新たな雇用安全網、国会で論議へ
本日の朝日新聞に、標記の記事が載っています。
http://www.asahi.com/politics/update/0218/TKY200902180266.html
>雇用保険と生活保護のすき間を埋める雇用の新たなセーフティーネット(安全網)を求める声が強まっている。働く人の3分の1を非正社員が占め、雇用保険の網からこぼれ落ちる人が増えているためだ。政府・与党の対策に民主党も独自案を準備し、雇用をめぐる国会論戦の大きなテーマに浮上してきた。
政府は昨年11月、雇用保険の受給資格がない年収200万円以下の非正社員らに、月10万円を上限に職業訓練中の生活費を貸与する制度を創設。1月からは上限額を月12万円に増やした。
一方、民主党は雇用保険の失業手当の受給期間が終わっても再就職できない失業者らが、教育訓練を受けた際に生活費を支給する求職者支援法案を検討中だ。教育訓練を受ければ、月10万~12万円を上限に支援する。
両者の大きな違いは、政府は雇用保険の受給資格がない人だけを支援するのに対し、民主案は雇用保険の受給者にも、受給終了後の生活費を最長3年間支援する点だ。
また、政府は生活費を貸し付けたうえで、訓練を修了して安定就職すれば返済を免除するのに対し、民主案は生活費を全額給付する。
そのほか政府は、今回の経済危機で急速に進んだ「派遣切り」で、失職とともに社員寮を追い出されて住居も失う人への緊急対策として、昨年末から住宅入居費や生活費を最高186万円低利融資する制度を創設。民主党も同様の制度を盛り込んだ雇用保険法改正案を、今国会へ提出することを目指している。
こうした議論が盛んになった背景には、雇用危機が深まるなかで、労働市場の規制緩和に雇用の安全網の整備が追いついていないことがある。非正社員の数は07年には1732万人と雇用者の3分の1を超えたが、このうち1006万人は雇用保険に加入していない。
低賃金で短期雇用を繰り返し、雇用保険の受給資格を得られなければ、職業訓練で技能を身につけて好条件の仕事に就きたくても、その間の生活資金がなく訓練を受けづらい。失職して社員寮を追い出され、路上生活を余儀なくされるケースもある。生活保護制度はあるが、働ける人が保護を受けるのは困難だ。
欧州では、雇用保険と生活保護の間に「失業扶助」という制度がある国が多い。雇用保険の未加入者や、失業手当の受給中に仕事を見つけられなかった人に、生活費を支給しながら職業訓練などを受けさせることで、早期の再就労につなげる仕組みだ。
労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員は「欧州では就職せずに手当を受給し続けるモラルハザードも起きている。失業扶助の制度は必要だが、職業指導を徹底し、できるだけ早期に就労させる仕組みに重点を置くべきだ」と話す。(生田大介、林恒樹)
ということです。やや就労促進にウェイトのかかりすぎたコメントになっていると感じられるかも知れませんが、こういうときだからこそ、この点はきちんと言っておく必要はあろうと。一つには、生活保護の入り口を緩和するという福祉サイドの方向からこの問題を考えるのか、労働市場のセーフティネットを穴のないようにするという労働サイドの方向からこの問題を考えるのか、という哲学的な問題が底にあるわけで。
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