労働契約の理論と実務
野川忍、山川隆一両先生の編になる『労働契約の理論と実務』(中央経済社)をいただきました。ありがとうございます。
内容は以下の通りですが、
第1部 多様化する雇用の理論(法からみた「雇用」の意義
労働契約の法規整―採用から解雇までの契約ルール
労働実定法による労働契約の規整
類似型にみた労働契約の法理)
第2部 紛争時の対応と手続(各種の紛争解決手続
各種の紛争類型と対応)
第3部 最新判例の動向(就業規則
賃金
成果主義賃金制度
配転
安全配慮義務
セキハラ・いじめ
懲戒
競合会社への転職
解雇(普通解雇・整理解雇))
[要旨]
労働契約の基本理念を明らかにするとともに、労使関係における諸問題の解決を実践的に解説。平成20年12月労基法改正をフォロー。
序や第1部第1章の野川先生が書かれたところが、「雇用は契約である!」ということを強烈に主張していて、いろんな意味で興味深いところです。もちろん、雇用契約が契約の一つであることは当たり前なので、そういうことをいっているのではなく、
>ところが従来の日本社会においては、企業における疑似家族的かつ集団主義的な人事管理やいわゆる終身雇用慣行の影響もあって、むしろ「雇用とは、労働者が企業という組織に従業員という身分で組み込まれることであり、企業組織の一要素となることである」という誤解が蔓延してきた。
ことに対するアンチテーゼを打ち出しておられるわけです。
で、本ブログの読者にはおわかりのように、私はむしろその考え方には懐疑的です。企業主義的雇用観を否定することが直ちに民法的個人主義的契約的雇用観に直結するわけではないのではなかろうか。むしろ、「雇用」よりも「労働」という観点からは、労働の本質的集団性を強調すべきではないのか、というふうに感じておりまして、雇用は確かに契約かもしれないが「労働は契約じゃない!」とむしろいいたいところです。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/heigai.html(労働法における契約論的発想の弊害)
という風な話は別にして、本書は編者のほか、桑村裕美子、根本到、原昌登といった若手労働法学者、丸尾拓養、中井智子といった経営法曹が執筆していて読み応えがあります。
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