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2009年5月15日 (金)

視点・論点 「雇用と生活のセーフティネット」

去る4月23日にNHK教育テレビ(夜10時50分から)で放送された標記番組におけるわたくしのスクリプトがNHKの解説委員室ブログにアップされています。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/19565.html#more

この番組で喋るのも、昨年から始めてもう3回目になりました。しかし、誰かとやりとりするのではなく、10分間一人で喋りっぱなしというのも結構緊張するものです。あとから映像を見ると、時間を気にして視線が泳いでいるのが分かって、あれあれという感じです。まあ、でもいい経験ですけどね。

>昨年来の金融危機の中で、派遣労働者をはじめとする多くの非正規労働者が解雇や雇い止めにより失業に直面し、そのかなりの人々が雇用保険を受給することができないことが明らかになり、改めて雇用と生活のセーフティネットに関する議論が巻き起こりました。

 本来、失業した時のセーフティネットとして用意されているのは、雇用保険の失業給付です。先進諸国にはいずれも失業保険制度がありますが、労使の保険料拠出による社会保険制度という性格から、受給資格として一定の就労期間が必要ですし、給付日数にも限度があります。そのため、受給期間が過ぎても就職できない人や、そもそも就労日数が足りないため受給資格のない人がどうしても発生します。そこで、ドイツ、フランス、イギリスなど多くの先進国では、一般会計、つまり税金を財源にした失業扶助制度が設けられています。もちろん、どの先進国にも日本の生活保護に相当する一般的な公的扶助制度は存在しているのですが、仕事を探している失業者である限りは、そこに行く前にハローワークの窓口で失業扶助を受給する仕組みになっているのです。

 これまで日本では、こういった失業扶助制度にはほとんど関心が寄せられませんでしたが、年末年始の派遣村に流れ込んだ人々が、その後生活保護を申請して受給するに至る姿が全国に放映され、このままでいいのかという問題意識を呼び起こしました。労働組合の連合は以前から、雇用保険と生活保護の間のセーフティネットとして、職業訓練受講を要件とする就労・生活支援給付制度を要求していましたし、経営側の日本経団連も今年2月に発表した「日本版ニューディールの推進を求める」の中で、職業訓練の受講を条件とした生活保障のための給付を求めました。こういった動きを受けて、野党の民主党は求職者支援法案を国会に提出し、自由民主党の雇用・生活調査会も「さらなる緊急雇用対策に関する提言」の中で、生活保障のための受講給付金の支給を提起しました。そして、去る4月10日、政府・与党は「経済危機対策」で、緊急人材育成・就職支援基金を設けて、訓練・生活支援給付を支給することを決定し、今国会に提出される補正予算案に盛り込まれることになっています。

 こういった動きは望ましいものであり、とりわけ緊急対策としては必要不可欠であることは確かですが、中長期の制度設計のあり方としては、いくつか考えておくべきポイントがあります。以下、順を追ってお話ししていきましょう。

 まず、現行の雇用保険制度自体の適用範囲の問題です。拠出制である以上、拠出期間が足りずにこぼれ落ちる可能性があるのは当然ですが、日本の場合、パートタイム労働者や派遣労働者には雇用保険への適用要件として1年以上の雇用見込みが求められ、ここではずれると、結果的に更新を繰り返して受給資格が得られたはずの人も受給できなくなってしまいます。これは、「臨時内職的に雇用される者、例えば家庭の婦女子、アルバイト学生」を「失業する恐れがない」という理由で適用除外した取扱いを受け継いでいますが、今日の非正規労働者のかなりの部分が家計補助のためというよりは生計維持のために働くようになっていることを考えると、いささか時代に合わなくなりつつあるように思われます。

 去る3月末の雇用保険法改正に併せて、業務運営要領上における非正規労働者への適用要件を1年の雇用見込みから6か月の雇用見込みに短縮することとされました。しかし、本来、別に制度がある日雇い労働者や季節労働者でない限り、有期労働者にも雇用保険を適用するのが法の趣旨です。また、適用を広げても給付要件を緩和するのでなければモラルハザードの恐れはないことからも、非正規労働者へも原則適用とすべきでしょう。拡大されて困るのは、家計補助的にパート就労しているため失業してもまったく困らず、そのために余計な雇用保険料を払いたくない人々やその使用者でしょうが、派遣切りされて路頭に迷う人々とどちらの利益を優先させるべきかが問われているわけです。

 雇用保険の適用がされていないために、失業した非正規労働者をはじめから一般会計による失業扶助制度で救うということは、本来非正規労働者の失業というリスクを生じさせたことに対して、雇用保険料という形で負担すべき企業が、その負担を免れて国民の税金に依存するということを意味します。これは、負担の公平という観点から見ても、見直す必要があるのではないでしょうか。ちなみに労災保険はどんな働き方をしていてもすべて適用されますし、使用者が保険料を払っていなかったとしても、被災労働者にはちゃんと支給され、使用者から未払いの保険料を取り立てます。同じ労働保険なのですから、同じ扱いにしてもいいように思われます

 さて、それでも受給資格のないまま失業する人は生じますし、給付期間が過ぎても就職できない人も少なくありません。この人々の生活を保障する制度は、これまで生活保護しかありませんでした。しかし、法律上は無差別平等で支給することとされていますが、実際には就労可能な人の流入を福祉事務所の窓口で規制し、ほかにどうしようもない人ばかりを入れてきました。このため、いったん生活保護を受給するとなかなかそこから脱却することができず、長期受給者ばかりになってしまいました。逆に、生活保護に入れてしまうとなかなか出て行かないということを前提にすると、就労可能な人をうかつに入れないという現場の判断には合理性があるということになります。

 法の趣旨からすれば、就労可能な人に対しても生活保護を支給するとともに、再就職して生活保護から脱却していけるように支援していく必要があります。しかしごく最近になるまで、生活保護受給者に対する就労支援はほとんど行われてきませんでした。ようやく2005年度から、福祉事務所とハローワークの連携による就労支援活動がされるようになっています。これは通達に基づく運用に過ぎませんが、全国知事会と全国市長会の「新たなセーフティネット検討会」や経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会は、働ける世代に対して就労支援を伴う5年限定の生活保護制度を提唱しています。これは、生活保護制度の一部を事実上失業扶助制度にしようとするものといえるでしょう

 このように、雇用保険法や生活保護法という既存の制度をより適切に運用したり、改正したりすることによって、必ずしも失業扶助という新たな制度を作らなくても、こぼれ落ちることのないセーフティネットを構築することは不可能ではありません。実際、ヨーロッパでもオランダやデンマークのように、失業扶助制度のない国も結構あります。ただ、ヨーロッパから学ぶべきはむしろ、失業扶助であれ公的扶助であれ、単に生活保障のためにお金を渡しているだけではいけないという考え方が高まってきたことでしょう。それではいつまでも失業や無業状態から脱却できない、むしろ職業訓練や職場経験をさせることによって積極的に再就職に向けて引っ張っていかなければならないという考え方です。

 ワークフェアとかアクティベーションと呼ばれるこの観点からすると、今回創設される訓練受講期間中の生活保障制度は、まさにはじめからアクティベーションが組み込まれた仕組みと評価することができます。雇用保険であれば、訓練延長給付として最大2年間、職業訓練受講中の生活保障がされる制度があります。先にも述べたように、雇用保険の適用を最大限拡大することにより、できるだけ多くの失業者がこの拠出制の枠組みで再就職に向けた職業訓練を安心して受けられるようにすることがまず第一の課題です。その上で、そこからこぼれ落ちる人々に対してどういうアクティベーション型のセーフティネットを構築していくべきか。今回の訓練・生活支援給付が恒久的な制度ではなく、3年間の期限付きであることをむしろいい機会と考えて、これからの雇用と生活のセーフティネットのあり方を総合的に考えていくことが求められます。

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コメント

民主党も党首がかわって「大きな政府」路線でいくのか、それともバラマキを縮小するのか分かりませんが、セーフティネットのような制度はもっと予算をばらまいて欲しいと願っています

必要なバラマキと不必要なバラマキの区別をせずに、ひたすら劣情におもねる議論をする政治家、マスコミ、ヒョ-ロン家にはうんざりしています。

私は鳩山氏とは話したことはありませんが、岡田氏とは8年前に、民主党の勉強会に呼ばれて講演したときに若干言葉を交わしたことがありますが、「アメリカ型よりもEU型を」(大意)という話に対して、「やっぱりアメリカ型の方がいいのでは?」と語っていたことを覚えています。

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