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「請負」の所管官庁などというものは存在しない

本ブログに去る月曜日にコメントの形でリンクをいただいた「人事総務部ブログ&リンク集」さんのブログをつらつらと眺めていると、いささかミスリーディングではないかと思われるエントリを見つけましたので、世間によくある勘違いであることもあり、ここで若干説明しておきます。

念のために言っときますと、派遣と請負の区分基準への疑問など、もっともな議論も多いのですが、それがこういう話につながってしまうと、かえって事態をおかしな方向に持っていくだけだと思われるからです。

http://www.人事総務部.jp/?p=197

>今後求められる「請負」のあり方について厚生労働省が原案を提出するようですが、元来、「請負」は経済産業省の管轄です。なぜなら、「請負」は商行為だからです。それを厚生労働省が調査すること自体筋違いに当たるのです。

世間には、こういう間違った考え方を持っている人も結構いるのだろうと思われますが、これが間違いであることは、建設業の請負が国土交通省(旧建設省)の所管であることを考えればすぐ分かります。

もちろん、国土交通省は建設請負の「請負」ではなく「建設」を所管しているのです。警備業の請負は警察庁の所管ですが、これまた警察が「請負」を所管しているのではなく、「警備」を所管しているゆえです。

これらとまったく同レベルにおいて、製造業の請負は製造業を所管する経済産業省の所管ですが、それ以上ではありません。

建設業とか警備業とか製造業とかといった「業所管」を超えて、「請負」自体を所管している官庁というのは、現在のところ存在しません。あえて言えば、民法の規定に基づくのだから法務省といえば法務省になるのかもしれませんが、それでは、現在の問題への政策的対応にはなりません。

請負と派遣の区分基準への正当な疑問が、派遣だけではなく請負にも労働者保護法制を適用すべきという戦前の労働法制以来の正しい方向性に向かうのではなく、現在の裏側からの労働法の適用すらなくしてもっぱら産業政策的監督だけにしてしまうという話になるとするならば、そんな議論が世論の支持を得られるとはとうてい思われません。

かつて、『世界』で書いたように、私は御手洗経団連会長の言葉に賛成なのですが、その賛成の意味をきちんと理解していただきたいと思います。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/bigbang.html(『世界』11月号「労働ビッグバンを解読する」 )

>まずは、経済財政諮問会議で日本経団連の御手洗会長が「受け入れた先で指揮命令してはいけないというが、仕事を教えてはいけないというのは請負法制に無理がある」と発言し、偽装請負を正当化するものとバッシングを受けた問題から考えよう。なぜ偽装請負が悪くて労働者派遣なら良いのだろうか。派遣も請負も不安定な間接雇用であるという点では変わらない。偽装請負はけしからんから適正な派遣にせよと主張することで、労働者本人にいかなるメリットがあるのだろうか。彼らの常用雇用化を主張するのであれば首尾一貫するが、それを義務づける根拠規定はない。確かに「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示」を前提とすると、うかつに接触して「指示」したととられないように、請負労働者との接触は控えた方が賢明ということになる。ところが2005年の労働安全衛生法改正によって、こと安全衛生に関する事項については積極的に接触することが望ましいということになっている。同じ職場に働く労働者として、仕事に関わることそれ以外のこと含めて、関係を深めていきたいと考えるのは自然なことである。

 そもそも戦前の工場法は、労働者派遣事業の前身たる労務供給請負であってもそれ以外の事業請負であっても、すべて工場主に使用者責任を負わせていた*4。派遣でない請負であれば使用者責任がないなどというのは、戦後労働者供給事業を全面禁止したために生じた事態である。そのために、御手洗会長が指摘するような「矛盾」が生じている。この「矛盾」は、しかしながら、本来労働法規制によって規制されるべき請負がなんら規制されていないという事実から生じていることを見落としてはなるまい。御手洗会長は「請負法制に無理がある」というが、むしろ請負法制が存在しないことが「無理」なのである。請負労働の問題は偽装請負を非難して労働者派遣に放り込めば解決するわけではない。むしろ戦前のように請負であっても受入れ事業者に使用者責任を負わせることによってのみ解決することができるはずである。

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コメント

民法の請負も典型契約としての狭い概念ですね。
民法頭で業界(地方自治体)に入ってちょっと驚いたのは地方自治法上の請負概念が広いこと。
最近hamachan先生のブログなどで労働法の一端に触れ、この世界の請負概念もけっこう広いと興味深く感じました。自分たちがやっている「委託」が労働法では請負に含まれると思っていない自治体職員は多いようですよ。
偽装請負という用語も違和感がありました。普通は偽装派遣と言うべきものですね。

投稿: 迷跡 | 2009年5月 7日 (木) 10時57分

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