公労法が適用されず非現業扱いですが、労働条件法制上は現業として労働基準法がほぼフルに適用され、労働基準監督機関の監督下におかれるということになります。

行政指導なら人事委員会ですが、労働基準法違反の摘発であれば司法警察員たる労働基準監督官が出てくることになります。

そこには地方公務員が独自解釈で釈明できる余地はありません。

禁固以上の罪を得て失職するまで、違法状態を続けるつもりなら、その対象を奈良県に求めるまでのことです。

奈良が早いのか、東京が早いのか、埼玉が早いのか、京都?滋賀?
全国の自治体で、競争していただくことといたしませう

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