変貌する労働時間法理
道幸哲也・開本英幸・淺野高宏編『変貌する労働時間法理-≪働くこと≫を考える』(法律文化社)をお送りいただきました。ありがとうございます。
>労働時間法理を判例・学説などの理論面および実務面から総合的に再検証し、その解明を試みる。実態および法理の新たな展開を踏まえ、その全体像を提示するとともに、《働くこと》とは何かを原理的に考察する。
この本は、目次をその執筆者名とともに眺めると、その性格がよくわかります。
第1章 なぜ労働時間か・・・・・道幸哲也
第2章 労働時間規制とその構造・・・・・・山田哲
第3章 労働時間の算定及び労働時間規制の緩和規定・・戸谷義治
第4章 労働契約法上の労働時間・・・淺野高宏
第5章 文書による労働時間管理義務・・・淺野高宏
第6章 賃金請求権との連動・・・開本英幸
第7章 労働時間の決定・変更方法・・・・・斉藤善久
第8章 労働時間規制と生命・生活・・・・・大石玄
第9章 労働時間法理における≪休むこと≫のあり方・・・國武英生
終章 ≪労働≫のあり方を考える・・・・・・道幸哲也
北大の道幸先生のもとで労働法を研究している研究者・実務家の共同研究成果です。3年前には、『職場はどうなる 労働契約法制の課題』を明石書店から出しています。
各章とも興味深い論点を提起していますが、ここでは数少ない労働関係ブログ仲間である「博物士」こと大石玄さんの第8章を若干紹介しておきます。
http://d.hatena.ne.jp/genesis/
Ⅰ はじめに
Ⅱ 長時間労働と過労死の関係
1 これまでの経緯
2 過重負荷と<疲労の蓄積>
Ⅲ 業務起因性についての裁判例
1 行政認定と司法判断のずれ
2 不規則労働の過重性
3 職場滞在時間と持ち帰り残業
Ⅳ ホワイトカラー・エグゼンプションをめぐって
Ⅴ うつ病と長時間労働
Ⅵ 休み方から考える働き方のルール
Ⅶ ワーク・ライフ・バランスをめぐって
1 仕事と家庭生活の調和
2 仕事と私生活の調和
Ⅷ おわりに
最後のところで、それまでの記述の流れをもう一回ひねって、
>だが、労働者の家庭生活についても多種多様な配慮を為すべきことを使用者に求めると言うことは、裏を返せば労働者が使用者に対して負う義務を拡大させる恐れがあるし、労働者に対してプライヴァシーの開示を迫るということにもつながりかねないという問題がある。WLBを踏まえた新しいワーク・ルールの検討が次なる課題である。
と書いてあるところが、この問題の奥行きを示しています。
(参考)
http://homepage3.nifty.com/hamachan/karoshiprivacy.html(過労死・過労自殺とプライバシー)
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