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2009年5月29日 (金)

非正社員の能力開発機会を高めるには

JILPTのコラム、今回は原ひろみさんです。

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum0123.htm

>非正社員の働き方では、正社員とくらべて収入や生活が不安定となりやすいことが問題視されることが多いが、より大きな問題は、相対的に職業能力を身に付ける機会が少ないことにある。

 能力開発の機会に恵まれないことが、なぜ問題なのだろうか。それは、能力開発を行えない状態が続くことで職業能力を高めることができず、キャリア形成に支障をきたし、現在の賃金格差以上に、将来の所得獲得能力の差が大きくなる恐れがあることである。特に、若年層が能力開発機会に恵まれないことは、期待就業年数が長いことから問題がより大きい。さらには、社会全体で能力開発を行えない人の割合が高くなると、一国でみた場合にも人的資本の蓄積が進まないこととなり、日本経済に悪影響が及ぶことが懸念される。

>最近の研究成果から、勤務先が職業能力評価を行い、評価の結果を処遇に反映させている場合に、非正社員がOff-JTを受講する確率が高まることが明らかにされている[*3]。さらに、非正社員にも人的資源管理制度を数多く導入している事業所では、正社員と非正社員の間でのOff-JT受講格差は小さくなる[*4]。よって、人的資源管理制度の導入状況についての企業情報は、就職先を選択する際の指標の1つになるだろう。

このコラムの背景には、もうすぐアップされると思われる原さんの報告書『非正社員の企業内訓練についての分析-『平成18年度能力開発基本調査』の特別集計から-』があります。今の時点ではまだアップされていませんが、ものはできているので、もうすぐアップされるでしょう。

実は、この内容に基づいて書かれているのが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-2595.html(終身雇用という幻想を捨てよ)

で取り上げた財団法人総合研究開発機構(NIRA)の「終身雇用という幻想を捨てよ-産業構造変化に合った雇用システムに転換を」と題する研究報告書に収録されている

http://www.nira.or.jp/outgoing/report/entry/n090427_334.html

http://www.nira.or.jp/pdf/0901hara.pdf

原さんの「非正社員の企業内教育訓練と今後の人材育成―企業横断的な能力開発を実現するためのシステム構築を」という論文です。

このエントリの時には、解雇規制がどうじゃらこうじゃらという話とごっちゃに論じてはまずいので、あえて触れませんでしたが、このテーマはとても重要なテーマですので、是非読まれることを期待したいと思います。

この論文の最後のところで、原さんはこう語っています。

>第2 節から、非正社員に教育訓練を行う企業に対して支援を行うことが、適切な企業内訓練促進手段になること、さらには、訓練人材や訓練ノウハウの情報を蓄積・流通させることも、有効な手立てとなりうることが示された。また、職業能力の評価の実施が企業の非正社員への訓練コストを低下させる可能性が示され、こうした仕組みが、長期的な収益回収期間が見込めず、さらには仕事に対する志向が正社員とくらべて多様である非正社員への人的投資コストを引き下げると考えられる。よって、この結果は、企業横断的にキャリア形成を行う人たちへの能力開発を考える際の、一つの手がかりになるだろう。そこで、最後に本節では、分析結果を参考に、こうした人たちの能力開発を促進するためのその他の対策を検討しよう。
短期的には、既存の制度を活用することが効率的であろう。既存の制度に目を向けると、職業能力についての評価と職業訓練がワンセットになった制度としては、2008 年4 月に
入されたジョブ・カード制度が近いと思われる。ジョブ・カード制度は、就労の実現ととも、
能力開発機会に恵まれない人たちへの人的投資の促進も目指す制度である。求職者、ハローワークやジョブカフェなどで、自身の職業能力やキャリア形成上の課題、就業に対する希望・訓練希望を整理し、キャリア・コンサルタントによるコンサルティングが行われ、さらに訓練への推薦がなされ、企業現場における実習(OJT)と教育訓練機関等における座学(Off-JT)を組みあわせて行う実践的な職業訓練プログラムを受けることができる。実際に雇用されて企業の現場で訓練を受けられることから、企業の外と中をつなぐプログラムといえよう。また、プログラム終了後は実施企業だけでなくキャリア・コンサルタントによって職業能力証明書が出されることになり、客観的な質の担保が行える仕組みとはなっている。
ジョブ・カード制度では、いくつかの業種において関係する職務について評価シートとカリキュラムのモデルが提供されており、かつキャリア・コンサルティングや訓練評価においてはキャリア・コンサルタントを活用でき、また訓練のコーディネートや企業内訓練担当者・評価者のための講習も提供されるなど、評価資源や訓練資源が大企業とくらべて相対的に少ない中小企業にとって、より有効であると思われる。実際、制度導入後間がないため、2008年9 月時点での協力企業は全国で417 社と数は少ないものの、中小企業が約70%を占めている。よって、協力企業を増やすためにも、制度の仕組みやメリットについての情報の周知が求められる。
ただし、このような制度が幅広く普及するには、評価や訓練が通用する範囲を広げなければならず、長期的にみた場合、職種別労働市場の整備が必要であろう15。また、企業の訓練インセンティブを維持していくには、雇用形態に関係なく能力向上に見合うようにより高度な業務に活用していく仕組み作り、つまり正社員も含めて雇用管理のあり方を問い直すことが、将来的には不可欠であろう。
企業内訓練の枠組みから漏れてしまう人たちがこれまでも存在してきたが、今後もそうした人たちがいなくなることはないだろう。本章では、企業内訓練の枠組みにいかにして多くの人を乗せていくかということをメインに考えてきたが、この枠組みに乗れない人たちが能力開発の機会に恵まれるような対策も当然考えていかなければならない。先行研究からも、企業内訓練の受講機会に恵まれない人ほど、自己啓発など自分自身で主体的に行う能力開発も実施しない傾向があることが確認されており、こうした層に目を向けた対策を考えることは、今後ますます重要になってくるだろう。具体的な対策として、小杉(2009)でも指摘されているように、地場産業のニーズを取り込んだり、地域の産業政策と連動させるように教育訓練プログラムを設計し、教育訓練プロバイダーで提供されることが望まれる。さらには、単位認定などを通じて高等教育卒業資格と接続するなど訓練受講者にとって魅力の大きい訓練プログラムの提供が求められるだろう

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