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« 金属労協の雇用危機を打開し、勤労者生活の底支えを図る緊急的な雇用対策の実行に関する要請 | トップページ | グローバル化の中の福祉社会 »

2009年2月21日 (土)

これがスウェーデンの解雇規制法です

純然たる事実問題について、その主張の誤りを指摘されても、事実問題には一切口をつぐんだまま、誹謗と中傷を投げ散らかして唯我独尊に酔いしれるという御仁に何を言っても詮無いことですが、事実問題に何らかの関心をお持ちであろう読者の皆様のために、スウェーデンの解雇規制法のスウェーデン政府による英訳を引用しておきます。

http://www.regeringen.se/content/1/c6/07/65/36/9b9ee182.pdf(Employment Protection Act (1982:80))

重要なのは第34条と第35条です。第34条は解雇予告による解雇、第35条は即時解雇ですが、いずれも客観的な根拠がなければ無効となります。

Section 34 Where notice of termination is given without objective grounds, the notice shall be declared invalid upon the application of the employee. However, the above-mentioned provision shall not apply where the notice of termination is challenged solely on the grounds that it is in breach of the rules regarding priority.
If a dispute arises concerning the validity of a notice of termination, the employment shall not terminate as a consequence of the notice prior to the final adjudication of the dispute. Nor may the employee be suspended from work as a consequence of the circumstances that caused the notice to be given, in the absence of special reasons for such. The employee shall be entitled to pay and other benefits under Sections 12 - 14 for the duration of the employment.
Pending final adjudication of the dispute, a court may rule that employment will terminate at the expiration of the period of notice, or at a later time determined by the court, or that a current suspension shall be discontinued
.

Section 35 Where an employee has been summarily dismissed under circumstances that would not constitute grounds for a valid notice of termination, the summary dismissal shall be declared invalid upon the application of the employee.
Where such an application is brought, a court may order that the employment shall continue, notwithstanding the summary dismissal, pending final adjudication of the dispute.
Where a court has issued an order under the second paragraph the employee may not be suspended from work by the employer as a consequence of the circumstances that caused the summary dismissal. The employee shall be entitled to pay and other benefits under Sections 12 - 14 for the duration of the employment
.

そうすると、雇用契約は終了せずに継続しますから、使用者はその間の賃金を支払わねばなりません。

Section 37 Where a court has issued a final order that a notice of termination or a summary dismissal is invalid, the employer may not suspend the employee from work as a consequence of the circumstances that caused the notice of termination or summary dismissal.

ただ、日本と違うのは破綻主義による雇用終了とそれに対する損害賠償を法律上明記していることです。

Section 39 Where an employer refuses to comply with a court order that notice of termination or a summary dismissal is invalid, or that a fixed-term employment shall be valid for an indefinite term, the employment relationship shall be deemed to have been dissolved. As a consequence of the employer's refusal to comply with the court order, the employer shall pay damages to the employee under the following provisions.
Damages are to be determined according to the employee's total period of employment with the employer at the time of dissolution of the employment relationship, and shall correspond to the following amounts:
16 months' pay for less than five years of employment;
24 months' pay for at least five years but less than ten years of employment;
32 months' pay for ten or more years of employment;

解雇無効だといわれたって、こんな奴雇い続けるのはいやだ、と使用者が言えば、雇用契約は切れます。ただし、手切れ金はそう安くはありません。勤続5年未満は16ヶ月分、勤続5年から10年で24ヶ月分、金属10年以降で32ヶ月分です。いうまでもなくこれは解雇予告手当とは別です。

私はこっちの方が合理的だと思います。

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コメント

実際の制度は調べず、
単なる思い込みでスウェーデンを礼賛
(または否定)する論者が多い中、詳細な情報に感謝します。

ただ、よくわからないのですが、
濱口様は、
(すごく悪く表現すれば)、
「高額な賠償金さえ義務付ければ、企業が自由に労働者をクビにできる制度でかまわない」
「むしろ、そのほうが好ましい」
「なお、スウェーデンの現状はまさにそれ」
・・・こういう主張なんでしょうか???。

であれば、某池田信夫氏とそんなには変わらないと思いますが、、、。


つまり、スウェーデンに限らずヨーロッパの大部分の国の、解雇は規制されているが高額の金銭保障で解決している国と、アメリカのような言葉の正確な意味での解雇自由な国とが「そんなに変わらない」というご認識であるということであれば、そういう認識もあり得るでしょうとしか言えません。

私はそれはまったく大違いであるという考え方でいろいろと書いていますので、そこはメタレベルでの認識の相違ということになりますね。

一方的離婚の場合、夫に責任がある場合であってもびた一文払わずに夫からの一方的離婚を認めることと、離婚は認めるが高額の賠償を取り立てることが、どちらも「一方的離婚自由」であって「そんなに変わらない」のか、どんなに破綻していても離婚を認めずに同居を強制することのみが「一方的離婚規制」といえるのか、とか、いろいろと考え方のあるところですが、解雇の場合でもいろいろと考え方があるでしょう。

ただ、何にせよ、事実に反することを書き散らしただけではなく、それを間違いを指摘されると逆ギレして「天下り教授」とか何とか喚き出すような御仁と「そんなには変わらない」というように聞こえる表現だけはいささか承服しがたいところがあります。

「予想通り」と言いながらも、気の利いた切り返しをしてこないところがポイントですね。

北欧では自由に解雇できる代わりにセーフティネットがしっかりしているから復活できる、といった話はこの間NHKで放送しておりました。よりによって氏が普段バカにしているNHKです。そのときの放送内容がNHKのサイトにアップされているかどうか分かりませんが、「北欧 解雇 NHK」で検索すると、その放送の感想文にヒットします(トップに来るのは本サイトですが)。

私もNHKの放送内容と、hamachan 様の指摘の不一致が気になります。NHKの放送内容はいったい何だったのでしょうか?

解雇自由ということと、解雇されてもあんまり辛くない社会であるということは別だということでしょう。

スウェーデンは上述のようにいかなる意味でも解雇自由ではありませんが、「不当解雇だ!」といって争う機会費用と、さっさと会社を辞めて手厚い失業保険をもらいながら、たっぷりと時間をかけて職業訓練を受けて好条件で再就職していくことを比較考量して、後者を選ぶ人が多いということでしょう。それはそれで社会の選択肢が多いということで結構なことです。

それを、不当であろうが不道徳であろうが解雇は自由という概念である「解雇自由」と呼ぶことに問題があるのだと思います。

もう一つ、これはあまり指摘されない点ですが、スウェーデンにせよ、デンマークにせよ、これは私のいたベルギーも同じですが、いわゆるゲント方式の失業保険で、失業保険は労働組合が運営し、労働組合を通じて支給されるという仕組みです。失業しても労働組合のメンバーシップはそのままで、社会から排除されたという風にならないというのは、実は結構大きいのではないかと思います。労働組合員というメンバーシップは継続していて、たまたま就労している会社から「もう要らない」といわれたら、さっさと別の会社に「配転」するだけという感じなのかなあ、と。

これこそ、まさに一知半解氏が目の敵にしていた「ギルドとしての労働組合」そのものですが、そういうギルド的な仕組みこそが、解雇が辛くない社会のインフラになっているのではないかと思います。日本の労働組合は、いかなる意味でもそういうギルド的な性格を有していないがゆえに、日本社会における「解雇」というのはとても辛いものになってしまうという面があるのでしょう。

解説ありがとうございました。見方を変えると、手厚いセーフティネットのために解雇規制が骨抜きにされているとも言えそうですね。解雇した企業の責任が、国に転嫁される点で、ある種のモラルハザードともいえそうです。

おっしゃる内容からすると、池田氏ですが、言葉の定義を勘違いしていただけですから、とっとと認めたほうが男が上がると思うのですが。それはそうとして、池田氏にはアメリカ型の「解雇自由」をどう思うかを表明して欲しいですね。こっちは考え方の問題なので。

ギルドとしての労働組合というのは良く知らなかったのですが、こういう横の繋がりには、勤務先が大企業だからとか、下請けだから、といった縦の関係に束縛されないところが良いと感じました。

「解雇無効だといわれたって、こんな奴雇い続けるのはいやだ、と使用者が言えば、雇用契約は切れます。ただし、手切れ金はそう安くはありません。勤続5年未満は16ヶ月分、勤続5年から10年で24ヶ月分、金属10年以降で32ヶ月分です。いうまでもなくこれは解雇予告手当とは別です。
私はこっちの方が合理的だと思います。」

池田氏も同じような主張をしていたので学者さんが理想とする解決策は意外に近いのかもしれませんね。

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