安心と活力が両立する社会の実現に向けて
昨日の経済財政諮問会議に提示された有識者議員の資料です。
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0529/item1.pdf
まず冒頭の基本方針でこう明言しています。
>わが国では、期間の定めのない正規雇用や公共事業等を通じた地域社会における雇用維持を前提として、そこから漏れる人や高齢者を主たる対象に各種の社会保障制度が構築されてきた。
しかしながら、経済の不確実性増大、グローバル競争の高まりなどを背景とする雇用形態の多様化、地域社会の高齢化、財政状況の悪化等の中で、種々の制度の前提が急速に変化し、「制度と現実のミスマッチ」が生じた。
その結果、格差の固定化に対する懸念や、社会保障制度の「綻び」等の問題が表面化している。
「安心社会」の再構築をわが国の最優先課題として、現状を見据えた制度再設計への取組みを従来にも増して加速していくことが必要である。
安心社会実現会議の認識とも共通するものですね。これを前提に次の5つの基本方針が示されます。
基本方針1 「社会そのものの持続可能性と活力」のために、格差固定化の防止、ひいては、少子化傾向の反転等に向け、次代の日本を担う若者世代・子育て世代の支援・育成を強化していくこと。
基本方針2 意欲ある全ての世代の人々が働ける環境づくり(「雇用の安心」)を「安心と成長」という両輪を回す「主軸」として位置づけること。
基本方針3 分断された社会保障政策及びその関連分野の有機的連携を図り、安心の5つの領域(雇用、医療・介護、年金、少子化、教育)が互いに正の相乗効果を発揮するような施策を講じていくこと。
基本方針4 国民の信頼回復のためにも「社会保障制度の綻び」の修復は、それに要する負担の費用について安定財源を確保することと併せ、最優先で行なっていくこと。
基本方針5 経済状況の好転につれて一時避難的な安心から自立できる安心へと重点を移していくこと。
そして、5つの取り組み原則が示されますが、本ブログからすると何より重要なのは第2の取り組み原則です。
>取組原則2 努力するほど報われることが可能となる制度設計・ 失業者に対しては、これまで十分でなかったセーフティネットを拡充しつつ、訓練や就業へのインセンティブを高めるアクティベーション措置を強化すること。
・ 就業者の雇用環境の改善に向け、非正規から正規への転換促進や非正規雇用の待遇格差の是正を進めること。また、労働法制改革についても着実に推進すること。
・ 修学困難な高校生・大学生への支援や公立学校の質の向上を通じて、公平な教育機会を確保すること。
この後の時間軸における施策も、この「安心社会」の考え方にもとづいて記述されています。
こういう発想はもちろん麻生首相や与謝野大臣に親和的であるからこうして出てきているわけでしょうが、用語法などをみていると、安心社会実現会議に参加しておられる宮本太郎先生の影響がかなり強くでているのが感じられます。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_8dc6.html(福祉政治)
こういう発想が嫌いな人々が批判するのは当然ですし、まあ勝手にやればいいだけのことですが、ありがちなのは自民党政府のやることには事の当否は別として批判しなければならないという妙な使命感に燃えてこういう考え方を批判しようという人々が出てきかねないことです。
そういうのはまことに不健全かつ非生産的なだけですから、やめといたほうがいいですよ。
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あるところで、
もうすぐ国政選挙! 次の内閣に、内政で一番期待することは何ですか?
というアンケートがありましたが、
(その他)として、以下をコメントした。
ご参考に!
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安心と活力の両立
ということが、政府で言われている。
活力(経団連の)を重視するのが、従来の方法。
安心から活力というのが、ごく最近の政府の
発想であるが、開かれたものにしないと、
層の厚い活力へ結びつかない。
投稿: curonikeru | 2009年5月31日 (日) 06時11分