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2009年5月10日 (日)

「社会の公器」たる企業をめざす労使の役割

日本生産性本部がさる4月28日付で公表した報告書です。

http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/lrw/activity000917.html

提言 「『社会の公器」たる企業をめざす労使の役割
     ~現下の情勢を乗り越え『人材立国』への道を」 の構成

はじめに

1.今日の経済・雇用情勢への対応の視点とは
(1)戦略性をもった緊急雇用対策の実施を
(2)中長期的な展望をもって危機的状況の乗り切りを
(3)雇用の姿を考える視点-「人材立国」の戦略を描くにあたって-

2.「社会の公器」としての企業は何を目指すのか
(1)「社会の公器」としての企業
(2)「雇用の安定」の今日的な意味合い

3.新しい雇用の姿をもとに「人材立国」への道を
(1)教育訓練・能力開発を通じて企業価値の向上を
(2)一人ひとりの視点でキャリア形成を
(3)ワーク・ライフ・バランスにより企業活力の向上を
(4)グローバルな発想による人材育成を

むすび-信頼を基軸にした社会の創造を-

本文はこちらですが、

http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/lrw/activity000917/attached3.pdf

その中から、興味深い記述をいくつか見ていきましょう。

はじめに「今日の経済・雇用情勢への対応の視点とは」で、非正規労働に触れた部分、

>なお、今日、非正社員の失業問題が焦点になっているが、これら非正社員雇用を一括りに議論し、否定的な評価が強調されているように受け取れる。この問題については、直接的な雇用関係に立つ場合と派遣・請負など間接的な雇用関係に立つ場合とを分けて論じていくことが必要である。そのうえで、雇用形態の特質をみつつ、非正社員の雇用を企業の貴重な戦力に位置づけ、安心かつ安定した形で就労できるような働き方に改革することが求められる。また、非正社員の失業問題に対する緊急対策として、雇用機会の直接的な提供に力点がおかれているが、むしろ将来にむけた一人ひとりの職業キャリアを保証する視点に立って、そのための相談援助を行いながら人材育成や就業支援を行っていくことが重要である。

新卒者の採用内定等の取り消しも大きな雇用問題の一つとなっているが、やむを得ず採用内定者を自宅待機としなければならない場合には、内定者が公的機関における職業訓練も受講できるよう企業や政府の適切な対応が求められる。これまでの不況時においても、多くの企業では新卒者の採用を手控えてきた結果、フリーター化した多くの若者が生まれ、その後も滞留し続けた若者も少なくないという指摘もある。わが国の将来に禍根を残さないよう、新卒者をはじめとする若者の就職支援に万全を尽くすことが重要である。その意味で、既卒者を含め若者の採用機会を広げるべく、新卒採用を重視してきたこれまでの採用慣行を見直し、通年採用を含め柔軟な方向に変えていくことについても検討すべき時期にきているといえよう。

>しかし、こうした積極的な理由による選択の結果ではなく、やむを得ず非正社員雇用を選択しなければならなかった人も少なくないことを留意すべきである。今日まず問題とすべきことは、これらの人々の雇用機会が、働き方の選択肢としても不安定であったり、十分な能力開発機会が提供されなかったりして、職業キャリアの形成が継続して行われないという点である。

このため、正社員・非正社員に関わらず、キャリア形成の条件整備を図りつつ人材の価値を高めていくことをまず目指さなければならない。その意味で、非正社員に対しても、本人が希望すれば正社員への登用が可能となる道を開くことが重要である。また、正社員との処遇が不均衡であることも大きな問題である。このため、非正社員に対しても処遇の均衡を図るとともに、それにとどまらず能力の開発を進め、企業内外における継続的なキャリア形成支援が図られるような環境づくりを進めることが急務である。

次の「「社会の公器」としての企業は何を目指すのか」の中で、とくに「「雇用の安定」の今日的な意味合い」の記述が興味深いです。

>まず、「雇用の安定」は、正社員だけでなく非正社員も含めて考えなければならない。とくに、非正社員が増大するなか、協働する体制やその前提となる一体感や連帯感が変質してきたことは重要な点である。非正社員が集団的な労使関係の枠組みから零れ落ちてしまうことで雇用の安定に問題がないか、非正社員の増加したことが人材育成・能力開発や職場コミュニケーションなど現場力に影響を与えていないかなど、多くの課題が浮かび上がっている。それは、非正社員が増大していく中で、正社員を念頭において構築されてきた既存の諸制度が十分に機能を果たせなくなったことの現われでもあろう。企業や職場において、これらの課題について早急に点検していくことが求められる。

また、わが国において「雇用の安定」を実現していくためには、集団的な労使関係が重要な機能を担ってきたことは確かである。労使が一体となって職場の連帯感を強め、企業に対する求心力を高めていくことは、生産性向上の基礎となる。しかし、就業の多様化が進む今日においては、集団的な関係だけではなく、働く者一人ひとりに着目した雇用の安定を考えていくことが重要になってきている。労働組合に対しても、このような変化を強く認識するなかで、雇用形態に関わらず、個人の働き方や就業ニーズもふまえた対応を図りつつ、より個人に軸足をおいた形で組合機能を発揮させた活動の展開が期待される。同
時に労使は、これらに対応した労使協議のあり方を考えるなど新しい労使関係のシステムづくりを行うべきである。その上で、企業経営に対する共通の認識を育むべく、徹底した労使の議論や話し合いを行うことを求めたい。

最後の「新しい雇用の姿のもとに「人材立国」への道を」においては、

>長期的な継続雇用とあわせて雇用の安定を企業組織の枠だけにとどまらず実現させていくことである。その上で、一人ひとりのキャリアビジョンが描かれ、各々の目標にむけた道筋が明確になるとともにその支援を行うことが求められる

という観点から、

>OECD 加盟国中、わが国の2005 年における国内総生産に占める教育(学校教育)への公的支出割合は最低レベルを示しているが、職業訓練においても国際的にみて公的支出は低い

ことを指摘し、

Edu_2

>人材投資に関わる公的予算の拡充を図り、OECD 主要先進国並の水準以上に引き上げるべきである。また、公共職業訓練の強化も求められるが、その際、民間の教育訓練機関の一層の活用を検討するなど、効果的・効率的な推進体制の見直しを図ることが必要である。

学校教育に対しても、公的予算を積極的に投入し、より早期からの職業意識の醸成やキャリア教育の充実など、社会人としての基礎力や人間力の育成に資するプログラムの導入を進めることが必要となる。そのためにも、労使は、初等・中等教育や大学、ビジネススクールなど教育の重要性を認識し、プログラムの開発や寄附講座の開設、講師派遣など学校教育の拡充に貢献することが求められる。

と述べるとともに、

>企業は、雇用形態を問わずすべての従業員に対して、外部教育機関などを活用した選択可能な教育訓練メニューを提供するなど、人材育成の総合的な推進を図るべきである。さらに企業は人材を育成する「社会の公器」であるとの認識をもって、社会的に人材を育成することに積極的に関与する必要がある。その一環として、ジョブ・カード制度(注3)の導入などにより、フリーターなど職業訓練に恵まれなかった人々にも、実践的な教育訓練の機会を提供することが必要である。

と求めています。

最後の台詞は、やや高邁に

>個人を孤立させたり、社会を劣化させることがあってはならない。一部の貧困は全体の繁栄にとって危険であることも改めて認識すべきである。そうした共通の認識の下に、政府、経営者、労働組合が、「人材立国」への道を描き実践する社会をともに力を合わせて築いていくことを求めたい

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