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2009年3月 9日 (月)

カトリック社会政策

ロベール・コタン著、小林珍雄訳の『カトリック社会政策』という本を見つけました。昭和26年に中央出版社というところから出ています。

400ページ近いかなりの大冊ですが、

序論

第1章 社会問題

第2章 社会問題に対する教会の使命

第3章 人格

第4章 労働

第5章 賃銀

第6章 私有財産

第7章 国家の社会経済的役割

第8章 職業団体

第9章 道義の改革

第10章 教会の社会運動

という構成で、このうち第4章の「労働」では、「労働の目的」として、目次を書き写すと、

(a)労働は生活に必要なものを、人々に得させるものでなければならない。

(b)労働は人間の発達を助けるものでなければならない。

(c)労働は第一位の社会的役割を演ずる。

(d)労働はキリスト教徒にとっては成聖の手段である。

(e)労働の品位

と、また「労働条件」については、

(a)労働は家庭生活を援助するものでなければならない。

(b)労働環境は道徳的環境をなさねばならない。

(c)労働は労働者の力に応じて調節されなければならない。

(d)労働者はどんな場合にも人格として扱われねばならない。

(e)労働生活は神聖でなければならない。・・・

と書かれています。「適正賃金の決定基準」のところは、

(a)賃銀は、労働者とその家族を生活させるものでなければならない。

(b)賃銀は、労働者が相続財産を作れるようなものでなければならない。

(c)賃銀は、企業の状況と考え合わせて決定されなければならない。

(d)賃銀は、一般経済の状況と考え合わせて決定されなければならない

と、これがキリスト教的賃銀論ですね。

国家の役割については、「公益の番人としての国家」と呼んでいます。

(a)国家は国法によって基本的人権を擁護しなければならない。

(b)国家は私有財産を保護しなければならない。

(c)国家は労働争議を予防しなければならない。

(d)国家は階級闘争をやめさせるように努力しなければならない。

(e)国家は労働者が搾取されないように注意しなければならない。

(f)国家は国法によって婦人及び子供の労働を保護しなければならない。

(g)国家は日曜の安息を遵奉させなくてはならない。

(h)国家は労働者が適正賃金を受けるようにしなければならない。

(i)国家は至る所で正義を尊重させなければならない

キリスト教的な「ソーシャル」の感覚ですね。こういうのが、ヨーロッパにおけるキリスト教民主主義のバックボーンとして存在するわけです。社会民主主義とはひと味もふた味も違ったものですが、しかし市場原理主義的な感覚に対する抵抗の基盤としてはかなり力強いものであるのも確かでしょう。

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