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2009年5月 8日 (金)

牛尾治朗氏の雇用観

産経に、牛尾治朗氏のインタビュー記事が3回連続で載っています。牛尾氏は現在日本生産性本部会長ですが、1990年代の改革志向時代の経済同友会の代表幹事として、改革派財界人の代表として活躍されていたことが印象に残っているでしょう。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090505/biz0905050300000-n1.htm

インタビューはやや散漫ですが、本ブログの関心事に沿って見ていきますと、まずはじめに

--「雇用」という問題がクローズアップされています

 牛尾 昭和40年代の高度経済成長期、日本の雇用形態は「ヒューマン・キャピタリズム(従業員資本主義)」という言い方で評価されていました。当時アメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーが来日して対談したことがあり、「日本は従業員資本主義だ。すばらしい」と褒めていたのを思いだします。西洋では人件費はコストだが、日本の従業員資本主義ではヒューマン・リソース、つまり人間は資源であると考えていました。そのころ経済雑誌に「従業員シンジケート」という考え方を書いたことがあります。日本には「従業員一家主義というのがあるんだ」と。

 --そのあり方は戦後の経済成長の大きなパワーとなりました

 牛尾 戦後、日本経済は幾度も厳しい局面に立たされますが、このシンジケートは難局を乗り越えるたびに強くなった。経営トップが父親のような存在で家族主義的な結束を強め、1971年のニクソンショック(ドル危機=急激な円高)、73年の石油危機など、未曾有の状況を労使協議会という形で乗り越えてきた。経営と雇用の関係が理想的に花開き、世界に類のない「非常にいい関係」をつくりあげることができました。

このあたりは、70年代から90年代初めにかけての私のいう企業主義の時代ですが、牛尾氏はそのころはこういう日本型システムの良さを主張する研究者たちと密接な関係にありました。

--その後、バブル経済が弾け、雇用のあり方も大きく変化します

 牛尾 バブルが弾けて3つの過剰、つまり「労働力(雇用)」「設備」「借金」が指摘されました。適正に対してそれぞれ「30%多い」と。企業経営者は真剣に取り組み、借入金と設備は2、3年で何とか正常化することができましたが、雇用は簡単にいかない。従業員3割カットに8年から9年もかかりました。そこで、「正規雇用への対応は非常に重いものがある」と経営側は考えた。この10年、景気が戻ってからも製造業は安易に正規雇用を増やせなかったし、サービス業は急発展のなかで非正規雇用で対応していかざるを得ませんでした。

 --昨年末からの景気の垂直落下で非正規、派遣など雇用弱者の切り捨てが問題になりました

 牛尾 「雇用は企業の責任」という議論がありますが、これだけ景気が変動し、そのスピードがものすごく急な場合は、民間企業のレベルを超える。政治、社会の問題といっていいでしょう。この10年の労働、雇用形態の多様化の進展を検証することもなく、急に正規、非正規の議論になってしまった観がある。多様化は、「転勤はいやだ」とか雇用される側の要望もかなり反映する形で進んだ面も大きいのです。

最後のところはやや余計ですが、雇用は企業の責任といわれても・・・というのは実はもっともな面があります。そもそも景気変動による雇用量の絶対的縮小は本来的には政府が対処すべきことでしょう。ただ、そういう景気変動という企業がどうしようもないことに対しても企業が責任を持って雇用を確保するからね、というのが、上でいう「ヒューマンキャピタリズム」だという風に経営者自身がいっていたのであれば、それは責任を負うべきでしょう、という話になる、という筋道であって、ここには、イデオロギー構造が複雑に絡み合ってわけわかめになったぐちゃぐちゃがかいま見えているわけですが、まあそれはともかく、牛尾氏はそこからさらに新たな価値観を提示しようとします。

--しかし中長期には、改めて企業にとって雇用のあり方はどうあるべきか考えていかないといけない

 牛尾 サービス産業が大きくなり、環境問題や女性の社会進出、これから大きな問題となってくる少子高齢化への対応などを踏まえた雇用の新しいあり方を構築していく必要があります。企業として利益を出すことも大事だが、「いい雇用をたくさん持っている会社」が優れた企業だという価値観を日本社会につくっていくことではないでしょうか。大量生産、コスト主義が軸にあるこれまでの20世紀型経営でなく、多数雇用が善だという21世紀型経営が、おそらく今回の大不況を乗り越えた後に出てくると思います

「いい雇用」「多数雇用」という言葉が唐突に出てきて、いささか意味が図りかねるところで、第2回へ

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090506/biz0905060357001-n1.htm

>--多数雇用する会社がいい企業だと

 牛尾 かつて力を発揮した日本独特のヒューマン・キャピタリズム(従業員資本主義)を新しい時代に沿って制度改善していくことです。従業員を労働コストとしてみるのではなく、資源として考えるという基本にもどって新しいルールをつくっていく。たとえば、電話1本で売買して2億円稼ぐ会社より、100人使ってやっと5000万円稼ぐ企業が評価され、大事にされるという経済社会です。この企業の人件費の所得税分は法人税を減額してもいいよとかね。

これを真正面から受け取ると、労働集約的な企業がいい企業で、資本集約的な企業はよくない企業ということになるんでしょうか。それって、生産性は低ければ低い方がいいと?

いや、実をいえば、私はマクロ社会的にはそういう面はあるのではないかと思っています。少なくとも、国際市場で競争しているわけではないサービス業についていえば、サービス業の生産性が低いのがけしからん、もっと生産性を上げよう・・・なんて国民運動をやって何の意味があるのか、と思っていますし。そうやってサービス業から生産性の低い人々を叩き出して、どうやって生活させるのか、まさかずっと福祉で面倒を見るとでも?と思ってますから。

でも、日本生産性本部の会長がはっきりとそうおっしゃるというのは、私如きが言ってるのとは違って、重みがありますからね。

--働く人が主役

 牛尾 働く側からいえば、ワーク(仕事)・ライフ(暮らし)・バランス(調和)が向上します。質のいい暮らし方がまずあって、それにふさわしい職が得られる。若い共働きの夫婦が、休日に一緒に食事に行ったり、芝居を見たり、代わりばんこで育児をしたり…。ご主人が成功したら奥さんは仕事を辞めて大学院で勉強したり、ご主人も40歳くらいで大学院へ行き専門知識を充電し、高給で再就職するとかね。21世紀型経営は働く人が主役になる。その人が、自分の人生観に従って仕事が選べる。会社もそれに協力する。協力が得られないときは会社を替わればいいのです。

こちらはワークライフバランスですが、そして言ってることはまことにもっともですが、ここでいう「質」ってのは暮らしの質、働き方の質ですよね。あんまり稼がなくてもたくさんの人を雇って(多数雇用)、その人々に生活とバランスのとれたいい仕事を提供する企業がいい企業なのだ、と、そういう印象を持たされたところで、次でサービス業の生産性が出てくるんですね。

--企業はどうしたらいいでしょう

 牛尾 今後、労働人口は減っていくのだから企業は「量から質」に転換していく以外にありません。つまり生産性の向上です。日本は特に3次産業の生産性が低い。金融、IT、観光のサービス業御三家の生産性を高めていくこと。生産性本部でも2年前にサービス産業生産性協議会を設立して生産性向上運動に取り組んでいます。顧客満足度係数(CSI)をつくってサービス業のいかなるものも数値化し、高い、低いを示す。さらに創意工夫に満ちた優れたサービス企業を掘り起こして顕彰し、その経営手法の紹介と普及にも力を入れています。見事な会社はいっぱいある。頼もしくなりますよ。

いやまあ、確かに労働人口が減っていくのですから、余っている人をたくさん雇う企業がいい企業だなんていう古くさい考え方はやめよう、もっと生産性を上げて数少ない労働力を有効に活用しようというのは、これまたもっともです。もっとも、もっとも、と、なんだか説得されてばっかりのようですが、いや確かにそうなんですが、でも少し前で言ってたことと少し後で言ってることが首尾一貫してるのかな?という疑問くらいは湧いてきたりします。

これに対する解答を求めて、第3回目に突入しますと、

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090508/biz0905080348003-n1.htm

--サービス産業の生産性を上げることが大事

 牛尾 日本にはその潜在力が十分あります。これから伸びる分野に医療関連があるが、予防医学から健康のためのサービス、美容まで広範かつ膨大な需要がある。ところがその中核の医療が“お役所の仕事”。そこをできるだけ民営化することですね。

ここは本当に意味不明です。「民営化」って、医療従事者が公的部門か民間部門かということでいえば、日本は先進国では極めて民間比率が高い国のはずです。

健康保険が「お役所仕事」ということであるなら、アメリカみたいに民間医療保険型の社会にすべきだという主張なのでしょうか。これまただいぶ時代遅れの市場原理主義のようであります。

健康のためのサービスや美容がお役所仕事になっているという話も意味不明です。ここはもしかしたら、産経の記者が一知半解で適当に記事にしてしまったのかも知れません。

--女性の力にも期待がかかります

 牛尾 医療や介護、教育分野もウーマンパワーに負うところが大きい。また年配者には年配者の味と経験があり、若い人には若い人の魅力があります。ワーク・ライフ・バランスの考えを基本に、年齢層を多様に組み合わせたサービスを作り上げていくことが、生産性向上にもつながります。

というもっともな話とどうつながるのか、記事を読んだだけではよくわかりかねるところです。

そこから先は、なんだか人気商品バーゲンセールみたいな感じで、雇用の話とどうつながるのか、正直筋目を追うのが難しいのですが、

--日本は内需だけでは食べていけない

 牛尾 働く人が主役の21世紀型経営というのは「自然との共存」。いまや省エネ型の商品はよく売れるし、ハイブリッド車には国際的関心が集まっています。太陽光、風力もあります。その周辺にはサービス業もあり、生産性を高めてサービスの輸出もできるようになるでしょう。外国人観光客に対する「もてなしの心」(ホスピタリティー)は日本の国民性といっていい。それをサービス商品など価値あるものに工夫して観光客を増やしていく。

いやまあ、環境と雇用というのははやりですし、なんといってもグリーンニューディールですから。それとホスピタリティと生産性の三題噺をどう解くか、と。

その先はアジア共同経済圏です。特にコメントしません。

--今回の大不況が長引くと「21世紀型経営」がなかなか来ないですね

 牛尾 私は楽観していますよ。景気の回復はおそらく、中国の成長力がリードする。ただ、競争力はアメリカです。金融や自動車だけにスポットを当ててダメというのは間違い。ITからBT(バイオ技術)、メディカルはほとんどアメリカがトップ。世界中の優秀な人材が集まっています。日本は中国の成長力とアメリカの競争力に協力して経済を回復させていける。

 --持論の「アジア共同経済圏構想」ですね

 牛尾 中国は、技術など質の高い競争力を持つためには日本の協力が欠かせない。双方の大きなマーケットはアジアです。日本はアジアに対する外需を大事にし、日本の市場をアジアの内需として開放する。つまり「日本も中国もアジアの内需である」ということです。ドイツとフランスが軸になって欧州連合(EU)ができていったように、日中韓が協力してアジア共同経済圏をつくっていくことが日本の21世紀の道だと思います。

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