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2009年5月 2日 (土)

ワークシェアリングの光と闇

経営法曹会議からいつもお送りいただいてる『経営法曹研究会報』60号をいただきました。ありがとうございます。正直いうと、経営法曹の皆さんの議論がいちばん肌になじむというか、労働問題の現場の感覚をもちながら、会社を経営する側の感覚をきちんと論理化していこうとするその姿勢が、私には好ましく思えます。

この辺、現場感覚を欠如したまま、紙の上の理屈だけをこね回す手合いの書いたものを読んだあとに経営法曹の方々の書いたものを読むと、やっとまともな世界に戻ってきたな・・・という安心感が湧いてくるから不思議です。

さて、今号の特集は「不況時における労務管理の諸問題」ですが、基調報告とパネル討議のトップは福島正弁護士の「ワークシェアリングの光と闇」、副題は「正社員の賃金と非正規の雇用の相克について」。これが実に面白い。

>この二重構造のままですと、正社員だけのワークシェアリングならできるのかもしれませんが、非正規を取り込んだ社会全体としてのワークシェア、昨今問題になっている派遣切りやパート切りを解決していくことは当然できません。つまり、非正規の雇用を維持するために正規の賃金を下げろという非常に難しい場面に行き着くからです。

>普通の流れでいうと、非正規の雇い止めをしてから、初めて正社員の賃金カットに入っていく。この流れによる限りはワークシェアとはほど遠い。ただ、正規の賃金を削ってでも非正規の雇用維持をしようといっても、それをよしとする雰囲気は日本の労使にはありませんし、それをあえてやろうというインセンティブも全然ない。

この福島弁護士がつくった設問が、これまた興味深い。自動車部品メーカーで、正社員30名、パート30名、このパートは時間はフルタイムで仕事内容も正社員と変わらない。それぞれ別の組合に加入していて、その間は険悪。今回の不況で合理化を計画。正社員とパートとも、従来の1日8時間、1週40時間、週休2日を、1日7時間、1週28時間、週休3日にし、正社員の月給は20%カット、パートは時間数通り30%カット。等々・・・。

これに対する正社員組合とパート組合の言い分が、「いかにも」なので、引用しますね。

>正社員の月給を20%もカットしながら、パートの契約の更新をするというのは、正社員の賃金を軽んじるものであり、これでは雇用を確保するといっても生活できない。パートの雇い止めを行えば、従来の労働時間は維持できるはず。

残業は主として正社員が行ってきた。言いたくはないが、サービス残業で協力してきたのは正社員だ。労働時間の短縮をするとしても、パートを大幅に短縮し、正社員の賃金ダウンは最小限にとどめてほしい。

>パートといっても正社員と同じ仕事をしてきたのに、時間給だからといって賃金ダウンの幅が正社員より大きいのはおかしい。残業は正社員がしてきたというが、正社員の残業代を稼がせるために、会社と正社員がぐるでそうしてきたのであって、パートが残業を忌避してきたわけではない。残業が少ないこと自体がパート差別だった。これでは生活していけないのは、正社員より賃金の低いパートの方がずっと深刻である。雇用期間といっても10年、20年と働いてきた者も多く、生活できないので、辞めるときに正社員には特別にお金を払うが、パートは勝手に辞めたらよいというのは差別である。パートの賃金を期間雇用中に一方的に減額することはおかしい。念のために言っておくが、パートの多くは更新を重ねてきたことによって実質的に無期契約になっており、一方的な雇い止めは整理解雇になる。

これに11の設問がありまして、そのうち、

5.このまま両組合の同意なしに変更を実施した場合、正社員との関係で、パートの雇い止めをしなかったことが「合理性」の評価でマイナスになるのでしょうか。やはりパートの雇い止めを実施すべきなのでしょうか。

つくった設問ですから当たり前ですが、いかにも正規と非正規の労労対立が浮き彫りになるような設問ですね。さて、どう考えますか?

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コメント

労務屋さん等からも異論が出そうですが、正社員とパートの仕事内容が全く変わらないという設定が現実的ではないと思います。設問上も、正社員組合が主張してるようなサービス残業の存在で、既に正社員とパートに相違が出てると思うのですが。

そもそも、フルタイム且つ仕事内容が全く同じなのに低賃金と言う設定のパート社員の組合は、これまで何故正社員としての採用を求めなかったのでしょうか?

もちろん、中小・零細企業でフルタイム且つ仕事内容が全く同じなのに低賃金という状況は普通に有りえるかもしれませんが、そういう企業の場合には、活動する労働組合は組織できていないと考えるのが妥当と思います。つまり、まともな労働組合が無いから、フルタイム且つ仕事内容が全く同じなのに低賃金という状況が維持されていると設定するのが妥当でしょう。

結局、何を言いたいのかというと、この設問に「現場感覚」を伴わせるためには、正社員とパート社員の仕事内容に多少の相違が有り、且つ、正社員には組合があるがパート社員には組合が無い(または、どちらの労働組合も組織されていない)という条件に変更すべきと思います。

思考実験としては有りなのでしょうけれど、現実と乖離した設問と言うのは、「紙の上の理屈」という類の設問に陥っているのではないでしょうか?

>正社員とパートの仕事内容が全く変わらないという設定が現実的ではないと思います。
IT業界だと良くあるよん。
むしろ非正規の方が優秀だったりとかも珍しくなかったり。
どうも古典的昭和敵人事部が正規雇用に求めるのは「従順で潰しが効くこと」であるようなのだが、これが優れた技術者の持つべき素養と矛盾するんだね。

>そもそも、フルタイム且つ仕事内容が全く同じなのに低賃金と言う設定のパート社員の組合は、これまで何故正社員としての採用を求めなかったのでしょうか?

そりゃあ求めても断られてきただけでしょう。
そもそも経営者は不景気になった時に斬り捨てられる安価な労働力としてパートを都合良く利用しているだけなんだから。
まあ一番ありえないのは、非正規雇用にも労働組合があるって所かな。普通はないし、会った所で経営者と太いパイプを持つ正規雇用側の労働組合と戦えるだけの力を持ってない。

>正社員とパートの仕事内容が全く変わらないという設定が現実的ではないと思います。

内容が変わらないどころか、企業の上の方や人事の意向を無視するとか解釈を変えるとかして、現場レベルでパートや嘱託の下に正社員を置くようなこともありますね。

自分がいた会社でも、技術系職員は管理職以外は全員非正規でその関係の業務では立場が逆転(?)していたり、「事務の補助」という契約で新しく入ってきたパートの方が某メーカーの元役員の方で該当業務に精通していた為「補助」の定義を拡大解釈していろいろお願いしていた、ということがありました。

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