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2009年4月27日 (月)

リバタリアンな失業給付とボランティア

「想像力はベッドルームと路上から」さん経由で、

http://d.hatena.ne.jp/inumash/20090418/p1

「THE BRADY BLOG」さんのこういうエントリを発見、そこでの文脈(パンク論)とはまったく別次元で、イギリスの「ウェルフェア・トゥ・ワーク」政策の足下の現実を強く印象づけられました。

http://blog.livedoor.jp/mikako0607jp/archives/51490603.html

>「俺がボランティアとして働くのは」

と言って彼はもったいぶって深いため息をつき、意気揚々と演説を始める。

「俺は25年間ボランティアとして労働してきた。対価を貰って労働している人間が、世界や人間のためになる仕事をしているとは思えないからだ。企業がやっていることを見てみろ。みんな環境を破壊することしかしていない。企業の社会貢献なんてことが騒がれるようになって、どこの企業もプロパガンダとしての社会貢献ゲームをするようになったが、所詮イメージづくりのための貢献は長期的に見れば世界にとってダメージになることばかりだ。営利を目的にした途端に、ビジネスは全て人間のためにならないことになる。だから自分は営利を目的とせず、対価を貰わずに労働するんだ」

英国(特にブライトンのようなリベラルな街)にはこのタイプの長期無職者がけっこうおり、彼らが中心となって運営されているチャリティー団体がある。彼らはLibertarian(自由意志論者)又はアナキストと呼ばれ、集団で畑を所有して無農薬野菜を作り団体の中で流通してそれを食べて生活したり、フェミニズム、同性愛、環境問題、難民問題、動物愛護などの問題に関して極左的立場から流血の抗議運動を繰り広げたり(ということは近年めっきり減り、ラディカル本のライブラリー経営、オーガニック食品の販売などのソフトな方向に活動の軸が変化しているので、旧ヒッピー&旧パンクな高齢メンバーは怒っているようだが)しており、そうした団体で働いている人々は全て無給のボランティアである。ブライトンのロンドン・ロードにカフェを持つ某C・Club(Oxfamと1ポンドショップの間にあると書けばローカルな方々はもうおわかりだろう)などはその格好の例だ。

無職。というと、何もしないでだらだら家にいる人のイメージが強いが、こうした人々の場合はそうではなく、毎日きびきび労働している。が、それが利潤を生み出す企業・団体のための労働ではないので還元される賃金が存在しない。英国にはこの種の無職者がけっこう存在し、彼らは“ミリタリー系”無職者と呼ばれている。何故ミリタリー系なのかというと、軍隊の軍人並みに毎日しゃかしゃか熱心に働いているし、社会や政府を相手に“戦っている”意識が強いからだ。

そんなわけで放っておけば何時間でも熱く喋り続けそうな“ミリタリー系”ニックの話をなんとか終わらせ、進行役は他の人々にも同じ質問をした。

「無職の年数が長過ぎて、働く自信が無くなりました。それを回復するためにボランティアしています」「無職でずっと家にいると他者とのコンタクトに餓えます。それを何とかするためにボランティアを始めました」等のよくある発言が出回った後で、わたしの右隣りに座っている(おそらくグループで最年少の)フディーズ・パンクの番になった。

「あなたは、どうしてここでボランティアしているのですか」

進行係に尋ねられた鼠男系パンクは、ふふん、と不敵な笑いを浮かべ、喋り始めた。

「俺がボランティアをしている理由は、世の中のためではなく、自分のために何かをしたいからだな。実際、無償で働くっつったって、人間は金がなきゃ食っていけないんだ。で、どこからその金が出ているかって言ったら、政府だろ。そこの、ヴィンテージのライダースジャケット着た人も、失業保険貰ってるんだろ?じゃなきゃ、25年もボランティアなんてふざけた生き方、できねえよな」

わたしは左脇のオールドパンクの肉体からどよどよとした気炎がたちのぼるのを感じながら右脇に座っているニューパンクの傲慢な横顔を見ていた。

ああもうほんとにろくでもない場所に座ってしまったなあと思いながら。

「俺は働かないで政府から金もらいながら好きなことやってるんだ。ま、自分の場合、やりたいことって音楽なんだけどね。ボランティアしているって言うと失業保険事務所で係員と喋るときの印象もアップしてすんなり金が貰えるし、将来音楽で生計が立てられなかった場合に、ここでボランティアしている経験が役に立って金を貰える仕事にありつけるかもしれないじゃん。一石二鳥。って感じかな。俺がボランティアしている理由はごくプラクティカル。失業者に思想はいらねえ」

リバタリアンなアナキストのみなさんが「対価をもらわずに労働する」という「崇高」な人生を25年も送り続けるために、彼らから「世界や人間のためになる仕事をしていない」と罵られながら普通の企業で働く人たちが払った失業保険料や税金で、かれらの「無給のボランティア」生活を支えているというのもたいした皮肉ですが、

さらに考えると、「ボランティアしてるっていえば楽に失業保険もらえるからね」と本音をぶっこいてる奴と、「営利じゃないボランティアだ」と崇高そうなことをほざいている奴を、そもそもどうやって見分けることができるのか、という本質的問題もあるわけで。

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コメント

>ボランティアしているって言うと失業保険事務所で係員と喋るときの印象もアップ

なぜ?

イギリスの失業給付制度について詳細を承知しているわけではないので、正確なところはわかりませんが、例のブレアのニューディール政策では、失業者は補助金付き就労、環境タスクフォースでの就労、ボランティア団体での就労、教育訓練の4つの選択肢のどれかを選ばなければならず、すべて拒否したら給付が打ち切られるとありますので、たぶん、上の「パンク」な人々にとって一番やりやすいのが「ボランティア」なんでしょうね。ボランティアをやり続けている限りは失業給付が出続けるということですか。

あなたが言いているのはリバタリアンではないと思います。
リバタリアンは政府の機能の縮小や廃止を訴え、資本主義や市場原理を擁護する人を指しています。

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