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2009年4月 2日 (木)

POSSE第3号

『POSSE』第3号をお送りいただきました。いつも有り難うございます。

今回は、「派遣切りされたのは誰か」というのが第1特集です。

>「仕事なんて選ばなければあるはずだ」。「派遣切り」がますます本格化する中、こうした批判は後を絶たない。若者がダメになったからニートやフリーターが増えた――。数年前、次のような言説がメディアを席巻していたことが思い出される。この「俗流若者論」は現在でこそ、影を潜めつつある。しかし、非正規雇用労働者の問題を、自己責任や個人の意識に矮小化する議論そのものには、いまだ決着がついていないのではないだろうか。
本特集で論じるように、「派遣切り」も「フリーター」問題も、同じ現象に異なるレッテルが貼られているにすぎない。なぜ、不安定で過酷な生活を強いられる「彼ら」は生まれるのか。内面分析や自己表現に陥るのではなく、その背景としての日本社会の根源的な構造、そしてそれを乗り越えていくための具体的な政策論を試みる。

◆「フリーター」か「半失業者」か ―「失業できる」日本社会を―
 後藤道夫(都留文科大学教授)

「フリーター」「派遣切り」問題を解決するのに必要なのは、日本を「失業ができる国」にすることだ―。福祉国家なき日本社会の構造を明らかにし、「派遣切り」のいま、必要なセーフティネットを論じるインタビュー。

◆「フリーター」という虚像と実像 ―不安定就業論の視角から―
 伍賀一道(金沢大学教授)

 「フリーター」、そして「派遣切り」は必要とされていた――。不安定な働き方、働かせ方に依存してきた日本の産業構造を分析し、あるべき経済構造を提起する。

◆派遣切りに対抗するキャリアラダー戦略
 筒井美紀(京都女子大学准教授)

◆派遣村の若者はどこから来たのか ―「家計自立型非正規」という新たな局面―
 今野晴貴(NPO法人 POSSE代表)

◆労働運動は派遣切りにこう立ち向かった
 本誌編集部

◆ルポ・「非正規」へと流れていく若者たち ―高卒就職の現場とその後から―
 進藤正樹(首都大学東京大学院)

◆特別企画・ポスト「フリーター」論の時代に
①「フリーター」論を徹底検証!ブックガイド10/(本誌編集部)
②予告:「格差論壇」MAP/解説:木下武男(昭和女子大学教授)

どれも切り口が興味深いのですが、そうですね、例えば後藤道夫さんの論考は、今日の午前と午後にそれぞれ別の新聞社の記者が来られたテーマなんですが、まさにセーフティネットがなさ過ぎた日本社会にとっては「失業ができる国」にすることが大事であるという面と、いままであまりにも安心して失業できる国でありすぎたヨーロッパ諸国にとってはむしろアクティベーションによって「いつまでも失業していられない国」にしていかなくてはいけないという面の両面をにらんでいく必要があるんですね。

もちろん、なぜ日本のセーフティネットが穴だらけであったかというと、これは本誌の他の論文で繰り返し書かれているように、家計補助的な非正規労働者という高度成長期以来の日本型雇用システムの問題であるわけで、今野さんのいう「家計自立型非正規」が90年代以降大量に生み出されたにもかかわらず、それに対応する形での制度構築が遅れたことが原因であるわけですが。

筒井美紀さんのキャリアラダー論は、最近駒村康平さんの『大貧困社会』で取り上げられたりしてますが、このインタビューはそれだけじゃなく、一言一言が面白いです。これは立ち読みでも読む値打ちがあります。筒井さんについては、前にも2回ほど取り上げましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-4371.html(高学歴代替の戻り現象)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-1409.html(「事実漬け」に勝るものなし)

今回もいいです。うん。

あと、次号の予告ということで、木下武男さんの「格差論壇分類MAP]というのが面白そう。<JOB派-隠れ年功派><規制緩和派-規制強化派>という2つの軸によるマトリックスで「論客の実名を挙げながら敢行する」んだそうです。インスパイアしたのはわたくしのブログでの発言だったそうなので、いささか責任があるかも・・・。

>政策論を中心にして、研究や運動の分野、そして論壇の傾向、さらにはマスコミの言説などを分析するために、縦軸・横軸をつくり、4つの象限に分けることを思いつきました。この発案のきっかけは、濱口桂一郎さん(・・・)のブログでの発言でした。岩波書店『世界』での研究会に彼をお呼びした折、とても刺激的な報告をいただき、さらにブログで「木下さんや本田(由紀)さんなど、ジョブ型思考の方が多い」研究会と表現されました。「ジョブ型思考」というネーミングは的確で納得いく言葉だと思いました。

 さらにその研究会が「『若者が生きられる社会』宣言」という緊急政策(・・・)をまとめた時、やはり濱口さんはブログで「意外に思われるかも知れませんが、この共同提言と一番近い立場にあるのは実は八代尚宏氏と労働市場改革専門調査会の方々ではないか」と指摘されました。

 そこで、確かに八代さんとは「ジョブ型思考」では同じようだが、やはり労働市場の規制のあり方では違うのではないだろうか。そんな思いから、横軸に「規制緩和派VS規制派」を置きました。縦軸は「ジョブ派VS隠れ年功派」です。「隠れ」という言い方は非学問的であり、取ってもよいのですが、表だって年功制を擁護する人々はあまりいなくても、心情的に「昔はよかった」という雰囲気は濃厚に存在していますので、その雰囲気を表現しています。ユニオン運動は、第1象限と第4象限を舞台としています。しかし、膨大な非正規雇用の労働者を直視し、その境遇を改善しようとするならば、第1象限で物事を考えざるを得ません。・・・・・・

ここで木下さんが言及されている私の本ブログでの発言はこれでしょうね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/2_90cb.html(研究会2連発)

「ジョブ型志向」でした。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_7b90.html(『世界』10月号)

あと、朝日の竹信さんが「日本版ワークシェアの虚妄を超えて」というのを書かれています。竹信さんは今月、岩波新書から「ルポ雇用劣化不況」という本を出されるようですね。

http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/

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コメント

>非正規雇用労働者の問題を、自己責任や個人の意識に矮小化する議論

この国に「弱い者叩き」が好きな人がこれだけ多いとは思いませんでした。少しは自分と立場の違う人に思いやりや憐憫の情を持てよと言いたい。

>なぜ、不安定で過酷な生活を強いられる「彼ら」は生まれるのか。内面分析や自己表現に陥るのではなく、その背景としての日本社会の根源的な構造、そしてそれを乗り越えていく

生産・経済のグローバル化→熾烈な安値競争→労働者を大量に非正規にすることでコストを下げる→価格的に競争力を保つ→他社も同様にするので泥沼・・・という認識。「安いものばかり欲しがる消費者が悪い」も正論。ただウニクロ・ダイソーが無かった頃の金銭感覚はほとんど忘れてしまってるし。だいたい今の日本人に「買い物は近所で」なんて言っても聞かないでしょ。

でも、悲憤慷慨したり、抗議しているだけでは局面の打開はできないでしょう、と思うぶらり庵は、「雇用評論」から、うまくゆけば「雇用創出」できればいいな、という方面に転進いたしました。仲間との小さな会社での営業・広報活動に。

日本は、本来はけっこう豊かだし、独特なものがいっぱいあるのですから、グローバリゼーションを利用して、いろいろ考えて道を開くようにしないと、と思います。
一方で、近所で賄うべきもの、特に食品や福祉を中心に、これも「自給率」「普及率」目標を国で設定して地方でがんばる者を応援してくれるようだといいのですけれど。
物、サービスによって、「対世界」と「国・地域で自給」をうまく切り分けて戦略を立てるべきでしょうね。

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