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北欧諸国は解雇自由ではない

一知半解氏が北欧は解雇自由だなどとまたぞろ虚偽を唱えているらしいので、拙稿より北欧諸国の解雇規制の記述を引いておきます。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roubenflexicurity.html『季刊労働者の権利』2007年夏号原稿 「解雇規制とフレクシキュリティ」

(4) デンマーク
 法律上原則として使用者は労働者を自由に解雇できる。ただし中央労使協約により、解雇は公平で予告が必要である(勤続に応じて3ヶ月~6ヶ月)。著しい非行の場合は即時解雇が可能である。使用者は解雇の正当理由を示さなければならず、これに不服な労働者は解雇委員会に申し立てることができる。解雇委員会は、労使間の協調が不可能ではないと認めるときは復職を命じることができる。

(7) フィンランド
 解雇予告期間は勤続に応じて14日~6ヶ月。普通解雇にも労働者個人又は企業の経済状況に基づく正当理由が必要である。もっとも、正当な理由なき解雇の場合でも使用者の同意なしに復職はできない。すべては補償によってカバーされる。雇用契約上の義務違反等雇用を継続しがたい重大な理由があれば即時解雇できる。
 整理解雇に際しては、適切な訓練や経験によって労働者を他の部署に配転する余地があればそうする義務がある。

(14) スウェーデン
 労働者が雇用契約上の義務に著しく違反した場合は予告なしに即時解雇できる。それ以外の客観的な理由のある場合は解雇予告(勤続に応じて1ヶ月~6ヶ月)が必要である。いずれの場合も、労働者が訴えて客観的な理由がないとされれば解雇は無効となり、雇用は維持される。ただし、裁判所は使用者の申し出により雇用が終了するとの命令を発することができ、労働者は補償を受ける。
 整理解雇に際しては、配転により雇用継続が可能であれば客観的な理由は認められない。また解雇順位は法定されていて、厳格な年功制、すなわち最後に就職した者から最初に解雇される。もっともこれに反しても解雇は無効にはならず補償の対象となる。

法学上、「解雇自由」というのは、正当な理由があろうがなかろうが、そんなことには何の関係もなく解雇は自由に行えることを指します。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-ba7f.html(労働者を気分次第で簡単に解雇するような経営者はいる)

>>カレンは・・・D社のスーパーマーケットに勤務する、勤続26年のアシスタントマネジャーである。彼女の夫は地元の警察の巡査部長であるが、1997年の6月上旬、飲酒運転の取り締まりの際に、ある女性ドライバーの呼気検査を行った。検査の結果、基準を超えるアルコールが検出され、女性は逮捕された。その女性は、D社のオーナーの妻であった。8月末、カレンは解雇された。

もちろん、この解雇は正当です。正当な理由があろうがなかろうが、道徳的に間違った理由であっても、解雇は正当です。解雇自由とはそういうことです。アメリカ並みになるというのは、そういうのを当然のこととして受け入れるということです。もちろん。

そういう法制をとっているのはアメリカだけです。北欧諸国はそういう「解雇自由」の国ではありません(デンマークは労働法がそもそもほとんどなく、他国が労働法で規制しているようなことをほとんど中央労働協約でやっている国ですから、やや特殊ですが)。

北欧諸国は、解雇自由なのではなく、解雇規制はあるけれども労働者が自由に労働市場を異動できるように整備されているということです。

(追記)

労働関係ブログをやっていると、他の労働関係ブログと同じネタがかぶることがあって、「あ、同じものに食いついてる」とニヤリとすることがありますが、今回も同じことがありました。

労働弁護士の水口洋介氏の「夜明け前の独り言」です。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2009/02/post-1479.html(スウェーデンが「解雇自由」だって?)

中身はリンク先をお読みください。ただ、一言だけ、

>経済学者によると、北欧は「解雇自由の国」だそうです

>なお、著名な経済学者が「北欧は・・・解雇自由」って書かれています。

これは、まっとうな労働経済学者であれば「一緒くたにするな!」と怒ると思いますよ。IT専門のメディア博士を「著名な経済学者」と呼んだりすると・・・。

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コメント

本件について、池田先生のコメント欄に池田先生自身のコメントがあり、リンクされている欧州委員会のページを見ても「解雇自由」なのか分からないので、二度に亘り結局解雇自由か否かと質問するコメントを出してみましたが、現在まで掲載に至ってません。濱口先生を中傷する中身も全くいただけません。お互いプロの研究者なのなら、冷静に論争してほしいですね。

投稿: ken | 2009年2月21日 (土) 16時07分

前の3法則事件の時もそうですが、これはいかなる意味でも理論が問題という意味での『論争』ではありません。事実問題なのですから、スウェーデンが解雇自由な国だと主張するのなら、スウェーデンの法律や判例でもって実証すればいいだけのことです。
彼はいつも、事実問題を指摘されると、事実を立証することがまったくできないまま、誹謗と中傷の煙幕の中に逃げ込むのです。こんなことは、いままでの経緯を見てきている人には重々分かっていることですけれどもね。

スウェーデンが解雇自由でないと認めたとしても、解雇自由が正しいんだ、アメリカみたいになるべきだ、と彼が主張するのであれば、私はその中身に賛成しませんが、そういう主張をする権利ははじめから認めていますよ。しかし、彼はそういう素直さを持ち合わせていないんだな。またぞろ第3法則をやらかしていますし。

投稿: hamachan | 2009年2月21日 (土) 18時46分

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