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2009年3月19日 (木)

住宅政策のどこが問題か

32214177 平山洋介さんの『住宅政策のどこが問題か』(光文社新書)を、光文社の黒田剛史さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。

正直言って、わりと最近になるまで、住宅政策が労働問題にこれだけ深く関わってくるとはあまり思っていませんでした。ワーキングプアと並んでハウジングプアという言葉が聞かれるようになったのもごく最近ですし、やはり昨年来の非正規労働者の雇用危機によって、いままであまり見えていなかったものが一斉に見えるようになったのですね。

>借家から持家へ、小さな家から大きな家へ、マンションから一戸建てへ…。戦後日本では、住まいの「梯子」を登ることが標準のライフコースとされ、政府・企業はこのような「普通の家族」を支援し、そこから外れた層には冷淡な保守主義の姿勢をとってきた。ところが、時代が変わり(経済停滞、少子・高齢化、未婚と離婚の増大…)、さまざまな人生のかたちが現れ、「持家社会」は動揺し始めた。さらに、90年代末から住宅システムが市場化され、住宅資産のリスクは増大した。ローン破綻があいつぐ事態が、これから日本で起こらないとも限らない。本書は、グローバルな潮流をふまえたうえで、住宅システムの変遷を検証する。そして、日本社会が新自由主義から何処へ向かうべきかを考察する。

『世界』の3月号に派遣の話を書いたときに、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-3cc9.html

公的な住宅手当という方向を提起したところ、同じ号で岩田正美先生がやはり住宅問題を取り上げておられました。

その伏線として、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-af45.html

早稲田のシンポでの岩田先生の発言があったわけですが。

まあしかし、どうしてもいままでは住宅政策はよその分野という感じが強くて、いままでの経緯にしてもよく分からないところが多いので(まさに一知半解)、本書のようなしっかりしたデータに基づき的確にまとめられた本はとても有り難いです。

なんといっても、

>1958年生まれ。神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授。’88年、神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了、2003年より現職。生活空間計画を専攻。東京市政調査会藤田賞、日本都市計画学会計画設計賞ほか受賞

という建設工学系の方が、きわめて社会的な視点から書かれているというところが重要です。

全編にわたって興味深い記述がいっぱいですが、特に「おわりに」の次の一節が心に残りました。

>日本では住宅に関わる社会的な再分配の経験が乏しい。しかし、経済成長の減速、人口の少子・高齢化、結婚と家族の変化、労働市場の変容などが住宅システムの環境を再編する中で、社会次元の再分配の必然性と合理性が増すと考えられる。

>ここで述べているのは、住宅政策を広い意味での社会政策の一環として位置づけ、再分配の経路を社会化する方針の必要性である。しかし、政府は住宅政策を建設政策の要素として運営し、経済政策に従属させてきた。経済の調子が落ちるたびに住宅金融公庫の融資が拡大し、景気刺激の手段として使われた。金融公庫は廃止になった。しかし、景気が低迷するたびに、住宅ローン減税の必要が主張される。住宅建築の「スクラップ・アンド・ビルド」によって景気を刺激するというパターンは依然として残っている。しかし、住宅ストックが増え、空屋率が上昇する中で、住宅建設の大量化政策は「住宅余剰」を過度に膨らませるだけである。そして、景気刺激のための住宅政策は、強引な持ち家取得を奨励し、住宅ローンのリスクを増大させる。家賃補助をはじめとする「対人補助」は、社会的な再分配を促す技術である。しかし、住宅政策を建設投資の拡大策として運営する政府は、「対物補助」に傾き、「対人補助」に踏み出さない。経済政策に従属する住宅政策は、合理性を欠いているだけでなく、新たな展開の可能性を奪われている。住宅政策を経済次元から自立させ、そのあり方を社会政策の問題として検討し直すことが必要である。

また、あとがきの次の一節は、住宅問題が建設系の研究者にもっぱらになわれ、社会政策系の研究者があまり関心を寄せなかった状況をよく示しています。

>住宅研究は、国際学会ではますます発展しているのに対し、国内では低調なままである。日本では建築分野の研究者が主に住宅研究を担った。この分野では、住宅それ自体に関する分析は多く見られるが、住まいの問題をより広い社会・経済・政策の文脈に関連づける仕事が十分ではない。社会科学の諸分野では住宅研究の蓄積が少ない。社会階層、人口と家族、社会政策、社会保障、福祉国家・・・などの議論が住宅論をほとんど含まずに展開しているのは日本くらいである

歴史的なところでは、戦前の日本は民間借家中心の社会だったのが、地代家賃統制令で借家供給を潰してしまったため、持ち家志向になってしまったというあたりも興味深いところです。

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コメント

光文社の黒田です。「住宅政策のどこが問題か」をご紹介くださり、ありがとうございました。今回、注目してくださったように、住宅政策と社会政策系との協働作業が進むことを期待しています。ますますのご活躍をお祈りしております。

一生賃貸派が増えてきた。マイホーム派はどうする?!

http://diamond.jp/articles/-/14146

”最近では、住宅を購入してローンを返済している世帯が、そうでない世帯に比べて消費を落としていることが知られるようになった。実は新築持ち家に偏重した経済対策としての住宅政策が、長期的に内需経済を傷めているのではないかということが言われ始めている。”

この図式を
社会保障が不十分なことにより
消費(投資)が不足し
需要不足をきたしていると
とらえれば
権丈先生が仰られていること
(社会保障の拡充は経済成長にもプラスである)
と共通しますね

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