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2009年4月

公衆衛生なるものの本質

そのむかし、厚生省には公衆衛生局という部局がありました。その後、組織再編で保健医療局となり、いまは厚生労働省健康局となっていますが、「衛生」という言葉と「健康」という言葉にはいささかニュアンスの違いがありますね。

このあたりの感覚を、貧困問題の角度からえぐっているのが、かのBUNTEN氏のこのエントリです。

http://d.hatena.ne.jp/BUNTEN/20090430#p1

>こんな場末のブログで言っても仕方ないだろうし、このような記事の公開は世論を貧民粛正の方向に動かすだろうが、あえて言っておくことにする。

新型インフルエンザ その後 より

メキシコでの豚インフルエンザ(新型インフルエンザ)の検査可能数が、一日たった15検体しかないことが分かったようだ。それに、彼の地は御他聞に漏れず、貧富の差が大きく、貧困層が、医療機関にかかれない状況にあることが推測される。

貧富の差が大きく、既にかなりの数に上っていると思われる貧困層が医療機関にかかれないのは、日本でも同じである。が、発熱外来などの医療費が免除されるという話は聞かない。生保を受けていなかったら、風邪のような症状で熱が出ても私はおそらく受診をためらうだろう。

ホームレスだったりする場合、加えて、パンデミックに関係した情報がうまく伝わらない可能性もあるだろう。

しかも、貧乏人には食糧の備蓄などする余裕はない。買い物は日々(少なくとも数日おきに)行わなければならない。もしキャリアになってしまっても、出歩かざるを得ないのだ。

日本との往来が頻繁な北米地域で流行が始まってから一定の時間が経っていることを考えると、新型ウィルスが既に国内に侵入している可能性も無視できない。

そういうわけで、国にあっては、緊急に

1.保険証取り上げ政策を少なくとも一時的に停止すること。低所得者への医療費補助を行うこと。

2.ホームレス者を把握の上緊急に保護を行うこと。

などを行うことをすすめる。

医療費の抑制策によって、医療機関はギリギリの経営を強いられている。言い換えれば、感染爆発が起きて患者数が激増しても対応できないのではないかと思われる。医療機関の体制を短期間で整えるのは無理なので、爆発の危険要因を減らしておくことが肝心なのである。

「健康」政策という言葉で思い浮かべるのが、たとえばメタボ対策(による医療費増大への抑制政策)だったりするのに対し、「公衆衛生」という言葉には、

>不潔な貧民たちをそのままにしておくと、伝染病が蔓延して、それがこっちにも感染(うつ)ってくるぞ、怖いぞ、怖いぞ、だから、彼らをちゃんと衛生的にしてあげよう、情けは人のためならず・・・・・・・

という切実な思いがあるわけです。病原体は市場のルールを守ってくれるわけじゃない。生身のからだは人間が作った観念上の境界線を軽々と超えてしまうがゆえに、市民法原理ではなく生身のからだに着目した社会政策なるものが登場してくるわけです。公衆衛生なるものがなぜ社会政策の一環であるのか、たぶん、労働問題やら住宅問題やら教育問題やら・・・・・・・と同じなんでしょうが、そういうかつては生々しく眼前に存在した「生身のからだ」の存在感が失われて久しいことが、そういう「公衆衛生」的感覚の喪失をもたらしたのかも知れません。

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規制改革会議労働タスクフォースはどこへ行った?

(前エントリより続く)

このあと、具体的な雇用対策についての要望やら意見やらが続きますが、最後の方で、古賀事務局長が、言いっぱなしの形ですが、

>時間が来ていますが、意見だけ申し上げておきたいと思います。我々が課題意識を持っているのは、規制改革会議の答申やタスクフォースの文書についてです。この場でも何度か議論をしてきましたが、再度少し意見を申し述べておきたいと思います。
 昨年12月の第3次答申における労働分野の問題意識の部分を読み、ホームページなどで確認をしましたが、労働タスクフォースに関する会議の内容、議事概要等々は一切公表されていませんし、議論経過も極めて不明確、不透明ではないかと思っています。内容、問題意識についていちいち申し上げることは避けますし、個々の政策についてはいろいろ議論があるところだと思いますが、そもそも労働政策については、公労使の三者構成、この審議会があり、そこで議論をし、方向性を出し、決定をするというシステムがあるわけですから、規制改革会議の労働タスクフォースはどのような位置づけか、あるいは我々自身としては必要があるのかないのか、むしろ必要なのだろうかという疑問を持っています。
 答申においての問題意識の部分は、先ほどご説明がありましたように、最大限尊重の閣議決定からの対象外とはいえ、このまま労働タスクフォースを不明確な位置づけのまま残しておくことには大いに疑問がある。そのことを申し添えておきたいと思いますし、三者構成の労働政策審議会も、これらのことに対しての見解を示してもいいのではないか、という課題意識も持っていることだけ意見として申し上げておきたいと思います。

と述べています。

実際、19年度は規制改革会議労働タスクフォースの資料や議事録はちゃんと同会議のHPにアップされて、おかげで本ブログでさんざんいじることもできたわけですが、まさかこんな隅っこの小ブログで叩かれたからなどということは万が一にもないと思いますが、昨年度はまったく一回もアップされていません。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/2008.html#tf

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/2007.html#tf

労働タスクフォースが開かれていないということはないはずです。現に、厚生労働省の担当官が、規制改革会議の労働タスクフォースに呼ばれてこうも言われたああも言われたと、私は聞いておりますので、間違いなく開かれているはずなんですが、それを勤労国民の前に明らかにする必要などは、これっぽっちもないと、そのようにお考えになっておられるためなのか、私にはよく理解できないところでありますな。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_5840.html(福井先生対談録その1-学歴採用論)

>規制改革会議のHPに労働タスクフォースの議事録が一挙に掲載されています。

いずれも大変面白いので少しずつ読んでいきましょう。

まず、5月15日付の第5回、経済同友会の小島専務理事との対談ですが、労働規制緩和についてはまあそんなところかという風に進んでいきますが、俄然面白くなるのが福井先生お得意の「解雇規制なんかがあるから企業が学歴だけで採用したがる」論について、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_c88e.html(福井先生対談録その2-菅野和夫先生)

>続いて5月17日付の第6回は、「労働法の権威でいらっしゃる菅野先生にお見えいただきまして」労働契約法やホワエグをめぐって議論がされています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/3_f4e6.html(福井先生の対談録その3-連合)

>続く5月18日はいよいよ連合です。古賀事務局長に、長谷川裕子、龍井葉二という最強(?)の組み合わせ。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_3086.html(福井先生の対談録その5-荒木尚志先生)

>続く第7回は労働弁護団との丁々発止のはずですが、なぜかいまだに議事録が準備中ということで、一つ跳ばして6月12日の荒木尚志先生のラウンドです。

荒木先生は実にバランスのとれた方ですので、そのご説明のところを読むだけで現代労働法の的確な要約になっているのですが、対話のところから面白いやり取りを引用しますと、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_bb1c.html(労働タスクフォース第8回議事録)

>今回のお相手は厚労省(労働部門)の中堅どころの面々です。

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東京目線の地方分権

2月5日の労働政策審議会の議事録がアップされていました。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/txt/s0205-2.txt

例の地方分権改革推進委員会の第2次勧告について、こういう痛烈な皮肉が語られていました。運輸労連の土屋委員長です。

>たとえば、副知事が地方分権改革推進委員会の委員を務めている東京都であれば、雇用保険を都道府県単位にしても雇用保険料を下げて給付を増やすということは可能なのだろうと思いますが、逆に、例えば私は北海道出身ですが、北海道なり沖縄等々のそれぞれの地域では、逆の現象が起きるのではないかということを大変心配しています。即ち、大都市での企業と労働者の、言い方は悪いのですが独り勝ちを認めて、地方は切り捨てるという印象を拭えないという感じがします。

たしかに、東京都の立場からすれば、都下の大企業が納めた莫大な雇用保険料が田舎の連中の雇用のために使われるのは面白くないのかも知れませんが、それは都道府県を越えた連帯を否定するということになりかねないわけで。

>この間、各分科会において、ハローワークの都道府県の移譲や地方での労働局のブロック化について、疑問や懸念される意見が多くあったと聞いています。しかし、そもそも、地方分権改革推進委員会が、労働行政の最大のユーザーである労使団体からヒアリングをしていれば、この労政審で本当に論議する必要はなかったのではないかということについても、問題意識をもっています。委員会が勤労者や事業者に対して、今次改革がどのような影響を及ぼすかについて把握されてこなかったということについても、疑問をもたざるを得ません。

労使という利害関係のあるステークホルダーの意見に左右されるのはけしからん、真理を知った偉い学者先生とヒョーロン家がすべてを決めるのが正しいという、90年代以来はやりの考え方の一つの帰結といえましょうか。

経営側も、無考えな地方分権論を手厳しく批判しています。

>ハローワークに関しての改革の部分ですが、これはいまの土屋委員の発言とほぼ同じ意見で、日本経団連としても都道府県に切り分けるのではなく、全国レベルの組織で対応すべきであるということを、提言で触れているわけです。
 雇用保険というのは、労使の保険料によって運営されているわけですが、それを小さなブロックに分けて保険をやるというようなことは、非常に不合理を生むと思っています。
そういう意味では、ハローワークを都道府県のレベルに落としてしまうということについては、反対です。また、ハローワークの縮小も、現在の雇用情勢を鑑みた場合、以前日本はほとんど完全雇用でしたから、そんなにハローワークは大きな機能を背負う必要はなかったかもしれませんが、いまは働き方も大変多様化している中で、このハローワークの果たす役割は従来よりも増しているわけで、そういう意味で縮小ということには問題があるという見解です。

(次のエントリに続く)

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小倉秀夫弁護士の勘違いについて

小倉秀夫弁護士の発言、とりわけ3法則氏の下劣な言動に対する痛烈な皮肉は、ほとんど芸術品の域に達するものといつも感嘆の念を禁じ得ないところですが、とはいえ、勘違いによる発言はそれとして指摘しておく必要があります。

http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2009/04/socialism-for-t.html

知的誠実さとか知的廉直さというのは、その発言者が誰であるかに関わりなく、是は是、非は非ときちんと指摘することであって、誰やらのような露骨な党派性は、結局その信頼性を失わせるだけですからね。

おそらく、小倉弁護士はOECDの仕組みを余りよくご存じないための勘違いだと思うのですが、

>"When people see a trillion dollars being spent to try to bail out the banking system, and then when people are losing their jobs and the government says, well, they can't intervene -- that's socialism for the rich and neo-liberalism for the poor -- and we must not go down that road."

という発言を

>一時期,OECDの見解を盾にとって日本に雇用規制の緩和を迫った経済評論家がいたようですが,France24に掲載されたOECDの見解は重視していただけないようです。

と、OECDという機関自体の見解であると理解されておられるようですが、このリンク先記事にあるように、この言葉を発したのは

http://www.france24.com/en/20090329-g8-labour-ministers-kick-off-social-summit

>said John Evans, the chief trade unions adviser to the Organisation of Economic Cooperation and Development (OECD).

OECDのTUAC、つまり労働組合諮問委員会の委員長です。OECDには労働組合側からTUAC,経営側からBIACというふうに、労使それぞれの意見を吸い上げる仕組みがあります。上の「金持ちのためには社会主義で、貧乏人にはネオリベラリズムか」という批判は、このTUACの見解であって、OECD自体の見解というわけではありません。

いわば、日本でも経済財政諮問会議にちゃんと経団連と連合の代表が出ているならば、その経済財政諮問会議の労働者代表がこういった、というようなものですから、それが直ちに日本政府の見解にはならないわけです。

ただ、(ある面ではネオリベラルな政策を唱道する)OECDという組織がそういうマクロな産業民主主義に立脚する三者構成原則の上に立っているということを、小倉弁護士のような方ですらあまりにも知らないという日本社会の知的欠落点を浮き彫りにしたという意味では、なかなか意味のある勘違いであったといえるのかもしれません。

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春の叙勲労働編

本日発表された春の叙勲者から、労働関係の方々を。まあ、叙勲制度自体についてはいろいろご意見のあるところですが、とりあえず、日本国が「えらい」と認めたという程度に考えておいて。

まず、旭日大綬賞に、元連合会長の鷲尾悦也氏。早速こういう発言が記事に。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090429-00000018-jij-pol

>「地道に組合運動をやってきた人たちの代表としてちょうだいしたと思う」-。元連合会長の鷲尾悦也さんは、旭日大綬章について「労働界代表の受章」と喜びを表した。
 1970年に新日鉄労組の書記長に就任。90年に鉄鋼労連委員長、97年から4年間は連合会長と、30年以上も労組活動一筋。「ことごとく政府の方針に注文を付けてきた人も名誉ある勲章がちょうだいできる。いいことだ」と笑った。
 新日鉄では、定年延長や週休2日制を実現させ、「制度としてはわたしがやった」と胸を張る。一方、「連合会長時代は2大政党実現のために努力したが、思ったようにはいってない」と不満を漏らし、支援してきた民主党に対し「(政策決定などに当たり)いろんな意見を出してもいいが、まとまれば全会一致でいかないと政策はできない」と結束強化を求める。
 

鷲尾氏の解説記事として、おそらく一番いいのは、『正論』のこの記事でしょう。

http://www.sankei.co.jp/seiron/koukoku/2003/0310/myphoto.html

>モットーは、明るく楽しく。よく働き、よく遊ぶ。時におちゃらけすぎと言われるが気にしない。私のこうした陽気さは、東京・下町の風土が培ってくれたものかもしれない。実家は本所区(現墨田区)で鋼材問屋を営んでいた。母は優しくも、厳しい一面があって、私は幼稚園の頃から「男の子がうじうじしていては世の中は渡れない」と言われて育った。幼稚園から帰ってくると店員さんやお手伝いさんの前で、その日に習った歌を毎日のように歌わせられたのを今でも思い出す(そのせいで大人になってからカラオケ好きになった?)。

 小学校に入る前年、家作に入っていた方の縁で山梨・富里村に疎開した。親類もない、都会からやってきた半ズボン姿の少年は「変なヤツ」としていじめにあった。一九四五年三月の東京大空襲で実家が焼けたので五年生までそこにいたが、楽しみといえば部屋に引きこもっての読書だった。昼は山の斜面にある畑での農作業、夜は読書という日々で、徴用されて東京に残っていた父が、講談社の「少年少女文学全集」を“土産”にやってきてくれたときは本当に嬉しかった。

 東京に戻ってからもわが家は貧乏暮らしだったが、高校に進学させてくれた両親のためにも懸命に勉強した。両国高校から東大をめざして……ところが、夏休みに微熱が出て、近所の医者から「結核の疑い」と診断された。「ガリ勉で若死にしてはばかばかしい」と試験を受けずに寝ていたら、専門病院での精密検査の結果は、単なる疲労だった。少年ながら死と向き合ったことは、人生の価値観の転機になった。

 田舎でいじめられ、空襲で家が焼かれたこともあって、反体制的な革命思想や反アメリカ帝国主義といった考えに傾斜した。学校で放送部の結成や演劇部の手伝いをするうちに、リーダーの資質が養われたような気もするが、東大受験は敢えなく失敗。それも二度である(談)。

>二浪して東大に入ったのは一九五九年。安保闘争の時代だったが、私の左翼思想は急速にしぼんでいった。左翼の連中の権謀術数、自治会選挙で投票用紙の改竄までする不正に嫌気がさした。“無知蒙昧な大衆を導く前衛”という特権意識から一般学生をばかにした彼らの態度も腹立たしく、人間に対する根本的な愛情が欠けているように思えた。

 就職は六三年。高度経済成長の初期で、鉄鋼や石油化学といった産業が花形だった。祖父や父が鋼材問屋をやっていたことも決断に影響したのだろう。八幡製鉄に入社した。役所のような会社かと思ったら、社長の稲山嘉寛さんに「鷲尾さん」とさん付けで呼ばれ、“稲山更正法”と言われた協調路線を説かれて感嘆した。上下の隔たりがなかった。資本家対労働者という激烈な対立構造は日本にはない。そう思える経験はほかにもあった。

 自ら望んで労働運動に関わったわけではない。最初は押し付けられての組合代議員で、初めて出席した大会は、執行部の政治問題への対応が共産党系グループに批判されて紛糾し、本題に入れなかった。思わず私は、「平和や政治の問題も大事だろうが、生活に直接関わる重要議案が控えている」と議事進行の動議を出した。生来の“下町っ子”感覚が生活の実際から乖離した彼らにノーと言わせたのである。これで反共産党系の組合員として会社からも目を付けられた。

 専従になったのは七〇年九月、新日本製鉄労組の書記長になってからだ。爾来こんなにも長く労組活動一筋に歩むことになるとは……。

「労組の原点はヒューマニズムと連帯。弱い層を支え、公正、公平、平等、参加の理念にある」と一生懸命駆け続けてきたが、果たしてどこまで“働く人々”のお役に立てただろう。まだまだ歩を止めるわけにはいかない(談)。

ちょうどわたしがEU代表部に勤務していた時期に、はじめは連合事務局長、あとは連合会長として、毎年2回以上国際自由労連(ICFTU)の会議に参加するためブリュッセルにこられていました。

現在は全労済協会の会長として、先日私も呼ばれた「希望の持てる社会づくり研究会」など、いろいろな研究活動の支援もされています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/5-823b.html

瑞宝重光章の兵藤つとむ(金リ)先生は、労働研究業界以外ではあまり有名ではないかもしれません。

労使関係史研究の金字塔『日本における労資関係の展開』や、やや一般向けの名著『労働の戦後史』は、いまでも基本枠組みでしょう。むしろ、それをいかにひっくり返すかがその下の世代の課題だったというべきか。

その学問的位置づけなどについては、その弟子世代の稲葉振一郎氏の「労使関係論とは何だったのか」シリーズなどを参照のこと。

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090205/p2

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090213/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090214/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090218/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090219/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090220/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090303/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090304/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090310/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090319/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090324/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090327/p1

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090329/p2

>労使関係論のサーベイは帰国すれば文献が手元に揃うので本格的に始めます。

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090329/p1

とのことなので、刮目して待ちましょう。

わたしは、法学部時代に「社会政策」の授業を受けたこと、帰国後埼玉県勤務時代に小笠原浩一先生のお声掛かりで、埼玉大学でシンポに出させていただき(連合総研の鈴木さん、日経連の讃井さんとご一緒に)、そのあとの懇親でご一緒させていただいたことがあります。

3人目は瑞宝中綬章の小野旭先生です。小野先生については、Wiki情報がよくまとまっているのでそのまま引用しますと、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%87%8E%E6%97%AD

>小野 旭(おの あきら、1934年1月2日 - )は経済学者。専門は労働経済学。一橋大学名誉教授、労働政策研究・研修機構理事長。1981年から1984年まで日本経済学会常任理事。2000年紫綬褒章。1973年日経・経済図書文化賞受賞、1982年エコノミスト賞受賞、1989年日経・経済図書文化賞受賞、1991年東京海上各務記念財団賞受賞。

東京都文京区生まれ。1946年文京区立誠之小学校卒業、1949年京華中学校卒業、1952年東京都立九段高等学校卒業、1957年一橋大学商学部卒業、1962年同大大学院経済学研究科博士課程単位修得退学。1964年経済学博士(一橋大学)。

1962年神奈川大学経済学部講師、1966年中央大学経済学部助教授、1970年成蹊大学経済学部助教授、1972年同教授、1979年一橋大学経済学部教授、1989年同大経済学部長。1997年一橋大を定年退官し同大名誉教授。1997年から2004年まで東京経済大学経済学部教授。2001年から2003年まで日本労働研究機構研究所所長、2003年から2007年まで独立行政法人労働政策研究・研修機構初代理事長。1996年からは中央労働委員会公益委員も務める。雇用審議会委員等も歴任。

私が今いるJILPTの初代理事長というのは別にしても、穏当な労働経済学者として多くの人々から慕われている方です。

本ブログの読者には、例の3法則の池田信夫氏が、小野先生の本に書いてもいないことを、さもかいてあるかのようにねつ造した事件が印象的かもしれません。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_c013.html(一知半解ではなく無知蒙昧)

池田氏曰く:戦前の雇用形態について問題を取り違え、「臨時工」は昔からかわいそうな存在だったと信じている。そんな事実がないことは、たとえば小野旭『日本的雇用慣行と労働市場』のような基本的な文献にも書いてあります。

>尊敬する小野旭先生が『日本的雇用慣行と労働市場』のどこで、昭和初期に臨時工は何ら社会問題でなかったなどと馬鹿げたことをいっているのか、池田氏は小野先生の名誉を傷つけて平気のようです

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/3_a7ad.html(池田信夫氏の3法則)

>ましてや、小野旭先生の立派な本にホントにそんなことが書いてあるのかという問いは無視。そして彼のブログは、もっぱら役人や労働組合に対する罵倒で埋め尽くされる。

ここから、池田信夫氏の議論の仕方について、3つの法則を導き出すことができるように思われます。

池田信夫氏の第2法則:池田信夫氏がもっともらしく引用する高名な学者の著書は、確かに存在するが、その中には池田氏の議論を根拠づけるような記述は存在しない蓋然性が高い。

もしそういう記述があるのであれば、何頁にあるとすぐに答えればいいことですからね

おかげさまで、ネット界では「3法則」で通用するようになったようです。

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EU労働時間指令改正案、遂に瓦解

閣僚理事会(加盟国代表)と欧州議会の間で対立が続いていた労働時間指令の改正案ですが、遂に妥協がならず、瓦解してしまったようです。

http://euobserver.com/9/28024

>Talks to revise EU working time bill fail

After hours of late-night negotiations on Monday (27 April), EU member states and MEPs officially abandoned trying to reach an agreement on updating a directive on working hours across the 27-nation bloc.

"Despite five years of painstaking negotiations on the revision of the Working Time Directive, which often went on until the small hours, the current legislation will stay in force," the Czech EU presidency said in a statement.

The aim was to revise the 1993 legislation to limit countries opting out from the 48-hour maximum working week that the law imposes. Fifiteen member states make use of the opt-out.

EU social affairs commissioner Vladimir Spidla said he was "sorely disappointed" by the outcome of this last round of conciliation talks which involved diplomats from all 27 member states and the equivalent number of MEPs.

The stalemate means the current EU rules on working time are to remain in force, with the European Commission now considering whether to draft new ones.

"My colleagues and I in the College of Commissioners will now need to reflect on this result, and decide what, if anything, we do next," Mr Spidla stated.

改正案が成立しないということは、今のままの労働時間指令が続くということです。オプトアウトはいまの契約締結時にとれてしまう状況のままで、オプトアウト廃止論者にとってもより悪い結果ですし、待機時間についても不活動時間も労働時間と見なすという欧州司法裁判所の判例がそのまま生きてしまうので、これは、おそらく誰にとっても喜ばしくない結果のはずですが、妥協してチキンになりたくない双方が突っ張った結果がこれだったわけですね。

>EU states and MEPs blamed each other for the failed talks on Tuesday.

"The result of the talks was undoubtedly influenced by the approaching elections to the European Parliament. At this time, the MEPs were not willing to accept a deal that would, however, improve the employees' situation, and, at the same time, lead to a more flexible labour market," stated Petr Necas, Czech deputy prime minister and minister of labour and social affairs.

"The Parliament gave priority to ideology over political and economic reality," he went on.

German socialist MEP Mechtild Rothe, who chairs the parliament's delegation rejected the accusations and said the Council – representing EU member states – was the one to blame.

"We [the parliament] did move quite considerably. And therefore it would be quite incorrect to say that the parliament failed to give ground here. That simply doesn't tie in with the actual run of the negotiations," Ms Rothe said at a press conference.

"The main problem was that the Council felt that it was unable to make concessions to the parliament" on several points, she added.

欧州議会は選挙のことを気にして、現実よりもイデオロギーを優先したんだ、

いや妥協を拒否した閣僚理事会が悪い、

と非難の応酬。

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ひとりごと

先日の

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-56c9.html(「北風」の新入社員の意識への見事な効果)

に関連して、

だから、そういうふうにバラマキけしからん、福祉けしからん、そんなのは社会主義だ、共産主義だと、罵倒してしばけばしばくほど、労働者は、とりわけ若者は企業にしがみついて、何が何でも離すまい、というふうになるというのがわからんのだなあ。

北風を吹き付ければ、人は外套を脱ぐという単細胞的世界観の持ち主には、暖かい太陽で脱がせてみようなどという発想はかけらもなく、北風だけで効かないなら、雪を降らせてやろうか、吹雪を吹き付けてやろうか、とますますエスカレートする。外套をうかつに脱いだら凍え死ぬと分かっているところで脱ぐ莫迦がいるものか。

負のループを作っているのはあんたらだろう。悪い均衡にロックインさせているのはあんたらだろう。20年以上頭が凍結しているのはどっちだか・・・。

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トルコでもメーデーが国民の祝日に

トルコはまだEU加盟国じゃないんですが、組合はETUCに加盟しているんで、まあそれみたいなものということでカテゴリーはEUの労働法政策にしておきます。

http://www.etuc.org/a/6100

>A victory for the unions: 1 May is made a public holiday in Turkey

The European Trade Union Confederation (ETUC) welcomes the decision by the Turkish government to recognise the celebration of Labour Day on 1 May by declaring it a public holiday. ETUC salutes this major victory for the trade unions.

To mark its solidarity with its Turkish affiliates, ETUC is supporting the various demonstrations that will take place in Turkey on 1 May and calls on the Turkish government to respect the right to demonstrate on Labour Day and to make sure that there is no repetition of last year’s incidents.

ということで、ようやくトルコでもメーデーが国民の祝日になったようです。

ちなみに我が日本では5月1日は連休の谷間の出勤日で、連合さんの「めーでー」は4月29日に行われるようです、

http://www.jtuc-rengo.or.jp/rentai_katsudo/mayday/80th_mayday/80th_mayday.pdf

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リバタリアンな失業給付とボランティア

「想像力はベッドルームと路上から」さん経由で、

http://d.hatena.ne.jp/inumash/20090418/p1

「THE BRADY BLOG」さんのこういうエントリを発見、そこでの文脈(パンク論)とはまったく別次元で、イギリスの「ウェルフェア・トゥ・ワーク」政策の足下の現実を強く印象づけられました。

http://blog.livedoor.jp/mikako0607jp/archives/51490603.html

>「俺がボランティアとして働くのは」

と言って彼はもったいぶって深いため息をつき、意気揚々と演説を始める。

「俺は25年間ボランティアとして労働してきた。対価を貰って労働している人間が、世界や人間のためになる仕事をしているとは思えないからだ。企業がやっていることを見てみろ。みんな環境を破壊することしかしていない。企業の社会貢献なんてことが騒がれるようになって、どこの企業もプロパガンダとしての社会貢献ゲームをするようになったが、所詮イメージづくりのための貢献は長期的に見れば世界にとってダメージになることばかりだ。営利を目的にした途端に、ビジネスは全て人間のためにならないことになる。だから自分は営利を目的とせず、対価を貰わずに労働するんだ」

英国(特にブライトンのようなリベラルな街)にはこのタイプの長期無職者がけっこうおり、彼らが中心となって運営されているチャリティー団体がある。彼らはLibertarian(自由意志論者)又はアナキストと呼ばれ、集団で畑を所有して無農薬野菜を作り団体の中で流通してそれを食べて生活したり、フェミニズム、同性愛、環境問題、難民問題、動物愛護などの問題に関して極左的立場から流血の抗議運動を繰り広げたり(ということは近年めっきり減り、ラディカル本のライブラリー経営、オーガニック食品の販売などのソフトな方向に活動の軸が変化しているので、旧ヒッピー&旧パンクな高齢メンバーは怒っているようだが)しており、そうした団体で働いている人々は全て無給のボランティアである。ブライトンのロンドン・ロードにカフェを持つ某C・Club(Oxfamと1ポンドショップの間にあると書けばローカルな方々はもうおわかりだろう)などはその格好の例だ。

無職。というと、何もしないでだらだら家にいる人のイメージが強いが、こうした人々の場合はそうではなく、毎日きびきび労働している。が、それが利潤を生み出す企業・団体のための労働ではないので還元される賃金が存在しない。英国にはこの種の無職者がけっこう存在し、彼らは“ミリタリー系”無職者と呼ばれている。何故ミリタリー系なのかというと、軍隊の軍人並みに毎日しゃかしゃか熱心に働いているし、社会や政府を相手に“戦っている”意識が強いからだ。

そんなわけで放っておけば何時間でも熱く喋り続けそうな“ミリタリー系”ニックの話をなんとか終わらせ、進行役は他の人々にも同じ質問をした。

「無職の年数が長過ぎて、働く自信が無くなりました。それを回復するためにボランティアしています」「無職でずっと家にいると他者とのコンタクトに餓えます。それを何とかするためにボランティアを始めました」等のよくある発言が出回った後で、わたしの右隣りに座っている(おそらくグループで最年少の)フディーズ・パンクの番になった。

「あなたは、どうしてここでボランティアしているのですか」

進行係に尋ねられた鼠男系パンクは、ふふん、と不敵な笑いを浮かべ、喋り始めた。

「俺がボランティアをしている理由は、世の中のためではなく、自分のために何かをしたいからだな。実際、無償で働くっつったって、人間は金がなきゃ食っていけないんだ。で、どこからその金が出ているかって言ったら、政府だろ。そこの、ヴィンテージのライダースジャケット着た人も、失業保険貰ってるんだろ?じゃなきゃ、25年もボランティアなんてふざけた生き方、できねえよな」

わたしは左脇のオールドパンクの肉体からどよどよとした気炎がたちのぼるのを感じながら右脇に座っているニューパンクの傲慢な横顔を見ていた。

ああもうほんとにろくでもない場所に座ってしまったなあと思いながら。

「俺は働かないで政府から金もらいながら好きなことやってるんだ。ま、自分の場合、やりたいことって音楽なんだけどね。ボランティアしているって言うと失業保険事務所で係員と喋るときの印象もアップしてすんなり金が貰えるし、将来音楽で生計が立てられなかった場合に、ここでボランティアしている経験が役に立って金を貰える仕事にありつけるかもしれないじゃん。一石二鳥。って感じかな。俺がボランティアしている理由はごくプラクティカル。失業者に思想はいらねえ」

リバタリアンなアナキストのみなさんが「対価をもらわずに労働する」という「崇高」な人生を25年も送り続けるために、彼らから「世界や人間のためになる仕事をしていない」と罵られながら普通の企業で働く人たちが払った失業保険料や税金で、かれらの「無給のボランティア」生活を支えているというのもたいした皮肉ですが、

さらに考えると、「ボランティアしてるっていえば楽に失業保険もらえるからね」と本音をぶっこいてる奴と、「営利じゃないボランティアだ」と崇高そうなことをほざいている奴を、そもそもどうやって見分けることができるのか、という本質的問題もあるわけで。

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「希望のもてる社会づくり研究会」報告(第5回)

さる3月17日に、全労済協会の「希望のもてる社会づくり研究会」に呼ばれてお話しした中身と若干の質疑応答が、同協会の機関誌「全労済協会だより」に掲載されていますので、アップしておきます。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/zenrousai.htm

実際にはもう少し詳しく喋っていますし、質疑応答もなかなか面白いものがありました。

なお、その翌日に本ブログで述べたように、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-9146.html(希望のもてる社会づくり研究会にて)

>この研究会は、主査が神野直彦先生、委員が阿部彩、植田和弘、駒村康平、高端正幸、広田照幸、藤井敦史、水野和夫、宮本太郎の各先生方というそうそうたるメンバーで

あります。

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いかなる解雇も不可能な日本

>そもそも日本の正規雇用は、「解雇権濫用法理」と「労働条件の不利益変更の制限」によって事実上いかなる解雇も賃下げも不可能

らしいので、一部に熱狂的なファンのおられるらしい脱藩官僚の高橋洋一氏におかれては、是非、それを証明していただきたいところであります。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090422-OYT1T00944.htm

>小泉ブレーン・高橋洋一教授、窃盗容疑で東洋大が懲戒免職

温泉施設のロッカーから利用客の財布や高級腕時計を盗んだとして、先月30日に窃盗容疑で書類送検された元財務官僚の高橋洋一・東洋大学教授(53)について、同大は懲戒免職処分にした。

 同大は20日に開いた常務理事会で、「大学の品位を傷つけた」などとして処分を決定。高橋氏は小泉政権下で竹中平蔵・総務相のブレーンとして郵政民営化などを推進。昨年4月から同大経済学部で教べんを執った。

(念のため)

本ブログの読者には今更いうまでもなきことながら、これはいわゆる整理解雇4要件が正規と非正規の差別的扱いを求めていることに対する批判とはまったく別次元のことですので、念のため。

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「北風」の新入社員の意識への見事な効果

社会経済生産性本部から昔の日本生産性本部に名称復帰したJPCが、毎年恒例の新入社員意識調査を公表していますが、

http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/mdd/activity000914/attached.pdf

>1.担当したい仕事は「チームを組んで成果を分かち合える仕事」が過去最高(83.5%)
2.「今の会社に一生勤めようと思う」が昨年に比べ大幅に増加、過去最高(55.2%)
3.「良心に反する手段でも指示通りの仕事をする」が過去最高(40.6%)
4.「仕事を通じてかなえたい『夢』がある」が4年連続で増加、過去最高(71.6%)

という見事な結果になっています。

しかも興味深いのは、後ろのグラフを見れば一目瞭然ですが、この傾向は「構造改革」が熱狂的に唱われたこの十年間を通じて、着実に増えてきていることです。

集団主義より個人主義、終身雇用より転職志向、社内出世より独立起業と煽り立てた挙げ句がその正反対の方向で、しかも良心に反しても会社の言うとおりやりますというまことにコンプライアンス精神なき会社人間を大量に作ってきたというのは、これほどの皮肉はないというべきでしょう。

結局、「北風」を猛烈に吹き付けて、終身雇用を吹き飛ばそうと若者をいじめ続けたら、これを手放したら奈落の底に落ちてしまうとばかり、ますますしがみつこうと一生懸命にさせるばかりで、その挙げ句は、こういうことになってしまったようです。

なんだかイソップの寓話みたいですね。

(追記)

この問題をやや理屈っぽくいうと「voice」と「exit」という話になります。

本ブログにおける過去のエントリは以下の通り。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_1a4b.html(離脱と発言再び)

>私の基本的問題意識が労働問題、つまり、気に入らない会社をさっさと「離脱」していく方がいいのか、それとも組織への「忠誠」を持ちつつその運営に対して「発言」していく方がいいのか、にあることは、このブログの全体傾向からしてご了解いただけるところだと思います。

>ややマクロに言えば、離脱だけが選択肢となると、その選択肢を取り得る人間がどんどん離脱していき、それができない人間が取り残されて、結局発言によって改善できたはずのものすら改善されないで悪いままになってしまうという点も、彼が強調する点ですね

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_4aa2.html(草稿の続き)

>日経新聞や経済財政諮問会議の民間委員は、voiceなど要らない、exitさえあれば世の中はうまく回るのだと考えているのでしょうが、そういうものではないと私は思います。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_57fd.html(労使関係の将来像に関する素案的メモ)

>八代氏ら規制改革派は、基本的に労働者側の戦術としては(ハーシュマンのいう)「発言(voice)」ではなく「退出(exit)」のみを有効と認める立場のようであるが、これは労働市場を常に売り手市場にしていくことを前提とするものであって、いわゆる「守旧派」ならともかく「構造改革派」の立場とは矛盾するはずであろう。労働市場が常に絶対的売り手市場でないことを前提とするならば、「転職の自由」を保障するだけでは足らず、何らかの「発言」のメカニズムが不可欠であり、そこから上で(ミクロ的に)労使に委ねるという場合の「労」の中味が問題となる

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日本型雇用システムで正規と非正規の均等待遇は可能か?

『生活経済政策』5月号に、わたくしの標記論文が載っております。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/hiseikikintou.html

特集は「労働・雇用システムのパラダイム転換に向けて」で、次のような論文が並んでいます。

武田晴人:企業の社会的な役割と雇用

野村正實:若者の雇用問題

濱口桂一郎:日本型雇用システムで正規と非正規の均等待遇は可能か?

田中洋子:新しい雇用・労働システムを求めて

禿あや美:ジェンダー平等社会と同一価値労働同一賃金

野村論文からあとは、だいたい似たような問題意識の周りを様々な方向からアプローチしているという感じです。

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清家篤先生が慶應塾長に

200904244269961n これはうれしいニュースです。労働経済学の清家篤先生が慶應義塾の塾長に選出されました。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090424-OYT1T00846.htm

>任期は5月28日から4年間。清家氏は記者会見し、「慶応に生きる実学の精神を未来に引き継ぎたい」と抱負を語った。

おそらく、塾長のお仕事で忙殺されることが多くなると思いますが、こういう時期であるだけに、折に触れ労働政策や経済政策にご発言いただきたいと思います。

本ブログで清家先生に触れたエントリを振り返ってみますと

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_a23a.html(清家篤先生インタビュー)

>>「政治家が本来やるべき仕事を丸投げしているのです。政府の規制改革会議は政治家が規制緩和について専門家の意見を聞く場ではなく、規制緩和の推進を目的とした場になっています。政策決定まで委ねてしまうのは本末転倒でしょう」

>官僚との関係でも政治家が十分に責任を果たしていないところがあります。官僚は行政の各分野の専門家で政治家はその助けを借りて行政を進めます。専門家である官僚が自分の分野が重要だと考えるのは当然だし、また、そうでなければプロにはなれません。そうした中、それぞれの分野に軽重をつけるのが、素人の良識を持った政治家の仕事でしょう。ですから『縦割り行政はけしからん』などと言う政治家は自らの役割を忘れているとしかいえません」

>――すると最近の官僚批判の風潮はおかしいと?
 「行き過ぎがあるのではないでしょうか。例えば、縦割りの弊害をなくすため、各役所が独自に人材を採用するのではなく、内閣で一括採用しようという話がありますが、おかしなことです。自分はこの仕事をしたいという強いこだわりを持った人たちこそ、その分野での能力を磨けます。どの官庁でもいいからといった人では、国民が困るのではないでしょうか」

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_1cda.html(規制改革会議の大暴走)

>この意見書の凄いところは、労働に関わりのある人々全てを敵に回そうとしているらしいことです。

>行政庁、労働法・労働経済研究者などには、このような意味でのごく初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向きも多い。当会議としては、理論的根拠のあいまいな議論で労働政策が決せられることに対しては、重大な危惧を表明せざるを得ないと考えている。

まあ、行政庁が何にもわかっとらんでアフォなことしとるというのは聞き飽きた悪口ですから今さら何にも感じませんし、労働法学者が硬直的でアフォの塊というのもまあよく聞かされる話ですから、ふむふむというところですが、そうですか、遂に労働経済学者の皆さんにも宣戦布告ですか。樋口先生や清家先生のように労働関係をうまく回すのに市場原理をいかに活用していくかを一生懸命考えておられる方々も「初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向き」だというわけですな。

東大法学部卒業の行政法専攻の元建設官僚ドノがそこまで言うと

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_30a1.html(定年制の存在理由)

>ある意味でやや皮肉だなと思うのは、ここで野村先生が批判しているラジアーの紹介者の清家篤先生は「定年制の存在を合理化する」イデオローグどころか、『定年破壊』などで定年制廃止の論陣を張っておられる方なのですが、野村先生も又「定年制の不合理性を批判」する立場に立っておられるわけで、一体誰を攻撃していらっしゃるのだろうか、と不思議な感を持ってしまうのです。

ついでに、ここにも名を連ねておられます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/jilpt_673b.html(JILPT廃止反対要望書)

清家先生とは、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_7d77.html(エイジフリー研究会報告書)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_b4e1.html(雇用労働政策の基軸・方向性に関する研究会報告書)

そのほかいろいろな場で、多方面にわたって教えていただきました。慶應塾長としてのご活躍を心よりお祈り申し上げます。

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労働判例インデックス

1643 明治大学法科大学院に移られた野川忍先生から、『労働判例インデックス』(商事法務)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.shojihomu.co.jp/newbooks/1643.html

>見開き2頁で、判例のエッセンスを関係図とともにコンパクトに整理。160件の労働判例を概観する。法学部生、法科大学院生のみならず、法曹、企業実務家にも役立つ!

本書の特徴は、はしがきの言葉をそのまま引用すれば、

http://www.shojihomu.co.jp/newbooks/1643.pdf

>すべての裁判例について筆者が単独で執筆することにより、全体の整合性と体系性が保持されているという点である。

しかし全部で160件の裁判例を片っ端から料理するというのはなかなか大変なことのはずで、最近の野川先生、すごくエネルギッシュですね。

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経済財政諮問会議安心実現集中審議

昨日の経済財政諮問会議では、安心実現集中審議ということで、格差問題が集中的に議論されたということです。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0422/interview.html

与謝野大臣の説明が簡にして要を得ていますので、そのまま引用します。

>本日より舛添大臣にも参加をいただき、安心実現集中審議を開始いたしました。今回は格差の実態を整理し、その上で今後の検討の方向性について議論をいたしました。

 総理から冒頭、近年、安心な社会、平等な社会にほころびが出ているとの指摘がある。諮問会議では、客観的なデータに基づき、問題点を把握分析し、的確な手立てを講じたいと思っている。ぜひ率直な議論をお願いしたいという御発言がございました。

 本日の審議の結果、基本方針として、一つ、安心と活力を両立させる、第二、階層化を回避し、社会的一体性を堅持する、第三、生活安全保障の仕組み、すなわちセーフティネットを再構築するという民間議員提案の3点について大筋の確認が得られました。

 主な議論を御紹介申し上げます。安心あっての活力と活力あっての安心、双方が大事である。絶対的貧困の対応と格差の固定化には対応していかなければならない。25歳以下の格差拡大は大きな問題であり、政策として重点を置く必要がある。原因をさらに詳細に分析すべきである。なお、子育て支援と格差対策は重複する場合があることに留意する必要がある。

 次の御意見。母子家庭や単身高齢者へのセーフティネットを強化すべきである。格差を固定化する構造的問題への対応が重要である。特に教育機会は重要である。また、能力開発や就業支援の強化など、時期、地域で不平等なことにならないことが大事である。

 別の御意見。戦後日本のセーフティネットは企業だったが、選択と集中をやらざるを得なくなった。日本的経営として企業が何かできないのか。

 別の議員。今でもセーフティネットは維持していると考えている。今回は正社員まで仕事が一時的になくなっているが、歯を食いしばって雇用は維持している。しかし、海外との競争を考えると、実はこれは日本の企業の弱みになっている。右肩上がりのときにはこれが強みになるけれども、右肩下がりのときにはこれが弱みになる。

 別の議員。将来的に生産が戻るなら我慢して雇用を維持する。

 別の議員。安心と活力の相乗効果が大事である。雇用拡大と成長戦略は車の両輪である。教育、子育て、能力開発など、広い意味でのセーフティネットが大事である。

 総理から、年齢別フリーターの状況、特に就職氷河期のフリーターの固定化の問題はどうなっているのか。ここで皆様方にお配りしている資料の6ページついて、吉川議員から詳しい御説明がございました。別の御意見。親の年収で教育機会が決まるのは大きな問題である。幼児期に貧困の芽を絶つ政策を検討すべきである。

有識者議員提出資料の「安心社会に向けて(総論)」がこれですが、

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0422/item1.pdf

ここでは所得格差に関する現状認識として、

>世帯別⇒高齢者世帯、単身者世帯など格差の大きい世帯の割合の増加が全体の格差拡大に大きく寄与(別紙図表 2-1、2-2)

世帯年齢別 ⇒高齢者間の所得格差は縮小傾向、若年世代では拡大傾向(図表3-1、3-2)

雇用形態別⇒所得の低い非正規労働者が増加(図表5-1、5-2)

教育機会⇒親の所得によって子どもの予定進路に相違(図表 6-3)

就業と貧困⇒日本では就業しても貧しい人が多く存在(図表9-2)

とされ、政策の基本的方向性として、次のように述べられています。

>基本方針1:安心と活力を両立させる

・格差対策と所得や雇用の拡大をもたらす経済成長戦略は車の両輪

・少子化対策を通じて、子どもが増えて活力ある社会を作る

・一時避難的な安心から、自立できる安心へと重点を移す

基本方針2:階層化を回避し、社会的一体性を堅持する

・「機会の平等」が確保されていないことで生まれる格差(親の所得、資産等による格差の固定化・再生産、雇用形態を理由とする差別)は、「希望喪失社会」に繋がる~能力や努力が正当かつ公平に評価されることで生まれる「結果の不平等」まで否定すべきではない~

・階層化を回避し、日本の強みである社会的一体性を堅持する(正規・非正規雇用の処遇格差への対応、次世代育成支援の強化、雇用を軸にした自立と安心確保の強化、奨学金をはじめ教育面への支援強化等)

基本方針3:生活安全保障の仕組み(セーフティネット)を再構築する

・「格差」自体はいつの時代にもあるが、厳しい生活状況にある人に対して、子育てや就労へのインセンティブに留意しつつ、時代に応じたセーフティネットを確保する (母子家庭、低所得・低資産高齢者へのセーフティネットの充実)

・また、これまで企業、家族や地域コミュニティーが果たしていたセーフティネットが崩れつつある。雇用を軸とした生活安全保障の仕組み、生活や介護の不安の大きい単身高齢者等に対して、伝統的に家族が果たしてきた機能を社会的に補強する必要がある

・その際、「頑張った人ほど報われる社会を構築する」との視点に立ち、個人レベルではモラルハザードが生じないことを重視する

異議なし!!!

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労働法の世界第8版

L14399 中窪裕也、野田進、和田肇の3先生方の共著『労働法の世界第8版』(有斐閣)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641143999

日々変化する「労働法の世界」を実像に迫りながら明快に描く教科書。時代に相応しくリファインした体系に,労働契約法を始めとした最新の法状況や判例・学説の進展を反映して,今日の労働法の内容を正確に叙述する。装いも新たに生まれ変わった待望の第8版。

目次は、

1 労働法の世界へ
 1 労働法の見取図
 2 労働法のアクター
 3 労働条件の決定システム
2 「企業」との遭遇
 4 募集・採用
 5 労働契約の期間
 6 平等原則
 7 労働契約の基本原理
 8 就業規則
 9 「非典型」雇用・外国人雇用
3 「団体」との遭遇
 10 労働組合
 11 団体交渉
 12 労働協約
4 「労働条件」の諸相
 13 賃 金
 14 労働時間
 15 休憩・休日・時間外労働
 16 休暇・休業・休職
 17 女性・年少者
 18 安全衛生と労災補償
 19 配転・出向・人事考課
5 「紛争」との遭遇
 20 労働契約の変更
 21 紛争としての解雇
 22 人格と自由の侵害
 23 企業秩序と懲戒
 24 争議行為
 25 不当労働行為
 26 労使紛争の解決手段
6 「企業」との訣別
 27 労働契約の終了
 28 再就職と引退

第7版との最大の違いは、縦組みから横組みになったことですが、コラム(Brush up)に新しいエッセイがいくつか入っていて、これが結構面白いです。

わたしの関わりのある話では、第6節平等原則の節末のコラムで「アメリカとEUの雇用差別禁止法」が載っています。

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本日の「視点・論点」

本日の新聞のテレビ欄にあるとおり、本日午後10時50分より、NHK教育テレビの「視点・論点」に出演して、「雇用と生活のセーフティネット」という題で10分弱ほどお話しを致します。

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医師の当直勤務は「時間外労働」

本日の読売の1面トップはこれです。これは一つの見識でしょう。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090422-OYT1T00722.htm

>奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が、夜間や休日の当直は時間外の過重労働に当たり、割増賃金を払わないのは労働基準法に違反するとして、県に2004、05年分の未払い賃金計約9200万円を請求した訴訟の判決が22日、奈良地裁であった。

坂倉充信裁判長(一谷好文裁判長代読)は「当直で分娩など通常業務を行っている」と認定し、県に割増賃金計1540万円の支払いを命じた。医師の勤務実態について違法性を指摘した初の司法判断で、産科医らの勤務体系の見直しに影響を与えそうだ。

即日、社説でも取り上げています。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090422-OYT1T01137.htm(産科医賃金訴訟 過重労働の改善を急がねば)

内容的には当たり前のことを言ってるに過ぎないのですが、その当たり前が当たり前として通らなかったのがいままでの医療界だったわけですね。

毎度毎度槍玉に挙げさせていただいてまことに恐縮ではありますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_6cc3.html(医師に労基法はそぐわない だそうで)

>医師の勤務が労基法に違反している云々(うんぬん)などは、現場の医師にとっては寝言に等しい

寝言じゃないと証明するには裁判に訴えないといけなかったわけです。

本ブログでも相当の回数、この問題を取り上げてきましたが、やはり、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-8a42.html(医師を増やせば医療崩壊は止まる?)

で引用した中島勧さんのコラムが一番要を得ています。

(25日追記)

毎日新聞によると、奈良県知事が疑問を呈したそうですが、それがあまりにも低水準。

http://mainichi.jp/area/nara/news/20090424ddlk29040513000c.html

>「条例で給与や地域手当と計算基礎が決められている。算定基礎は国も同じで、条例で決められたことをいかんと司法が判断できるのか」と疑問を呈した。控訴するかどうかは検討中としている。

いうまでもなく、公立病院の使用者である地方自治体が自ら策定する条例で決めていることは、私立病院の使用者である医療法人が自ら策定する就業規則で決めていることとまったく同じであって、知事の発言は、

>オレ様が就業規則で決めていることをいかんと司法が判断できるのか

と中小企業のオヤジが吠えているのと論理的にはまったく同じなのですが、どなたかそのへんをきちんと助言する法務担当の地方公務員はいなかったのでしょうか。政策法務とか流行を追うのも結構ですが、まずはコンプライアンスから。

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キーワードからみた労働法

4539721062 もう一冊、大内伸哉先生からいただいたのが『キーワードからみた労働法』(日本法令)です。

>均衡待遇の保障は労働者のためにならない。偽装請負は企業だけが悪いのではない。名ばかり管理職が出てくるのには法律にも問題がある。ワーク・ライフ・バランスを政府が推進するのは憲法の理念に反する。メンタルケアの強化は労働者にとって危険である。常識を疑ってみよう。

こちらは、ますます大内節(ぶし)が絶好調という感じです。

いくつかの項目は、実のところまさに我が意を得たりという感じですし、他の項目については、そうはいってもねえあんた、という感じですね。

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雇用はなぜ壊れたのか─会社の論理vs.労働者の論理

9784480064837 大内伸哉先生より、近著『雇用はなぜ壊れたのか─会社の論理vs.労働者の論理』(ちくま新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480064837/

>「使えない社員」はクビだV.S.生存権の侵害だ

というオビの文句にあるように、次のような様々な領域で「会社の論理」と「労働者の論理」のぶつかり合いとして労働法のいろいろなトピックを取り上げた解説書です。

法と道徳-社内不倫はイケないこと?
男と女-女だって働きたいの
仕事と余暇-男だって休みたい
敵対と協調-ユニオンって何をしてくれるの?
エリートとノン・エリート-たかが学歴、されど学歴
会社人と職業人-君は仕事のプロになれるか?
「使える」社員と「使えない」社員-クビになるのは誰?
アメとムチ-人を働かせる秘訣
ベテランと新人-世代間戦争の行方は?
正社員と非正社員-政府のやるべきことは何?
雇用と自営-本当の自由とは?

なので、ちょっと苦言になっちゃうんですが、「雇用はなぜ壊れたのか」というタイトルは、あまりにも中身と合っていません。これはもちろん、大内先生がこんな題名にしたいと思われたわけではないはずで、新書編集部がこういう鬼面人を脅かすような題名の方が売れると思ったからこうなったんでしょうが、1週間店頭にあるうちに読者に買って貰わなければならない雑誌の特集タイトルであればふさわしくても、新書の題名に雇用が壊れたの崩壊だのという文句が踊るのは、(近頃、その手の中身の薄っぺらなのがどっと出ているだけに)いささか下品ではないかと思います。中身からすると、副題の「会社の論理VS労働者の論理」の方がぴったりです。

でも、気になるのはこの題名だけで、大内先生が書かれた中身は、例によって大内節(ぶし)がたっぷりジューシーに溢れています。

大内先生とはかなり考え方の方向が違うので、中身にはいろいろと異論があったりしますが、でもこういう認識論的にはラディカルで、実践論的にはリアリストというのは、スタンスとして好きです。

ただ、プロローグではまっとうな「会社の論理」と「労働者の論理」のバランスだったのが、エピローグではいつのまにか「生活者の論理」と「労働者の論理」のバランスになっちゃってるのは、いろいろつっこみたいところです。特に、そこでいう「生活者の論理」というのが、「開いてて良かったセブンイレブン」みたいな話なので、それで24時間営業しまくるのが「絶妙なバランス」というのはいささかどうなのだろう、と。

(追記)

今気がついたんですが、この本の題名って、同じちくま新書の荒井千暁『職場はなぜ壊れるのか-産業医が見た人間関係の病理』と対になっているんですね。

どちらも手元にあるので、背表紙をくっつけて並べてみたら、

職場はなぜ壊れるのか
雇用はなぜ壊れたのか

うーーーむ、美しい。

んだけど、中身に合っていないという厳粛な事実は変わらない。

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「雇用断層」の研究

0904employment_2_2 みずほ総合研究所の皆様から『「雇用断層」の研究-脱「総中流」時代の活路はどこにあるのか』(東洋経済)をお送りいただきました。有り難うございます。

執筆されたのは、同研究所の堀江奈保子さん、大嶋寧子さん、岡田豊さん、大和香織さんの4人です。このうち、大嶋寧子さんについては、本ブログで何回か取り上げてきたので、ご記憶の方も多いでしょう。

>雇用に何が起こっているのか。生起する断層をとらえ、特に根が深いいくつかの分断の構造を示すとともに、分断された日本の「働き方」を再構築するための処方箋を提示する。

目次を見ると、

第1章 日本の雇用に広がった複雑な「断層」
1.正社員と非正社員の雇用断層
2.正社員のなかの雇用断層
3.非正社員のなかの雇用断層
4.卒業年次による雇用断層
5.地域間の雇用断層
6.職業の違いによる雇用断層

第2章 雇用断層と総中流社会の崩壊
1.失われる中流の可能性
2.能力形成機会の格差
3.家族形成における格差
4.雇用断層がもたらす生涯賃金格差
5.雇用断層がもたらす老後生活格差
6.雇用断層と生活時間の格差

第3章 何が雇用断層の拡大をもたらしたのか
1.バブル崩壊が促した日本型雇用の見直し
2.企業の経営環境の激変と労働者の二極化
3.断層運動を活発化させた政策要因
1)不合理な処遇格差を是正する取組みの遅れ
2)社会保障・税制が招く処遇格差
3)労働者派遣制度における課題
4)教育から就職への移行支援の不足
5)遅れてきたフリーター対策
6)失業時の所得のセーフティ・ネットの機能不全
7)長時間労働対策の遅れ
8)曲がり角に来ている地方圏の雇用対策
9)中小企業活性化策の課題
10)正社員としての就業に必ずしも結びつかない公共職業訓練

第4章 脱「総中流」時代の活路とは?
1.雇用断層が日本経済と企業に投げかけるリスク
2.脱「総中流」の時代に目指すべき方向
3.雇用断層を乗り越えるために

最後の「目指すべき方向」の記述をちょっと引用しておきます。

>雇用断層やこれに伴う「総中流」の崩壊は、働く人、企業の双方にとって長期的には持続不可能な状態を作りだしている。こうした状況に歯止めをかけ、働く人と企業の双方にとっての持続可能な経済・社会を取り戻すためには、どのような方向を目指すべきなのだろうか。

・・・かつての「総中流」社会においては、終身雇用やこれを前提とした企業内能力形成、年功型処遇、社宅や住宅手当の支給、社内預金制度、退職金をはじめとする企業福祉制度などが、現役世代の生活の安定を支える上で重要な役割を果たしてきた。これらは、雇用者が職業能力を高めてこれに見合った賃金を得ること、安定した雇用の見通しを持つこと、住宅を所有すること、家族を持つこと、子供に十分な教育を受けさせることなど、さまざまな人生の希望を実現する上で、大きな意味を持ったのである。

一方、企業が従業員と家族の人生を丸抱えで支えてきたことは、公共投資が一種の雇用対策として機能してきたこと、家族による介護など家族内のインフォーマルな社会保障が存在したことなどととも相まって、日本の現役世代向けの公的なセーフティネットが国際的に見ても低水準にとどまることを可能にした。

・・・しかし、少子高齢化による成長見通しの鈍化、グローバル化による競争激化など、企業をとりまく経営環境が大きく変化する中で、日本企業が従来通りの大きな役割を担い続けることは難しくなった。さらに、地域経済を支えてきた公共投資も、2001年頃より抑制傾向にある。こうした状況で求められるのは、かつての「総中流」を支えたメカニズムが機能しなくなったことを前提に、働くことを通じて。誰もが「現在又は将来の可能性としての中流」を確保できるよう新しいメカニズムを作ることといえよう。

そのためには、現役世代の生活を支える公的部門の機能を必要に応じて拡大していくことは避けられない。公的部門の役割の拡大というと、即座に拒否反応を示す人もいるかも知れないが、努力しない人までも手厚くサポートすることを意味するわけではない。

ここで意味しているのは、雇用断層のズレ落ちる側に立つことがあっても、スムーズな再就職を支援し、不合理な格差を是正する雇用労働政策の枠組みが存在すること、努力すれば雇用断層を乗り越え、人生のさまざまな希望を実現することを可能にするために、これまで企業や公共投資が担ってきたさまざまなセーフティネットを代替する仕組みが整備されていることを意味している。とりわけ、雇用断層が人生のさまざま可能性の喪失につながる最大の要因である、職業能力の不足について、公的部門が果たすべき役割は大きいといえるだろう。

Exactly!こういう言い方はいささか誤解を招くかも知れませんが、問題意識のレベルの高さといい、さまざまな要因への目配りのよさといい、正面から大上段に議論すべきことと妙に騒いでも意味のないこととの的確な振り分けのバランス感覚といい、下手な学者研究者が片手間で書いた書物よりも、よっぽどレベルが高い作品になっていると思います。

大嶋さん、応援してますよ。

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連合総研シンポジウム「イニシアチヴ2009」

前に本ブログでご案内したように、本日午後、日暮里のホテル・ラングウッドにおいて、標記シンポジウムが開催されます。

http://rengo-soken.or.jp/event/2009/03/post-3.html

>1.開催趣旨
  労働を取り巻く状況が急速に変化するなかで、個々の課題に都度対処する対症療法的な対応で はなく、新しい労働ルールについてのグランドデザイン(全体構想)を提起することが急務となってい ます。
  連合総研は、2007年4月に「イニシアチヴ2008―新しい労働ルールの策定に向けて」研究委員会 (主査:水町勇一郎・東京大学社会科学研究所准教授)を発足させました。
 (その後、「イニシアチヴ 2009」に改称)。
 そして、労働法制についての歴史研究や最先端の理論研究を踏まえながら、「労使関係法制」「労働 契約法制」「労働時間法制」「雇用差別禁止法制」「労働市場法制」を柱とする新しい労働ルールの グランドデザインの提起に向けて検討を重ねてまいりました。
  このシンポジウムでは、研究委員会におけるこれまでの成果を踏まえ、水町主査による「労働法 改革のグランドデザイン」を提起するとともに、実務家・研究者等の皆様との意見交換を通じて、労働 法改革のあり方について一緒に考えたいと思います。
  ふるってご参加いただきますようお願い申し上げます。

6.プログラム
13:30~13:35  主催者代表挨拶
13:35~14:25  基調報告 :水町勇一郎(東京大学社会科学研究所 准教授)          コーディネーター:鈴木不二一(同志社大学ITECアシスタントディレクター)
14:25~14:40  コメント1:山川隆一(慶応義塾大学大学院法務研究科 教授)
14:40~14:55  コメント2:鶴光太郎(経済産業研究所 上席研究員)
14:55~15:10  コメント3:岡崎淳一(厚生労働省 高齢・障害者雇用対策部長)
                        (15:10~15:30 休憩)
15:30~16:30  フロアーとの意見交換・質疑応答

ちなみに、残念ながらわたしは、公共政策大学院の授業ともろにバッティングしてしまっているので、出席できません。

ただ、下記各メンバーによるディスカッションペーパーが配布されることになっており、わたくしは「労働時間法制」と「労働市場法制」について書いております。まあ、紙上参加ということで・・・。

「イニシアチヴ2009―新しい労働ルールの策定に向けて」研究委員会(2007年4月~2009年2月)
主 査:水町勇一郎 東京大学社会科学研究所准教授
委 員:大石  玄 北海道大学大学院法学研究科博士後期課程
〃   飯田  高 成蹊大学法学部准教授
〃   太田 聰一 慶應義塾大学経済学部教授
〃   神林  龍 一橋大学経済研究所准教授
〃   桑村裕美子 東北大学大学院法学研究科准教授
〃   櫻庭 涼子 神戸大学大学院法学研究科准教授
〃   濱口桂一郎 労働政策研究・研修機構統括研究員
〃   両角 道代 明治学院大学法学部教授
アドバイザー:荻野 勝彦 トヨタ自動車株式会社人事部担当部長
〃             杉山 豊治 情報労連政策局長

いうまでもないことながら、この中で読んで一番面白いのは「労務屋」さんこと荻野勝彦氏のペーパーです。片っ端から猛爆撃・・・・・・。

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スウェーデン海賊党人気急上昇

労働とは関係のない雑件ですが、EU関係ネタということで。

EUobserver紙の伝えるところによると、来る欧州議会選挙に向けて、スウェーデンでは海賊党が人気急上昇。特に、去る17日、ストックホルム地方裁判所が、音楽、映画、コンピュータソフトの違法ダウンロードサイトの「海賊湾」を運営していた若者たちに1年の懲役を宣告し、音楽や映画会社に3000万クローナの賠償金を払うよう命じたのを期に、海賊党の人気はますますうなぎのぼりで、緑の党を追い抜く勢いだとか。

http://euobserver.com/9/27969

>Support for the Pirate Party, a political party running in the European elections, has soared in the wake of last week's conviction of the four Swedish founders of the file-sharing site.

Backing for the Swedish Pirate Party has now leapfrogged that of the domestic Green Party. While it may be a blip of anger after the verdict and opinions may change come election day, almost 50 percent of young men under 30 say they intend to vote for the new faction in the June 2009 elections to the European Parliament.

Hours after the sentence, membership swelled as well, from under 15,000 to around 20,000, making the party the fifth biggest in the country and easily the most popular amongst young people.

The numbers bring the party within spitting distance of a seat in the European Parliament. To reach Sweden's 100,000 vote threshold for sending a deputy to Strasbourg, each of the party's members would just have to convince another four people to cast their ballots for the upstart political group.

Even before the verdict, the party had shown surprising strength in polls and support, having already surpassed the long-established Green and Left parties in number of active members, as earlier reported in the EUobserver.

On Friday (17 April), the Stockholm district court sentenced Fredrik Neij, Carl Lundstrom, Peter Sunde and Gottfrid Svartholm Warg to a year in prison each for the establishment and maintenance of the Pirate Bay site, which helps users find copyrighted music, film and computer programmes to download without permission.

The court also ordered them to pay 30 million kronor (€2.7 million) in damages to record labels and movie studios EMI, Columbia Pictures, Sony Music Entertainment and Warner Bros.

All four men have said they intend to launch an appeal of the verdict, which takes the case before the Swedish Supreme Court, a process that is expected years to complete.

The day after the conviction, around a thousand people took to the streets of Stockholm to protest the sentence. Rallies against "judicial murder," organised by the Pirate Party also took place in Goteborg, Karlstad and Lund.

The head of the party, Rickard Falkvinge told the crowds: "The establishment and the politicians have declared war against our whole generation," he said, calling on "file-sharing for the people," according to reports from the AP.

The party, which has no official links with the Pirate Bay site or founders, has a stripped down electoral platform of only three planks: fundamentally reform copyright law, eliminate the patent system, and ensure that citizens' rights to privacy are respected.

Protests also spread online on Monday, with the website of the International Federation of the Phonographic Industry (IFPI) - the record industry lobby group - coming under repeated distributed denial of service (DDoS) attacks from hackers angry at the verdict.

Though the site appears to be functioning normally today, on Monday the site was down frequently and at other times loaded extremely slowly. Pages on the site have also reportedly been defaced.

The actions appear to be part of a co-ordinated assault its perpetrators have christened "Operation Baylout," according to internet discussions, with individuals also encouraged to bombard black faxes to Monique Wadsted, a lawyer for the film industry and the offices of the Motion Picture Association of America (MPAA).

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世代間移転の本筋は労働を通じて

第一生命経済研究所の熊野英生さんが「贈与税減税と遺産マネー~遺産動機を持つ相続マネーは相対的に大きくない~」というレポートを公表していますが、ちかごろ異様にはやりつつある「年寄りのこどもへの贈与に減税して景気回復だァ」という議論に疑問を呈しています。

http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma/pdf/k_0904e.pdf

この手の議論は、日本は相続税が高すぎるから年寄りはカネを握りしめて離さないんだ、という金持ち目線の前提に立っているわけですが、本当にそうかというと、

>高齢者マネーが家計金融資産残高の約6割(840兆円程度)を占めていることが知られているが、その中で能動的な遺産動機を持っている高齢者マネーの規模はそれほど大きくはないという印象である。それに対して、相続税を支払っている人の保有資産は、国税庁の統計などを利用すると、229兆円とより巨大な規模だと推定される。この数字でみても、遺産動機を持っている高齢者マネー10.1兆円と比べて大きな乖離がある。

>そこで、ここで生じたギャップ※※の理由を考えると、遺産として課税された金融資産は、必ずしも遺産動機によって蓄積されたものではなく、遺産動機を持っているマネーはその部分集合であると考えられる。高齢者マネーの中で金融資産をメインに遺産動機を持っている割合はそれほど大きくなく、むしろ「老後の不安」や「将来への備え」といった別の理由によって蓄えられている可能性が高い(前掲図表1)。

>結局、高齢者マネーは、遺産動機よりも、老後の生活資金に備えた資金や病気や不時の災害への備えという部分の方が圧倒的に大きく、そうした不安を抱えたまま結果的に相続対象※※※になってしまっている部分が多いのではないだろうか。

で、贈与税減税でどれほど高齢者マネーが動くかというと、「限界的に今回の贈与税軽減措置で誘導できるマネーの総量はそれほど大きくはない」と熊野氏は見ます。

そもそも、

>ここ十数年来、「家計金融資産に占める高齢者マネーを動かすことで、景気刺激に有効活用しよう」というアイデアはさかんに主張されてきた。しかし、そうしたアイデアは金融ビッグバンをはじめとして成功してこなかった。

>筆者からみれば、「高齢者マネーを動かす」ということの本筋は、高齢者が消費を増やすことで、その資金が若年世代の勤労所得に変換されることだと考える。例えば、介護ビジネスを通じて、サービスを受ける高齢者がケアをしてくれる若者に相応の対価を支払えば、それは好ましいかたちでのマネーの世代間移転となるはずだ。

このへん異議なし。

>ところが、介護ビジネスに関しては、介護報酬が2000年の制度開始以来、数度にわたり引き下げられたこともあって、現場を若者が敬遠するようになってきている。残念ながら、介護・福祉分野での勤労を通じてマネーの世代間移転を進めることは、簡単なことではない。これこそ、紛れもなく正常な世代間移転が進むチャネルが機能障害を起こしているということであろう(ここにきて、経済対策の中でようやく介護報酬は引き上げられることが決定された)。

要するに、高齢者が率先して高品質・高価格の財・サービスに消費しないから、結果的に勤労所得も制約されるという図式である。筆者は、医療・福祉・介護ビジネスを通じて若者の賃金が上がっていくメカニズムを強めることが最善の策であると考える

同じく異議なし。まさに、この小見出しの言葉をそのまま使わせてもらえば、「世代間移転の本筋は労働を通じて」行われるべきなのです。若者の労働の対価として高齢者の資産が使われることが本筋でしょう。

>一方、なぜ、高齢者が消費を増やさないかというと、多様な将来不安が解消されずに、予備的動機が強く働くからだと説明できる。巨大なる高齢者マネーは、高齢期を迎えた人々が自分の将来生活がうまく描き切れないことの「結果」なのである。従って、この状況は「結果」であるからこそ、容易に変化させることはできないであろう。

ではどうしたら、その「不安」を解消できるのか、という疑問に対し、熊野氏の答えはいささか奇妙なものですが、

>逆説的な見解を述べると、子供から親への援助ができるようになることが、それに資すると考えられる。

これは正直、本質的ではないような気が・・・。

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生活保護の論点

237 布川日佐史先生から、『生活保護の論点』(山吹書店)をお送りいただきました。ありがとうございます。

布川先生はご存じの通り、ドイツの雇用政策と公的扶助の交錯について先駆的な研究をされ、2004年に行われた社会保障審議会の生活保護のあり方専門委員会のメンバーとして、生活保護制度の見直しに尽くされた方です。

本書は、この専門委員会での提起を中心として、その枠を超えた政策論を全面的に展開しています。第1部は生活保護基準の検討、第2部は保護の要件としての稼働能力活用の検討、第3部は生活保護改革論議と自立支援、そして最後の結論が「社会保障制度を土台から作り直す」です。

わたくしとは、連合総研の最低生活保障に関する研究会でご一緒させていただきました。その結果が『積極的な最低生活保障の確立』という本になっています。

http://www.rengo-soken.or.jp/houkoku/kenkyu/20060320_seikatsu_hosyou.htm

また、本ブログで何回か取り上げた『世界』昨年10月号の「若者が生きられる社会宣言-労働、社会保障政策の転換を」を共同執筆された一人でもあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_7b90.html(『世界』10月号)

布川先生の考え方は、生活保護を積極的に活用すべきだというところにあり、結論の最後のところでそれが明確に出ています。

>生活保護受給者が増加すると、すぐに、国や自治体の財政問題が大変だ、増えすぎだ、という声がマスコミをにぎわす。そもそも生活保護がすべてを引き受けるべきではないとの批判も出てくる。それが雇用保険や年金制度などの拡充や新制度創設に向けた世論になっていく。しかし、他方で、社会保障制度間の順序づけとして生活保護制度は最後に控える制度であるべきとの主張は、往々にして生活保護受給者の増加を批判し、生活保護への受け入れを抑制せよとの主張に転化していく。抑制せよとまではいわないとしても、生活困窮者を積極的に保護に受け入れろと主張することはない。生活保護制度はマイナスイメージのままで改善されることはない。結局のところ、多くの人がそこから漏れたままになってしまう。

布川先生のいわれることはすごくよく分かるのですが、とともに、やはり雇用保険制度や年金制度の不備のためにこぼれ落ちてしまっている人々に対しては、(緊急措置として生活保護を活用すべきはもちろんとしても)何よりもまず本体の制度の不備をきちんと改善し、生活保護を活用しなくても済むようにするということがなされるべきだろうという思いも強くあるわけで、それがかえって生活保護のスティグマを強めることになるじゃないかというのもよく分かりながら、そうはいっても・・・という感じも強くするわけです。

なかなかここは、人によっていろいろな考え方のあるところでしょうね。

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ヨーロッパのデモクラシー

514 網谷龍介先生から、先生が編者の一人となっている『ヨーロッパのデモクラシー』(ナカニシヤ出版)をお送りいただきました。ありがとうございます

http://www.nakanishiya.co.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=514

>欧州28ヵ国の最新の政治動向を各国別に紹介する決定版テキスト!

民主主義の赤字、福祉国家の危機、新自由主義、移民とポピュリズム、政治不信……。欧州諸国は民主主義をめぐる様々な困難に、どのように立ち向かおうとしているのか。EU加盟国を中心に、欧州28ヵ国の最新の政治状況を分かりやすく紹介。

ということで、内容は次の通りです。

第1章 ヨーロッパ型デモクラシーの特徴  網谷龍介

ヨーロッパの選挙制度   成廣孝

第2章 EU   南佳利

EUとユーロ圏の拡大   南佳利

第3章 ドイツ   野田昌吾

オーストリア   馬場 優

スイス    岡本三彦

第4章 フランス    川嶋周一

第5章 イギリス    成廣孝

アイルランド共和国と北アイルランド    池田真紀

第6章 イタリア     伊藤武

第7章 オランダ・ベルギー    日野愛郎

ルクセンブルク     門愛子

第8章 北欧諸国(スウェーデン・デンマーク・フィンランド・ノルウェー・アイスランド)  渡辺博明

第9章 南欧諸国(ポルトガル・スペイン)
中島晶子

ギリシア   中島晶子

第10章 中欧諸国(ポーランド・チェコ・スロヴァキア・ハンガリー・スロヴェニア)   中田瑞穂

バルト諸国(エストニア・ラトヴィア・リトアニア) 大中 真

第11章 ルーマニア・ブルガリア   藤嶋 亮

本書には、サポートページがありまして、

http://homepage2.nifty.com/cep/DemocraciesInEurope.html

説明とともに、「はじめに」、第1章、第6章、コラムのサンプルが載っています。

総論でも、各国編でも、二次元の政党配置図というのがあって、これがとても面白い。

総論では、1960年代は左から右に、共産、社民、キリスト教民主主義、リベラルという順番に並んでいたのが(リベラルは最右翼なんですよ。ヨーロッパでは)、1990年代以降、文化的対立を加えて二次元的対立になったとして、上から下に自己決定から伝統的価値に並ぶ縦軸を加えて、上に緑、下にポピュリスト右翼という配置図を描いています。

ドイツの配置図はこれに近くて、横軸は左から右に国家介入主義から市場主義に並び、縦軸は上から下に自由から権威に並ぶ。左翼党は左下で、自由民主党は右上で、緑の党は真ん中の一番上ですね。

フランスの枠組みは、横軸は左が左翼で右が右翼(わかりやすい)、縦軸は上がディリジズムで下が自由主義的と、上下が逆転しています。共産は左上、国民戦線は右上。

イギリスはそういう絵解きはなくて、保守党、労働党、自由民主党、地域政党を縷々説明しています。

イタリアは、いまだに二次元じゃなくて、一次元の線上にずらずらと並んでいますね。

オランダはいうまでもなくそのほかの諸国の横軸に当たる「雇用者-労働者」の亀裂と並んで宗教的亀裂、ベルギーは言語的亀裂というのが軸になりますね。

というふうな感じで、あっちこっちつまみ食いしながら読むと、興味が増します。

ちなみに、ルクセンブルクの政治がルクセンブルク・モデルと呼ばれるネオ・コーポラティズム体制としてしっかり紹介されたのって、これが初めてじゃないでしょうか。

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いつでもクビ切り社会

416660693x 森戸英幸先生から、『いつでもクビ切り社会-「エイジフリー」の罠』(文春新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.bunshun.co.jp/book_db/6/60/69/9784166606931.shtml

>アメリカ発「年齢差別撤廃(エイジフリー)」の美名の下、雇用の世界では採用時年齢制限禁止とともに、「定年制廃止」が進んでいます。高齢社会により高齢者の発言権が増した結果でもありますが、これにより(1)高齢社員の既得権を温存する一方、若者雇用を阻害するとともに、(2)年齢で解雇できない以上、正社員であっても「能力」という名目でいつでもクビ切りできるようになるのです。年功序列という日本型セイフティーネットまでが失われた社会にどう備えるべきかを論じます。

というわけで、森戸先生がここ数年来取り組んでこられた年齢差別法制に対する、内容的には高い学問的水準を維持しつつ、やや斜に構えた姿勢からの、はじけ飛んだ文体で軽妙につづった、いかにも森戸厩舎の薫り漂う一冊です。

この分野は、私もEU指令の紹介から始まって、日本における高齢者対策の歴史や年齢に基づく労務管理の歴史などをふまえて、いろいろと書いてきた領域でもありますので、大変興味深く読みました。

この分野では、柳澤武さんや櫻庭涼子さんが外国法についてきちんとした研究をしておられるのですが、現実の労働社会における法政策論として議論しようとすると、いろいろと考えるべきことが多く、それらを森戸風に軽妙に料理していく手際はさすがですね。

私自身は、下にあるリンク先の論文に書いているように、森戸先生ほど年齢差別禁止政策に否定的ではありません。年齢に基づく雇用システムを変えようとすると社会システム全体に大きな転換が必要になるという点についてはその通りだと考えていますが、標題になっている解雇規制との関係では、それを「いつでもクビ切り社会」になるというわけではないと考えているからです。この辺は、解雇自由に基づくアメリカの年齢差別禁止をベースに考えるのか、解雇規制が前提のヨーロッパで導入しようとしている年齢差別を参照するのかという違いかもしれません。

(参考)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/nenreisabetu.html法律時報』2007年3月号「年齢差別

http://homepage3.nifty.com/hamachan/yashiroken.html(経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会報告「年齢の壁」)

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/15/work-s.pdf(上の議事要旨。大変面白いです)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/paradox.html(『時の法令』10月15日号「そのみちのコラム」原稿 「年齢差別のパラドックス」)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/daishou.html(『時の法令』12月15日号「そのみちのコラム」原稿 「「年齢の壁」廃止の代償」)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/chikounennrei.html(『地方公務員月報』2008年3月号「雇用対策法改正と年齢差別禁止」 )

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朝日ジャーナル怒りの復活またはジョブ派対談意気投合

10334 その昔、「右手にジャーナル、左手にマガジン」と称されたらしい朝日ジャーナルが週刊朝日臨時増刊として「怒りの復刊」(謎)を遂げたそうで、

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=10334

まあ、現代思想系のあんまり食指の動かない人もいますが、わりとロスジェネ論壇系の人々を集めていますね。雨宮カリンとフリーター全般労組の人々とか、赤木智弘とか、湯浅誠とか、本田由紀さんもいますよ。特に面白いのが異色対談系で、ホリエモンと浅尾大輔の対談もなかなかいいですが、意気投合ぶりが半端なじゃないのが、八代尚宏氏と木下武男氏のわたくし流に言えば「ジョブ派対談」です。

一般的には八代氏はネオリベ系の市場原理主義者であり、木下氏はサヨク系のユニオン主義者だと思われているようですが、このお二人の会話を名前を隠して読んでみて、どちらがどっちの発言だか当てられますか?

甲:これまで失業保険は、リスクの高い非正社員を排除することで、本来の役割を果たしていなかった。・・・

乙:労働判例を積み重ねた結果、整理解雇の4要件というものがありますが、その一つ「解雇回避努力義務」には、正社員の解雇の前に非正規雇用を削減したかというものがあります。・・・

甲:日本では、経営側と円満な関係にある企業内部の正社員と、市場の需給で決まる企業外部の労働者の間に「身分差」という高い壁があります。・・・

乙:大学に行かなくてもブルーカラーでも家族形成が可能な賃金を払い、スキルも身につけられるようにすればいいですね。

甲:暗黙のうちに専業主婦を前提にした生活給から、共働きを標準にした社会制度に変えなければいけません。・・・

乙:そこで、これまでの年功賃金じゃなくてジョブ型に、終身雇用じゃなくて転職可能な正社員に移行する道を用意していかなければならないと思うのです。・・・

両方ほとんど同じことを言ってるので、どっちがどっちだかわからないでしょう。次を見てようやく分かるように、

甲:パートタイムとか派遣とか、働き方ごとに規制するのではなくて、どんな働き方をしても「同一労働同一賃金」の原則で縛る。それが労働ビッグバンの発想です。

甲が八代氏でした。乙が木下氏です。その後も、意気投合は続きます。

乙:福祉国家の代替機能として肩代わりしてきた企業がその役割を捨てるとすれば、ますます国の役割が問われてきますね。生活保護の次は住宅が問題になっています。

甲:ホームレスの人も、まず住む場所があれば就職もしやすい。国は住宅にカネをつぎ込んだ方が結果的に生活保護を減らせるので、財政的にも助かるのに、そういう機能的なことができない。例えば、国土交通省の公営住宅の予算を厚生労働省の住宅補助に大きく転用すべきです。

この八代説は大賛成ですね。

ちなみに、朝ジャ編集部は赤木智弘氏についても「複数の知識人たちに赤木との対談を打診したが、戦争を提唱する人間と議論はしたくないなどの理由で断られた」んだそうです。

なんというケツの穴の狭っ苦しい連中!そういうのは喜んで相手をすべきじゃないか、知識人などと称するんであれば。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_7b90.html(『世界』10月号)

>一点だけ感想めいたことをいうと、ある種の人々からは意外に思われるかもしれませんが、この共同提言と一番近い立場にあるのは、実は八代尚宏氏と労働市場改革専門調査会の方々ではないかという印象を改めて強く持ちました。

私の言い方でいうと、メンバーシップを強調する日本型雇用システムの矛盾こそが今日の問題の根源であり、これを適切なジョブ型社会にもっていかなければ道は開けない、という強い指向です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-3645.html(労働市場改革専門調査会最後の議事録)

>このように、八代研の考え方は『世界』の共同提言と大変近いところにあるわけです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/posse-207e.html(POSSE第3号)

>あと、次号の予告ということで、木下武男さんの「格差論壇分類MAP]というのが面白そう。<JOB派-隠れ年功派><規制緩和派-規制強化派>という2つの軸によるマトリックスで「論客の実名を挙げながら敢行する」んだそうです。インスパイアしたのはわたくしのブログでの発言だったそうなので、いささか責任があるかも・・・

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意味不明

たかが通信教育のユーキャンのアンケートごときに目くじら立てなくても、と良識ある方々はおっしゃるでしょうし、わたしもそう思いますが、あまりにもあまりなので・・・。

http://www.u-can.co.jp/company/news/20090416/release090416.pdf

>『終身雇用と能力主義、どちらがいいですか』と聞いたところ、「終身雇用」と答えた人が291人(72.8%)、「能力主義(非終身雇用)」と答えた人が109人(27.3%)となりました。

あのさあ、「能力主義」って言葉はれっきとした人事労務管理上の概念なんですけど。何も日経連の『能力主義管理』を熟読玩味してからアンケート作ろうね、なんて嫌みを言う気はないけど。(って、嫌みになってるか)

次は、

>『年功序列と成果主義、どちらがいいですか』と聞いたところ、「成果主義」と答えた人が235人(58.8%)、「年功序列」と答えた人が165人(41.3%)となりました。

ふうん、そういう対概念なんだ。まあ、金融論の専門家もそう思いこんでいたからしょうがないか。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_73ad.html(そういう二項対立ではないのです)

いやまあ、これが一般国民の水準ですよという意味では有益な情報かも知れない。アンケートに答える方じゃなくて作る方のね。

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「人事権を社員に戻す」って?

日経ビジネスオンラインで、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)柴田励司COOという方が、「人事権を社員に「戻せ」ば、組織は健やかになる」と語っています。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090414/191835/?P=1&ST=spc_k-change

さて、「人事権を社員に戻す」ってどういうことなんでしょうか?

>各社員が働きたい部署と就きたい仕事を自分で決め、そこにリエントリー、つまり手をあげる。各部署の責任者は、エントリーした社員から定員数だけ採用する。もちろん、責任者自身も、リセットとリエントリーをします。責任者の採用は経営陣がやります。対象外なのは新卒入社3年目までの社員。最初の3年間は修行期間ですから。

 この制度だと、自分のやりたい仕事ができるから、主体性が高まります。今年は行きたい部署に採ってもらえないかもしれない。でも、来年もチャンスがあると知っているから、今の仕事をがんばれる。希望の部署の人たちに「一緒に働きたい」と思ってもらおうと、日頃の仕事の仕方が変わります。どの部署のどの職種にエントリーしてもいいので、自分の業務範囲しか見ていなかった社員の視野も広がるでしょう。

それって、社内オープンジョブ市場ってことですかね。

そもそも、雇用契約とは本来、ジョブを定めて締結するものという日本以外の諸国の常識、あるいは日本民法契約編の常識からすると、ジョブを何ら定めることなく社員というメンバーシップのみを付与する「入社」契約が特殊なんですが、この会社の場合、メンバーシップを付与する基本契約の上に、具体的なジョブを求人求職の状況によって配分する社内ジョブ契約があると解釈すればいいのかな。

さらに、

>「R2」をこの考え方に同意いただける加盟企業様やパートナー企業様などCCCの外にも広げようと思っているので、万が一、1社の中で職場を失っても、外で働き場所を見つけられるでしょう。部署や職種を変えるだけでなく、会社を移ってもいいんです。

という風に、「中間労働市場」的な広がりもあるようなので、この基本メンバーシップ契約は社内に限らないようです。

>給与の額は、各部の責任者が「このポジションはいくら」と決めます。だから、ポジションが決まった時点で、基本的な給与も決まる。実績に連動して報奨を与えたければ、責任者の判断でそうすればいい。人気取りで給料を上げすぎると、部門経営が破綻しますから、無茶なことはしないでしょう。

分権型人事システムがジョブ型社会の基本ですから(だから、非正規の人事は現場に任されているわけです)、まさにジョブ型なんでしょう。

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田中清定氏の労働時間論

全基連の「らいふ」4月号をお送りいただきました。田中清定氏の労働時間法制に関するインタビューが載っています。田中氏はご存じの通り、1953年に労働省に入り、東京労働基準局長、労働保険審査会会長を経て、退職後は関東学園大学教授をされ、いまは名誉教授です。まあ、私の大先輩で、あまりにも大先輩過ぎて直接職場でご一緒したことはありません。

その田中氏の論ずるところは、私が近頃喋ったり書いたりしていることと実に同じでありまして、ですから、私はこれこそ労働行政の本来の姿ではないかと思うわけですが、題名と見出しを並べますと、

労働時間制は根本から見直しを

>割増率引き上げだけでは効果が薄い

>日本では労働時間の上限を法定していない

>EU指令では1日ごとに連続11時間の休息時間の確保

>日本でも1日あたりの労働時間規制を

>ワークシェアは労働時間制見直しの好機

というわけで、特にこのあたり、

>そもそも国がなぜ労働時間を規制するのかという根本的な議論が、これまで欠けてきたように思います。・・・労働者の安全や健康を守ることは、国の基本理念です。具体的な労働時間の設定はある程度柔軟に労使に委ねることがあるにしても、国として「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たす」(労基法1条)ための外枠をしっかりはめなければなりません。・・・「人たるに値する生活」で重要なのは、日々の休息時間の確保です。・・・ワーク・ライフ・バランスの議論でも、まず1日単位での労働と休暇のバランスを考えるところから出発すべきでしょう。

これこそ、労働時間規制の本質を的確に述べていると思います。こういうことをずばっと言う人が少ないのが問題なんですが。

あと、ついでみたいですが、冒頭の「ひと人ヒト」というコラムで、小林慶一郎氏が「格差や派遣切りの原因を外国に求める思考も天に唾するのと同等である」「日本の雇用問題における不満の原因は、非正規雇用者に対するセーフティネットの不備と、正社員と非正社員の間の不合理な待遇格差の問題である」と述べています。

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日本経団連の「競争力人材の育成と確保に向けて」

昨日、日本経団連が「競争力人材の育成と確保に向けて」と題する提言をまとめています。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/036/index.html

目次を見ると、

はじめに

1.「競争力人材」の育成・確保の重要性

2.国内人材の育成と確保

(1) 人材育成の場としての大学の重要性

(2) 初等・中等教育から高等教育への一貫した人材の育成

3.外国人材の育成と確保

(1) 多文化共生社会の形成-「競争力人材」の定住化

(2) 外国人材受け入れのための環境整備

(3) 政府における司令塔の設置、基本法の制定

(4) 留学生の受け入れ

4.企業の取り組みの充実

なんだか、国内人材よりも外国人材の方が大事みたいな感じですね。

まず、あんまり期待されていない(?)国内人材ですが、まず大学について、

教養教育の充実、実践教育の充実と産学連携の強化、キャリア教育の充実、学生の質の担保と優れた取り組みの大学を評価するための受益者評価の導入、大学の機能の多様化、

とずらずら並んでいますが、多分、最後の機能の多様化というのがいいたいことではないか、と。

>大学進学率が50%を超え、高等教育がより幅広い層にも行われるようになる中、政府としてもこれまでの大学政策を見直し、国内に700以上ある大学の教育内容、目的などの機能の多様化を進め、それぞれの特徴にあった各種支援を行っていくことが必要となる。例えば、(ⅰ) 世界のトップ水準の研究・教育者の育成を行う先端的研究・高度教育型、(ⅱ) 医療関係者や法律・会計等の資格者、技術者などの専門家を養成するプロフェッショナル養成型、(ⅲ) 公務・民間も含む総合職を養成するジェネラリスト養成型、(ⅳ) 地域産業振興や生涯学習の推進も念頭に置いた地域密着型、などに大学を類型化すべきである。

実態としては相当程度そうなっているのに、学校教育法上はみんな同じ「学術の中心」とか称しているのがおかしいといえばそうなのですが、そうなると大学の大部分は職業訓練機関であるという風に位置づけないといけなくなるはずですね。

職業訓練機関であればこそ、その訓練費用や場合によっては生活費も国が面倒を見ましょうという話にもつながっていきうるわけで、奨学金をサラ金よろしく取り立てようなどというおかしな話にもならないわけですから、私はそれこそ正しい方向だと思いますが、さてこそ文部科学省をはじめとする教育界の皆様方はそう割り切れるものでしょうか、というのが問題でしょう。

先日トラバいただいたネケイア夜の航海さんのブログで、

http://blog.goo.ne.jp/nekyia/e/b95991e95ef97084caad102c19f391f0

>フィンランドは学生天国で、学費無料はもちろん(留学生も)、なんと学生である間は国から生活費まで支給されるという。安い学生寮に住めば、学生であるあいだは学業に専念して自活できる。日本では考えられない環境だ。親の経済状況が苦しくても、医学や美術に進みたいと思うコドモは、やりたいことをあきらめないで精進できるって夢みたいだな。

とありましたが、大学教育と職業訓練が国民の職業生涯を形作る基礎としてひとつながりのものと考えられているからこそだと思うのです。親の金で遊ぶのが大学だという感覚で過ごした世代が世の中にいっぱいいる日本ではなかなか難しいのでしょう。

(ちなみに、ネケイアさんのブログの最近のあたりはなかなかおもしろいです。3法則炸裂)

次が「初等・中等教育から高等教育への一貫した人材の育成」で、これまた、

様々な事象に関心を持つことのできる人材の育成、理工系学問への関心の向上、企業OB・OG人材の活用、

と並んでいますが、わたし個人的には「理工系が大事だよ!」ってのを強調しておきたいですね。

>近年の大学学部別志願者数を見ると、工学部離れの傾向が見られる。一方、専攻分野別学生数と専攻別の求人倍率を比較すると、文系と理工系で逆転現象が生じている。こうしたミスマッチを改善しわが国産業の競争力を高めていくためには、理工系学問の魅力向上を図り、高度な技術開発などを担う優秀な技術人材の育成を図っていかなければならない。
また、産業競争力の強化のためには、実際に生産の現場を担う技能人材を確保していくことも同時に進めていくべきである。特に、国内に高付加価値な生産基盤を残すためには、自ら考え工夫することのできる自立した技能人材を育成し、生産現場においてもイノベーションを起こすことで、諸外国との激しい競争に打ち勝てる環境をつくりだすことが必要である。
理工系学問への関心を高めるとともに、有為な技能人材を育成するためには、小学校、中学校などの早い段階から子どもたちがものづくりや創意工夫の魅力に触れることが必要である。昨年3月の小中学校の学習指導要領の改訂では、総合的な学習の時間を通じて、ものづくり、生産活動などの体験活動を積極的に行うことを明記している。実験、実習の機会拡大なども含め、子どもたちに理工系学問への魅力やものづくりの楽しさを感じてもらえるよう、学習指導要領に則し、効果的なカリキュラムを具体化していくことが求められる。

これまた何回も本ブログで引用していますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_54bc.html(大瀧雅之氏の金融立国論批判)

>>・・・そうした中、まことに単純で杜撰な想定に基づく経産計算から導出された証券価格やリスク評価を盲信し金融経営の中心に据えることは、経営の怠慢に他ならず、背筋に寒いものを感じる。筆者が文科系学生の数学・理科教育が何にもまして重要と考えるのは、こうしたプリミティブな「数学信仰」そして同じコインの裏側であるファナティシズム・ショーヴィニズムを抑止し、広く穏やかな視野で論理的な思考を涵養せねばならないと考えるからである。彼らが数理科学の「免許皆伝」となることは残念ながらまったく期待できないが、組織・企業の要として活躍するには、そうした合理精神が今ほど強く要求されているときはない。

>筆者の理想とする銀行員像は、物理・化学を初めとした理科に造詣が深く、企業の技術屋さんとも膝を交えて楽しく仕事の話ができる活力溢れた若人である。新技術の真価を理解するためには、大学初年級程度の理科知識は最低限必要と考えるからである。そうした金融機関の構成員一人一人の誠実な努力こそが、日本の将来の知的ポテンシャルを高め、技術・ノウハウでの知識立国を可能にすると、筆者は信じている。

付け加えるべきことはありません。エセ科学を的確に判別できる合理精神は、分かってないくせに高等数学を駆使したケーザイ理論(と称するもの)を振り回して人を罵る神経(極めて高い確率でファナティシズムと共生)とは対極にあるわけです。

というわけですので。

一番力が入っている外国人材についてですが、いやもちろん競争力人材を定住させて、「多文化共生社会」というのは、大変すばらしい理念なのですが、ただ日本経団連がいっているという前提で考えると、やはり「高度な技能人材」というのが、実際のところどのくらい「高度」なのか?という問いも必要でしょうね。

とりわけ、

>なお、技能人材の受け入れに伴う国内労働市場への影響が懸念されていることから、新たに高度な技能人材を受け入れていく際には、労働市場テストの導入を本格的に検討する必要がある。

>一定期間求人を出すことで、国内では人材が充足されないことを確認する仕組み。

というあたりは、本当に当該仕事をやる労働力が欠乏しているのか、それとも当該仕事の賃金労働条件等が劣悪なため日本人が寄りつかないからなのかを、きちんと検証しつつやっていく必要があると思われます。

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RIETI労働時間改革シンポジウムのプレゼン資料

去る4月2日に開かれた経済産業研究所の政策シンポジウム「労働時間改革:日本人の働き方をいかに変えるか」のパネラーの皆さんのプレゼン資料がアップされているようです。

http://www.rieti.go.jp/jp/events/09040201/handout.html

もちろんプレゼン資料なので、どういう風に語ったかはそのうちにアップされるであろう議事概要をみないといけないですが、どの方もなかなか興味深い論点を提示しておられます。

最後の日本経団連の輪島さんのパワポを見ると、4枚目に「企業活動のサイクル」というのが載ってて、ちょっと前に話題になった例の内部留保を充てろ論に対する反論をされたようですが、そこにおける企業観が興味深いものがあります。

1年目、企業の箱の中に資本と労働があって、そこに原材料をぶち込んで、売り上げ(原材料費プラス付加価値)になる。そこから、人件費、金融費用、賃借料、租税公課、減価償却費を引っこ抜いていくと課税前利益になる。そこから、法人税を抜き、配当金・役員賞与を抜くと、最後に内部留保が残る。この内部留保が2年目の企業の箱の中に矢印でつながっていくわけです。

これは、企業とは究極的には内部留保であるという世界観ですね。おそらく現実の多くの経営者の感覚に近いものでありましょう。

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安心社会実現会議

昨日、標記会議が開かれたという話ですが、

http://www.asahi.com/politics/update/0414/TKY200904130287.html

>渡辺恒雄・読売新聞グループ会長が「『小さな政府』の失敗には懲りた。小泉元首相や竹中平蔵元総務相の考え方は必ずしも適切でなかったから、いま格差社会になったと盛んに言われている」、武藤敏郎・大和総研理事長(元財務事務次官)が「バブル崩壊後、市場経済を重視してきたが、同時に秩序が崩壊して社会不安が増大した」と述べるなど、米国流資本主義や小泉構造改革の修正に触れる意見が相次いだ。

 会議の運営を担当する与謝野氏は、社会保障の充実と、その安定財源として消費税などの税制抜本改革の道筋をセットで示した「中期プログラム」を改訂する意向をすでに表明している。09年度補正予算案で15兆円の大型財政出動に踏みきるが、景気回復後、財政再建路線にかじを切るためだ。この会議を活用しながら、消費増税に向けた国民的合意を得たいとの狙いも透けて見える。

与謝野路線を前面に出していくということなんでしょうね。メンバーはこちらに載っています。ある意味で非常にわかりやすい人選です。

http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/rireki/2009/04/07siryou.pdf

○伊藤 元重 東京大学大学院経済学研究科教授
○小島 順彦 三菱商事代表取締役社長
○髙木 剛 日本労働組合総連合会会長
○但木 敬一 弁護士
○張 富士夫 トヨタ自動車代表取締役会長
○成田 豊 電通最高顧問
○日枝 久 フジテレビジョン代表取締役会長
○増田 寛也 野村総合研究所顧問
○宮本 太郎 北海道大学大学院法学研究科教授
○武藤 敏郎 大和総研理事長
○矢崎 義雄 独立行政法人国立病院機構理事長
○山内 昌之 東京大学大学院総合文化研究科教授
○山口美智子 薬害肝炎全国原告団代表
○吉川 洋 東京大学大学院経済学研究科教授
○渡辺 恒雄 読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆

このうち、高木連合会長と宮本太郎先生は、「野党に近い意見も聞く」との狙いから」というのはその通りだと思いますが(というか、もう少し政治的な意図があるのでしょうが)、それにしても、宮本先生に「共産党の故宮本顕治元議長の長男である」という形容詞を付けるのはいささかどうかと。別に、どこかの国の二世議員や三世議員みたいに親の生業を嗣いだわけではないし、知らない読者が誤解しかねない・・・。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_8dc6.html(福祉政治)

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同居の親族の労働者性

いや、同居の親族も労働者ですよ。そのことに疑いはありません。だって、労働基準法第116条第2項は、

>この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない

と、わざわざ適用除外しているのですから、本来労働基準法上の労働者に当たることは疑いはありません。

ただ、まあ、こうして労働法の大本たる親亀法で適用除外しているので、子亀孫亀にあたる法律でも、当然のように適用除外してきたわけですね。中小企業退職金共済法もその一つ。ところが、与党の税制改正要望で、青色事業専従者についても中退共済に入れろといわれ、

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/04/dl/s0407-2e.pdf

早速この4月から、中小企業退職金共済制度の加入対象者の範囲に関する検討会を開催することとなったわけです。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/04/s0407-2.html

検討の視点(案)をみると、

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/04/dl/s0407-2d.pdf

やはり他の労働法制との整合性を気にしているようです。

ただね、これはむしろ、労働法では各法律ごとに対象となる「労働者」は異なっていいんだ、それが当たり前なんだ、という発想をもっと一般化するためのいい機会ではないかという気もします。

親亀である労基法と労組法についても、違ってていいじゃないかというのが労働法学者のコンセンサスだと思うのですが(だからプロ野球選手会は都労委で労働組合として認められたんですが)、問題が裁判所に持ち込まれると、やたらに頭の固い裁判官たちが、かつて「労働基準法研究会」がつくった労基法上の労働者性の判断基準を後生大事に抱え込んで、「おまえなんか労働者じゃねえ」という風になってしまうわけです。

まあ、同居の親族はそもそも労働者ですから、そこまでの話ではないんですが。

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地域政策と雇用政策の関連

Index_03 財団法人国土計画協会から発行されている『人と国土21』という雑誌の「時を斬る」というコラムに、「雇用政策の転換」という文章を寄稿しました。

http://www.kok.or.jp/hitokok/backnumber/34_6.htm

中身は、こちらにアップしておきます。4分の3くらいは、これまでの雇用政策の転換とこれからの方向性という一般的なテーマを簡単に述べたもので、

1.自由主義の時代と社会主義の時代

2.近代主義の時代

3.企業主義の時代

4.市場主義の時代

5.市場主義の時代の終焉

6.市場主義の時代の次に来るのは何か?

という感じになっていますが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/hitotokokudo.html

そのあとに、雑誌のメインテーマである地域政策に話題を引っ張っていって、こんなことを書いてみました。いかがお考えでしょうか。

>7 地域政策と雇用政策の関連
 
 最後に本誌『人と国土21』のメインテーマである地域政策と雇用政策の関わりについて触れておこう。
 近代主義の時代は労働力の広域移動政策が中心であった。1959年の炭鉱離職者臨時措置法により、職業安定法の居住地紹介原則の例外として広域職業紹介の規定が設けられたのがはじまりである。1960年の職業安定法改正によりこれが一般化され、労働大臣による広域職業紹介活動命令の規定が設けられた。1966年の雇用対策法では、国の施策として労働者の地域間の移動のために必要な措置が掲げられ、労働力流動化対策が中心に位置づけられた。
 上記炭鉱離職者臨時措置法により炭鉱離職者援護会が設置され、移住資金の支給を行うとともに、再就職のための労働者用宿舎の貸与などの事業を開始した。さらに1961年に雇用促進事業団が設置され、炭鉱離職者に限らず一般の移転就職者への移転資金の支給、移転就職者用宿舎の設置運営などを行うこととされた。これが雇用促進住宅として全国に設置されていくことになるが、まさに広域移動の活発化を前提とした政策であった。
 これに対して、近代主義の時代の末期から政策方向の転換が進んでいった。1971年の農村地域工業導入促進法は、出稼ぎが社会問題化し、農村地域の就業機会確保が課題になる中で、都市の過密解消をも目指して制定されたもので、農村地域に工業を導入して農業従事者を工業に就業させようという政策である。1972年には工業再配置促進法が制定されている。
 人を企業のあるところに動かすよりも企業を人のいるところに動そうという地域政策が明確な形をとったのは、1975年の雇用保険法によって設けられた地域雇用促進給付金である。これは労働大臣が指定する雇用機会不足地域において、製造業等の事業所の新増設を行い、これに伴って労働者を雇い入れた企業に一定額を給付するという仕組みである。人よりも企業を助成の対象にするという点に、企業主義の時代の刻印が浮かび上がっている。1982年にはさらに、市町村等の協力で雇用機会の開発を行う地域雇用開発推進事業が設けられた。これはいってみれば、地方自治体が行う地域開発施策に、雇用機会創出という観点から企業への一定の支援をしていく枠組みといえる。1987年には地域雇用開発等促進法が制定され、こういった政策が法的に確立された。その後、同法は何回か改正が繰り返されたが、人の移動ではなく企業の移動を目指すという政策理念は基本的に変わっていない。
 雇用政策としては1990年代になって広域移動政策に再び舵を切ったという事実は存在しない。しかしながら、この時期に遂行された労働市場規制の緩和政策により、事実上民間主導で労働者の広域移動が再現されるようになってきた。公共職業安定所と雇用促進事業団(後に雇用・能力開発機構)という公的サービスによるのではなく、偽装請負ともいわれる事実上の労働者派遣事業者によって、雇用機会の乏しい北東北や南九州のような地域で募集された労働者たちが、なお人手不足気味の関東や東海地方に移動させられ、請負会社や派遣会社の寮に収容されて、その地域の工場等で就労するという姿が一般化したのである。こうした民間主導の広域移動においては、労働者の待遇が必ずしも良好とはいえない場合が多く、特に近年の市場主義の見直しが進む時代風潮の中で、強い批判を受けるに至っている。
 しかしながら、悪辣な業者を非難することは当然としても、それだけで済むわけではない。社会経済の変化の中で地域政策の主軸が「国土の均衡ある発展」から首都圏一極集中に移行する中で、地域雇用政策が広域移動を無視し続けたことのツケがそういう形で現れてきたともいいうるのである。今日派遣切りされて路頭に迷っている労働者たちを急遽廃止予定だった雇用促進住宅に収容するという施策が講じられているが、地域政策と雇用政策の関わりをどう考え、どういう方向に進めていくべきなのか、改めて真剣に検討される必要があろう。

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朝日の新連載企画

朝日新聞の新連載企画「変わる働き方 選択のとき」が今朝から始まり、今日はその1回目で「広がる有期」。ネット上には載っていませんが、高梨昌、樋口美雄両先生のあとに私も出てきて、

>主婦パートは主要な家計の担い手ではないとして、低賃金や雇用の不安定さが問題視されにくかった。有期という働き方の広がりをふまえ、法的な位置づけや安全網のあり方を議論し直す必要がある。

と語っております。

各国の有期法制を比較した簡単な表も載る予定でしたが、スペースがないということでボツになりました。

なお、右側に今後のテーマの予定が載ってます。来週が「失業を支える」。以後、「格差を埋める」「監視役は」「職を探す」「手に職を」「会社の役割」「必要な賃金は」「日本で働く」「障害とともに」「仕事と家庭」「ルール作り」「勤勉はどこへ」と、毎週日曜日に載るようです。

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法の世界へ

L12370 この4月に、東京学芸大学から明治大学法科大学院に移られた、野川忍先生から、有斐閣アルマの『法の世界へ』をお送りいただきました。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641123700

著者は、野川先生のほかに、池田真朗、犬伏由子、大塚英朗、長谷部由起子の方々です。

>ものを買う,部屋を借りる,就職する,結婚する等生活の一場面から「法の世界」を展開。わかりやすく親しみやすい解説。法学部の初学者にも,法学部以外で法学を学ぶ学生にも最適。労働契約法の成立を中心に,裁判員制度についての動き等を織り込んだ。

というふうに、法学部じゃない人々が教養課程で、たぶん人生でこれ一回切り法律学なるものを勉強するためのテキストです。

「労働法との出会い」が、アルバイト、職探しの間違いさがしから始まるんですね。

>Aさんは大学の近くのコンビニエンスストアで、毎週土曜と祝日に、時給1000円で1日8時間働いている。ある日店長が、同僚の男子学生が休んだので、申し訳ないが2時間残業してくれというので、彼女は計10時間働き、その日は1万円を受け取って笑顔で帰宅した。

目次は次の通りです。

第1章 日常生活と契約
 契約で結ぶ人間関係
 自由で健全な意思が結ぶ契約関係
 買うか借りるか
 不動産取引と住まいの法律知識
 お金の取引
第2章 日常生活とアクシデント
 交通事故
 医療事故
 欠陥商品による被害
 悪徳商法による被害
第3章 雇用社会のルール
 はじめに
 労働法との出会い
 企業社会とのつきあい方
 雇用社会の中で
第4章 家族関係
 愛からはじまる
 愛が終わるとき
 子育ては誰の責任
 高齢社会と家族
 死後の財産の行方
第5章 企業と法
 企業の正体
 企業の舵取り
 もうけるためなら何でもできるか
 むなしい企業「所有」
 投資家としての株主
 企業活動のつけを払う者
第6章 紛争の解決
 紛争と法
 裁判のしくみ
 紛争解決方法のいろいろ
第7章 法学フラッシュ
 一般法と特別法
 判例法
 法の解釈
 公法と私法
 民事責任と刑事責任
 憲法と私たちの生活
 自己決定権
 プライバシー権
 個人情報の保護
 男女の平等
 生存権の保障
 裁判を受ける権利
 外国人と人権
 コンピューター社会と法/他

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経済危機対策

自由民主党のHPに本日の経済危機対策の全文がアップされています。

http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2009/seisaku-010.html

http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2009/pdf/seisaku-010a.pdf(本文)

http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2009/pdf/seisaku-010c.pdf(別紙2)

具体的施策の最初の緊急的な対策の冒頭に来るのが「雇用対策」です。

雇用調整助成金の拡充の次に、ここのところの話題になっているあれ、「緊急人材育成・就職支援基金(仮称)」によって、「訓練・生活支援給付(仮称)」を支給する等がきます。

これが数日後にはより具体的な施策の形になって政府官庁のHPにアップされることになるのでしょう。詳しくはその時点で。

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事例演習労働法

L14404 水町勇一郎先生編著の『事例演習労働法』(有斐閣)をお送りいただきました。有り難うございます。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641144040

>労働法の良問集。具体的事例からの論点抽出と,そのあてはめを強く意識した。独習にも役立つよう出題の意図・考え方のみならず解説を全事例に示した。初学者にも配慮するべく,体系にそって設問を配置。また各Unitごとの重要論点を漏れなく記載。演習教材の決定版!

執筆されたのは、緒方桂子、梶川敦子、桑村裕美子、柴田洋二郎、原昌登といった若手プラス水町先生(も若手ですね)です。

第1部 労働法総論
  Unit1 労働法上の「労働者」
  Unit2 労働法上の「使用者」
  Unit3 強行法規
  Unit4 就業規則
  Unit5 労働契約
 第2部 雇用関係法
  Unit6 雇用関係の成立
  Unit7 人 事
  Unit8 懲 戒
  Unit9 解 雇
  Unit10 解雇以外の終了事由
  Unit11 労働者の人権
  Unit12 雇用差別
  Unit13 賃 金
  Unit14 労働時間
  Unit15 休暇・休業
  Unit16 労働安全衛生・労災補償
 第3部 労使関係法
  Unit17 労働組合
  Unit18 団体交渉
  Unit19 労働協約
  Unit20 団体行動
  Unit21 不当労働行為
 第4部 労働市場法
  Unit22 労働市場法
 第5部 総合的考察
  Unit23 総合的考察(1)
  Unit24 総合的考察(2)
  Unit25 総合的考察(3)
  Unit26 総合的考察(4)
  Unit27 総合的考察(5)

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生活保護の子供支援へ、参考書代・クラブ活動費支給

読売の記事ですが、

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090410-OYT1T00069.htm

>生活保護世帯の子供たちを支援するため、厚生労働省は9日、家庭で学習する際に使う参考書や辞書などの購入費を生活保護費として認める方針を決めた。

 経済的に恵まれていない世帯の子供が教育の機会にも恵まれず、親から子へ「貧困の連鎖」が生じているという指摘を受け、教育費を増額する。これまで生活保護制度では、教材費など学校で使う教育費は支給されていたが、学外の費用は認められていなかった。追加景気対策として提出する2009年度補正予算案に約42億円を盛り込む方針だ。

 支給対象は、生活保護世帯で暮らす小、中、高校の約19万人。認められるのは、〈1〉家庭での学習に使うパソコンソフト、参考書や問題集、机、いすなどの購入費〈2〉文庫本などの図書購入費〈3〉クラブ活動の費用など。額は、小学生が月2560円、中学生は月4330円、高校生は月5010円。全国一律で、7月から支給を始める予定。

いや、 そのこと自体は結構なことではあるのですが、逆に言うと、生活保護を受給しなければ、そういう費用の面倒は見てもらえないということであるわけです。

憲法25条が国民に保障する最低限度の生活が、こういった費用も含むものであるならば、それは働く貧しい人々には保障されなくてもいいものなのか、とりわけ、参考書代やクラブ活動費どころか、授業料自体が払えなくて高校中退が続出しているのはどうするのか、という問いを避けられないはずですよね。

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現代の理論09春号

まだ明石書店のHPに載っていませんが、雑誌『現代の理論』09春号が送られてきました。じきに書店に並ぶでしょう。

特集は「強欲資本主義からの訣別」で、わたしは「非正規労働者をどう救うべきか」というのを書いていますが、たぶん一番の売りは榊原英資氏のインタビューなんでしょうね。私は彼の考え方にはだいたい反対で(笑)、特に、地方分権で「文部科学省や厚生労働省は中央にはいらない」なんて、よく言うねえ、という感じです。そこまでいまの地方の首長さん方を信頼できるというのがすごいなあ、と。

労働の観点から面白いのは、新連載の「労働運動の明日を探る」。今回は、

「社会運動としての連合再生を」笹森前連合会長に小林良暢さんがインタビューしています。

「連合よ、正しく強かれ」要宏輝

「国際比較の視点から見た連合運動」田端博邦

の3つです。

ちなみに、「中の人」には今更ですが、念のために注釈をつけておきますと、かつて占領下で労働運動が猛威をふるい、経営者側は怯えて小さくなっていた頃に、労働運動と対決すべく日経連が作られたときのスローガンが「経営者よ、正しく強かれ」でした。

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あれこれ

今年に入ってまだ3ヶ月とちょっとたっただけですが、激動の日々が続いている感じですね。

年初はときならぬ製造業派遣禁止論の噴出ではじまったわけですが、たちまちワークシェアリングに席巻され、そのうち非正規問題の論点が有期雇用とセーフティネットに移ってきました。とにかくいわれるがままに対応していて、気がつくとそれに乗ってたという感じです。これから各マスコミも総力を挙げて大型企画をやっていくそうなので、どうなりますことやら。

本日から公共政策大学院での労働法政策の授業も始まりました。こんなにマスコミで連日雇用労働問題が報道される中でやるなんて、ほんの5年前には想像できなかったですね。テキストはわずか5年前に書いたんですが、もう一世代昔の書物のような感じがします。

なにしろ、あのときはまだ小泉改革の全盛期、90年代半ばから始まった市場主義の時代はまだ盛りに達しつつある頃で、あと10年後くらいにようやく次のエポックに移るかなあ、という感じだったんですが、この5年間の時の流れゆく早さは格別でした。

http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/courses/2009/21080.htm

その他各方面においていろいろ別件等もこれあり、マルチタスクに耐えられない単純な脳みその持ち主にはなかなかしんどいところです。

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教育費をタダにせよ

日経ビジネスオンラインの記事から、

「教育費をタダにせよ」

親の所得格差が生み出す教育格差は亡国への道

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090407/191216/?P=1

まあ、例によって例のごときスウェーデン出羽の守噺ではありますが、それにしてもこのテーマは繰り返し論じられる値打ちはあります。少なくとも「米百俵」などと舌先三寸でも口走ってみた以上は。

>教育費が無料の国がある。鉛筆1本、ノート1冊までタダ。給食費もかからない。それどころか、16歳まで国から児童手当が支給されるし、高校に行けば卒業するまで児童手当の支給期間が延長される。うまくやりくりすれば、子どもの洋服代などの生活費を負担する必要もない。

>もちろん、大学の授業料も無料である。手厚い奨学金制度があるため、学びたい人は親の所得に関係なく、意志と力で大学に進学できる。

といった出羽の守噺もいいのですが、最後のあたりで書かれたこの台詞が真っ向直球で、感動的です。

>大きな駅の前には必ずと言っていいほど、学習塾や予備校の看板、消費者金融の事務所がある。現実の日本では、進学をしたくても、金銭的な問題で塾や予備校に通えない子どもたちは進学をあきらめ、低所得の不安定な職に就くことになる。そして、消費者金融のお世話になっていく。駅前には、日本の歪みの構図が象徴的に表れている、と感じるのは私だけではないだろう。

 親の所得や環境によって、教育格差が生まれることは許されない。教育は国家の投資としては最も重要なもの。スウェーデンで見たように、意志ある者は無償で教育を受けられるようにすべきだ。そして、落ちこぼれが生まれないように、きめ細かい対応ができる体制にすべきだ。

 だが、現実を見ると、逆方向に向かっている。GDP(国内総生産)に対する教育投資。スウェーデンは6.5%なのに対して、日本は3.5%に過ぎない。日本は経済協力開発機構(OECD)の中で最下位である。政治がどの分野に国の未来を考えているか。その差だろう。

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本日の東京新聞3面

で、セーフティネット話の続きですが、本日の東京新聞の第3面、「第3の安全網 効果は」という特集記事に、私が登場しています。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2009040802000082.html

これは前文だけ。

>記事全文をご覧になりたい方は、東京新聞朝刊をご利用ください。
東京新聞は、関東エリアの駅売店、コンビニエンスストアなどでお求めいただけます。

ということですので、よろしく。

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樋口美雄先生のセーフティネット論 in 『世界』

791 本日発売の『世界』5月号の特集は「日本版グリーン・ニューディール」だそうですが、わたしはグリーン関係にはまったく見識がないし、知らないことを知ったかぶりしてトンデモを書き散らすという技をひけらかすにはまだ羞恥心のかけらが残っていることもあり、申し訳ありませんがスルーさせていただきます。

http://www.iwanami.co.jp/sekai/2009/05/directory.html

その代わり、樋口美雄先生が「いまこそ雇用の質の向上と量の拡大を――社会を分断させないために」という提言を書かれているので、そちらをご紹介。

>現在、雇用情勢の悪化は著しく、非常に厳しい状況となっている。100年に一度といわれるほど需要が落ち込み、そのぶん過剰雇用が拡大していることは間違いない。非正規社員が増加し雇用調整のスピードが非常に高まるなか、社会の分断を防止するには何が求められているのか。非正規労働者に対するセーフティネットは、どこをどのように拡充すべきか。再雇用促進のために必要な情報とは何か。均等待遇の実現がなぜ必要か。労働を護り雇用を護るためのさまざまな課題を検証し、実現可能な提言を行う。

昨日のエントリで、

>いまや、労働問題の中心はセーフティネット問題になった感があります。

と書きましたが、この樋口論文の主眼もセーフティネットです。

>それは、非正規労働を担っていた中心が主婦パートなど女性労働だったことが大きい。会社においては正社員の補助的な役割であり、家計においては世帯主が所得の不足分を補っていたので、その解雇による経済的痛手はあまり問題にされなかった。一方、世帯主については雇用を守ろうという社会的な考え方があり、従来の雇用保険制度も又、正社員を中心につくられていたのである。

>従来の主婦パート中心だった時には、雇用機会がない場合には非労働力化し、就職活動を諦めてしまっていた。・・・

>ところが世帯主が失業した場合には、どうしても働かないと生活していくことができない。若者も同様であり、さらには主婦パートにしても、夫の所得が下がったり失業したために非労働力化するだけの余裕がなくて、働かざるを得なくなっている。これをアディショナル・ワーク・エフェクト(追加的就業効果)というが、何でもいいから、とにかく就業したいという、一種の労働の売り急ぎが起こってくる。

>労働の売り急ぎに対しては、雇用主から見れば買い叩きがしやすいということになる。・・・

>だが、売り急ぎが起こるということは、必ずしも供給曲線が右上がりになっているとは限らない。むしろ右下がりになっているような一定の状況で市場に任せれば、逆に悪循環が発生していく可能性がある。その悪循環を阻止するためにも売り急ぎしないで済むような所得の保障をしていかなければならない。経済学的にも、いま、市場を守るためにセーフティネットの拡充が必要になってくる。

私の言いたいことを、経済学的な用具を用いて説明してくれているという感じです。

先日、某会議で、樋口先生がセーフティネット研究の重要性を力説しておられましたのを思い出しました。

(追記)

余計なことかな・・・と思いつつ、一言だけ苦言を。

巻頭近くに載っている宇沢弘文・内橋克人両巨頭の対談なんですが、もちろんまっとうなネオリベラリズム批判はいいんですけど、いささか妙なショービニズムのケが入っていないかと気になります。

いや、構造調整プログラムや年次規制改革要望書の話は、本ブログでも取り上げたことがありますが、アメリカが押しつけたというよりは、日本の中でアメリカにそういうことを言ってもらいたがる勢力があったということなので、属国だの植民地だのと悲憤慷慨するのはちょっと違うんでないか、というのは、まあ『諸君!』あたりでもよくやってた話なのでまだいいんですが。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_b61c.html(ネタ元バレバレ)

>日本の場合、占領政策のひずみが戦後60年以上残っている。アメリカの日本占領の基本政策は、日本を植民地化することだった。そのために、まず官僚を公職追放で徹底的に脅し、占領軍の意のままに動く官僚を育てる。同時に、二つの基本政策があって、戦争中に自らの利益を度外視して国のために協力したアメリカの自動車産業に、戦後、日本のマーケットを褒美としてさしだすのが一つ。もう一つは農業で、日本の農村を、当時余剰生産物があったアメリカとは競争できない形にする。

いや、決して「意のまま」ではなくて、官僚たちはある意味では戦前できなかった改革を占領軍の威光でやった面があるんですよ。ていうか、宇沢先生、戦後改革は悪だったという発想なのでしょうか。

>そういう政策を見ていると、日本は完全に植民地というか、属国ならまだいいのです。属国なら一部ですから。植民地は完全に搾取するだけのものです。

次の発言になると、陰謀説が炸裂していていささか危ぶまれる感があります。

>いまの日本は、かつてのインドほどではないけれども、非常に似た形で、軍事費を負担しアメリカに守ってもらっている。さすがにアメリカの国家公務員の年金を日本が負担するところまで入っていませんが、基本的な考え方は非常に似ていると思う。まず、日本の官僚を徹底的に脅して、意のままに動かす。同時に、アメリカの自動車産業に日本を褒美として差し出すために道路を造る目的で、徹底的に日本の町を空襲して燃やしてしまったのです。木造家屋が燃えやすいような焼夷弾をわざわざ開発して。

いや、もしほんとにそうなら、日本の都市計画はもっと広々と道路ができていたんじゃないかとか、その割に日本の道路を走っているのは大部分国産車で、外車もヨーロッパ車で、アメ車なんかほとんど見かけないのはなぜだろうとか、これって「いまの日本」の話なんじゃなかったでしたっけ、焼夷弾はいつ落としたんですかとか、いやそんな各論はどうでもいい、正直言って、私は一瞬『WILL』で田母神元空将が演説しているのかと思いましたよ。

こういうのがそのまま載るのはいささかまずいんじゃないでしょうか。

そのすぐあとに、ラッド豪州首相の「社会民主主義以外に道はない」という大変バランス感覚にあふれたまっとうな文章があるだけに、なおいっそう・・・。

どなたか宇沢先生のお弟子さんが鈴を付けに行かれた方がいいのではというのは余計なお世話なんでしょうか。

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住宅手当ができちゃう!?

朝日によると、

http://www.asahi.com/politics/update/0407/TKY200904060298.html(失業者に住宅手当 最大半年の方針 生活費貸与も)

>失業と同時に住まいも失う人が増えていることから、政府は6日、緊急の生活支援策として、住宅手当を最大6カ月間支給する方針を固めた。

ついこのあいだ、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/sekaihaken.html(派遣法をどう改正すべきか)(『世界』3月号)

> 上記融資制度に家賃補助分が含まれているのは、派遣切りにあった労働者の多くが同時に寮から出なければならず、住宅を失う事態に直面したからであるが、これは逆に、住宅費を社会政策の中でどう位置づけるかという問題に関わる。彼らの多くは単身であるため、子供の教育費は問題になっていないが、世帯を有する労働者にとって、教育費と住宅費は世帯構造から要請される費用であり、これらを社会的にどう賄うのかという問題である。
 生活保護であれば生活扶助に加えて教育扶助や住宅扶助が存在し、この必要に対応しているが、雇用保険にはそのような項目は存在しないし、最低賃金にも存在しない。これは、日本の雇用システムにおいて、若年期には低賃金で始まりながらやがて中高年になるにつれ年功制のもとで高賃金になっていくことにより、事実上平均的な世帯構造から要請される教育費や住宅費を賄えるようになっていたことが大きい。雇用保険も前職賃金に比例するので、結果的にそれを反映した額になっていたわけである。
 しかしながら、それとは切り離された失業扶助的な制度を考えるのであれば上記融資制度のように住宅費分あるいは子供がいれば教育費分を考慮する必要が出てくる。さらに、派遣労働者に代表されるような年功賃金制度のもとにいない多くの労働者のことも含めて考えると、現に就労している労働者に対しても、世帯構造から要請される教育費や住宅費を公的に保障するシステムを検討する必要性がある。これは、就労促進政策(アクティベーション)の観点からも重要である。なぜなら、雇用からこぼれ落ちて福祉に依存すれば教育費や住宅費の面倒を見てもらえるのに、わざわざそこから這い上がって雇用に就くとそれらに相当する収入が失われてしまうのであれば、大きな負のインセンティブになってしまうからである。
 この状況はすでにシングルマザーにおいては現実である。多くのシングルマザーは子供の世話をしなければならないため、低賃金で非正規就労している。生活保護を受給せずに働く母子世帯の方が生活保護を受給する母子世帯よりも貧しいという事実は、にもかかわらず世界的に見て驚異的に高い日本のシングルマザーの就業率とともに世界を驚かせた。母子世帯の場合、児童扶養手当という一種の社会手当がその空隙を若干でも埋める機能を担っているが、一般的に低賃金就労者に対する教育費、住宅費を社会手当として確立していく必要性が高まってきているといえよう。

という風なことを書いたばかりなんですが、世の中の動きはすさまじいものがあります。

>国が生活保護制度以外で住宅手当を支給するのは初めて。住まいがないと再就職の大きな障害となるほか、生活保護を受けると抜けられないため、与野党が、現行の失業者対策の枠組みから外れる人をすくうセーフティーネットの創設を求めていた。

 対象は、求職活動中で、市町村民税の非課税レベルの低所得者。夫婦と子ども2人の4人世帯で年間所得約270万円以下が目安。生活保護は「預貯金ゼロ」が条件だが、新手当は預貯金などが100万円以下なら支給する。支給額は生活保護の住宅扶助と同水準。東京23区の単身者は月額5万3700円。全国平均は約3万4千円。18万人程度の利用を想定している。

いまや、労働問題の中心はセーフティネット問題になった感があります。

で、実はいままでの労働問題の専門家にとって、この領域は周辺領域(社会保障に足を突っ込んだような縁辺部門)であって、あんまり突っ込んで検討されてこなかったところです。

一方で、社会保障の専門家にとっても、やっぱり縁辺領域で、医療や年金といったメジャーな分野に比べると、だいぶ品下がる部門と見られてきたようです。

住宅についても、住宅手当などというのは縁辺領域だったわけですし。

そういうどっちからもあまり注目されてこなかった縁辺領域が、ここにきて社会の注目を集めるようになってきたわけですね。

というようなことを、先日来、マスコミの方々と喋ったりしていました。

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小池和男氏の近著についての疑問

314353 日本の労働研究にかつて一時代を画した小池和男氏の近著『日本産業社会の「神話」-経済自虐史観をただす』(日本経済新聞社)は、正直言って複雑な感興をもたらす書物です。

http://www.nikkeibook.com/book_detail/31435/

私はそもそも、社会科学研究とは真実にどれだけ近いか遠いかが唯一の判断基準であるはずで、「自虐」にせよ「他虐」にせよ、特定の主体に感情移入することを価値判断の基準とするようなものの言い方自体、客観的な真実のみを判断基準とするつもりがないという信仰告白のようなものだろうと思いますので、このどこぞのアジビラのような副題に抵抗感を感じるということを申し上げざるを得ません。「神話」の脱神話化はあらゆる領域において必要ですが、それは「自虐」とか「他虐」という言葉遣いとは最も遠いところでなされるものであろうと考えています。

まあ、それはそれとして、中身ですが、内容的に中心になるはずの第3章(年功賃金は日本の社会文化の産物か)で取り上げられているのが、国家公務員のサラリー、戦前の軍人のサラリー、さらには江戸時代の足し高制や大店のサラリーといった典型的なホワイトカラー、それもエグゼンプトの中のエグゼンプトのようなエリートばかりであることに、正直意外というか失望感を感じました。これは、これまでの小池理論をフォローしてきた方々であれば共通して感じることのはずです。だって、小池理論とは(きわめてはしょって言えば)、日本のブルーカラー、工場で働く普通のライン労働者がホワイトカラー型の年功制になっていることの根拠をその熟練形成に求めた理論のはずなんですから。

今日ただいま「経済自虐史観」に対する解毒剤を求めて読む読者には、そんなことどうだっていいのかも知れませんが、労働問題に関心を持って小池氏の新著を読もうとする人には、いささかどうなのかな、という感じです。まあ、この点については、もっと別に批判の筆を振るうべき人がいるようにも思いますので、それ以上言いません。

実は、この本で読んでいて、一番「をいをい」と思ったのは、第4章(日本は長く働くことで競争力を保ってきたか)です。いや、長時間労働と競争力(この言葉自体、よく考えると意味不明ですが)の因果関係がどうとかこうとかという検証不可能な話ではなく、日本の労働者が長時間労働であるかどうかという客観的な事実認識の問題です。

152ページあたりから、「労働省の危ない国際比較」という題で、こういうことを言われています。

>当時日本の労働省は、日本については基本的な毎月勤労統計を積み上げて年間労働時間を算出した。その際、ホワイトカラーも入れた。欧米の多くのホワイトカラーはもともと残業を記録せず、当然に残業手当も払われない、ということを果たしてどれほど知っていたのであろうか。

これを読んだ読者は、日本の労働省の馬鹿な役人は、そんなことも知らずホワイトカラーも含めて国際比較をしていたのだな、ははは馬鹿な奴、と考えるでしょう。

実は、私は1991年から1992年にかけて、労働基準局の労働時間課という部署にいて、その国際比較のデータを計算したりもしていました。

私が前任者からこれだけは忘れるなといって引き継いだのは、ECのデータはホワイトカーは実労働時間ではなく所定労働時間だから、これを入れたのでは比較ができない、実労働時間はブルーカラーだけで比較するしかないのだということです。

実際、当時私が作成したデータには、誤解を招かないように、すべて「製造業生産労働者」と明記してありました。

本書(153ページ)には

>のち、セミナーでの学生指導のために、・・・その根拠を記した日本労働省スタッフの文書を探し出し読んでがっかりした(労働省賃金福祉部企画課[1984])。日本の年間労働時間の計算はともかく、西欧の年間労働時間の計算は考えられないくらい危ないのだ。

とありますので、もしかしたら私の先輩が1984年に計算した時には、ブルーカラーだけではなくホワイトカラーも入れるなどという失敗をやらかしていたのだろうか、と心配になって、そこでリファーされている『労働基準』1984年5月号所載の「労働時間の国際比較について」を確認してみました。

はっきりと、「製造業生産労働者」と明記してありました。ほっ。

実を言えば、いわゆるサービス残業論やホワエグ話の関連で、小池氏の議論には耳を傾けるべき点があります。少なくとも、残業代ゼロ法案けしからんで済ませていた思考停止の向きには有用な情報が含まれています。そもそも、私が戦前のホワイトカラーの月給制に関心を持って、その戦中戦後の変遷をあれこれ調べていったのは、小池氏の記述がインスパイアした面があるのです。その意味では、小池氏は恩人でもあるのですが・・・。

にもかかわらず、こういう典拠に当たればすぐわかるようなウソをついてまで、日本の労働者が長時間労働であるという事実を否定しようとして、何か意味があるのだろうかと、小池氏の意図がつかみかねるのです。私のいた頃、よく言われたのは、日本にはサービス残業が山のようにあるから、労働省の国際比較は信用できないというものでした。「自虐」批判という情緒が客観的な事実認識を曇らせたのでなければ幸いです。

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就業形態多様化と家計維持型・補助型の分布

最近特に非正規労働者のセーフティネットをめぐる議論が盛んで、マスコミの皆さんも関心を持たれているわけですが、そもそも正規労働者、非正規労働者のうち、どれくらいが家計維持的でどれくらいが家計補助的なのかについて、大まかでもイメージを共有しておく必要があるでしょう。厚労省のHPに平成19年就業形態多様化実態調査結果概要が載っていますので、ごく簡単に概況を見ておきましょう。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/syugyou/2007/1107-1.html#kekka

これの真ん中あたりの、個人調査の冒頭に「生活をまかなう主な収入源」という表があります。

正社員は85%が家計維持型ですが、男性11071p正社員が97%家計維持型なのに対して家計維持的女性正社員は53%、配偶者の収入が主たる生計が30%。この数字も過去に比べるとかなり上昇しています。前回の平成15年には、家計維持的女性正社員は44%で、配偶者の収入で主として生活している39%と大して変わりませんでした。

非正社員は、全体で見ると生計維持型が45%、配偶者依存型が42%、親依存型が8%と、かつての女性正社員に近い生計状況ですが、就業形態によってかなり差があります。

家計維持型が低いのはパート労働者だけで、29%が自分の収入で生活、それに対して56%が配偶者の収入で主に生活、9%が親がかりということですから、まあいわゆる小遣い稼ぎ的主婦パートがなお多数派です。

それに対して、臨時雇用者、つまり派遣じゃない直用フルタイムの非正社員の場合、家計維持型が53%、配偶者依存型が30%、親依存型が12%で、マジョリティは家計維持型です。

興味深いのは、派遣労働者はそれよりもさらに家計維持型の比率が高いことです。派遣全体で70%が家計維持型、配偶者依存型は18%に過ぎません。

これをさらに登録型と常用型に分けると、常用型が家計維持型が多いのは当然として、登録型でも62%が家計維持型で、配偶者依存型は24%、親依存型は11%に過ぎません。

このように、派遣労働者は女性正社員よりも家計維持型の比率が高いのですが、かつての家計補助的非正社員の時代に作られた様々な制度が未だに残っていて、いろいろな形で問題を生み出していると言えます。

皮肉なのは、なお一番家計補助的な性格の強いパート労働者がパート法によって差別禁止や均衡処遇がそれなりに規定されているのに対して、一番家計維持的性格の強い派遣労働者がまったくそういった扱いから排除されているということでしょう。

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従業員のメールを監視できないのならノキアはフィンランドを出て行くぞ!

EIROnlineの興味深い記事。

http://www.eurofound.europa.eu/eiro/2009/02/articles/fi0902059i.htm

>Numerous unnamed civil servants, politicians and representatives of labour market organisations have told the Finnish newspaper ‘Helsingin Sanomat’ that Finland-headquartered mobile phone maker Nokia had threatened to leave Finland if parliament failed to pass a piece of legislation known as the ‘Lex Nokia’ bill. Lex Nokia would grant employers access to employees’ email metadata if they suspected a breach of confidentiality clauses

従業員が会社の秘密を漏らしているんじゃないかと疑いがある時に従業員のメールを監視する権利を与える「Lex Nokia」法案がもし国会を通らなければ、ノキア社としてはフィンランドを出て行きますよ!という脅しを役人や政治家にかけていたというニュースです。

>The Finnish newspaper Helsingin Sanomat has quoted dozens of unnamed civil servants, politicians and representatives of labour market organisations as saying that Finland-headquartered mobile phone maker Nokia had threatened to leave Finland if parliament failed to pass a piece of legislation known as the ‘Lex Nokia’ bill.

The proposed law, which aims to prevent corporate espionage by employees, would allow employers to monitor employees’ use of company email traffic. While the content of employees’ messages would remain confidential, the employer would be allowed to see who the employee has corresponded with through the company’s email system, and what kind of attachment material is linked to each message.

‘Nokia applied very strong pressure in order to have the government proposal approved unanimously already in the drafting stage,’ the paper quoted one civil servant as saying. The unnamed source added: ‘The message conveyed through the Confederation of Finnish Industry (Elinkeinoelämän keskusliitto, EK) was loud and clear: if the law is not passed, Nokia will leave Finland.’

いや、それは、ノキアに出て行かれたんでは、フィンランドはクリープを入れないコーヒーどころか、コーヒーのない脱脂粉乳みたいなもので。

>Nokia’s Chief Executive Officer (CEO), Olli-Pekka Kallasvuo, stated that he has been amazed at recent debate over a bill that would allow employers to extract contact information from employees’ email. In an interview with the economic journal Talouselämä, Mr Kallasvuo sharply denied claims that Nokia would have threatened to leave Finland if the law on data protection of electronic communications is not changed. The proposed law has been dubbed Lex Nokia. ‘We have been placed in a completely unreasonable situation, in which one law has been named after us. We have not given it the name,’ CEO Kallasvuo stated. He dismissed claims of a threat by Nokia to leave Finland as absurd, arguing ‘there is no sense to it’.

もちろん、そんなこというとらんわいと最高経営責任者は言っております。

>Finland’s Prime Minister, Matti Vanhanen, told the Finnish Broadcasting Company (YLE) that Nokia had not threatened the government with relocation and added that this topic had not come up in discussions with Nokia or any other company. ‘At least I have not been informed of this, and when the government has engaged in this discussion no cabinet member has reported this sort of ultimatum,’ Prime Minister Vanhanen stated.

Defending Lex Nokia, Mr Vanhanen added that Finns should not be ‘benign fools’ in the face of industrial espionage as the Finnish public’s affluence hinges to an increasing extent on technology and innovation.

首相もそないに言うとります。

>Whereas legal experts have noted that the bill violates the Finnish constitution, the parliament’s Transport and Communications Committee supported the bill in December 2008.

法律家が憲法違反だと言っても、そんなんでは動かないと。

まあ、何にせよ、フィンランドでノキアの意に反する政策というのは事実上不可能なのでしょうね。

北欧のさまざまな面で賞賛される国(事実賞賛されるべき国ですが)の一つの側面ではあります。

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OECD経済見通し中間報告

42391057eo20interim20image20eng 3月31日付で、OECDが経済見通し中間報告を公表しています。

http://www.oecd.org/document/59/0,3343,en_2649_33733_42234619_1_1_1_1,00.html

第1章がマクロ経済状況の一般的評価、第2章がG7プラスユーロ圏プラスBRICs各国の分析、第3章が財政刺激政策の有効性と範囲ということですが、マクロ経済についてはその筋の専門家にお任せして、

http://www.oecd.org/dataoecd/18/1/42443150.pdf

ここでは、序文から労働社会政策に関わるところを見ておきましょう。

>The impact of the recession on societies will be substantial. Joblessness in all OECD countries will rise sharply, with the rate of unemployment peaking in 2010 or early 2011 and, in many countries, reaching double digit levels for the first time since the early 1990s. The number of unemployed in the G7 countries will almost double from its level in mid-2007 to reach some 36 million people in late 2010. This prospect underscores the need for employment and social policies to complement and reinforce macroeconomic stabilisation efforts to get people into jobs and prevent, as far as possible, any rise in structural unemployment. At the same time, policies to cushion the impact of recession via effective social safety nets and schemes that target those most vulnerable may need to be strengthened for the duration of the recession. But it is vital not to repeat the mistakes of the 1970s and 1980s, when many countries attempted to reduce unemployment by encouraging early retirement, which would only reduce the labour force and cut growth without boosting overall employment.

2010年から2011年にかけて失業者が倍増する恐れがあるよということで、「もっとも弱い立場の人々のための有効な社会的セーフティネットによって景気後退の影響を和らげる必要がある」というのは当然なんですが、それと同時に「早期引退促進によって失業を減らそうなんていう70年代、80年代の過ちを繰り返すな」とあえてここで一言いっていることが注目されます。

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働く人をとりまく法律入門

054459 大内伸哉編著『働く人をとりまく法律入門』(ミネルヴァ書房)をいただきました。いつも有り難うございます。

http://www.minervashobo.co.jp/find/details.php?isbn=05445-9

>実務を見据え、法分野の横断的な理解を深めよう
科目応用的なテーマを扱いながら、労働に関する論点を広く大きく理解する

働く人をとりまく法的ルールを、分野横断的に概観し、多様な法分野の基本を学ぶ。理論・実務双方からのアプローチに加え、重要テーマとして注目される知的財産法、国際的労働関係も盛り込んだ。

ということなんですが、扱う法律によって、総論的から各論的まで、入門的から応用的まで、ばらつきがあるように感じました。ただ、それは当たり前なんですね。

目次を見ればわかるように、

はしがき
 ――本書の紹介をかねて

 第 I 部 労働法
第1章 労働者を保護するための法的ルール
     ――労働法(実体法)
第2章 雇用の場におけるトラブルを解決するための法的手続
     ――労働法(手続法)

 第II部 諸 法
第3章 働く人にとっての基本的人権
     ――憲法
第4章 雇用(労働)契約は、どのような契約なのか
     ――民法
第5章 会社の経営において、労働者の利益はどこまで守られるのか
     ――会社法
第6章 労働者のために、行政は何をしてくれるのか
     ――行政法
第7章 給料や退職金はどのように課税されるのか
     ――租税法
第8章 労働者の生活保障のために、国はどこまでのことをしてくれるのか
     ――社会保障法
第9章 労働者の発明は、誰のものか。
     企業内の著作物の利用はどこまで許されるのか――知的財産法
第10章 会社の倒産時に、従業員の給料債券は、どこまで保護されるのか
     ――倒産法
第11章 国際的な労働紛争は、どの国の裁判所で、
    どの国の法律によって解決されるのか
     ――国際私法・国際民事手続法
第12章 労働をめぐる紛争は、どのように起きているのか
     ――法社会学

その法律分野にとって、労働に関わることがどれくらいのシェアを占めているかによって、総論的入門的になれば、各論的応用的にもなるわけで。

その意味では、本書を一番面白く読めるのは、労働法をある程度知っている人が、他分野における労働に関わるトピックを読むところではないかなと思います。

ほかではほとんど扱われないテーマとしては、第6章の労働行政法でしょうか。

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POSSE第3号

『POSSE』第3号をお送りいただきました。いつも有り難うございます。

今回は、「派遣切りされたのは誰か」というのが第1特集です。

>「仕事なんて選ばなければあるはずだ」。「派遣切り」がますます本格化する中、こうした批判は後を絶たない。若者がダメになったからニートやフリーターが増えた――。数年前、次のような言説がメディアを席巻していたことが思い出される。この「俗流若者論」は現在でこそ、影を潜めつつある。しかし、非正規雇用労働者の問題を、自己責任や個人の意識に矮小化する議論そのものには、いまだ決着がついていないのではないだろうか。
本特集で論じるように、「派遣切り」も「フリーター」問題も、同じ現象に異なるレッテルが貼られているにすぎない。なぜ、不安定で過酷な生活を強いられる「彼ら」は生まれるのか。内面分析や自己表現に陥るのではなく、その背景としての日本社会の根源的な構造、そしてそれを乗り越えていくための具体的な政策論を試みる。

◆「フリーター」か「半失業者」か ―「失業できる」日本社会を―
 後藤道夫(都留文科大学教授)

「フリーター」「派遣切り」問題を解決するのに必要なのは、日本を「失業ができる国」にすることだ―。福祉国家なき日本社会の構造を明らかにし、「派遣切り」のいま、必要なセーフティネットを論じるインタビュー。

◆「フリーター」という虚像と実像 ―不安定就業論の視角から―
 伍賀一道(金沢大学教授)

 「フリーター」、そして「派遣切り」は必要とされていた――。不安定な働き方、働かせ方に依存してきた日本の産業構造を分析し、あるべき経済構造を提起する。

◆派遣切りに対抗するキャリアラダー戦略
 筒井美紀(京都女子大学准教授)

◆派遣村の若者はどこから来たのか ―「家計自立型非正規」という新たな局面―
 今野晴貴(NPO法人 POSSE代表)

◆労働運動は派遣切りにこう立ち向かった
 本誌編集部

◆ルポ・「非正規」へと流れていく若者たち ―高卒就職の現場とその後から―
 進藤正樹(首都大学東京大学院)

◆特別企画・ポスト「フリーター」論の時代に
①「フリーター」論を徹底検証!ブックガイド10/(本誌編集部)
②予告:「格差論壇」MAP/解説:木下武男(昭和女子大学教授)

どれも切り口が興味深いのですが、そうですね、例えば後藤道夫さんの論考は、今日の午前と午後にそれぞれ別の新聞社の記者が来られたテーマなんですが、まさにセーフティネットがなさ過ぎた日本社会にとっては「失業ができる国」にすることが大事であるという面と、いままであまりにも安心して失業できる国でありすぎたヨーロッパ諸国にとってはむしろアクティベーションによって「いつまでも失業していられない国」にしていかなくてはいけないという面の両面をにらんでいく必要があるんですね。

もちろん、なぜ日本のセーフティネットが穴だらけであったかというと、これは本誌の他の論文で繰り返し書かれているように、家計補助的な非正規労働者という高度成長期以来の日本型雇用システムの問題であるわけで、今野さんのいう「家計自立型非正規」が90年代以降大量に生み出されたにもかかわらず、それに対応する形での制度構築が遅れたことが原因であるわけですが。

筒井美紀さんのキャリアラダー論は、最近駒村康平さんの『大貧困社会』で取り上げられたりしてますが、このインタビューはそれだけじゃなく、一言一言が面白いです。これは立ち読みでも読む値打ちがあります。筒井さんについては、前にも2回ほど取り上げましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-4371.html(高学歴代替の戻り現象)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-1409.html(「事実漬け」に勝るものなし)

今回もいいです。うん。

あと、次号の予告ということで、木下武男さんの「格差論壇分類MAP]というのが面白そう。<JOB派-隠れ年功派><規制緩和派-規制強化派>という2つの軸によるマトリックスで「論客の実名を挙げながら敢行する」んだそうです。インスパイアしたのはわたくしのブログでの発言だったそうなので、いささか責任があるかも・・・。

>政策論を中心にして、研究や運動の分野、そして論壇の傾向、さらにはマスコミの言説などを分析するために、縦軸・横軸をつくり、4つの象限に分けることを思いつきました。この発案のきっかけは、濱口桂一郎さん(・・・)のブログでの発言でした。岩波書店『世界』での研究会に彼をお呼びした折、とても刺激的な報告をいただき、さらにブログで「木下さんや本田(由紀)さんなど、ジョブ型思考の方が多い」研究会と表現されました。「ジョブ型思考」というネーミングは的確で納得いく言葉だと思いました。

 さらにその研究会が「『若者が生きられる社会』宣言」という緊急政策(・・・)をまとめた時、やはり濱口さんはブログで「意外に思われるかも知れませんが、この共同提言と一番近い立場にあるのは実は八代尚宏氏と労働市場改革専門調査会の方々ではないか」と指摘されました。

 そこで、確かに八代さんとは「ジョブ型思考」では同じようだが、やはり労働市場の規制のあり方では違うのではないだろうか。そんな思いから、横軸に「規制緩和派VS規制派」を置きました。縦軸は「ジョブ派VS隠れ年功派」です。「隠れ」という言い方は非学問的であり、取ってもよいのですが、表だって年功制を擁護する人々はあまりいなくても、心情的に「昔はよかった」という雰囲気は濃厚に存在していますので、その雰囲気を表現しています。ユニオン運動は、第1象限と第4象限を舞台としています。しかし、膨大な非正規雇用の労働者を直視し、その境遇を改善しようとするならば、第1象限で物事を考えざるを得ません。・・・・・・

ここで木下さんが言及されている私の本ブログでの発言はこれでしょうね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/2_90cb.html(研究会2連発)

「ジョブ型志向」でした。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_7b90.html(『世界』10月号)

あと、朝日の竹信さんが「日本版ワークシェアの虚妄を超えて」というのを書かれています。竹信さんは今月、岩波新書から「ルポ雇用劣化不況」という本を出されるようですね。

http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/

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危機の時代のフレクシキュリティ

EUの閣僚理事会で採択されるべき結論案として「危機の時代のフレクシキュリティ」という興味深いタイトルの文書がアップされています。

http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/09/st08/st08279.en09.pdf

例によってはじめの方はだらだらと宮廷儀式的台詞が続いていますが、その辺はすっ飛ばして、4ページ目の「それゆえ」あたりから見てください。

>Prevention of massive lay-offs and the maintenance of employment, in particular through financial support for temporary flexible adjustment of working time, thereby mitigating the social impacts of the crisis, reducing firing and (re)hiring costs for businesses and preventing loss of firm-specific human capital.

大量解雇の防止と雇用の維持、とりわけ一時的な労働時間の弾力的な調整への財政支援を通じて、危機の社会的影響を緩和し、事業の解雇コストや再採用コストを減らし、企業特殊的な人的資本の損失を防ぐ。

日本語で言う緊急避難型わーくしぇありんぐが、フレクシキュリティの一つなんですね。

>Enhancing of the activation measures and provision of adequate income support to people who are most severely hit by the impacts of the crisis, through full utilisation of social protection systems, in line with the principles of flexicurity and subsidiarity.

社会保護制度をフルに活用して、危機の影響をもっとも厳しく受けた人々へのアクティベーションと十分な所得援助の提供を進める。

ここが、日本ではセーフティネットが全然なってないやんけ!!!という話になって、雇用保険の拡充とか新たな訓練受講中の給付の創設とかという話になるわけですが、そういうのが手厚いヨーロッパではアクティベーションが先に出てくるわけです。

>Increased investment in retraining, skills matching and upgrading, including for persons working part-time and in declining industries

そこで訓練が大事だよ、と。

>Strengthening of the Public Employment Services in order to be able to tackle the increased levels of unemployment.

ハロワを強化しようね、と。

>Reduction of indirect impacts of the crisis on individuals through specific measures aimed at preventing over-indebtedness and at securing access to financial services.

フレクシキュリティで多重債務問題が出てくるところがさすがEUですなあ。今朝、某大新聞の記者の方とお話ししたときの脇道の話ですが、教育、住宅、そしてこういう金融サービス問題もすべて社会政策の課題なんですね。

>Implementing measures for integration with a view to changing employment protection legislation in the framework of the flexicurity approach, integrating all its elements focused on reducing segmentation and improving the functioning of the labour market.

これが、すっごく抽象的な言い方をしていますが、雇用保護の緩和に関わる話でしょうねz。

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欧州でも派遣労働者を緊急避難型ワーシェアに

欧州派遣協会(Euro-Ciett)の機関誌「Dispatch」の最新号に、オーストリア、ベルギー、ドイツで、派遣労働者も短縮労働(部分失業)のスキームに入れることにしたという記事が載っています。

http://www.euro-ciett.org/fileadmin/templates/eurociett/docs/Dispatch/Dispatch_-_Spring_09.pdf(4ページ左側)

>Austria, Belgium and Germany have extended their short-time working schemes (also known as partial unemployment) to include agency workers, as part of measures being taken on a national level to address the current economic crisis. The countries expanded the scheme to include temporary work agencies in order to help them deal with the impact of the downturn in the economy.

ドイツ語で短縮労働、フランス語で部分失業というのは、日本語で(日本語ですよ!)「緊急避難型わーくしぇありんぐ」のことです。雇用を守るために時間を減らした分、政府の補助が出ます。要するに日本でやってる雇用調整助成金ですな。

>All three national governments have established special conditions to accompany access to the scheme. In Belgium, for example, workers are required to have been employed by the agency for at least three months, been active in a sector that is facing reduced demand due to the crisis and been working in a department where short-time working is also applied.
The extension of short-time working schemes to agency workers grants these workers better protection as requested by the agency work industry. As the voice of a socially responsible industry, Eurociett encourages national governments to enhance the protection of agency workers in these dire economic times
.

欧州の派遣事業は「社会的に責任ある産業」として、政府に派遣労働者の保護を求めていく、と。

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規制改革推進3カ年計画(再改訂)

昨日(3月31日)、規制改革推進のための3カ年計画(再改訂)が閣議決定されました。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2009/0331/index.html

昨年12月の答申が実にまっとうなものであったので、それに基づく閣議決定の中身も実にまっとうなものになっています。とりわけ、

(4)労働市場におけるセーフティネットの拡充

① 雇用保険制度の適用についての検討【平成21 年検討】

雇用保険制度は、労働者が失業して所得の源泉を喪失した場合に必要な給付を行うことにより、求職活動を支援する社会保障制度であり、労働市場におけるセーフティネットの柱と位置づけられている。
我が国の労働力人口の減少が予測される中で、経済社会の活力を維持していくためには、若者、高齢者、女性、障害者など、働く意欲と能力があるすべての人が可能な限り働ける社会を構築していくことが必要である。
そのためには、現行の社会情勢に対応した効果的な雇用対策の実施とともに、これらの人が安心して職業生活を営めるように、雇用保険等の社会保障制度を労働市場の環境変化に合わせて見直していくことが不可欠である。
したがって、雇用保険の一般被保険者の適用について、雇用保険が働く者にとって必要なセーフティネットとなるよう、就業形態の多様化等の我が国労働市場の変化に合わせて検討する。(Ⅲ雇用エ⑧)

② 公共職業訓練の充実【平成21 年検討】

我が国の職業訓練は、日本的雇用慣行により内部労働市場の人的資源管理、すなわち企業に委ねられる部分が大きかったため、身に付いた職業能力が他の企業では必ずしも有用ではない場合がある。また、公共職業訓練の実態が、流動化する労働市場における企業及び労働者の現実のニーズに即応しているか否かを含め、その有効性を具体的事例に即して検証した上で、改めて再評価し、これに基づいて公共職業訓練プログラムの内容やその実施手法の改善と充実に生かしていく必要がある。
この意味で、公共職業訓練については、これまで企業が担ってきた所謂OJT を十分尊重しながらも、学校教育や職業教育とも連携しつつ、現在の我が国労働市場の変化にあわせ、フレキシブルに見直していく。
加えて、失業者の再就職等にどの程度貢献しているか、職業能力の向上にどの程度貢献しているのかを含む様々な観点から、その費用、便益を十分検証し、その結果を国民に開示するとともに、その都度職業能力開発政策に反映していくような仕組みを検討する。(Ⅲ雇用エ⑨)

いや、いずれもきわめて重要な課題です。

今回の雇用保険法改正はとりあえずの緊急対応であって、労働市場のセーフティネットのあり方については、ある程度根本論に立ち返って検討し直す必要があると私は思いますし、まさに「雇用保険が働く者にとって必要なセーフティネットとなるよう、就業形態の多様化等の我が国労働市場の変化に合わせて検討する」ことが求められます。

公共職業訓練についても、労働行政の枠内だけでちまちま考えるのではなく、「そもそもeducationとはなんぞや」というところから、国民の能力開発のあり方を「学校教育や職業教育とも連携しつつ、現在の我が国労働市場の変化にあわせ、フレキシブルに見直していく」必要があるでしょう。このあたり、本ブログで紹介している田中萬年さんの文章が参考になるはずです。

ちなみに、

① 解雇規制にかかる実証研究の実施【平成21 年検討】
解雇規制についても我が国労働市場を取り巻く規制の一つとして、実証研究や経済理論等も参考としつつ、学術的な検証に耐えうる手法により可能な限り分析し、その結果を国民に十分開示するとともに、解雇規制の在り方の検討に反映していく。
(Ⅲ雇用ウ②)

という項目については若干関わっていないわけではなかったりします。

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職場の法律は小説よりも奇なり・・・別の意味でも

2153172 小嶌典明先生の「職場の法律は小説よりも奇なり」(講談社)は、なかなか面白い本です。

http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2153173

ご存じの通り、小嶌先生はこの十年以上にわたって、規制改革会議等で労働法の規制緩和の先頭に立ってきた方ですので、本ブログの読者にもさまざまなご意見があろうかと思いますが、本書で指摘されているいくつかの点については、私と意見が一致するところが結構あります。ただ、その意見の一致の仕方がなかなか複雑なんですけどね。

そうですね。たとえば、本書の標題にもなっている「ウソのような本当の話-事実(法律)は小説よりも奇なり」の中の、「仕事をしない仮眠時間も労働時間」という節は、労働法を勉強した方なら誰でも知っている大星ビル管理事件判決を批判したもので、実のところその点には私は同感するところが大きいのです。特に最近のマンション管理人に関する判決には、そういう感が強いです。

ところが、この中で労規則23条による宿日直の許可基準が厳しすぎるからいけないというような記述があり、大阪大学で労務管理に当たられた経験から、

>実際にも、国立大学は、2004年4月の法人化(非公務員化)に当たって、医学部等の付属病院における当直医の勤務について、所轄労働基準監督署長の許可を得ることができず、超過勤務手当や夜勤手当を支給することまではできないとの判断から、その多くを交替制勤務に切り替えざるを得なかった。

と、いままでの国立大学時代のいい加減な労務管理の方が正しかったというようなことを言われていて、これはいささか・・・と。こういうことをうかつに言われると、正しい指摘をされているところまでいささか・・・と思われてしまうのではないかと心配になります。

この説の最後のところで、EU労働時間指令について、医師の待機時間の扱いが問題になっていることが指摘されていて、それは結構なのですが、そこで労働時間に含めるべきか除くべきかが問題になっているのは、あくまでも待機時間のうちの不活動時間であって、実際に運ばれてきた患者の相手をしている時間が労働時間であることは、すべての関係者が当然と考えているわけですが、日本の救急医療の現場においては、夜通し患者の相手をし続けても、それらは全部「当直」という名のもとに労働時間に勘定されないという世にも不思議な事態になっているんですね。この辺、本ブログで何回も取り上げてきたことですが。

ある意味では、こっちの方がよっぽど「小説よりも奇」であるようにも思われますが、小嶌先生はそちらの「奇」にはあまり関心をお持ちでないように見受けられます。

まあ、逆の立場の人は、マンション管理人が眠っていても労働時間だというのは当たり前で、あまり「奇」だと感じないようで、そこはうまくできているのかも知れませんが。

日本の労働法(法令及び判例)には、確かに「小説よりも奇」なところがあるのは確かですが、その「奇」の指摘自体があまり特定の立場から一方のみを取り上げると、いささかバランスを失するところがあるかと思います。

これは、サービス残業の問題にしても、派遣と請負の区別の問題にしてもそうで、実のところ、ある意味では小嶌先生の指摘に同感するところが結構あるのですが、そこにその裏面の問題としての長時間労働による健康被害とか、請負といえば労働法規制からまったく排除されてしまうこと自体の問題(私の言う「請負法制に問題がありすぎる」件)にはまったく言及されないというところで、残念ながら肝心の労働者の目から見た説得性に問題が生じてしまうように思うのです。

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G8労働大臣会合結論文書

3月29日から昨日まで開かれたG8労働大臣会合の結論文書が議長国イタリアのサイトに載っています。

http://www.g8italia2009.it/G8/G8_Allegato/conclusioni_ENG.pdf

最初の数節は状況説明ですが、4つの「キー戦略」を挙げています。

>Keys strategies that can help address the crisis include:

a.promoting job creation and effective employment and labour market policies in order to restore confidence;

b.supporting the income of people and their families through effective and responsible social protection systems (social security and labour protection), with the aim of sustaining rapid recovery, through reinvigorated consumption and investment;

c.fostering human capital developments through appropriate education and training policies to enable people to remain employed, to prevent social exclusion and to support aggregate economic growth and individuals’ career prospects;

d.actively addressing social as well as financial and economic issues to achieve sustainable growth and development.

信頼を回復するため雇用創出と有効な雇用政策の促進、

消費と投資を通じた急速な回復のため有効な社会保護制度(社会保障と労働保護)を通じて人々とその家族の所得を支える、

仕事を続け、排除されないように、適切な教育訓練政策を通じて人的資本を育成する、

持続的成長と発展のため社会問題と金融、経済問題に取り組む

必要な行動として、

>i.Promoting targeted effective active labour market policies to help reduce unemployment;

ii.Enhancing skills development and matching jobs with labour market needs, to help people maintain their connection with the labour market and to prevent mass unemployment, including through partial unemployment schemes (e.g. compensated short time work or work sharing) combined with training provisions;

iiiEnsuring effective social protection systems to help affected workers and families;

iv.Enabling labour markets to respond to broader structural changes.

2番目のところに、人々を労働市場につなぎ止め大量失業を防ぐために、ということで、日本でいうところの緊急避難型ワークシェアリングが出てきています。前に本ブログで書いたように、こういうのをフランスでは部分失業といい、ドイツでは短縮労働といい、日本ではワークシェアリングと呼んでいますので、それが並んでいますね。

>Active labour market policies combined with well-designed unemployment benefit systems can improve the chances of jobless people re-entering the labour market and prevent long term unemployment. Our Governments should ensure that such policies are delivered through efficient, modern and well functioning public and, according to national policies, private employment services, which combine payment of benefits with effective job-matching services, as well as providing a way to other labour market help for those who need it.

失業給付と職業紹介システムの密接な結合が積極的労働市場政策には不可欠なのです。なんでもミンエイ主義、なんでもブンケン主義の人々が学ぶべき世界の大勢でしょう。

>Effective and responsible income support programs, including minimum wages where appropriate, must protect the poorest and most vulnerable in our countries, while at the same time ensuring incentives to look for work. Social protection has important economic benefits in terms of automatic stabilisers and maintaining consumption, as well as underpinning consumer confidence and contributing significantly to job creation. It is also important that the early retirement of older workers is not used as a means for reducing unemployment.

最貧のもっとも脆弱な人々を保護するために、最低賃金を含む所得サポートが必要だということと、それが働くインセンティブを確保しなければならないということが今日の先進国の常識です。

>To best adapt to the changes brought forth by the global economic downturn, it is crucial to ensure the effective functioning of the labour market. Several measures can be considered: a) active labour market policies, including temporary employment subsidies and job placement services; b) training and skills upgrading especially for the unemployed and people at risk of redundancy; c) temporary flexible work arrangements, including part-time, and working time reductions that can prevent lay offs, save considerable firing and (re)hiring costs for firms and prevent loss of firm-specific human capital.

この十数年間、雇用調整助成金は産業構造の転換を妨げるからけしからんといわれ続けてきましたが、もちろん、解雇を避けるための一時的な助成金は有用です。

>In addressing the employment and the social impact of the global downturn, it is important to actively involve the social partners. A strong, effective and meaningful social dialogue, including greater involvement of workers in the economic restructuring process, may mitigate the effects of the crisis for workers and employers as well as to achieve high economic growth and improve living standards. Strengthening social dialogue enables the active participation of social partners in international fora.

そして、何よりも労使団体の対話-ソーシャルダイアローグ-が危機への対応に重要であるということを確認すべきでしょう。これまた、90年代以来悪意をもって意図的に攻撃されてきたことであるわけですが。

という具合で、まあじきに厚労省のHPに公式訳が載るでしょうから、正式にはそっちを見てください。

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