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派遣労働者への雇用保険の適用について

私は『季刊労働法』221号に「失業と生活保障の法政策」を書き、既にHP上にアップしているので、こういうことは世間でも常識になっていると思っていましたが、必ずしもそうでもなさそうなので、改めて当該論文の関係部分を本エントリー上にアップしておきます。

派遣切り云々を論ずる前に、まずこういう基本的知識をきちんと持った上で、まず何をどうすべきなのかについて的確な判断をしていただきたいと思います。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/shitsugyohoken.html

>かつては非典型労働者の大部分は、家事や育児を本務とし家計補助的に就労する主婦パートタイマーと、学業を本務とし小遣い稼ぎ的に就労する学生アルバイトでした。従って、彼らがそのような就労先から離職したとしても、それは生活保障すべき「失業」ではないと見なすのが一般的な常識であったといってよいと思われます。いわば、雇用は不安定であっても生活は安定していたわけです。これを反映して、業務運営上も「臨時内職的に雇用される者」を適用除外としています。

 この取り扱いは、1950年の通達で示されたものです。「臨時内職的に雇用される者に対する失業保険法の適用に関する件」(昭和25年1月17日職発第49号)は、次のように指示しています。

「臨時内職的に雇用される者、例へば家庭の婦女子、アルバイト学生等であつて、次の各号のすべてに該当する者は、法第六条第一項の「労働者」とは認めがたく、又失業者となるおそれがなく、従つて本法の保護を受け得る可能性も少ないので、法第十条但書第二号中の「季節的に雇用される者」に準じ失業保険の被保険者としないこと。

 なお、これは家庭の婦女子、アルバイト学生等であれば、すべて適用を除外する意味ではなく、その者の労働の実態により判断すべきものであるから、念のため申し添える。

一、その者の受ける賃金を以て家計費或いは学資の主たる部分を賄わない者、即ち家計補助的、又は学資の一部を賄うに過ぎないもの。

二、反復継続して就労しない者であつて、臨時内職的に就労するに過ぎないもの。」

 これは法条文上に根拠があるわけでもありませんし、なぜ家計補助的であれば雇用保険の対象となる労働者と認められないのか、法制的に言えば大変疑問のある扱いであったと言えるでしょう。そもそも、「臨時内職的」という形容詞が奇妙です。「内職」とは雇用関係のない請負による家内労働のことですから、その意味における「内職」であるなら初めから失業保険の対象外です。また「臨時」というのが法律上適用除外される短期就労であるなら、やはりわざわざ通達で排除する必要はないはずです。雇用関係のあるかなり長期間の就労でありながら、家計を支える労働者ではないから対象としないという扱いですから、明らかに法律の文言には反します。しかしながら、現実には誰もこの扱いに疑問を持たなかったことからも分かるように、失業保険が対象とする失業は家計を支える労働者の失業であるというのが世間の常識であったわけです。ちなみに、この「臨時内職的」の適用除外は現在も業務取扱要領上に維持されています。

>・・・これよりも問題を孕んでいるのが派遣労働者の扱いです。短時間勤務の派遣労働者の場合は、上のように適用要件に1年以上の雇用見込みがあるため、雇用契約の期間が1年未満の派遣労働者は適用されませんが、フルタイムの派遣労働者の場合は原則に戻って、日雇労働者や「四箇月以内の期間を予定して行われる季節的事業に雇用される者」でない限り、当然適用されるはずです。少なくとも法文上は、フルタイムの派遣労働者について雇用期間による特別の適用除外規定は存在しません。ところが、現在の運用では、登録型派遣労働者についても「反復継続して派遣就業する者であること」が要件とされているのです。

 具体的には、登録型派遣労働者の場合、「一の派遣元事業主に1年以上引き続き雇用されることが見込まれるとき」又は「一の派遣元事業主との間の雇用契約が1年未満で一に当たらない場合であっても雇用契約と次の契約の間隔が短く、その状態が1年以上続く見込みがあるとき(この場合、雇用契約については派遣先が変わっても差し支えない)」にのみ、適用されるという扱いになっています。後者の例として、「雇用契約期間が2か月程度以上の派遣就業を1か月程度以内の間隔で繰り返し行うこととなっている者」や「雇用契約期間1か月以内の派遣就業を数日以内の間隔で繰り返し行うこととなっている者」が示されています。

 この取扱いの源泉は、上述の1950年通達の「反復継続して就労しない者であつて、臨時内職的に就労するに過ぎないもの」にあるわけですが、「家庭の婦女子、アルバイト学生」をもっぱら想定してこの要件を設定していた当時の状況に比べれば、現在のフルタイム登録型派遣労働者の大部分はまさに「その者の受ける賃金を以て家計費の主たる部分を賄」う存在になっているのですから、あまりにも実態に合わない運用になってしまっているといえましょう。

派遣けしからんと騒ぐ人の数は数知れないくらいですが、現在のフルタイム登録型派遣労働者をいつまで「家庭の婦女子、アルバイト学生」扱いし続けるのか、という問題を指摘している人を、残念ながら見かけたことはありません。

このあとの記述で私が示している登録型の場合に派遣先を使用者と見なして適用するという考え方に賛成するかしないかは別として、これくらいは議論の前提になって欲しいものです。

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コメント

今、派遣村にいる人々の中には、雇用保険の加入条件を満たしているのに、加入していない。もしくは、雇用保険の仕組み自体を知らない人ばかりだと思います。そもそも、私もそうでしたが、正社員で働いている人だって、給料明細に雇用保険料と記載されていて、入っているんだ位で仕組みなんか知らないと思います。半ばホームレス状態になっている人が派遣村になだれ込んで来るのは、派遣先ばかり悪いように言われていますが、派遣元の雇用保険管理体制のずさんさが原因だと思います。本来なら、派遣切りにあった人たちはリストラとみなされ、派遣元会社が10日以内にハローワークに離職手続きをして、すぐに失業給付金が受け取れるようにしなければいけないのでは。しかし、厚生労働省をはじめ各労働局、ハローワーク共、派遣元会社の違法性には未介入というのが現状です。実際、私はジェ〇エ〇〇ュー〇という派遣会社から、雇用保険の仕組みを知らないのをいいことに、転職したから離職手続きをして、雇用保険被保険者評をすぐに郵送してと請求したのに手続きしてくれず、挙げ句会社の決まりですぐにはできないことになっているとデタラメを吹き込まれました。当然知らないから、鵜呑みにしてしまいます。後で雇用保険法について知り、違反だと分かっていてやったんだから責任取れと証拠を出して裁判やりましたが、弁護士を立ててしらを切られました。私には弁護士いませんから、裁判所は指導したハローワークに事実確認せず不当判決出しましたよ。その後、再度各行政期間に裁判で派遣会社が偽証したことを話したが、どこだってやっているから的回答。あなたが、主張することは最もですが、派遣会社の雇用保険管理体制にはまだまだ行政は甘いのです。ただし、今月5日に派遣切りに合わせて、この一件について首相官邸にメール送信し、翌日速達で裁判資料を送付したら(会社名は実名だし、事件番号もそのまま)いただいたご意見は担当省庁に送付すると返信が。もしかしたら、何らかの動きがあるかもしれないので、あなたを応援します

投稿: 桜井京子 | 2009年1月21日 (水) 21時57分

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