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今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会報告書

本日、標記報告書が公表されました。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/02/h0227-8.html

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/02/dl/h0227-8a.pdf

はじめに問題意識として、

>戦後我が国においては、憲法によって労働三権が保障され、労働組合法や労働基準法の制定をはじめとして労働法制が拡充するなど、労働者は様々な権利を享受してきた1。政府としては従前から、労使を中心として法制度を周知・徹底することを通じて労働者の権利を確保するための取組を行ってきた。
近年、非正規労働者の趨勢的な増加2、就業形態の多様化、労働組合の推定組織率の低下3、労働契約法等の新たな労働法制の創設・施行等、労働者の職業生活に影響を及ぼす環境が大きく変化している。こうした状況の中、個別労働紛争や不利益な取扱に関する労働相談が増加の一途を辿っている4とともに、各種調査において労働関係法制度をめぐる知識、特に労働者の権利の認知度が全般的に低い状況が見られる。特に、現在相対的に低い労働条件で働いていたり、将来的に相対的に低い労働条件になる可能性の高い人ほど、労働者の権利を理解していない可能性が高いとの指摘がなされている。
労働者自身が労働関係法制度の基礎的な知識を理解していない場合、労働者としての権利を行使することが困難であり、そもそも権利が守られているか否かの判断すらできない。
こうした状況を踏まえ、労働者自身が労働関係法制度を正確に理解し自分自身で自己の労働者としての権利を守る必要があるとの認識が高まっており、労働関係法制度をめぐる知識、特に労働者の権利に関する知識が十分に行き渡っていない状況の改善を目的とした教育の重要性が各方面から指摘されている5。
今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会(以下、「研究会」という。)においては、先行研究や各種提言等を踏まえつつ、NPO法人や学校関係者等からの意見聴取や知識の理解状況に関する実態把握のための調査を実施すること等を通し、労働をめぐる権利・義務に関する教育の意義や課題、より実効的な教育の在り方について総合的な検討を行った。今般、その検討結果を報告書として取りまとめたところであり、今後、本報告書を受けて関係者により適切な対応・措置が講じられるよう期待するものである。

基本的な考え方として、

>労働関係法制度が適切に周知され遵守されることの究極的な目標は、労働関係の紛争や不利益な取扱いを円満に解決もしくは未然に防止し、適切な労使関係を構築することにある。すなわち、労働関係法制度を知ることは、労働者にとっては自らの生活を守るために、使用者にとっては円滑な企業経営を確保するために重要な要素であり、労働者・使用者双方にとって必要不可欠である。特に、雇用者の割合が8割を超える我が国においては、適切な勤労観、職業観を醸成し、あらゆる層の労働者が必要な知識を習得できる機会を設けることこそが、働く上で必要不可欠な要素である。
研究会におけるヒアリングや実態調査においても、労働者の権利が侵害されやすいような労働環境や不安定な働き方で働く労働者が必要な知識を理解していない可能性が高いという指摘や、基礎的な知識不足から生じる問題を解決できないまま放置している例、問題が起きても何も変わらないからと諦める例が多数見られた。また、労働関係法制度を理解している者ほど有給休暇を取得する割合が高いなど、権利を行使している可能性が高い状況にあると考えられる。そもそも権利を認知していなければ現在の労働条件が適切か否かの判断すらできないことから、遭遇した事態を不当であると認識し、何らかの形で解決策を見いだすためには、労働関係法制度に関する最低限の知識が必要である。
そもそも法的な「権利」とは、本来、法律や契約で定められた要件を満たす限り全ての者が行使でき、かつ最終的には裁判制度を通して国家権力により履行を強制できるものである。また、労働者と使用者の間では一般に対等な立場で合意することが難しいことから、労働者の権利を保護するために労働契約法や労働基準法などの労働関係法令が制定されているところであり、これらに基づき裁判のほかにも行政機関による指導・勧告などの方法で、労働者に対して様々な法的な「権利」が保障されている。したがって、労働者は、法律や契約で定められた要件を満たす限り、その権利を行使することは妨げられない。
しかし、労働関係において、労働者は法的な権利のみ享受しているわけではない。労働者と使用者は、「契約(労働契約)」に基づいて、お互いに法的な「権利」と「義務」を負っている。使用者が義務に違反した場合、労働者はその履行を求めることができるが、その一方で、労働者が契約上の義務(たとえば、契約に基づいて労務を提供する義務、就業時間中は職務に専念する義務、企業秩序を遵守する義務など)に違反した場合には、使用者は当該労働者に対して、懲戒、解雇、損害賠償請求などをなしうる場合がある(ただし、使用者による懲戒、解雇、損害賠償請求などは法令や判例法理で定められた要件を満たすことが必要であり、そうでない場合には裁判で違法とされる)。すなわち、労働関係は、「契約」に基づく、相互関係の下に成り立っているものであり、使用者が法令や契約を遵守しなければならない一方で、労働者にも自らが負っている法的義務を果たすことが求められている。
既に述べたように、労働者は、法律や契約で保障された権利を行使することができる。しかし実際に、職場において使用者から不利益な取扱い(法的権利を侵害するような取扱い)を受けることを未然に防ぎ不利益な取扱いを受けた場合のトラブルを円滑に解決できる職場環境を実現するためには、事業主側が労働関係法制度についての知識を習得し遵守することは当然のことながら、労働者が、自らの権利や義務についての知識等を単に「知っている」だけでは不十分であり、問題が生じた場合の相談窓口などの幅広い知識もあわせて習得するとともに、知識等を実際に活かして適切な行動をとる能力を身に付けておくことも必要不可欠である。すなわち、労働者が自ら職場における紛争の防止に対処する方法を意識し、実際に行動を起こすための原動力となる「問題解決能力」や、社会生活のルール及び基本的生活態度を身に付け、他者との良好な人間関係を構築するための「社会性・コミュニケーション能力」を高めることが、実際の職場における紛争の防止や解決に資するものと考えられる25。そのため、あらゆる機会を通じ、知識の付与だけに留まらないバランスの取れた教育が推進されることが重要であり、この点に十分留意しなければならない。
研究会としては、個々人の置かれた状況に応じ各段階において継続的かつ効果的な教育が行われるためには、学校、職場、地域、家庭、産業界、労働界、NPO法人等の民間団体、行政の連携強化を図ることが重要であるとの認識の下、以上の基本的な考え方を踏まえ、労働関係法制度に関する基本的な知識をどのように付与するかなど、今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方について、以下提言する

具体的な教育のあり方として、まずは学校教育の場における労働教育です。

>労働関係法制度に関する知識が広く認知されるためには、学校教育の場で提供されることが有効と考えられるが、各学校において、その実情に応じ、公民等の教科のほか、キャリア教育・進路指導のなかで提供されることが効果的と考えられる。そのため、例えば厚生労働省が文部科学省と連携し教材を作成するなど、環境の整備を進め、有効に活用されるようにすることが重要である。

>また、高校生や大学生等の段階では、働くことに関する興味・関心や現実感が湧き問題意識を持つ時期、職業の選択や就職活動をする時期、アルバイトを経験する時期など、基礎的な知識が提供される必要性が高くなっている時期であることに加え、そういった知識を的確に理解できる時期であるという観点から、労働関係法制度に関する基礎的な知識を付与する主な対象については、高校生や大学生等とすることが適当ではないかと考えられる。その際、進路選択や就職に向けたガイダンスをはじめ、就職内定者向けのセミナー等の場において、基礎的な知識が提供されることが効果的であると考えられる。
ただし、高校や大学の段階において、労働関係法制度に関する知識を網羅的に付与することは現実的とは言えない。むしろ、労働関係法制度の詳細な知識よりも、まずは労働法の基本的な構造や考え方、すなわち、①労働関係は労働者と使用者の合意に基づき成立する私法上の「契約」であり、「契約」の内容についても合意により決定されることが基本であるということ、②労働者と使用者の間では一般に対等な立場で合意することが難しいことから、労働者の権利を保護するために労働契約法や労働基準法などの労働関係法令が設けられていること、③労働組合を通して労使が対等な立場で交渉し労働条件を決定できるように、憲法や労働組合法により労働三権が保障されていること等を分かりやすく教えることが有効である。また、例えば給与・賞与・退職金などの具体的な労働契約の内容については、法令に反しない限りにおいて労働者と使用者の合意に委ねられているため、採用時(労働契約締結時)に交付される書面や就業規則によって労働契約の内容を確認することが重要であること、さらに、時間的余裕があれば、必要に応じて、採用/解雇、労働条件、内定等の「契約」にまつわる基本的な知識を付与することも効果的であると考えられる。なお、労働関係法制度に関する知識だけではなく、職業選択や就職活動に必要な事項として、社会情勢の変化等も踏まえた多様な雇用形態(派遣、契約、請負、アルバイト等)による処遇の違い、仕事の探し方、求人票の見方、ハローワーク等の就職支援機関の利用方法等に関する知識を付与することも重要である。
就業直前には、就職する生徒等を対象として、労働法に基づく権利及び義務に関する基本的な知識26を付与することが、生徒等の社会人・職業人としての自立を促進するために効果的と考えられる。特に、実際にトラブルが発生した際の労働相談の窓口とその機能に関する知識を付与することが有効である。また、例えば給与の仕組みについて教えることは、企業側にも負担があるということを知ることになり、自分と会社との関係について知るために有効と考えられる

その他、企業における教育、家庭や地域社会における教育などにも触れた上で、最後の環境の整備というところで、情報提供機能や相談体制機能を述べたあとで、こういう一節も書かれています。

>また、教育の成果で知識等を理解していても、働く現場でそれが保障されていない現実を目の当たりにすると、権利主張をしない場合が増えるとの指摘もある。悪しき労働関係が根付かせないためにも、企業において労働関係法令の遵守を徹底することはもちろんのこと、労働行政においても、労働関係法令の遵守に向けて監督指導を徹底することも有効である

なお、併せて、「労働関係法制度の知識の理解状況に関する調査報告書」も公開されています。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/02/h0227-7.html

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