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2009年3月25日 (水)

権丈英子先生が会場に

本日、派遣・請負問題検討のための勉強会で講演をしてまいりましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-747c.html(日本の雇用のあり方を考える)

ふと見ると、会場に権丈英子先生が聞きに来られていました。実はお会いしたのは初めてなんですが、すでに本ブログで勝手に引用してコメントしたりしておりました。失礼の段、ひらにお許しください。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-748e.html(権丈先生の労働者派遣論)

ちなみに、このシリーズ、次回は島田陽一先生が講演されるそうです。

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コメント

会場で講演を聴講しました。おつかれさまです。かなり周回遅れではありますが、時間切れで質問できず、気になったままの点がありまして、よろしければお教えください。
講演中、「欧州で正規・非正規の違いがあっても同一価値労働同一賃金が達成できるのは、職務給であるから」、そして「日本の労働市場で職務給の浸透を求めるのは、(世界同時革命を求めるようなもので)現実性に乏しい」という趣旨の話をされていました。
欧州で職務給が浸透しているのは、古くからの歴史的経緯があってのことだと思いますが、同一価値労働同一賃金という価値観は、雇用形態ごとの格差が“発見”されて以後に、事後的に社会的コンセンサスとして獲得されたものだと思います。

そこで質問なのですが、欧州では、同一価値労働同一賃金(に相当する概念)をきちんと明文化した労働法の条文が、それぞれの国に存在しているものなのでしょうか?
それとも雇用形態による処遇差別は禁止する、といった差別禁止法のようなものがあって、それを援用して、同一価値労働同一賃金が、あるべき価値観として語られているという状況なのでしょうか?

日本での正規・非正規の格差解消の方策として、職務給の浸透か、同一価値労働同一賃金の実現かは、ニワトリとタマゴの関係に似て、解法としての優先順位がつけがたいものだと感じていますが、もし欧州で同一価値労働同一賃金を定めた明確な条文があるのなら、日本でも、参照点となりうる同様の法をつくってしまえばいいのではないか、と考えたりします。同一賃金ではなく、同一雇用保障という表現が、より望ましいと考えていますが…。以上、質問したいと思っていた点でした。

法制的に言うと、EU条約及び男女均等指令に、男女間の同一価値労働同一賃金原則が明記され、これが加盟国の国内法に転換されています。したがって、男女間についてはそこに規定される同一価値労働同一賃金原則、すなわち、

>(a) 出来高払いの同一労働に対する賃金は、同一の計算単位に基づいて算定され、
(b) 時間給の労働に対する賃金は、同一の職務につき同一であること。

という原則から、時間給であれば同一職務同一賃金でなければならないことになります。

これに対し、他の差別禁止指令は、賃金を含む労働条件に適用されるといっているだけで、その中身を具体的に規定しているわけではありません。ですから、男女差別とは異なり、同一職務同一賃金でなければならないというわけでは必ずしもないでしょう。(もっとも、これはEU法のレベルであって、国内法では男女以外についても同一価値労働同一賃金という風に規定することはあり得ます)

ただ、男女差別において、すでに40年にわたって同一職務同一賃金という形で規範化されている社会において、他の差別については別の形態の同一○○同一賃金でやるということはなかなか難しいのではないかと思いますし、そもそもそんな基盤はないでしょう。

差別禁止法制の基本形はどの国でも男女差別から形成されていますので、その基本形が同一職務同一賃金と法定されているのであれば、他の差別もそれにならったかたちで運用されることになると思います。

日本では、その基本形が同一職務同一賃金ではないわけです。講演でも述べたように、終戦直後に労働基準法を作るときに、西尾末広氏が同一価値労働同一賃金では生活給ができないといって反対して、男女同一賃金になったので、その後男女均等法ができても、やはり同一職務同一賃金にはなっていません。それとは異なる形で、私の言い方では「コースの平等」という形で男女平等政策が進められたため、そもそもコースが違う非正規労働者に適用する余地がなくなってしまったわけですね。

それで、講演では「期間比例原則」なるものを持ち出して、当面職務給ではない日本社会で雇用形態を超えた同一賃金の根拠を論じてみたわけです。この辺、人によっていろいろと意見のあるところだと思いますが。

詳しい回答、ありがとうございます。講演中、西尾末広氏の話のくだりは面白かったなと思い出しました。同一価値労働同一賃金が実現されないのは、労組の力が弱いからだ(だから労組運動にとりくめ)などと論じる人がいますが、歴史的経過からみても、そうした考えは単純すぎますね…。

労働基準法に同一価値労働同一賃金を条文上書き込むことは、現時点での実現可能性はさておき、当時でも考えうる法理として、選択肢のひとつだったというのは、実に興味深い事実です。

雇用形態を超えた同一処遇実現のため、「期間比例原則」の発想はもちろん、いろいろなアイデアを、おいおいブログで紹介していただけたら嬉しいです。

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